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外来

「腸もれ」と免疫力の関係性

執筆者: わたなべゆうか(管理栄養士)
最終更新日 2023年06月15日

腸には多くの免疫細胞が集まり、免疫システム全体の約70%が腸にあるといわれています。

しかし、腸に穴が開いた「腸もれ」の状態だと、免疫力が低下して病気にかかりやすくなってしまいます。

この記事では、腸もれと免疫力の関係性についてお伝えします。

1.腸と免疫の関係

腸を含む消化管は、口から肛門までの1本の管であり、外にさらされているのと同じ状況にあります。

そのため、外から異物や毒素が体内に入ってこないような免疫システムを備えています。

外から異物が侵入しないために備わった腸のバリア機能には、機械的バリア、化学的バリア、微生物的バリアの3つがあります。

1-1.機械的バリア

機械的バリアは、腸壁の細胞や粘液によるバリア機能です。

腸壁の粘膜細胞は、お互いがしっかりとくっついて、異物が体内に侵入しないように物理的なバリアを形成しています。

1-2.化学的バリア

化学的バリアは、異物を排除する役割を持つ「抗体」や、異物をその場にとどめて腸壁に入らないようにする役割を持つ「ムチン」などによるバリアです。

抗体やムチンは、粘膜細胞の出す粘液の中に含まれています。

1-3.微生物的バリア

微生物的バリアは、腸内細菌によるバリア機能です。

腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分けられますが、善玉菌には悪玉菌の成長を抑える抗菌物質を分泌する役割や、外から入ってきた微生物を増やさないようにする役割があります。

【参考資料】『おなかのカビが病気の原因だった』(内山葉子/マキノ出版)
https://www.google.co.jp/books/edition/%E3%81%8A%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%93_%E3%81%8C%E7%97%85%E6%B0%97%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A0/MQw8swEACAAJ?hl=ja

2.「腸もれ」とその原因

2-1.「腸もれ」とは?

腸もれとは、腸粘膜の細胞と細胞の間に隙間が空き、異物や毒素が体内に漏れ出てしまう状態のことです。

腸もれが起こると、細胞の隙間から毒素や細菌などが体内に侵入し、炎症の原因となります。

その結果、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、さまざまな不調やアレルギー症状悪化の原因となります。

 □よく風邪を引く
 □お腹が弱い
 □食物アレルギーがある
 □なかなか疲れが取れない
 □イライラしたり落ち込むことが多い
 □いつも何かしらの不調を抱えている

このような症状があるかたは、腸もれが進んでいる可能性があります。

◆「アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係」>>

2-2.清潔すぎる環境は腸もれを引き起こす?

腸もれになる原因の一つに、“清潔すぎる環境“があります。

人は、乳幼児期に清潔すぎる環境で育つと、体内に腸内細菌を十分に取り入れることができず、腸内フローラの形成が不十分になってしまいます。

赤ちゃんは周りのものを手当たり次第に口に入れますが、それは本能的にいろいろな菌を取り入れて免疫力を高めようとしているからです。

小さいうちは他者や自然とふれあい、いろいろな細菌を取り入れて腸内細菌を増やしておくと、免疫力アップにつながります。

2-3.「グルテン」が腸粘膜を荒らす

小麦に含まれる「グルテン」は、腸の粘膜を荒らして腸もれを悪化させる恐れがあります。

グルテンを摂取すると、腸の中に「ゾヌリン」という物質が過剰に分泌されるのですが、ゾヌリンには腸の粘膜細胞の結合を緩める働きがあります。

普段からパンやパスタなど小麦製品をたくさん食べていると、腸の粘膜が荒れてしまい、腸もれにつながります。

腸もれが気になる方は、グルテンを含む小麦製品をなるべく控えるようにしましょう。

【参考資料】『「腸もれ」があなたを壊す!』(藤田紘一郎/永岡書店)
https://www.google.co.jp/books/edition/%E8%85%B8%E3%82%82%E3%82%8C_%E3%81%8C%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%82%92%E5%A3%8A%E3%81%99/fhoAMQAACAAJ?hl=ja

◆「腸内環境を整えて免疫力をアップさせる食事の基礎知識」>>

3.腸もれを治すには?

腸もれを改善するには、腸内細菌を増やし、腸粘膜のバリア機能を回復させることが大切です。

3-1.グルテンを控える

グルテンは、パンやパスタ、うどん、ケーキなどに多く含まれています。

「朝食はいつもパン」「昼食はいつも麺類」」という食事習慣のある人は、多くのグルテンを摂っているので、腸もれが進みやすくなります。

グルテンの摂取量を減らすには、主食はパンや麺類ではなく米にすることをおすすめします。米粉パンや、米や大豆から作られた麺にしても構いません。

3-2.高たんぱく質・低糖質のものを食べる

腸の細胞をつくる材料は、たんぱく質です。たんぱく質は、肉や魚、卵、大豆製品に多く含まれています。

食事は、肉や魚のおかずをしっかりと摂れる定食形式で、ご飯は少なめにすることをおすすめします。

【参考資料】『If you want to boost immunity, look to the gut』UCLA Health
https://www.uclahealth.org/news/want-to-boost-immunity-look-to-the-gut

「菓子パンだけ」「おにぎりだけ」のような食事では、タンパク質が十分に摂れず、さらに糖質の摂りすぎで腸内環境を悪化させる原因となります。

◆「たんぱく質をたっぷり摂って美と健康を。」>>

3-3.食物繊維を積極的に摂る

腸内細菌を増やすためには、エサとなる食物繊維を積極的に摂ることが大切です。

食物繊維は、野菜や豆類、きのこ類、海藻などに多く含まれています。

「日本人の食事摂取基準」による食物繊維の目標量は、成人の男性では1日に20g以上、女性で18g以上 とされています。現代の日本人は10g程度しか摂れていないと言われているので、毎食積極的に摂ることを意識しましょう。

◆「ワクチンも大切ですが、感染予防には「腸内環境」が大事!」>>

4.おわりに

免疫力アップのためには、腸もれを防ぐことが重要です。

手洗いやマスクに加えて、腸もれを防ぐ食生活をすることで感染症に負けない身体づくりをしましょう。

◆「当院の栄養カウンセリングについて」>>

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