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ビタミンCのおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年12月08日
ビタミンC

ビタミンCには、「活性酸素を無害化する」「日焼けを防ぐ」「ストレスや病気への抵抗力を高める」などさまざまな性質があります。

しかし、アレルギーを改善する役割については、あまり知られていないのではないでしょうか。

この記事では、ビタミンCのおもな特徴と、アレルギー性疾患を改善するはたらきについてまとめました。ビタミンCを効率よく摂取する方法も紹介しますので、病気の予防や症状の緩和にぜひ役立ててください。

1.ビタミンCとはどのような栄養素か


ビタミンCは、かつて船乗りたちに恐れられた病気・壊血病(かいけつびょう)を予防する栄養素として有名になりました。

1-1.ビタミンCの歴史的背景

大航海時代の船乗りたちの多くは、冷蔵庫などの保管設備がない船中で長く過ごす中、新鮮な野菜や果物を摂取することができなかったことで、壊血病を発症していました。

壊血病とは、ビタミンCの不足により、血管がもろくなりやすくなったり、コラーゲンというたんぱく質がうまく作られなくなったりすることで、あざができる・皮膚や粘膜、歯肉からの出血・歯が抜ける・貧血・皮膚や毛髪の乾燥などの症状が出る病気です。

【参考情報】『壊血病』日本血栓止血学会
https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=288

さらにビタミンCは、ノーベル化学賞を受賞したライナス・ポーリング博士による、風邪に対するビタミンCの効果の研究によって、一般にも広く知られるようになりました

【参考情報】『Linus Pauling』NobelPrize
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/1954/pauling/facts/

1-2.ビタミンCの働きと多面的な効果

ビタミンCは水に溶ける性質をもち、血液や目の水晶体など体の水分の多い部分で酸化を防ぐ働きをしています。

また、肌や骨の材料となるコラーゲンをつくるために欠かせない栄養素としても重要です。体内でコラーゲンがしっかり作られると、皮膚のハリが保たれ、骨や血管も強くなります。

ビタミンCの主なはたらきや、摂取によって期待できる効果には次のようなものがあります。

 ・コラーゲンの生成を助ける

 ・毛細血管を丈夫に保つ

 ・風邪などの感染症にかかりにくくする

 ・がん予防や抗がん剤副作用の軽減に寄与する可能性

 ・ストレスに対する抵抗力を高める

 ・体内のさまざまな酵素の働きをサポートする

 ・肝臓の解毒作用を助ける

 ・メラニン生成を抑え、シミやそばかすを防ぐ

 ・鉄の吸収を促す

 ・骨の形成を助け、骨粗しょう症や骨折の予防に役立つ

 ・アレルギー症状の改善に関わる可能性

犬や牛といった多くの動物は、体内でビタミンCを合成できます。しかし、人間はこの機能をもっていないため、食事やサプリメントから継続的に摂取することが不可欠です。

◆「ビタミンCで感染症予防!」>>

1-3.ビタミンCが不足しやすい人は?

ビタミンCには、細胞の酸化・老化の原因になる活性酸素を消去する抗酸化作用もあります。

喫煙や飲酒、過度な運動、紫外線を浴びる機会の多い人は活性酸素が増えやすく、その分、ビタミンCが多く消費されます。たとえば、タバコ1本を吸うごとに失われるビタミンCは、25mg以上といわれています。

ストレスを受けやすかったり、喫煙習慣がある方は、特に意識してビタミンCを摂る必要があります。

2.ビタミンCはなぜアレルギー疾患の改善に必要なのか


ビタミンCが不足すると、なぜアレルギー性疾患が悪化しやすくなるのでしょうか。そのメカニズムを説明するにあたって、まずはビタミンCとストレスの関係から解説します。

ストレスを感じると、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。この時、コルチゾールをつくるためにビタミンCが必要になります。

【参考情報】『Cortisol』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22187-cortisol

ストレスを感じる状態が長く続くほど、多くのコルチゾールが必要になるので、その分、体内のビタミンCも大量に消費されます。

【参考情報】『Vitamin C: an essential “stress hormone” during sepsis』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7024758/

また、ストレスが長期間にわたって続くと、コルチゾールの分泌が徐々に減ってしまうことがあり、この状態を「副腎疲労」といいます。

コルチゾールにはアレルギーの炎症を抑える働きもあるため、分泌が不足してしまうと、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患の悪化につながってしまいます。

つまり、なるべくストレスを避けてビタミンCを十分に摂取することで、体内で分泌されるコルチゾールが減らない状態を維持することができ、その結果、アレルギーの症状を抑えることができるのです。

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3.ビタミンCを効率よく摂取する方法


ビタミンCは、必要量の個人差がとても大きい栄養素です。どのぐらいの摂取量が最適かは、発熱や炎症の有無、ストレスの強さなどの影響で大きく異なります。

3-1.ビタミンCの必要量と注意点

推奨されるビタミンCの1日の摂取量は成人で100mgとされていますが、これは欠乏を防ぐための最低限の量です。

体調を整えたり、免疫力を高めたりする目的で利用される栄養療法では、1,000mg以上の摂取が必要になることがあります。

特に、強いストレス下にある人、喫煙者、慢性的な炎症を抱える人、感染症にかかっている人などは、体内でビタミンCが急速に消費されるため、より多く必要とされます。

ビタミンCは水溶性で余分な分は尿として排泄されるため、通常の範囲での過剰摂取による重い副作用はほとんどありません。

ただし、1度に大量に摂ると下痢や腹部の不快感が起こることがあります。

また、腎機能に問題がある人や、もともと腎結石を起こしやすい体質の人は、大量摂取によって結石リスクが高まる可能性があります。

【参考情報】『腎疾患とビタミンC』日本ビタミン学会
https://www.vitamin-society.jp/wp-content/uploads/2023/03/c9b1033fd43db1f691b830321fbc8c4f.pdf

サプリメントや高濃度製剤を使う場合は、事前に医師に相談することが重要です。

3-2.食事で摂取する

◆ビタミンC含有量

出典:文部科学省 食品成分データベース (https://fooddb.mext.go.jp/

ビタミンCを多く含む食品には、レモン、イチゴ、キウイ、柿などの果物、赤ピーマン、ブロッコリー、芽キャベツといった野菜があります。

特に赤ピーマンやブロッコリーは含有量が多く、日常の食事に取り入れやすいのが利点です。

果物は手軽ですが糖質が比較的多いため、継続的に摂る場合は野菜中心の方が適しています。

ビタミンCは水に溶け出しやすく、加熱によっても分解されやすいという特徴があります。

そのため、栄養を無駄なく摂るには、煮汁ごと食べられるスープやポトフ、ミネストローネが向いています。

また、蒸し調理は水に接する時間が短いため、ビタミンの損失を抑えるのに適した方法です。

電子レンジ加熱も短時間で済むため、比較的ビタミンが残りやすい調理法です。

さらに、ビタミンCは切ったまま放置していると、空気に触れて分解が進む性質があります。

調理前に必要以上に細かく刻まないこと、調理後は早めに食べることもポイントです。サラダで食べる場合は、食卓に出す直前に切る方が栄養が保たれます。

もう一つ覚えておきたい点として、ビタミンCは水溶性で体に蓄えておけないため、一度に大量に摂るよりも、毎食少しずつ補う方が効率的です。

たとえば、朝にフルーツ、昼にサラダ、夜に温野菜やスープといった形で分散させると吸収効率がよくなります。

調理法の選択、切り方、摂るタイミングを工夫するだけでも、食事からのビタミンC摂取量は大きく変わります。

◆「アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係」>>

3-3.サプリメントで摂取する

ビタミンCは水溶性なので、摂取後数時間でほとんどが尿として流れ出てしまい、血中濃度が下がってしまいます。ですから、少量を数時間おきに摂るのが理想です。

しかし、一日に何度も野菜や果物を食べるのはなかなか大変なので、手軽に摂取できるサプリメントを利用するのも有効であるといえます。

信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。

GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。

【参考情報】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp

3-4.ビタミンCと一緒に摂りたい栄養素

ビタミンCと組み合わせることで相乗効果が期待できる主な栄養素を紹介します。

<鉄(特に非ヘム鉄)>
ビタミンCは鉄の吸収を助け、特に野菜や大豆製品に含まれる非ヘム鉄の吸収率を高めます。

◆「鉄」についてくわしく>>

<ビタミンB群>
エネルギー代謝やストレス耐性に関わるグループ。ビタミンCと一緒に摂ることで代謝全体の効率が上がりやすくなります。

◆「ビタミンB群」についてくわしく>>

必要に応じて組み合わせると効率が高まり、体調維持に役立ちます。

4.おわりに

ビタミンCが不足すると、病気に対する抵抗力が下がって風邪などの感染症にかかりやすくなったり、肌のハリやツヤが失われてしまいます。また、副腎が弱ることで、アレルギーの症状が出やすくなります。

「風邪をひきやすい」「ストレスが強い」「歯ぐきから血が出る」など、ビタミンCが不足しているサインに気づいたら、ビタミンCが豊富な食材を増やしたり、サプリメントを摂取して体調を整えてください。

自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。

◆「当院の栄養カウンセリングについて」>>

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