ブログカテゴリ
外来

オメガ3系の油でアレルギーを改善

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年12月11日

最近人気の「サバ缶」ですが、サバには「オメガ3系」の油が多く含まれています。

オメガ3系の油には、動脈硬化を防ぐ効果や、花粉症などアレルギーの炎症を抑える効果があることがわかっています。

1.オメガ3系の油は、体内でつくることができない


オメガ3系の油には、アマニ油やえごま油、クルミなどに含まれるαリノレン酸と、サバやイワシなどの青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)があります。

例えばオレイン酸など、油の種類によっては体内で合成できるものもありますが、オメガ3系の油は体内でつくることができません。

同じく体内で合成できない油としてはオメガ6系の油もありますが、こちらは外食や惣菜、スナック菓子によく使われているので、意識しなくても十分な量が体内に入ってきています。

オメガ6系の油も体にとって必要なものではありますが、摂り過ぎると花粉症などのアレルギーや炎症が起こりやすくなるので、わざわざ意識して摂る必要はありません。

逆にオメガ3系の油は、昔に比べて日本人が魚を食べなくなったこともあり、かなり不足しているといわれています。

【参考情報】『不飽和脂肪酸』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00004194

2.オメガ3系の油を摂るメリットはこんなにある


オメガ3系の油を摂ると、次のようなメリットがあります。

(1) DHAやEPAには中性脂肪を下げる効果があることが認められています。そのため、高脂血症の薬や特定保健用食品(トクホ)にも使用されています。

【参考情報】『エパデール』KEGG MEDICUS
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00004194

【参考情報】『ロトリガ』KEGG MEDICUS
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060775

(2) オメガ3系脂肪酸には、血管の柔軟性を高め、動脈硬化を防ぐ作用があります。DHAには赤血球の成分を柔らかくするはたらきがあり、EPAには血小板が血管の中で固まるのを防ぐ作用があります。

【参考情報】『NAD+ Levels are Augmented in Aortic Tissue of ApoE-/- Mice by Dietary Omega-3 Fatty Acids』AHA Journals
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/ATVBAHA.121.317166

(3) DHAは脳の神経細胞を活性化させるために必要な栄養素です。特に成長期にDHAを摂ると、子どもの脳の発育にいいといわれています。厚生労働省の「妊産婦のための食生活指針」には、「n-3(オメガ3)系脂肪酸は胎児の神経系器官形成に必要」「DHAやEPAなどの摂取が少ないと早産、低体重児出生のリスクが高くなる」と書かれています。

【参考情報】『妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針』国立健康・栄養研究所
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/ninsanpu/

(4) 順天堂大学大学院医学研究科生化学・細胞機能制御学の研究グループの論文で、オメガ3系脂肪酸を摂ることで、アレルギー性結膜炎(花粉症)を改善させるメカニズムの解明に成功したと報告がありました。花粉症によるアレルギー症状に悩んでいる人には期待がもてる発表です。

【参考情報】『Dietary ω-3 fatty acids alter the lipid mediator profile and alleviate allergic conjunctivitis without modulating Th2 immune responses』FASEB Journals
https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1096/fj.201801805R

3.体に良い油でも、酸化すると細胞を傷つける


オメガ3系の油には、さまざまなメリットがあることがわかっていますが、ひとつ弱点があります。それは「酸化しやすい」ことです。

油を高温で加熱したり、日の当たる場所に置いておくと、空気中の酸素と反応して酸化します。酸化した油は色や味が悪くなったり、嫌な臭いがするようになるだけではなく、摂取すると体の酸化にもつながってしまいます。

体に良い油も酸化すると、逆に細胞を傷つける「過酸化脂質」となってしまい、がんや動脈硬化などを引き起こす原因となります。ですから、アマニ油やえごま油は冷蔵庫の中など日の当たらない場所に置き、開封したら1カ月以内を目安に使い切って酸化を防ぎましょう。

魚に含まれるEPAやDHAも時間とともに酸化するため、長期間冷凍保存していた魚や、調理してから長い時間が過ぎた魚は、あまり食べない方がいいでしょう。

【参考情報】『食用油の劣化について』サイエンスなび | さいたま市 健康科学研究センター
https://www.city.saitama.jp/sciencenavi/kurashi/001/p008623.html

4.オメガ3系の油を効率よく摂取する方法


不足しやすいオメガ3系の油を効率よく摂るには、油の種類と魚の種類を選ぶこと、そして調理法が重要なポイントとなります。

4-1.食事のポイント

オメガ3系の油は酸化しやすいので、揚げ物や炒め物などの調理には向いていません。アマニ油やえごま油は加熱せずにドレッシングやたれの材料とするか、納豆やヨーグルトなどにそのままかけて食べてください。

食べる分量は、1日に小さじ1杯くらいにしましょう。オメガ3系の油は体に良いものですが、やはり油なのでカロリーが高く、食べ過ぎると太ってしまいます。一度にたくさん食べるのではなく、毎日少しずつ、こまめに摂取しましょう。

魚に含まれるDHAやEPAも熱に弱いため、お刺身やお寿司、カルパッチョなど、生で食べるレシピだと効率的に摂ることができます。加熱するなら鍋やスープ、ホイル焼きなど、魚から出た汁も一緒に食べられる調理法がおすすめです。サバやイワシの缶詰を食べる時は、汁も捨てずに料理に活用すると、よりいいでしょう。

妊娠している人が魚を食べる時は、厚生労働省の注意事項を参考にして、魚の種類と量に気をつけてください。マグロなどの大型魚には、水俣病で知られるメチル水銀が含まれていることがあり、食べ過ぎるとお腹の中の赤ちゃんに影響を及ぼします。

【参考情報】『魚介類に含まれる水銀について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/

4-2.サプリメントの選び方

食事からオメガ3系の油を摂るのが難しい人や、健康のため意識して補給したい人は、サプリメントを利用する方法もあります。例えば、以下のような人は、サプリメントを活用するといいでしょう。

・魚が苦手な人
・外食や惣菜を利用することが多い人
・高血圧、糖尿病、悪玉コレステロールが気になる人
・花粉症などアレルギーの症状に悩んでいる人

サプリメントを買うときは、オメガ3系の油が入っている量や添加物をチェックしましょう。残念なことですが、一般に市販されているサプリメントの中には、含まれている有効成分が極端に少ないものや、添加物だらけのものもあります。

信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。

5.おわりに

サバ缶が体によいからといって、毎日サバ缶ばかり食べていると飽きてしまいますし、塩分を摂り過ぎてしまう恐れもあります。

また、毎日同じものばかり食べていると、免疫のシステムがその食べ物を「異物」とみなしてしまい、食物アレルギーを起こすことがあります。オメガ3系の油を摂ることは大事ですが、サバやイワシばかりを食べるのではなく、いろいろな食べ物から摂ることを心掛けましょう。

◆「アレルギーと腸内環境」について>>

自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。

◆「栄養カウンセリング」について>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階