なぜ糖尿病にキノコが良いの?血糖値を抑える理由とおすすめ調理法

糖尿病の方に積極的に食べてほしい食材、それは「キノコ!」
キノコにヘルシーなイメージはすでにあるかと思いますが、なぜそんなにキノコは体にいいのでしょう?
この記事では、「なぜキノコが糖尿病に良いのか」というメカニズムはもちろん、「1日どれくらい食べればいいの?」「洗わないって本当?」といった実践的な正しい食べ方について徹底解説します。
1.キノコの食物繊維で糖質の吸収を抑える
食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と溶けにくい「不溶性食物繊維」がありますが、キノコにはどちらも含まれています。
このうち、なめこに豊富に含まれる「水溶性食物繊維」は、水に溶けるとゲル状(ゼリーのように柔らかくてプルプルした状態)になり、胃の中で食べ物を包み込みます。
この作用によって、糖質やコレステロール、塩分の吸収を抑える効果があります。
食事の際にキノコを最初に食べると、その後に摂取する糖質の吸収が抑えられ、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
糖尿病の方に「まず野菜を食べる」ことが勧められるのも、このような水溶性食物繊維の働きがあるからなのです。
【参考情報】『Fiber: The Carb That Helps You Manage Diabetes』CDC
https://www.cdc.gov/diabetes/healthy-eating/fiber-helps-diabetes.html
1-1.キノコに含まれるβ-グルカンの血糖コントロール効果
キノコに含まれる水溶性食物繊維の一種である「β-グルカン」は、血糖値の上昇を緩やかにする働きがあることが研究で明らかになっています。
β-グルカンは、胃の中で粘り気のある状態になることで、食べ物の胃から小腸への移動をゆっくりにします。
これにより、糖質の吸収スピードが緩やかになり、食後の急激な血糖値上昇を抑えることができるのです。
特にまいたけに多く含まれるβ-グルカンには、免疫機能を高める効果だけでなく、血糖値や血圧、コレステロールを下げる効果も期待されています。
また、まいたけに含まれるSX-フラクションという特有の成分は、インスリンの働きを助ける効果があることが報告されています。
【参考情報】『食用きのこにおけるβ-グルカンについての一考察』新潟県立大学
https://www.unii.ac.jp/seikatsubunka/journal/backnumber/29/29-2.pdf
1-2.キノコのエルゴチオネインで細胞を守る
キノコには「エルゴチオネイン」という強力な抗酸化物質が含まれています。
エルゴチオネインは、ヒラタケ、まいたけ、エリンギなどに豊富に含まれるアミノ酸の一種で、人間の体内では作ることができません。
そのため、食事から摂取する必要があります。
抗酸化作用とは、体内で発生する「活性酸素」という物質を取り除く働きのことです。
活性酸素は、細胞を傷つけて老化やさまざまな病気の原因になります。
糖尿病の方は、高血糖によって体内で活性酸素が多く発生しやすい状態にあるため、エルゴチオネインのような抗酸化物質を積極的に摂取することが重要です。
エルゴチオネインは細胞内のミトコンドリア(エネルギーを作る場所)に集まり、細胞を酸化から守る働きがあります。
また、最近の研究では、エルゴチオネインが認知症の予防にも効果がある可能性が報告されています。
【参考情報】『キノコ由来抗酸化物質エルゴチオネインの畜水産業用資材化の検討』農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kankyo/seisaku/s_midorimizu/pdf/h24s20.pdf
2.キノコに含まれる主な栄養素と働きについて
糖尿病の食事管理では、血糖コントロールを支える栄養素をバランスよく摂ることが大切です。
実はキノコには、代謝やミネラル補給に役立つ成分が豊富に含まれています。
ここでは、その具体的な働きを解説します。
【参考情報】『Vitamins and Minerals』U.S. National Library of Medicine
https://medlineplus.gov/vitaminsandminerals.html
2-1.キノコのビタミンBで糖をエネルギーに変える
キノコには、ビタミンB1、B2、ナイアシンなどのビタミンB群が、比較的豊富に含まれています。
これらのビタミンB群は糖質の代謝に関わり、体内でブドウ糖をエネルギーに変える重要な役割を果たします。
ビタミンB群が不足すると、体内でブドウ糖がうまく代謝できず血糖値が上がりやすくなるため、特に糖尿病の方にとって欠かせない栄養素です。
2-2.尿に排出される亜鉛をキノコで補う
キノコには、カリウムやリンなどさまざまなミネラルが含まれています。
その中でも「亜鉛」は、糖尿病の人にとって重要なミネラルです。
糖尿病の人は、健康な人に比べて尿中に多くの亜鉛が排出されるので、亜鉛は積極的に摂取したい栄養素です。
亜鉛は、特に干し椎茸などの「干したキノコ」に多く含まれています。
2-3.キノコに含まれるカリウムの働き
キノコにはカリウムも豊富に含まれています。
カリウムは細胞内液の浸透圧を調節し、神経や筋肉の正常な働きを保つ重要なミネラルです。
特に注目すべきは、カリウムがナトリウム(塩分)を体外に排出しやすくする作用があることです。
糖尿病の方は、高血圧を合併しやすく、塩分の摂り過ぎに注意する必要があります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人1人1日当たりのカリウム摂取の目標量を、男性3,000mg以上、女性2,600mg以上としています。
キノコを日常的に食べることで、カリウムを効率よく摂取し、塩分の調整に役立てることができます。
3.キノコの効果的な食べ方・調理法について
キノコの栄養を最大限に活かすためには、食べ方やタイミングも重要です。
以下のポイントを押さえて、キノコを毎日の食事に取り入れましょう。
3-1.1日の適量は50~100g程度
キノコは低カロリーで栄養豊富な食材ですが、食べ過ぎは消化不良を起こす可能性があります。
1日の適量は50~100g程度です。
100gの目安は、えのきやエリンギ、ぶなしめじなら1パック程度、しいたけなら軸を取り除いて10枚程度、マッシュルームなら10個程度です。
厚生労働省の「野菜は1日350g食べましょう」という指針では、キノコや海藻も野菜の仲間として350gの中に含めて考えます。
【参考情報】『野菜は1日350g食べましょう』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/pdf/03-d-04.pdf
3ー2.キノコは洗わずに調理する
キノコに含まれるビタミンB群やカリウムは水溶性のため、水で洗うと栄養素が流れ出てしまいます。
また、水分を含むと風味も落ちてしまいます。
キノコは基本的に清潔な環境で栽培されているので、汚れが気になる場合は、湿らせたキッチンペーパーで軽く拭き取る程度にしましょう。
3-3.煮汁ごと食べる調理法を選ぶ
キノコを煮物にすると、水溶性の栄養素が煮汁に溶け出してしまいます。
栄養を逃さず食べるのであれば、スープやみそ汁、あんかけなど、煮汁ごと摂取できる料理にすると効率的です。
また、炒め物にする場合は、強火で手早く調理することで、水分と一緒に栄養素が流れ出るのを防ぐことができます。
3-4.冷凍保存で栄養とうま味をキープ
キノコは冷凍しても栄養素の多くが保持されます。
特にビタミンB群、食物繊維、カリウムなどの栄養素は、冷凍後もほとんど失われません。
さらに、冷凍することでキノコの細胞組織が壊れ、加熱調理した際にうま味成分のグアニル酸が生成されやすくなり、うま味が増すという利点もあります。
冷凍方法は簡単です。
キノコは洗わずに石づきを取り、食べやすい大きさにカットまたはほぐして、フリーザーバッグに入れて冷凍庫で保存します。
使う時は解凍せず、凍ったまま調理するのがポイントです。
【参考情報】『Freezing and Food Safety』U.S. Department of Agriculture
https://www.fsis.usda.gov/food-safety/safe-food-handling-and-preparation/food-safety-basics/freezing-and-food-safety
4.主なキノコの種類と含まれる栄養分
この章では、スーパーでよく見かけるキノコの特徴と、その中に含まれる主な栄養分を紹介します。
4-1.しいたけ
日本料理でよく使われる香り豊かなキノコ。
生しいたけと乾燥しいたけがあり、乾燥しいたけはうま味成分であるグアニル酸が豊富。
<主な栄養分>
・ビタミンD(特に乾燥しいたけに多い)
・食物繊維
・ビタミンB群(ナイアシン、パントテン酸など)
4-2.ぶなしめじ
クセが少なく、どんな料理にも使いやすいキノコ。
<主な栄養分>
・ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2など)
・食物繊維
・カリウム
4-3.えのきたけ
シャキシャキした食感がある細長いキノコ。
<主な栄養分>
・ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2など)
・食物繊維
・ビタミンD
おすすめの食べ方:「えのきたけとわかめのスープ」
えのきたけの食物繊維と、わかめの水溶性食物繊維(アルギン酸)を一緒に摂ることで、食後の血糖値の上昇をゆるやかにする食事づくりに役立ちます。
えのきを軽く切ってわかめと一緒にスープに入れるだけで作れるため、忙しい日でも取り入れやすい一品です。
食事の最初に温かいスープとして取り入れるのもおすすめです。
4-4.まいたけ
香りと食感が楽しめるキノコ。
<主な栄養分>
・食物繊維
・ビタミンD
・カリウム
おすすめの食べ方:「まいたけと豆腐の和え物」
まいたけの食物繊維と、豆腐のたんぱく質を一緒に摂ることで、満腹感を得やすくなります。
電子レンジで軽く温めた まいたけと豆腐に、ポン酢やしょうゆを少量かけるだけで簡単に作れます。
主食を食べる前の副菜として取り入れると、食べ過ぎ防止にもつながります。
4-5.エリンギ
弾力と歯ごたえのある肉厚なキノコ。
<主な栄養分>
・食物繊維
・ビタミンB群(ナイアシン、パントテン酸など)
・カリウム
4-6.なめこ
滑らかな食感があるキノコ。みそ汁に使われることが多い。
<主な栄養分>
・食物繊維
・ビタミンB群(ナイアシン、ビオチンなど)
・カリウム
おすすめの食べ方: 「なめこおろし(大根おろし和え)」
大根に含まれる消化酵素「ジアスターゼ」と、なめこの食物繊維を一緒に摂ることで、よりスムーズな消化・吸収を助けます。
サッと湯通しするだけで食べられるため、副菜(小鉢)として「食事の最初」に食べるのに適しています。
4-7.きくらげ
コリコリした食感のキノコで、中華料理によく使われる。
<主な栄養分>
・食物繊維
・ビタミンD
・カルシウム
4-8.マッシュルーム
洋食に使われることが多いキノコ。新鮮なものは生でも食べられる。
<主な栄養分>
・食物繊維
・ビタミンB群(ビタミンB2、ビタミンB6など)
・カリウム
【参考情報】『Mushrooms』Harvard T.H. Chan School of Public Health
https://nutritionsource.hsph.harvard.edu/food-features/mushrooms/
5.おわりに
キノコの種類は60,000種を超えると言われています。
その中で食用きのことされているのはおよそ200種類ほど。
スーパーで知らないキノコをみつけたら買ってみると、さらにキノコのレシピが広がるかもしれません。
キノコのおいしさを味わいながら、血糖値も上手にコントロールして、糖尿病の進行を抑えていきましょう。











