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たんぱく質をたっぷり摂って美と健康を

執筆者: わたなべゆうか(管理栄養士)
最終更新日 2022年10月19日

たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されている栄養素ですが、そのうち9種類は体内で合成できません。

ですから、食事のたびに必ず食べて補給する必要があります。



1.たんぱく質は「毎食」必ず摂ってほしい栄養素


たんぱく質は脂肪とは違い、体内に貯めておくことはできない栄養素なので、朝・昼・晩3回の食事で毎回必ず摂るのが理想です。

食事で十分な量が摂取できないと、体力や筋力が落ちるだけではなく、以下のようなことが起こる可能性があります。

 ・太りやすくなる
 ・体がむくみやすくなる
 ・傷が治りにくくなる
 ・肌や髪がパサつく
 ・体が冷える
 ・気分がふさぐ

十分な量のたんぱく質を摂っていても、胃腸のはたらきが悪いと効率よく消化吸収できないため、結果として不足することもあります。

【参考情報】『たんぱく質』eーヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html

2.食事をしてもたんぱく質が不足する3つの理由


厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、意外にもたんぱく質の摂取量は戦後間もない1950年代と同じ水準にまで下がっています。その理由は3つ考えられます。

2-1.間違ったダイエット

最近は、ごはんやパンなどの主食を控える糖質制限によるダイエットが広まっていますが、今でも昔ながらのカロリー制限によるダイエットをしている人は、ついサラダだけで食事を済ませたり、食事の量を極端に減らしたりと、たんぱく質が足りない食生活を送っているのではないでしょうか。

中には「肉を食べると太る」と思い込んで人もいるかもしれません。しかし、たんぱく質が不足すると代謝が下がるので、かえって太りやすくなることを覚えておいてください。

ただし、霜降り肉など脂肪の多い肉や、とんかつなど油を大量に使ったメニューはダイエットには向いていません。体重を落としたい人は、赤身肉など脂肪の少ない肉を選び、「サッと焼く」「ゆでる」「蒸す」など油や砂糖を控えたレシピで食べましょう。

2-2.加齢で食が細くなる

高齢になって食が細くなるのは自然なことですが、そのため健康を維持するために必要な栄養素を食事で摂ることができず、たんぱく質が不足することがあります。また、歯が悪くなったり、食べ物を飲み込む力が弱くなることで、肉を食べなくなる人もいます。

食事の量が減ったり、肉を食べなくなることでたんぱく質が不足すると、筋肉が衰えて体が弱くなり、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋力低下)という状態になる恐れがあります。こうなると、ちょっとした段差でもつまずいて転んだり、骨折しやすくなります。

【参考情報】『フレイルの意義』日本老年医学会
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_6_497.pdf

食事で十分な量のたんぱく質が摂れない人は、チーズやヨーグルトなどたんぱく質の豊富なおやつを食べたり、サプリや栄養補助食品で補うといいでしょう。ただし、おいしいからといっておやつや栄養補助食品ばかり食べていると、さらに食事の量が減ってしまうので注意しましょう。

◆「管理栄養士が教える 血糖値に影響が出にくい間食」>>

2-3.安くて手軽な食品への依存

仕事や育児で忙しいからと、ついコンビニのおにぎりや菓子パンで食事を済ませることはありませんか? ラーメンや丼物もそうですが、安くて手軽に食べられるメニューは糖質中心のものが多いので、そればかり食べていると栄養が偏ってしまいます。

まずは、市販のゆで卵やサラダチキンをプラスしたり、サバ缶やツナ缶などの缶詰を利用して、糖質中心の食事にたんぱく質をプラスしてみましょう。ちくわ、かまぼこなどの練り製品や、さきいか、チー鱈などの珍味も、手軽に食べられる上に魚介類が原料なのでたんぱく質が豊富です。しかし塩分も多いので、食べ過ぎないようにしましょう。

3.プロテインのウソ・ホント


手軽にタンパク質を摂りたい人は、プロテインのパウダーや、プロテイン入りの栄養補助食品を利用する方法もあります。

プロテインは良質なものを選べば、脂肪やカロリーを抑えてたんぱく質を効率よく摂取することができます。しかし、製品の選び方や摂り方によっては、かえって健康によくないこともあります。

3-1.摂ると太るのか

食事で十分な量のたんぱく質を摂取している人が、さらにプロテインを摂って運動しなければ、余った分が体脂肪として蓄えられます。しかし、たんぱく質の摂取量が足りていない人が、プロテインパウダーや栄養補助食品で不足分を補うのは問題ありません。

しかし、おやつ感覚で手軽に食べられるプロテインバーやプロテインゼリーは、おいしく食べやすくするために糖分や添加物が加えられています。ですから、食べ過ぎるとカロリーを摂り過ぎてしまいます。また、プロテインパウダーを牛乳やジュースで溶いて飲めば、やはりその分、カロリーが高くなります。

3-2.内臓に負担がかかるのか

食べ物から摂取したたんぱく質がアミノ酸に分解され、また新しくたんぱく質がつくられる時、アミノ酸の成分の一部が毒性の強いアンモニアとなります。アンモニアは腎臓を経て毒性の少ない尿素となり、尿と一緒に排泄されます。

腎臓の機能が落ちてい人は、このサイクルが負担となってしまうので、たんぱく質の摂取量を制限する必要があります。腎臓病や糖尿病と診断された人は、プロテインパウダーやプロテイン入りの栄養補助食品を摂取する前に、かかりつけの医師や薬剤師、栄養士に相談しましょう。

健康な人は、たんぱく質の摂り過ぎで内臓に負担がかかることを気にする必要はありません。

3-3.腸内環境が悪化するのか

肉をたくさん食べたり、プロテインパウダーを積極的に摂るようにしてから、オナラが臭くなったと感じる人も多いようです。

動物性たんぱく質を大量に摂取すると、腸内に棲む悪玉菌の好きなエサが増えるため、腸内環境が悪化しやすくなります。しかし、食物繊維を十分に摂れば善玉菌が増え、腸内環境のバランスが戻ります。

また、プロテイン入りの栄養補助食品の中には、サッカリン、スクラロース、アスパルテームなどの人工甘味料が含まれている製品もあります。この人工甘味料が、腸内細菌のバランスを崩す可能性を示唆する研究結果が報告されています。

【参考情報】『Effects of Sweeteners on the Gut Microbiota: A Review of Experimental Studies and Clinical Trials』NCBI
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6363527/

人工甘味料が腸内環境に及ぼす影響は、まだ不明な点も多いのですが、もしプロテイン入りの栄養補助食品を利用してお腹の調子が悪くなったら、人工甘味料が入っていない製品に切り替えて様子をみることをおすすめします。

◆「感染予防には腸内環境が大事」>>

多くのプロテインは、牛乳由来の成分や大豆を原料としています。乳成分や大豆のアレルギーのある人は、アレルギーを引き起こす原料が入った製品を避けてください。

4.たんぱく質を効率よく摂取する方法


たんぱく質は、まずは食事でしっかり補うこと。その上で、不足分をプロテインや栄養補助食品で摂取するのが効果的です。

4-1.食事のポイント

毎回、食材のたんぱく質量をきっちりはかりながら食事をするのは現実的ではありません。そこで役立つのが、手のひらサイズで必要な量を把握する方法です。1回の食事で、肉・魚・卵・豆類(豆腐や納豆を含む)をすべて合わせて、手のひらに乗るくらいの量になればOKです。

たんぱく質は、肉だけ、魚だけなど特定の食材にかたよらず、いろいろな食材から摂ることを心掛けてください。同じ食材ばかりを食べていると、免疫の仕組みがその食材を「異物=敵」とみなして攻撃し、アレルギーの症状を引き起こすことがあります。

4-2.プロテインの選び方

プロテインには、牛乳を原料としたホエイプロテイン、カゼインプロテインと、豆類を原料としたソイプロテイン、ピープロテインがあります。

ホエイプロテインは、筋トレや運動直後の筋肉修復のため、たんぱく質を補給したい人に向いています。カゼインプロテインは腹持ちがよいので、間食として利用したり、就寝前におなかが空いてしまった時に摂取するのに適しています。

ソイプロテインも腹持ちがよいので、間食として利用するのに向いています。また、大豆イソフラボンが含まれているので、更年期症状に悩んでいる人や骨密度を保ちたい人、美肌効果を期待する人に人気があります。エンドウ豆を原料とするピープロテインは、アレルギーを起こしにくいので、乳製品や大豆のアレルギーがある人でも利用できます。

◆「アレルギーと腸内環境」について>>

信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。

5.おわりに

自分に合ったお食事や必要なたんぱく質についてもっと知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。

◆「栄養カウンセリング」について>>

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