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アトピー性皮膚炎を改善するための生活習慣とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年02月15日

アトピー性皮膚炎を悪化させる要因として、ダニ、ホコリ、汗、乾燥、搔爬、物理化学的刺激、ストレスなどが知られています。

この記事では、まずはアトピー性皮膚炎を改善するために一番重要なダニ対策について詳しく説明してから、その他のポイントについても解説します。

1. ダニ対策

アトピー性皮膚炎の発症に強く関係しているのは、チリダニ(ヒョウヒダニ)というダニです。

【参考資料】『Dust mite avoidance for the primary prevention of atopic dermatitis: A systematic review and meta-analysis』NCBI(National Center for Biotechnology Information)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26235650/

ダニのフンや死骸が体の中に入ると、免疫のしくみがそれらを異物(アレルゲン)と判断して、アレルギー反応が起きます。

日本の家の中のチリダニの数は、欧米の10倍~100倍といわれています。それは、日本の湿度がチリダニの繁殖に最適だからです。

チリダニは室温25℃くらい、湿度75%くらいで最もよく繁殖します。例えば、アラビアなどの砂漠が多く乾燥している地域では、チリダニはまず繁殖しません。

【参考資料】『日本家屋のハウスダストに含まれる ダニアレルゲンの変遷』嶋田貴志,安枝浩
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/backno8_pdf33.pdf

残念ながら、家の中からダニを完全になくすことは難しいです。しかし、掃除を行うことによって数を減らすことは可能です。また、掃除をすると、カビや細菌、動物の毛など他のアレルゲンも除去することができます。

ダニやカビは高温多湿な場所を好みます。部屋の風通しを良くし、換気をしてから掃除を始めましょう。

1-1. 寝具

布団はダニの大好きな住みかなので、しっかり掃除しましょう。布団カバーは最低週1回以上、可能なら週2回丸洗いします。布団も週1回以上、できれば週2回天日干ししてから、表面を家庭用掃除機で吸引します。

布団の中身は羽毛、羊毛、綿で特に差はありません。高密度繊維製防ダニ布団カバーの使用も有効です。

使用しない布団は、掃除した後に密封しておくとダニがつかないですみます。枕の中身はプラスチック製が望ましいです。

1-2. 床

最初に拭き掃除、次に掃除機がけの順番で行ってください。これは先に掃除機をかけると、ダニが舞い上がってしまい拭き取れなくなるからです。

掃除機はできるだけ毎日かけるのが望ましいです。使用する製品は家庭用掃除機で十分です。重要なのは掃除機の吸引力ではなく、掃除をする回数です。

床はフローリングが理想的です。絨毯やゴザは避けた方が良いですが、使用する場合は週に2回以上の掃除が必要です。畳も週2回以上の掃除をおすすめします。1平方メートルあたり20秒以上の時間をかけて掃除機で吸い込むことが推奨されています。

ルンバのようなお掃除ロボットは、障害物の少ない部屋に有効です。日常的に動かし、さらに気になるところはハンディクリーナーなどで掃除しましょう。

カーテンは定期的に洗濯をする必要があります。ソファは布製よりも革製・合成皮革の方が望ましいです。

◆「ソファを選ぶポイントと注意点」>>

ぬいぐるみは置かないにこしたことはありません。どうしても置きたい場合は、3ヶ月に1回は洗濯しましょう。またはビニール袋に入れておきましょう。

鉢植えなど観葉植物は室内に置かない方が良いです。ペットも室内では飼わないことをおすすめします。

◆「ペットを飼いたい人の対策と注意点」>>

空気清浄機は部屋全体の吸塵をするものなら有効です。エアコンはフィルターの掃除だけでなく、高圧洗浄をして内部のカビ取りを定期的に行うことが望ましいです。

これらの対策を着実に行うことで、ダニの量は激減します。

2. 食生活に注意する

最近、腸内環境とアレルギーには密接な関わりがあることがわかってきています。

腸内環境を改善しようヨーグルトを積極的に食べている人もいますが、毎日同じ食材ばかり大量に摂っていると、その食材がアレルギーの原因となる恐れもあります。

栄養の偏りを避けるためにも、野菜を中心にいろいろな食材をバランスよく食べましょう。

炭水化物を含む糖質の過剰摂取は、腸内環境のバランスを崩してアレルギーを悪化させるのでおすすめできません。

また、肥満のある人は、皮下脂肪や内臓脂肪から炎症を悪化させる物質が放出されるため、症状がひどくなる傾向があります。

アレルギーの症状がある人は、糖質は控えめに、脂質はオメガ3のような良質な油を選んで、肥満と炎症の悪化を防ぎましょう。

◆「オメガ3系の油でアレルギーを改善」>>

3. 汗対策

汗は、アトピー性皮膚炎の主要な悪化要因です。その一方で、汗は皮膚の保湿のために重要な働きをしており、皮膚の角層バリアの機能維持にも役立っています。

アトピー性皮膚炎の患者さんにとって問題なのは、汗をかくことではなく、汗をかいた後、そのまま放置しておくことです。

汗をかいたときには、下記の対策を行いましょう。

  • シャワーを浴びる
  • 手や足の汗は水で洗い流す
  • おしぼりで拭き取る
  • 服を着替える

4. 衣服などの外的刺激を避ける

アトピー性皮膚炎の患者さんは、硬い生地の服や飾り模様などで凹凸が多い衣服を着ると、皮膚が刺激され症状が悪化することがあります。コットン素材などを用いた、肌触りの良い衣服を着るようにしましょう。

柔らかい生地でも、ひらひらして皮膚に触れるようなものは、痒みの原因となるので注意が必要です。また、汗を吸い取らない生地や温まりすぎる生地などもかゆみを誘発します。

入浴の際は、お湯の温度は37℃~38℃くらいにして、湯船には長時間つかりすぎないようにしましょう。シャワーのみでもかまいません。

体を洗うときは一般的な石けん、ボディソープでよいので、手のひらでこすらず優しく洗いましょう。

頭はシャンプーで毎日洗いましょう。髪を乾かすときはドライヤーを使わず、タオルでしっかり拭きます。薬を塗る場合は、水滴をしっかり拭き取った後に塗りましょう。

5. 日焼けを避ける

日焼け対策でいちばん簡単なの皮膚を布で覆って直射日光を避けることです。日差しの強い季節に屋外で活動するときは、帽子、袖のある洋服、タオルや日傘を取り入れてみましょう。

日焼け止めは日光を浴びる直前に塗ります。軟膏を使っている場合は、軟膏の上から塗ってください。

6. 睡眠をしっかり取る

睡眠が不足していたり、昼夜が逆転するような不規則な生活を送っていると、ホルモンの分泌をつかさどる内分泌系や自律神経系の機能が乱れ、アトピー性皮膚炎の症状も悪化しやすくなります。

睡眠を十分に取り、規則正しい生活を心がけましょう。

7. 精神的ストレスを避ける

強いストレスを受けると、興奮をもたらす交感神経が活発になって、コルチゾールというホルモンが大量に分泌されます。すると、血管が収縮して皮膚の水分量が少なくなり、皮膚が乾燥します。

皮膚が乾燥すると、外からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐバリア機能が低下します。すると、かゆみや湿疹が生じます。

アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、ストレスコントロールはとても大切です。ストレスがたまりにくいような工夫をしたり、ストレスが溜まってしまったときは、早めに発散することが必要になります。

8. おわりに

アトピー性皮膚炎が起きるメカニズムは、いまだに不明な点もたくさんありますが、最近10年ほどでかなり解明が進み、いろいろなことが明らかになってきました。

新しい薬や治療法も誕生しているので、気になる方はアレルギー専門医のいる病院でご相談ください。

◆「必須アミノ酸の特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき」>>

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