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睡眠時無呼吸症候群と他の呼吸器疾患が合併すると危険な理由

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年02月20日

喘息やCOPDのような呼吸器疾患の患者さんが、睡眠時無呼吸症候群になると、どうなるのでしょうか。

日中、咳や息苦しさに悩まされているのに、夜寝ている間まで呼吸が止まってしまうと思うと、怖いと感じるかもしれません。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と呼吸器疾患の関連性や、合併した時の危険性を説明していきます。

呼吸器疾患を持つ人や、睡眠中にむせたり息苦しさを感じることがある人は、ぜひ読んでください。

1.呼吸器疾患とは


呼吸器疾患とは、上気道・気管・気管支・肺などの呼吸器に関する病気を指します。

代表的な病気は、以下の通りです。

 ・喘息
 ・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
 ・肺炎
 ・肺がん
 ・肺結核

上記のほかにもたくさんの病気があり、身近なものでいうと、風邪やインフルエンザも呼吸器疾患のひとつです。

呼吸器が病気によって障害されてしまうと、肺での酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなったり、空気の取り込み自体に支障が出てきます。

それにより、咳、痰、息苦しさ、胸の痛みなどの症状が現れます。

【参考情報】『呼吸器の病気』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/

◆「呼吸器内科」について詳しく>>

2.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に気道が狭くなったり、呼吸中枢がうまく働かなかったりすることで、無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。

寝ている間の無呼吸を自覚することは難しいかもしれませんが、大きないびきや昼間の眠気が続くようなら、病気の疑いがあります。

◆「いびきと病気」について>>

病院では、疑わしいと判断した場合に検査を行います。検査には、自宅でできる簡易検査と入院が必要な精密検査があります。どちらも寝ている間に終わる検査で、痛みはありません。

睡眠時無呼吸症候群も、呼吸器疾患のひとつです。治療には、寝ている間の呼吸を助ける医療装置・CPAP(シーパップ)を使うことが多いです。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっと詳しく>>

3.睡眠時無呼吸症候群と呼吸器疾患との関連


睡眠時無呼吸症候群と他の呼吸器疾患の関連は強く、それぞれの病気に影響を与え合うことがわかっています。

3-1.喘息との関連

アメリカで実施された「ウィスコンシン睡眠コホート研究」によると、喘息のある人はない人に比べ、睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性が約40%高いという結果が出ています。

【参考情報】『Association between asthma and risk of developing obstructive sleep apnea』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25585327/

喘息が重症であるほど、また喘息にかかっている期間が長いほど、睡眠時無呼吸症候群になりやすいとも言われています。

一方で、喘息の患者さんのうち、睡眠時無呼吸症候群の「診断を受けていない」「治療が十分でない」人は、喘息が悪化する傾向にあります。

睡眠時無呼吸症候群により、夜間に無呼吸や低呼吸を繰り返していると、喘息の症状がうまくコントロールできず、発作を引き起こしてしまう可能性があります。
あまり関係のない別の病気と思わず、積極的に治療を受けましょう。

【参考情報】『Asthma and Obstructive Sleep Apnea Overlap: What Has the Evidence Taught Us?』ATS Journals
https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201810-1838TR

◆「喘息」について詳しく>>

3-2.COPDとの関連

COPDと睡眠時無呼吸症候群を合併すると、COPDのみ、または睡眠時無呼吸症候群のみを発症している人と比べて、死亡率が大幅に高くなります。

COPDの患者さんは、病気のため肺機能が低下しているので、もともと体内の酸素が不足しています。そこに、睡眠時無呼吸症候群が加わると、さらに酸素が不足します。

どちらも酸素不足を引き起こす病気なので、合併すると、さらに酸素不足に拍車がかかります。

すると、不足分の酸素を補おうとして、心臓や肺に大きな負担がかかり、肺高血圧症や心房細動のような病気のリスクが高くなります。

【参考情報】『The Overlap Syndrome』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6298617/#:~:text=The%20overlap%20syndrome%20(OS)%20was,with%20OSA%20or%20COPD%20alone.

特に、肥満のあるCOPD患者さんは、睡眠時無呼吸症候群を合併しやすいのですが、CPAPによる治療によって、合併を予防することができます。

◆「COPD」について詳しく>>

◆「肥満と睡眠時無呼吸症候群の関係」について詳しく>>

その他の呼吸器疾患との関連

その他、睡眠時無呼吸症候群の患者は肺炎の発症率が高いことや、肺がん患者に睡眠時無呼吸症候群が多いことも示されています。

【参考情報】
・『Sleep apnea and risk of pneumonia: a nationwide population-based study』The Canadian Medical Association Journal
https://www.cmaj.ca/content/186/6/415

・『Sleep Disordered Breathing Is Highly Prevalent in Patients with Lung Cancer: Results of the Sleep Apnea in Lung Cancer Study』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30261487/

◆「肺がん」について詳しく>>

4.合併すると危険な理由


喘息やCOPDの患者さんは、病気の影響で、日中も酸素不足の状態です。そこに睡眠時無呼吸症候群が加わると、夜間も酸素が不足します。

酸素不足の状態が続くと、症状である息切れがひどくなり、呼吸が苦しくなってしまう可能性が高くなります。

特に、COPDの患者さんは高齢であることが多いため、加齢による影響で眠りが浅くなり、夜中や早朝に目が覚めてしまうこともあるでしょう。

そこに、睡眠中の無呼吸が加わると、さらに睡眠の質が下がり、心理的なストレスも大きくなります。
そのストレスのために,高血圧,脳卒中,心筋梗塞などの虚血性肺疾患の発生を増加させることもあり、糖尿病,高脂血症もしばしば合併します。

【参考情報】『高齢者の睡眠』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-004.html

◆「睡眠中の酸素不足による悪影響」について>>

5.おわりに

喘息やCOPDと睡眠時無呼吸症候群が合併すると、二つの病気が互いに影響を受け、症状が悪化しやすくなります。

さらに喘息とCOPDも合併しやすいので、最悪の場合、3つの病気が合併することもあり得ます。

【参考情報】『ぜんそくとCOPDの合併』日本医師会
https://www.kagoshima.med.or.jp/people/topic/2007/236.htm

呼吸器疾患を持つ方は、「大きないびき」「昼間の眠気」「夜中に何度も目が覚める」ということが続いたら、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみてください。

早くに治療を開始すれば、重症化を防ぎ、命を守ることができます。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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