咳止め薬「アスベリン」の効果と正しい使い方 咳を和らげる仕組み

咳が続くと、「この薬で合っているのだろうか」「本当に効いているのか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
アスベリンは、医療機関でよく処方される咳止め薬の一つです。
この記事は、アスベリンがどのような仕組みで咳に効くのか、正しい使い方、効かないと感じたときに考えるべきことや受診の目安まで、初めての方にも分かりやすくまとめています。
目次
1.アスベリンとはどのような咳止め薬か
病院で咳止めとして処方されることの多いアスベリンですが、「どんな薬なのか」「他の咳止めと何が違うのか」と疑問に思う方も少なくありません。
この章では、アスベリンの基本情報や特徴、どのような咳に適しているのかを解説します。
1-1.有効成分と薬の特徴
アスベリンは、「チペピジンヒベンズ酸塩」を有効成分とする咳止め薬です。
この成分には、咳を抑える作用(鎮咳作用)と、痰を出しやすくする作用(去痰作用)の両方があります。
・鎮咳作用(ちんがいさよう)とは、咳を引き起こす咳中枢の活動を抑制することで咳鎮める働きのことです。
・去痰作用(きょたんさよう)とは、気道の分泌物の増加と気道粘膜の線毛運動を促進し、気道から分泌物を排出しやすくする働きのことを言います。
そのため、乾いた咳だけでなく、痰がからむ咳にも使われることがあります。
去痰薬にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる仕組みで痰に働きかけます。
たとえば、痰の粘り気を減らすもの、気道からの分泌を促すもの、痰を分解するものなどがあります。
アスベリンは、これらの中でも気道からの分泌と線毛運動を助けるタイプの去痰薬です。
【参考情報】”European Respiratory Review” by European Respiratory Society
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9682576/
1-2.麻薬性ではない中枢性鎮咳薬
咳中枢を抑える中枢性鎮咳成分には、麻薬性と非麻薬性の2種類がありますが、アスベリンは非麻薬性です。
麻薬性咳止め薬と比べると、呼吸を抑えすぎるリスクが低いとされており、年齢や症状に応じて小児にも使用されることがあります。
1-3.咳の原因を治す薬ではない
アスベリンは、咳の原因そのものを治す薬ではありません。
風邪や喘息、肺炎など、咳を引き起こしている病気を直接治療するのではなく、つらい咳の症状を一時的に和らげるための薬です。
2.アスベリンはなぜ咳に効くのか
「なぜこの薬で咳が楽になるのか」は、多くの方が知りたいポイントではないでしょうか。
この章では、アスベリンが咳を和らげる仕組みと、どのような咳に効果的なのかを解説します。
2-1. アスベリンが咳を和らげる仕組み
アスベリンには、咳を和らげる2つの働きがあります。
・咳中枢の興奮をやわらげる
咳は、のどや気道への刺激が脳の「咳中枢」に伝わることで起こります。アスベリンは、この咳中枢の興奮をやわらげることで、咳が出すぎないように調整します。無理に咳を完全に止めるのではなく、過剰な咳を抑える働きです。
・痰を外に出しやすくする
気道の分泌を促し、気道粘膜の線毛運動(せんもううんどう)を助けることで、痰が気道にたまりにくくなり、外に出やすくなります。これにより咳が軽減されます。
この2つの作用により、アスベリンは乾いた咳にも痰が絡む咳にも効果を発揮すると言われています。
また、薬による治療に加えて、体の回復を助けるための栄養補給も大切です。
咳が続くと体力を消耗しやすいため、バランスの良い食事や十分な水分補給を心がけることで、回復を早めることが期待できます。
特に、喉や気道の粘膜を健康に保つビタミンAやビタミンC、免疫力を高めるタンパク質などを意識的に摂ることを心がけましょう。
2-2. アスベリンが効きにくい咳もある
アスベリンは風邪や気管支炎などによる咳に効果的ですが、すべての咳に効くわけではありません。
次のような病気が原因の咳では、十分な効果を感じにくいことがあります。
・喘息・咳喘息:気道の炎症により、刺激で咳が出やすくなる病気。
・胃食道逆流症(GERD):胃酸の逆流が喉を刺激して咳が出る病気。
・後鼻漏:鼻水が喉へ流れ落ち、その刺激で咳が続く状態。
これらの咳は、アスベリンとは異なるアプローチの治療が必要です。
アスベリンを服用しても咳が改善しない場合の原因や対処法については、5章「効果を感じないときに考えられる原因と受診の目安」で詳しく解説します。
2-3.他の咳止め薬との使いわけ
咳止め薬には、強力に咳を抑えるコデインやデキストロメトルファン、痰を出しやすくするカルボシステインやアンブロキソール、気道を広げる気管支拡張薬など、さまざまな種類があります。
アスベリンは鎮咳と去痰の両方の作用を持つため、幅広い咳に対応できる薬として処方されています。
医師は症状に合わせて、最適な薬を選択します。
3.アスベリンを効果的に使うために
薬の効果を最大限に引き出すには、正しい使い方が欠かせません。
この章では、アスベリンの正しい服用方法、子どもへの飲ませ方のコツ、効果が現れるまでの期間、飲み忘れたときの対処法など、より効果的に使うためのポイントを詳しく解説します。
3-1.服用回数と基本ルール
アスベリンは通常、1日3回(朝・昼・夕)、食後に服用します。
服用量は、年齢・体重・剤形によって異なるため、必ず医師の指示を守ってください。
薬の形状には、錠剤、散剤(粉薬)、ドライシロップ、シロップ剤などがあります。
散剤やドライシロップは、水やぬるま湯で飲むか、そのまま服用することもできます。
服用の際は、十分な量の水(コップ1杯程度)と一緒に飲むことで、薬が食道に留まらず胃までしっかり届きます。
特に就寝前の服用では、横になる前に水分をしっかり摂ることが大切です。
3-2.子どもへの使い方
子どもの場合は、ドライシロップやシロップ剤が処方されることが多く、味が工夫されていて飲みやすくなっています。
・ドライシロップは、少量の水やぬるま湯に溶かして飲ませます。
・一度に飲むのが難しい場合は、少量の水で溶かして飲ませた後、再度水を飲ませる方法も有効です。
・嫌がる場合は、アイスクリームやヨーグルトに混ぜても構いませんが、ジュースや牛乳は避けましょう。(薬の吸収に影響する可能性があります)
・飲ませた後は、口の中に薬が残っていないか確認してください。
乳児の場合は、哺乳瓶の乳首に入れて飲ませる方法もあります。
薬を飲ませるタイミングや方法に不安がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
【参考情報】『Q8 赤ちゃんに医師から処方された粉薬を飲ませるよい方法を教えてください。』医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0008.html
3-3.いつから効果を感じる?
一般的には、服用後30分〜1時間ほどで効果が現れ始めると言われています。
ただし、咳の原因や炎症の強さ、個人の体質によって実感には差があります。
軽い風邪による咳は、1〜2日で改善が見られることが多いですが、気管支炎など炎症が強い場合は、3〜5日程度かかることもあるでしょう。
数日服用しても全く改善しない場合は、原因が別にある可能性があるため医師に相談してください。
咳は体の防御反応でもあるため、完全に止まるまでには時間がかかることもあります。
あせらず継続して服用することが大切です。
3-4.飲み忘れた場合
飲み忘れに気づいたときの対処法は、次の服用時間までの間隔で判断します。
次の服用まで4時間以上ある場合は、気づいた時点で1回分を服用し、次回は通常通りの時間に服用しましょう。
次の服用まで4時間未満の場合は、飲み忘れた分は飛ばし、次回から通常通り服用しましょう。
副作用のリスクが高まるため、絶対に2回分をまとめて飲まないでください。
飲み忘れが続く場合は、服用時間をスマホのアラームで設定したり、お薬カレンダーを活用するなど、工夫してみましょう。
【参考情報】『内服薬の飲み方』東京都健康安全研究センター
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/kj_shoku/qqbox/tukaikata/nomikata/?utm_source=chatgpt.com
4.アスベリンの副作用と注意点
アスベリンは比較的安全性の高い薬ですが、体質や体調によっては副作用が現れることがあります。
この章では、どのような副作用が起こる可能性があるのか、また服用時に気をつけるべきことについて解説します。
4-1.起こりやすい副作用
眠気、胃の不快感、下痢、便秘などが報告されています。
眠気を感じた場合は、車の運転や危険な作業は控えてください。
また、ごくまれですが、アスベリンの服用直後に、咳・腹痛・嘔吐・発疹・呼吸困難などの症状が急にあらわれた場合は、アナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー反応の可能性があるため、すみやかに医療機関を受診してください。
【参考情報】”Anaphylaxis” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/anaphylaxis/symptoms-causes/syc-20351468
4-2.妊娠中・授乳中
妊娠中や授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。
多くの薬と同様に、アスベリンも妊娠中・授乳中の使用については医師の判断が必要です。
医師は、咳による影響と薬を使うリスクを比較して、服用の可否を判断します。
授乳中に服用する場合は、赤ちゃんの様子を注意深く観察し、いつもと違う様子が見られたら、すぐに医師に相談しましょう。
妊娠の可能性がある方や妊娠を計画している方も、事前に医師に伝えておきましょう。
自己判断での服用や中止は避け、必ず医療機関で相談することが大切です。
4-3.尿が赤くなることがある
アスベリンを服用すると、尿が赤くなることがあります。
これは、アスベリンが体内で代謝された後の物質の色で、代謝物が尿と一緒に出たときに赤くなるのです。
赤ちゃんがアスベリンを服用した後、オムツに赤い色が付くことがありますが、多くの場合は、薬の成分によるもので心配ないとされています。
【参考情報】『尿・便色の変化』慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/change/
5.効果を感じないときに考えられる原因と受診の目安
咳が治まらない理由は、必ずしも薬が効いていないからではなく、咳の原因そのものが別にある可能性も考えられます。
ここでは、アスベリンが効きにくい主な原因と、受診を考えるべき目安について解説します。
5-1. アスベリンが効きにくい病気や状態
アスベリンを使っても咳が治まらない場合、次のような病気が原因の場合もあります。
・喘息・咳喘息
気道の慢性的な炎症による咳で、夜間や運動後に悪化するのが特徴です。吸入ステロイド薬や気管支拡張薬による治療が必要となります。
・後鼻漏(こうびろう)
鼻水が喉に流れ落ちて刺激することで咳が出ます。抗ヒスタミン薬や点鼻薬、鼻洗浄が有効です。鼻水が喉に流れる感覚がある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
・胃食道逆流症
胃酸が逆流して喉や気道を刺激することで咳が出ます。夜間や食後に悪化することが多く、喉の違和感を伴うことがあります。胃もたれや胸焼けがある場合は、消化器科などを受診しましょう。
5-2. 咳が続く理由 生活習慣や環境要因
日常生活の中にも、咳の原因が隠れていることがあります。
・喫煙
タバコは気道を刺激し、咳の大きな原因になります。長期間の喫煙は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を引き起こすこともあります。禁煙が最も効果的ですが、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬が処方されることもあります。喫煙歴があり咳が続く場合は、早めに受診しましょう。
・アレルギー
花粉、ダニ、カビなどのアレルゲンが咳を引き起こすことがあります。アレルギーには、抗ヒスタミン薬やアレルギー用の点鼻薬が効果的です。こまめな掃除や加湿も症状の改善に役立つでしょう。原因が分からない場合や薬が効かない場合は、アレルギー検査を受けることをおすすめします。
5-3. いつ受診すべきか
アスベリンを服用しても咳が改善しない場合や、次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
・咳が2週間以上続いている
・夜間や明け方に咳が悪化する
・息苦しさやゼーゼー音(喘鳴:ぜんめい)がある
・発熱が続く、または胸の痛みがある
・血の混じった痰が出る
これらの症状は、より専門的な検査や治療が必要なサインかもしれません。
気になる症状があれば、我慢せずに医師に相談しましょう。
6.おわりに
アスベリンは、咳中枢の興奮をやわらげ、痰を出しやすくすることで咳を軽減する薬であり、咳の原因そのものを治す薬ではありません。
正しい使い方を守っても改善しない場合は、咳の背景に別の病気が隠れている場合もあります。
咳が長引く、息苦しさを伴うときは、早めに医療機関を受診し、原因に合った治療を受けることが大切です。










