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外来

咳止め薬の種類にはどのようなものがある?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年01月31日

咳にさまざまな種類や原因があるように、咳を止めるための薬(咳止め薬)にもさまざまなタイプのものが存在します。

この記事では、咳止めというカテゴリーに分類される具体的な薬の成分や特徴を、市販薬(ドラッグストアなどで購入可能な薬)と処方薬(医師の処方箋が必要な薬)に分け、代表的なものについて解説します。

1.市販の咳止め薬

1−1.パブロンエースPro

パブロンシリーズにはさまざまなものが存在しておりますが、基本的には風邪薬(総合感冒剤)であると考えておいて問題ありません。
 
その中でも特にパブロンエースProには非常に多くの成分が含有されており、風邪の症状全般に有効性が期待できます。

 ●イブプロフェン600mg
 ●L-カルボシステイン750mg
 ●アンブロキソール45mg
 ●ジヒドロコデイン24mg(咳止め成分)
 ●dl-メチルエフェドリン60mg
 ●クロルフェニラミン7.5mg
 ●リボフラビン12mg
  *いずれも1日量

以上のように、風邪症状に伴う咳、鼻水、喉の痛み、発熱などに総合的に効果を示すような成分が数種類含まれています。中でも、特にジヒドロコデインという成分が咳止めとしての効果を発揮します。

また、アンブロキソールやカルボシステインという成分によって、痰が絡みにくくなりますので、間接的に咳症状が和らぐ効果も期待できます。

【参考情報】『パブロンエースPro』大正製薬
https://www.catalog-taisho.com/04600.php

1−2.プレコール

 ●デキストロメトルファン60mg(咳止め成分)
 ●メチルエフェドリン60mg
 ●クロルフェニラミン8mg
 ●グアヤコール135mg
  *いずれも1日量

プレコールも、パブロンと同様に複数種類の薬剤が含有されている配合薬です。
しかし、プレコールはパブロンよりも咳止め成分に特化した配合になっているといえます。

メインの咳止め薬はデキストロメトルファンとよばれる成分であり、その他にもアレルギー性の咳を止める効果が期待できるクロルフェニラミンが8mg含有されています。

パブロンのように痛み止めなどの鎮痛成分が入っていないため、痛み止めの成分に伴う胃腸障害(胃の痛み)などの副作用が出にくいことも特徴です。また、1日2回の服用で効果を示すというのもポイントです。

【参考情報】『プレコール持続性せき止めカプセル』第一三共ヘルスケア
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/precol_seki_cap/

1−3.麦門冬湯(ばくもんどうとう)

麦門冬湯は漢方薬に分類される薬ですが、咳止め効果があり、処方薬としても使用されている医薬品です。
 
麦門冬湯を含む漢方薬に関する詳しい作用は、未だに解明されていないことも多いのですが、麦門冬湯は、気道(空気の通り道)の潤い不足に対して作用し、気道液などの粘液分泌を促進することで気管支までを潤し、咳止めの効果を発揮すると考えられています。
 
漢方薬といえば粉薬をイメージする人が多いのですが、麦門冬湯には粉薬の他に錠剤も存在するため、粉薬が苦手な人も服用しやすい咳止めです。

【参考情報】『麦門冬湯』クラシエ
https://www.kracie.co.jp/ph/k-kampo/teach/detail_6.html

◆「市販の咳止め薬は効く?効かない?」>>

2.処方の咳止め薬(医師の処方箋が必要な薬)

次に、医師の処方箋が必要な処方薬について紹介します。

処方薬は、医師の処方箋をもとに薬剤師が調剤することが義務付けられている薬です。

前提知識として、処方薬には「成分の名前である一般名」と「製品の名前である商品名」があることをご理解ください。(同一成分・同一効能であっても製薬会社が異なると商品名も変わります)

2−1.リン酸コデイン

処方薬の代表的な咳止め成分のひとつが、リン酸コデインです。
 
リン酸コデインを含有している処方薬にもさまざまなタイプのものがあり、粉薬や錠剤、シロップ剤などから、患者さんに応じて剤形を選択することになります。

また、投与量も患者さんによって厳密に調節することが可能であるため、症状の強さや他の併用薬、原因疾患などに応じて用法用量を調節します。
 
市販薬にもリン酸コデインを含んでいるものがありますが、人によっては投与量が多すぎて副作用が強く出現してしまったり、併用薬との折り合いが合わない場合もあります。

【参考情報】『dihydrocodeine and guaifenesin』Kaiser Permanente
https://wa.kaiserpermanente.org/kbase/topic.jhtml?docId=d07126a1&secId=d07126a1-Header

市販薬を購入する際は、専門家(薬剤師や登録販売者)に相談したほうが安全です。

【参考情報】添付文書(フスコデ配合シロップ)
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2229102Q1120_2_06/?view=frame&style=SGML&lang=ja

また、2019年から、リン酸コデインは12歳以下のお子さまには処方できなくなっていますのでご注意ください。

【参考情報】『コデインリン酸塩等の12歳未満の小児における使用の禁忌移行について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000522038.pdf

2−2.チペピジン(商品名:アスベリン)

チペピジンの特徴は、咳止め成分のみを含んだ処方薬ということです。そのため、効能効果は咳と痰に絞られています。

ターゲットを絞っているため、副作用などの有害事象も少なく、幅広い患者さんに使用することができます。

適応年齢についても、1歳未満から使用でき、もちろん成人の咳にも有効性が期待できます。

【参考情報】アスベリン添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2249003B1037_2_03/?view=frame&style=XML&lang=ja

2−3.デキストロメトルファン(商品名:メジコン)

デキストロメトルファンは、前出の市販薬(プレコール)の中にも配合されている咳止め成分ですが、処方薬を使用することで、デキストロメトルファン単体で使用することが可能です。
 
また、市販薬としては1日60mgが使用されていますが、処方薬としては倍量の120mgまで使用が可能です。

市販薬では効果のないような咳に対しても、処方薬であれば有効性が期待できる可能性もあります。

【参考情報】『医療用医薬品 : メジコン』KEGG MEDICUS
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00052400

◆「咳止め薬の市販薬と処方薬の違いについて」>>

3.おわりに

咳症状を止めるには、まずは原因を調べる(正しく診断する)ことが必須となります。

咳止め薬なら何でもいいだろうと闇雲に使用しても、改善されないばかりか、治療が遅れて悪化する恐れもあるため、なるべく早めに咳の原因を探り、治療を開始することをおすすめします。

しつこい咳症状にお困りの方は、まずは呼吸器専門医へご相談ください。

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