インフルエンザを予防する方法とは~医師が解説する流行への備え

監修: 三島 渉(医学博士、横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

毎年、冬になるとインフルエンザが流行します。インフルエンザにかかると、高熱がでて苦しむことが多いです。学校や仕事も強制的に1週間程度休まなくてはいけません。

「なんで、よりによってこんなときに…」
そう困った経験をお持ちの方も多いのはないでしょうか?

今回は、インフルエンザを予防するためにどんなことが有効なのか? 現時点で医学的に効果のあると考えられている方法についてわかりやすくまとめました。

1. インフルエンザが社会的に問題となるのはなぜか

インフルエンザウイルスは、ウイルスに感染している人が咳やくしゃみをしたときに口から飛び出す小さな水滴(飛沫)が他の人の口や鼻、眼などの粘膜に付着して感染します。

インフルエンザウイルスは、口や鼻、眼などの粘膜に付着すると、そこから体の中に入ります。体の中に入ったウイルスは、体の中で細胞内に侵入し増殖します。これを「感染」といいます。

そして、ウイルスが増え始めてから数日立つと、発熱やのどの痛み、鼻水、咳などの自覚症状が出現します。これを「発病」といいます。

多くの患者さんでは自覚症状が出現した後、1週間程度でこれらの症状は改善します。それでは、なぜインフルエンザがこれほど社会的に問題になるのか? それは、肺炎や脳症などを起こして入院が必要になったり死亡する患者さんがいるからです。これをインフルエンザの「重症化」といいます。

こうしたインフルエンザの感染拡大、重症化を防ぐために、学校保健法ではインフルエンザに感染した場合の出席停止期間が法律で定められています。また、社会人の場合にも、法律には定められていませんが、会社ごとにインフルエンザにかかったときの対応が決められているのです。

特にもともと、喘息やCOPDなど呼吸器系の病気をお持ちの方や、糖尿病や肥満、高齢者など免疫力が低下するような状態の方は重症化するリスクが高いと考えられています。

2. インフルエンザワクチン接種をお勧めする理由

厚生労働省は、インフルエンザ対策として重症化予防のためにワクチンを接種することを強く推奨しています。インフルエンザワクチン接種を推奨する最大の理由は、「重症化」を防ぐためです。

平成11年に日本国内で行われた研究では、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者で34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったと報告されています。
(平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))

また、インフルエンザワクチンには「発病」を抑える効果も認められています。

6歳未満のこどもを対象とした研究で、インフルエンザワクチンの発病防止に対する有効率は60%と報告されています。
(平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究」研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学))

このように、インフルエンザワクチンは感染後の発病率を低下させることや発病後の重症化や死亡を防ぐ効果があることが証明されています。

喘息やCOPDなど呼吸器系の病気をお持ちの方や、糖尿病や肥満、高齢者など免疫力が低下している状態の方は必ず接種することをお勧めします。

3. 日常生活でインフルエンザ予防のためにできること

次に、日常生活における注意点についてご説明します。

厚生労働省は日常生活における有効な方法として下記の5つを推奨しています。

  1. マスクなどによる飛沫感染対策
  2. 外出後の手洗い・うがい
  3. 加湿器などの利用で適度な湿度(50~60%)を保つ
  4. 人ごみへの外出をできるだけ控える
  5. 十分な休養とバランスのとれた食事・栄養素摂取

日常生活で大切なことは、まず第一に体調を整えること。そして、免疫力を高めてウイルスに対する抵抗力をつけるとともに、ウイルスに接触しないようにすることです。

先ほどご説明したように、インフルエンザはウイルスに感染している人が咳やくしゃみをしたときに口から飛び出す小さな水滴(飛沫)から感染する飛沫感染をおこします。そこで、できるだけ飛沫を浴びないような対策をとることで、インフルエンザウイルスに感染する機会は大きく減少します。

3-1. マスクなどによる飛沫感染対策

インフルエンザウイルスに感染していても、まったく自覚症状がない(不顕性感染)場合や、発熱がなく軽い風邪症状(鼻水、咳)だけのことがあります。こういった場合には、インフルエンザウイルスに感染していることを感染者本人も自覚していません。

そのため、インフルエンザの飛沫感染対策として、

  1. (1) 咳やくしゃみを他の人に向けて発しないようにひとりひとりが注意する
  2. (2) 咳やくしゃみが出ているときはマスクをするように心がける。とっさの咳やくしゃみでマスクをしていないときは、ティッシュや手で口と鼻を覆い、顔を他人の方に向けない
  3. (3) 鼻水や痰を拭ったり、咳やくしゃみをしたときに使ったティッシュはすぐにゴミ箱へ捨てる。
  4. (4) 手で咳やくしゃみを受け止めた時はできるだけすぐに手を洗う

などを心がけることが重要です。

3-2. 外出後のうがい・手洗い

手洗いやうがいは、手や指、のどについたインフルエンザウイルスを洗い流すことが出来るため、感染を予防するために非常に有効な方法です。インフルエンザに限らず、接触感染や飛沫感染などの感染症対策の基本です。

3-3. 加湿器などの利用で適度な湿度を保つ

インフルエンザウイルスは湿度に弱いため、部屋の中を加湿することは有効な方法です。 
また、室内の空気が乾燥していると、気道粘膜の防御機能は低下するために、インフルエンザウイルスに感染しやすくなります。加湿器などを利用して、適切な湿度(50~60%)を保つことが効果的です。

3-4. 人混みへの外出をできるだけ控える

インフルエンザが流行してきたら、お年寄りやもともと持病がある人、妊婦、疲れがたまっている、睡眠不足などで免疫力が低下しているおそれのある人は、繁華街など人混みへの外出をできるだけ控えることをお勧めします。やむを得ず人混みへ外出しなければいけない場合には、飛沫感染のリスクを低下させるためにマスクをして外出しましょう。

3-5. 十分な休養とバランスのとれた食事・栄養素摂取

自分自身の免疫力を高め、ウイルスに対する抵抗力をつけるためには、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取が大事です。

2014年1月に発表されたCDC(米国疾病予防管理センター)からの報告では、インフルエンザが原因で入院した成人患者の約半数(47%)に肥満が認められていました。したがって、糖質の過剰摂取を控えて肥満を解消することがインフルエンザの重症化を防ぐことにつながると考えられます。

また、2010年に発表された論文では、65歳以上の被験者27名にビフィズス菌末を摂取した群とプラセボ群を比較して、ビフィズス菌末接種群ではインフルエンザワクチンの予防効果が高まったと報告されました(Biosci.Biotechnol.Biochem.2010;74(5):939-945)。

この研究以外にも、腸内環境を整えることで自然免疫が高まり、インフルエンザウイルスをはじめとする感染予防に役立つとの研究が、近年数多く行われています。

また、ビタミンA,C,D等の栄養素は、免疫系の調整に関与しており積極的に摂取することが望ましいという報告もなされています。

4. まとめ

  • インフルエンザは重症化すると入院したり、死亡することがある病気です。
  • インフルエンザワクチン接種によって発病や重症化を防ぐことが出来ます。
  • 日常生活における有効な予防方法として、①マスクをする、②うがい・手洗いをする、③加湿器を使う、④人混みへの外出を避ける、⑤バランスのよい食事と休養 があります。
  • 肥満は免疫力を低下させます。
  • 腸内環境改善が免疫力向上に役立ちます。
  • ビタミンA,C,Dは免疫系調整に関与します。

インフルエンザはありふれた病気ですが、病気にかかって大変な思いをしないように是非、毎年インフルエンザワクチンを接種して、日常生活における注意点に気を付けながら健康な毎日を送ってください。

参考文献
  • 平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院)
  • 平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究」研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学)
  • Biosci.Biotechnol.Biochem.2010;74(5):939-945
電話番号のご案内 電話番号のご案内
当院の診察は完全予約制です
当院の診察は完全予約制です
アクセス
予防接種予約
WEB予約
よくある質問集
求人募集
治験に関するお問い合わせはこちら
糖尿病教室
当院の診察は完全予約制です
アクセス

記事のカテゴリー

横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階