喘息(ぜんそく)でもあきらめないで!
ポイントは“病院選び”と“治療法”

現在、日本国民の3人に1人はなんらかのアレルギー疾患を持っており、
その中でも喘息の患者数は子どもから大人まで含めて
400万人を超えると言われています。
 
横浜市南区で呼吸器内科を専門にしている当院にも、
毎月1,000人を超える喘息患者さんが多方面から来院されます。
 
喘息は良く聞く身近な病気ではありますが、
一歩間違えば命を落とすこともある、ということをご存知でしたか?
 
もしも、
「たかが喘息でしょ?」
とか、喘息になっていると気付かずに
「どうせただの風邪だろう・・・」
と思って病院にも行かず放っておいている方がいたとしたら。。
 
それは、とてもキケンです!
 
今でも喘息の発作が原因で命を落としてしまう方が、毎年1,600人ほどいます。
 
そのうち約3割の方が発作が起きてからわずか1~3時間で亡くなっているということですから、
喘息の発作がいかに怖いものかがおわかりいただけると思います。
 
残念ながら、喘息は一度発症してしまうと今の医学では完治することが難しい病気です。
 
でも、
 
定期的な通院と適切な治療を続けていけば、
健康な人と変わらない生活を送ることができるんです!

 

喘息だからといって落ち込んだり、やりたいことをあきらめる必要はありません。
 
 もしもあなたや身近な人が喘息になってしまった時、
いったいどうすればいいの?自分にできることはあるの?

などの不安や疑問を解決する具体的な方法についてお話していきますので、
どうぞ最後まで読んでみてくださいね。
 
<もくじ>
1.喘息ってどういう病気?~基礎知識編~
2.喘息はどうしてなるの?~原因と対処編~
3.もしかして喘息?と思ったら~自覚症状と病院選び編~
4.喘息治療の第一歩は専門的な検査から~検査と診断編~
5.喘息治療を正しく理解しましょう~治療編~
6.喘息発作を起こさないために~自己コントロール編~
7
.もしも発作が起こったら?~緊急時の対処編~

 

1.喘息ってどういう病気?~基礎知識編~

ひと口に「喘息」といっても、その症状や原因によってそれぞれ違いがあります。
 
まず、大きく分けて「気管支喘息(きかんしぜんそく)」「咳喘息(せきぜんそく)」があり、
発症した年齢によって「小児喘息(しょうにぜんそく)」「成人喘息(せいじんぜんそく)」に分けられます。
 
(1)「気管支喘息」と「咳喘息」
 
①気管支喘息
一般的によく「喘息」と言われるのがこの気管支喘息です。
気管支に炎症がおきて少しの刺激にも敏感になり、空気の通り道が狭くなってしまう病気です。
 
厚生労働省の調査によれば、
日本の小児の5~7%、成人では3~5%が気管支喘息にかかっているといいます。
 
~気管支喘息の症状~
気管支に炎症が起きると、内側が腫れ粘り気の強い痰が増えます。
さらに、気管支を取り囲んでいる筋肉が収縮して気管支を狭くしてしまいます。

そこへ、風邪をひいたり激しい運動をしたりして気管支に何らかの刺激が加わると、
咳や痰が出やすくなり、喉から「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)が出て、
呼吸をするのが苦しくなります。
 
このような状態に陥ることを、「喘息の発作」と言います。
 
②咳喘息
咳喘息は、「気管支喘息のような喘鳴はないけれど、慢性的に咳が続く」のが特徴です。
気管支喘息と同様、気道に炎症がおこり、様々な刺激によって気道が狭くなります。
 
咳喘息の原因は風邪のほか、
たばこの煙を吸う受動喫煙、ストレス、気温や気圧の変化、
ハウスダストなどのアレルギー反応などによっても引き起こされます。
 
風邪による発熱やくしゃみは治っているのに咳だけがしつこく続いている場合、
風邪が長引いているんだと思って同じ薬を飲み続ける方がいますが、
 
咳喘息による咳は市販の風邪薬や咳止め薬では治りません!
 
咳喘息を放っておいた人の約3割が本格的な気管支喘息に移行している
というデータが出ていることからも、呼吸器専門医による早めの検査・治療が大事です。

~咳喘息の症状~
咳喘息は就寝時や深夜あるいは早朝に咳が出ることが多いですが、
昼間にだけ咳が出るという方もいます。
また季節によって咳の症状が出る場合もあります。
 
気管支喘息に比べると痰は少ないことが多いですが、
ときどき痰の絡んだ咳が出ることがあります。
 
 
(2)「小児喘息」と「成人喘息」
 
どちらも症状は同じですが、発症の原因に多少の違いがあります。
 
①小児喘息
多くの小児喘息はアレルギーが原因であることが多く、
その約9割が就学前後に発症すると言われています。
 
また、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を併せ持っている恐れがあるため、
喘息の治療と併せて鼻炎の治療も行う必要があります。②成人喘息
成人になってから初めて喘息を発症した場合、ダニやカビ、ハウスダストなどのアレルギーの他に、
強いストレスや過労で体力が落ち、風邪などが引き金になって発症することがあります。
 
40、50代の女性では、更年期の身体の変わり目に過労やストレスが加わって発症したという方や、
風邪だと思って長引く咳を放っておいた結果、喘息になってしまったという方もたくさんいらっしゃいます。
 

 

2.喘息はどうしてなるの?~原因と対処編~

(1)アトピー型喘息と非アトピー型喘息

喘息の症状は気道に起こる慢性的な炎症が原因ですが、
その炎症を引き起こす根本的な原因は様々で、一人ひとり違います。 
そしてその原因は1つだけとは限らず、いくつかが組み合わさっている場合もあるのです。

喘息の原因はアレルギーだけだと思われがちですが、実はそうではありません。
 
喘息のタイプには、大きく分けて2種類あります。
 
一つは、特定のアレルゲンが原因で発症する「アトピー型」
もう一つは、アレルゲンが見つからないのに発症する「非アトピー型」です。
 
どのタイプかは、検査をすることでわかります。
 
 ①アトピー型喘息
ハウスダストやダニなど特定のアレルゲンが原因で発症します。
喘息と診断された患者のうち、小児患者の90%、成人患者の60~70%がこのアトピー型喘息だと言われています。私たちが普段生活している場所には目に見えないさまざまな菌やウィルスが繁殖しており、
それらの異物(=アレルゲン)から体を守るため、人間には「免疫」という防御システムが備わっています。
 
ところが、この免疫システムがなんらかの異常を来すと、体にさまざまな炎症を引き起こしはじめます。
 
これが、「アレルギー反応」です。
 
このアレルギー反応が気道で起こるとアトピー型喘息になりますし、
皮膚に起こればアトピー性皮膚炎、鼻で起こるとアレルギー性鼻炎になります。
 

<アレルゲンの種類>
アトピー型喘息を引き起こすとされているアレルゲンは、
「吸入性アレルゲン」「食物性アレルゲン」「接触性アレルゲン」
に分けることができます。

アトピー型喘息の方の場合、
これらのアレルゲンにほんの少しの刺激を加えただけでも危険な発作につながる恐れがありますから、できるだけアレルゲンを体内に取り込まないことが大事です。
 
自分が何のアレルゲンに反応するのかを知っておき、触れたり食べたりしないようにすることはもちろんのこと、毎日生活する家の中や身の回りはいつも清潔にするようにしましょう。
 
②非アトピー型喘息
アレルギーが原因ではない非アトピー型喘息は、特に中高年の方に多くみられます。
 
では、アレルギー以外の喘息の原因とは、どのようなものなのでしょうか。
 
その原因を特定するのは実はとても難しいのですが、おもに以下のようなものが考えられます。

この中でも、もっとも多いのがウイルス感染によるものです。
 
風邪やインフルエンザが引き金となって咳が止まらなくなり、
本格的な喘息になってしまうこともあるので、くれぐれも注意しましょう。
 
基本的なことですが、予防には外出時のマスク着用や、帰宅時の手洗い・うがいが効果的です。
(自分にピッタリ合うマスクを見つけるには?→マスクのブログへ
 

3.もしかして喘息?と思ったら~自覚症状と病院選び編~

(1)咳が出始めてから、何日くらい経っていますか?
 
咳は、気道内に溜まった分泌物や吸い込んだ異物を気道の外に出そうとするための生態の防御反応です。
 
咳がどのくらいの期間続いているかによって、原因である病気を推測することができます。
 
風邪やインフルエンザなどの感染症が原因で咳が出る場合、発熱や喉の痛みなどの症状と合わせて出ることが多く、1週間~2週間以内に治まることがほとんどです。
 
しかし、2週間以上続くとなると感染症の影響を受けているとは考えにくいため、
風邪による咳の可能性は低くなります。


 
(2)「呼吸器の専門医」を受診しましょう。
 
次の症状にあてはまるものがあるか、チェックしてみてください。


いかがですか?
 
このうち1つでもあてはまったら、喘息をはじめとした呼吸器系の病気にかかっているかもしれません。
 
こんな時は、ふつうの内科や耳鼻科ではなく、呼吸器の専門医を受診することが大切です。
 
なぜならば、一般的な内科や耳鼻科では詳しい検査ができないことや、呼吸器を専門に学んだ医師ではないので正しい診断がされにくく、適切な治療が受けられない場合があるからです。
これ以上症状を悪くさせないためにも、必ず呼吸器専門のお医者さんを受診してください。

お近くの専門医をインターネットで探したい場合、例えば「呼吸器内科 横浜」というように、お住まいの地域を入れて検索してみると良いでしょう。
 

電話番号のご案内

  

4.喘息治療の第一歩は専門的な検査から~検査と診断編~

喘息かそうでないかを判断するためには、複数の検査を行う場合があります。
 
「こんなにたくさんの検査をしないといけないの?」と思われるかもしれませんが、正しい診断のために必要な検査ですから、必ず受けるようにしましょう。
 
当クリニックでは、必要に応じて以下のような検査を行っていきます。
 
①血液検査
②画像検査(レントゲン・胸部CT)
③呼吸機能検査(モストグラフ・スパイロメトリー・FENO)
④気道過敏性テスト
⑤好酸球検査
⑥血液ガス分析
 
それでは、それぞれについて簡単に説明しましょう。
 
①血液検査
喘息などの呼吸器疾患やアレルギー疾患を含め、症状の原因を正確に診断するためにはまず血液の検査をします。
例えば、アレルギーを起こしやすい体質かどうかを調べるためにはIgE抗体という免疫グロブリンを測定します。
アレルギー以外にも血液検査からわかることは多く、感染症が関係していないか、肺炎を起こしていないかなど様々な内容を調べることができます。②画像検査(レントゲン・胸部CT)
肺の病気を正確に診断するために行う検査に、レントゲン検査と胸部CT検査があります。
当院では最新型のCTを備えた専門医療機関と提携しており、当院から直接予約して検査が受けられます
 
~レントゲン検査~
X線を身体の指定部位にあて、通過した情報から疾患の有無を調べる検査です。
肺炎や結核などの感染症、その他の肺の病気について鑑別するために行います。

 
~胸部CT検査※~
身体の周囲からX線をあて、通過した情報をコンピューターで解析し、断層写真をつくります。
この検査ではレントゲン検査よりもたくさんの情報得ることができ、多方向から肺の状況を確認することができるため、肺がんや肺炎などの呼吸器疾患や胸部の腫瘍などを診断するのに用いられます。
※CT検査は横浜市内の提携病院で実施します。


 
③呼吸機能検査(モストグラフ・スパイロメトリー・FENO)
 
~モストグラフ(呼吸抵抗)~
喘息やアレルギー疾患などによって気管が狭くなっていないかどうかを判断することができる検査です。
特定の周波数を用いて呼吸する時の空気の通り具合の変化をみるもので、楽に呼吸するだけで簡単に測定できます。

 
~スパイロメトリー~
呼吸機能をみる基本的な検査です。
スパイロメーターという機械を使って息を大きく吸ったり、大きく吐いたり、勢いよく吐き出したりすることによって、肺活量1秒率など呼吸機能の評価に必要不可欠な値がわかります。


肺活量とは、息を思いっきり吸い込んでから最後まで吐いたときの空気の量のことで、どれだけたくさん息を吸うことができるか、つまりは肺の大きさをみています。
喘息の方の場合、肺活量が低くなることがあります。
1秒率とは、大きく息を吸ってから1秒間にどれだけ勢いよく息を吐くことができるかをみる検査です。
 
~呼気一酸化窒素濃度測定(FeNO)~
喘息やアレルギー疾患で気道に炎症があると、吐いた息に含まれる一酸化窒素濃度の値が上がります。
この値を測ることで喘息かどうかを判断します。


 
④気道過敏性テスト
気道を収縮させる作用のあるアセチルコリンやヒスタミンなどを、濃度を変えながら吸入してもらい、反応を調べます。
低い濃度で収縮するほど気道の過敏性が高く、ごくわずかな刺激でも喘息発作を起こす可能性があるということになります。
 
⑤好酸球検査
好酸球は炎症が起こっているときに増加します。
血液検査などで好酸球の量が増えていたら、喘息やアレルギー疾患などの可能性が高いと考えられます。
 
⑥血液ガス分析
呼吸不全や意識障害などの重いぜんそく発作の時、身体の中に酸素がどれくらい取り込まれているかなどを調べるために、動脈から採血してすぐに計測を行います。
 
発作で過呼吸状態になると、酸素が多く取り込まれる一方で二酸化炭素が多く吐き出されるため、結果として動脈血中の酸素と二酸化炭素の量を調べることで肺の機能が正常に機能しているかどうかがわかります。


 

5.喘息治療を正しく理解しましょう~治療編~

(1)喘息治療の目的ってなに?
 
厚生労働省の「喘息治療のガイドライン」によると、喘息治療の目標は
 
・健常人と変わらない日常生活が送れること
・正常に近い肺機能を維持すること
・夜間や早朝の咳や呼吸困難がなく十分な睡眠が可能なこと
・喘息発作が起こらないこと
・喘息死を回避すること
・治療薬による副作用がないこと
・気道のリモデリングへの進展を防ぐこと

 
が挙げられています。

喘息の治療とは、発作が起きたときに吸入薬を使用するだけでなく発作がないときにも治療を続けて、長期にわたって症状のコントロールをすることです。
 
「発作を改善させる」ことはもちろんですが、
 
「発作を起こさないように日々コントロールすること」こそが、
ぜんそく治療の本来の目的なのです。

 
(2)喘息の治療はいつまで続ければいいの?
 
喘息の治療を始めると徐々に症状が改善してきます。
でも、症状が改善したからもうお薬をやめてもいいかというと、答えは「NO!」です。
 
喘息の治療の目的は「発作を起こさないように日々コントロールすること」でしたね。
 
発作がない・症状がないからといって治療をやめてしまうと、
再度発作が起こったときにお薬を使用しても症状が治まるまでに時間がかかってしまいますし、症状がどんどん悪化してしまいます。
 
残念ながら今の医学を持ってしても、ぜんそくを完治させることは困難です。
 
ですから、みなさんに継続的な通院・治療を行っていくことがとても大切だということを、ぜひ知っておいていただきたいのです。


  
(3)喘息のおもな4つの治療法
 
①薬物治療法
喘息の主な治療法は「吸入ステロイド薬」による薬物治療です。
 
 “ステロイド”というと、「副作用がこわい」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?
 
しかし、喘息の治療に用いられる吸入ステロイド薬は飲むステロイド薬と比べて使用する量が1/1000程度ととても少なく、気道に直接作用するように工夫されています。
 
全身に起こるような副作用はほとんどありませんので、長期にわたって使用することができます。
 
吸入ステロイド薬の普及によって喘息死が急減していることからも、その効果が証明されているのです。
 
勝手に吸入をやめてしまうと炎症は治らず、喘息死のリスクが高まりますから、吸入ステロイド薬は危険なものではないと理解し、医師の管理のもとで正しく使用することが喘息治療の重要なポイントと言えるでしょう。

<吸入薬の種類と使い方>
吸入薬にはいろいろな種類があります。薬によって吸入の仕方が異なり、吸入方法としてはドライパウダー式とエアゾール式が主流となっています。
 
●ドライパウダー式
専用の器具にセットされた粉末状の薬を自分で吸い込んで吸入します。
吸い込むタイミングを合わせたり、スペーサーをつける必要はなく、小型軽量で持ち運びにも便利です。

●エアゾール式
息を吸い込むタイミングに合わせてボンベの底を押して霧状の薬剤を噴射させて吸入します。
こちらも小型なので持ち運びに便利です。

<吸入薬の副作用>
先ほどもお伝えしたように、喘息治療に用いられる吸入ステロイド薬には副作用がほとんどありません。
しかし、
 
・声がかすれる
・口の中の違和感
・口腔カンジダ症
 
など、いくつかの軽い副作用が認められることがあります。
 
これらの副作用は、吸入後にうがいを徹底することや吸入薬をゆっくりと深く吸入すること、食事の前に吸入することなどの工夫で予防することができます。
 
 
②ツボ療法
喘息治療の補助として、東洋医学を応用したツボ療法もあります。
 
人間の身体は五臓六腑から成り、そこを循環するエネルギーの調和によって健康が保たれていると考えられています。
ツボを刺激することによってエネルギーの流れに沿って刺激が伝わり、体内の不調を改善させる方向に導いてくれます。
 
ツボを刺激するにはさまざまな方法がありますが、手軽にできるのは指圧やマッサージでしょう。
 
喘息に効果のある代表的なツボは「大椎」、「天突」、「中府」、「天柱」、「尺沢」、「孔最」です。


ただし、ツボを押すときは力を入れすぎないように注意しましょう。
 
 
③運動療法
薬のコントロールがうまくできていて症状が安定している方は、運動をすることで心肺機能が高まり発作予防につながります。
 
からだを動かすことでストレスも解消できますので、ぜひ取り入れてください。
 
喘息の患者さんに適した運動は、短距離走のような激しい運動よりもウォーキングやジョギングのような有酸素運動が効果的です。
 
決して無理はせず、自分のペースで行いましょう。

~運動がきっかけになって起こる「運動誘発性喘息(うんどうゆうはつせいぜんそく)」に注意!~
急に激しい運動をしたときや、寒い屋外で運動して冷たい空気を吸い込んだときなどによく起こります。
気道が急激に冷えたり、激しく運動することにより気道の水分が失われてしまうことが原因と考えられます。
 
運動誘発性喘息では、運動開始後5〜10分くらいで発作の症状が現れて、運動をやめると30分程度でおさまります。
 
もしも運動誘発性喘息が心配な時は、運動する前に必ず医師に相談してください。
 
 
④心理療法
喘息は心理的な影響を受けやすい病気であると言われています。
 
患者さんが毎日体験する不安や怒り、恐怖などの感情的な興奮が自律神経を刺激して発作に結びつくことが多いからです。
 
また、喘息は治療が長期にわたるため、これがストレスとなって精神的に不安定となり、憂うつな気分になって治療する気持ちを失ってしまうことがあります。


次のような場合、ストレスが原因である可能性が高いと思われます。
 
・まわりの人に発作の苦しみがわかってもらえない
・決まった時間や曜日で発作が起こる
・家族や同僚など、他の人と一緒にいるときに起こりやすい
・「なぜ自分だけがこんな目に」と理不尽に感じ、ついイライラしてしまう
・薬を持っていない時に限って発作が起こる
 
さらに、
 
・発作が感情を抑えているときに起こる
・発作が激しいときにせきに続いて起こる
・息を吐くときより、吸う時の方が苦しい
・自分の将来が不安で毎日が憂うつに感じる
・1日の始まりや新しいことを行う時に起こる場合がある
 
これらにあてはまる場合、心理的な不安や恐怖などのストレスがかかっていると考えられますので、カウンセリングや自律訓練法などの心理療法を併用していただくことがあります。
 
心理療法にもいろいろありますが、誰にでも簡単にできて比較的効果の期待できる方法が自律訓練法です。
くつろいだ姿勢で自分に暗示をかけることで心身の緊張を和らげ、気持ちをリラックスさせることが目的です。

最初は効果がわかりにくいかもしれませんが、慣れてくるとだんだんリラックス効果が得られるようになります。
 
普段からこの訓練法を繰り返し練習しておき、喘息発作の前兆を感じた時など、発作がひどくなってしまう前にぜひ実践してみてください。
 

6.喘息発作を起こさないために~自己コントロール編~

大切なことなので何度も言いますが、喘息の人にとって最も重要なのは、「発作を起こさないように日々コントロールすること」です。

喘息の症状をコントロールするためには、定期的な通院と、患者さん自身の自己管理が欠かせません。

自分の病気や治療法をしっかりと理解し、「自分の健康は自分で守る!」という積極的な気持ちを持ち続けることが大切です。

(1)定期的に通院しましょう

発作はいつもいつも起こるわけでないので、症状が落ち着いた状態が続くと

「もう喘息は治ったんだな」

と思って自分の勝手な判断で通院や薬をやめてしまう方がいます。

しかし、発作が起きないからと言って気管支の炎症が治ったわけではないのです。

そのため、定期的な治療をおろそかにしてしまうと気道の過敏性が増し、わずかな刺激でも発作がおこりやすくなってしまいます。

このような発作をくり返すと、ますます炎症がひどくなり、気道が狭くかたまったまま正常な状態に戻らなくなる「気道のリモデリング」がおこります。

(引用:アステラス製薬(株)・アストラゼネカ(株)HP

この状態になってしまうと、吸入薬をしようしても気管を十分拡張させることが出来なくなり、さらに発作をおこしやすくなるという悪循環に陥ります。

発作を繰り返さないで済む状態を長い間維持して、健康な人と同じような生活を送るためには、定期的な通院を続けていただく必要があります。

長期間に及ぶ治療を続けていくためには、不安や疑問点は医師によく相談し、納得して治療に取り組んでいくことが大切なポイントです。

 
(2)喘息日記を記録しましょう

喘息の治療は長期間に渡りますので、「喘息日記」を使って管理していくと便利です。
当院では、喘息と診断された患者さんに、治療を始める段階でお渡ししています。

喘息日記には、

・喘息の症状
・その他の症状
・ピークフロー値
・薬の使用状況

などを記入していきます。
あらかじめ印刷された表に数値を書き込んだり〇をつけたりするだけの簡単なものなので、毎日続けてみましょう。

※ピークフロー値とは?
喘息の今の状態を知るための、指針となる検査です。
患者さんが自宅で“ピークフローメーター”という器具を使って測定を行います。


使い方はとってもカンタン。

ピークフローメーターを口にくわえ、「フーーッ!」とできるだけ速く息を吐き出しましょう。

これで測定は終わりです。

年齢・性別・身長から割り出した基準値がありますので、朝と夜の1日2回、毎日同じ時間帯に測定して、基準値と比べてみましょう。
もしも気道の炎症が悪くなって気道が狭くなっていると、測定値が低く出ますので、呼吸機能が悪くなっていることが分かります。

ピークフローの値が下がることで、自覚症状よりも先に自分の気道の状態を知ることができ、喘息の悪化にいち早く対応することができます。

ピークフロー値の測定は喘息患者さんにとっては体温を測るようなものですので、毎日の日課にしてしまいましょう。

喘息日記を毎日つけると、いつどんな時に・何がきっかけで発作を起こしたのかなど、喘息の状態を客観的に見ることができますし薬の飲み忘れや飲み過ぎを防ぐことができるという利点があります。

また、医師にとっても喘息日記は大事な情報源になります。
診察の時に毎回医師が確認し、薬が合っているか、症状や発作をコントロール出来ているかをチェックし、今後の治療方針を決める参考にします。

もしも旅先などで急に症状が悪化したときでも、喘息日記が手元にあればスピーディーに治療を受けることができるというメリットもありますので、いざという時のためにも外出の時は常に持ち歩いていると安心です。


 
(3)食生活に気を付けましょう

ある特定の食物がアレルゲンになって、喘息発作を招くこともあります。
特に小児喘息の場合、食物アレルゲンが関与していることが多いです。

代表的なものに、たまご、牛乳、大豆、小麦、そば、魚介類などがあります。食物アレルギーは喘息発作と同時に皮膚症状が現れることが多いため、アレルゲンが何かを比較的簡単に特定することができます。

もしも食事中や食後すぐに発作が出たり症状が悪化したら、食物アレルギーの疑いがあるので、食べたものをメモし、病院でアレルゲンを特定する検査を受けましょう。

特に子どもの場合は重い症状が出て命に関わることがあるので、疑わしい食品がある場合は早めに検査を受けておいてください。

~他にも、こんな食べ物に要注意!~
タケノコ、ほうれんそう、さといも、やまいも、なすなどのアクの強い野菜は気管支の収縮を引きおこすヒスタミンコリンを含んでいるため、食べすぎると気管支の粘膜が刺激され、発作を誘発することがあります。

また、アイスクリームやかき氷などの冷たい食べ物、ラーメンなどの熱い食べ物、唐辛子やカレー粉などの香辛料は気道を刺激するので、あまり食べすぎないようにしましょう。


 
(4)アルコールを控えましょう

アルコールによって誘発される喘息は「アルコール誘発喘息」と言い、特に日本人は欧米人に比べてかかりやすいといわれています。


アルコールは体内に入ると肝臓で分解され、“アセトアルデヒド”という有害物質になります。

アセトアルデヒドは酵素によってさらに分解され、尿や汗などと一緒に体の外に排出されますが、日本人の約半数はアセトアルデヒドを分解する酵素が活発に働かないため、アセトアルデヒドの害を受けやすいのです。

アセトアルデヒドは顔面紅潮や吐き気、頭痛の症状をもたらすだけでなく、ヒスタミンも放出されるため気道粘膜が収縮して発作が起こりやすくなります

また、冷たいビールの一気飲みが気道粘膜を刺激したり、飲んだ後に冷たい夜風にあたることや、酔っぱらって薬を飲み忘れることなども発作の原因に繋がります。

このように、喘息の方は原則として飲酒は控えるべきでしょう。
飲める人でも、飲みすぎには十分注意してください。

 
(5)タバコは絶対にダメ!

タバコには、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、ニコチン、アクロレイン、多還炭化水素など200種類以上の有害物質が含まれます。

これらを吸い込むことによって気道の粘膜が炎症を起こし、煙による刺激やにおいで発作が誘発されるのです。

また、喫煙を続けると吸入薬の効き目が悪くなってしまうこともあります。

このように、喘息の方にとってタバコは何一つ良いことはないのです!

タバコを吸う人はもちろん、吸わない人も注意が必要です。

タバコは、吸う人が吸い込む煙よりも、タバコから流れ出る煙のほうが有害物質が多く含まれるのです。

このタバコから流れ出る煙を吸うことを受動喫煙といいます。

ですから、職場や公共の場などへ行った場合は、なるべくタバコの煙が流れて来るところは避けるようにしましょう。

もしも家族の中に喫煙者がいる場合は、禁煙してもらったり、遠くに離れた場所で吸うようにお願いしましょう。
 

7.もしも発作が起こったら?~緊急時の対処編~

自宅や外出先などで突然喘息発作が起きてしまった場合、
いったいどう対処したら良いのでしょうか。

喘息発作は症状の大きさによって、

①咳や軽い喘鳴があって苦しいけれど、横にはなれる・・・「小発作」
②咳や喘鳴がひどくなり、苦しくて横になれない・・・「中発作」
③苦しくて動けない、会話がよくできない、意識がはっきりしない・・・「大発作」

の3段階に分類することができます。

 
(1)小発作の対処法

小発作が起きた場合、すぐに気管支拡張薬を使用して発作がおさまるのを待つのが基本です。
ピークフロー値が基準値の70%以上に回復した状態で、それが3~4時間続けばひとまずは安心でしょう。

発作がおさまっても喉や胸に違和感がある時は、仕事や家事を中断し、休養するようにしてください。

薬を用いても2時間以内に発作がおさまらない場合や、悪化していく場合には、まよわず病院を受診してください。

 
(2)中発作の対処法

中発作の場合も、小発作の時と同じくまずは安静にし、薬を使いながら様子をみます。

気管支拡張薬を吸入して30分以内に発作が良くなってくるようなら、そのまま吸入を続けます。

20分おきに3回吸入しても症状が改善しなかったり、悪化していく場合には、まよわず病院を受診してください。

薬の効果が出ないからといって、決められた回数以上吸入したり、放っておいたりすると、やがて大発作になることがあります。

薬の使用から1時間を目安に、病院へ行きましょう。

 
(3)大発作の対処法

大発作が起きたときは、一刻も早く病院で治療を受けることが必要です。
直ちに救急車を呼ぶなどして、救急外来を受診してください。

救急車を呼ぶ場合でも、20分おきに気管支拡張薬を吸入することを忘れないでください。

病院はかかりつけ医が一番安心ですが、夜間や休診日の場合は救急外来を利用しましょう。

いざというときに慌てないためにも、事前に夜間・休日に対応してくれる病院をいくつか調べておき、住所や電話番号をすぐ見れる場所に控えておくと安心です。

また、いつどんな時に発作が起きるかわかりませんので、発作時に必要な薬は常に持ち歩くようにしましょう。
薬は実際に使わなくとも、持っているだけで安心できる「お守り」代わりになります。

 
 
~まとめ~
いかがでしたか?
喘息の治療の大切さについて、おわかりいただけましたでしょうか。

喘息と長く根気よく向き合っていく中で、いろいろと心配なことや不安に思うこともあると思います。

そんな時は一人で悩んだり、放り出したりせず、遠慮なく医師や看護師に相談してくださいね。

私たちと一緒に「発作ゼロ」を目指していきましょう!

●喘息は子どもだけでなく、大人になってから発症することもあります。
●「アトピー型喘息」はアレルギー、「非アトピー型喘息」はタバコやストレス等が主な原因です。
●「咳喘息」を放っておくと、「気管支喘息」になる恐れがあります。
●咳が2週間以上続いたら、風邪ではなく呼吸器系の病気の疑いがあります。
●咳が治らず息苦しく感じる時は、内科ではなく「呼吸器専門医」を受診しましょう。
●喘息治療の目的は、「発作が起きないようにコントロールすること」です。
●喘息は継続的な通院と治療が何よりも大切です。
●喘息治療の基本は、吸入ステロイド薬による薬物治療です。
●喘息の発作や症状がおさまったからといって自己判断で薬をやめてはいけません。
●「喘息日記」を毎日記入して、状態を常に把握しましょう。
●アルコールはできるだけ控え、タバコは絶対に辞めましょう。
●季節の変わり目は発作が起きやすくなるので注意が必要です。
●市販されている咳止め薬や風邪薬をむやみに服用しないようにしましょう。
●発作が起こった時どうするかを頭に入れておき、いざという時に慌てないようにしましょう。
●発作時に必要な薬は「お守り」としていつも持ち歩くようにしましょう。

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