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咳止め薬「リン酸コデイン」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年04月04日

リン酸コデインは鎮咳(ちんがい)薬、いわゆる咳止め薬です。

病院で処方されるだけではなく、市販の咳止め薬や風邪薬にも使用されていますが、副作用や注意事項も多い薬です。

この記事では、リン酸コデインの効果や正しい服用方法、副作用、注意事項などを解説します。

初めて使う方も、使い方を確認しておきたい方も、ぜひ最後までお読み下さい。

1.リン酸コデインとはどのような薬か


リン酸コデインは、「コデインリン酸塩水和物」という成分を配合した中枢性鎮咳(ちんがい)薬です。脳の延髄(えんずい)にある咳中枢のはたらきを抑えて、咳を止めます。

のどがホコリなどの異物によって刺激を受けると、咳中枢が反応して反射的に咳が出ます。リン酸コデインは、この咳が出る反応を元から止めます。

咳止め効果以外にも、痛みや下痢を止める効果が認められています。

【参考情報】『Codeine』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682065.html

コデインリン酸塩水和物を配合した薬には、「リン酸コデイン」と「コデインリン酸塩」という名前の錠剤・粉薬があります。

また、似た名前の成分に「ジヒドロコデインリン酸塩」があり、リン酸コデインより1.4倍強い咳止め効果があると言われています。

ジヒドロコデインリン酸塩を配合した薬には、錠剤や粉薬のほか、気管支を広げる成分を一緒に配合した「フスコデ配合錠」「セキコデ配合シロップ」など、さまざまな薬があります。

コデインリン酸塩水和物やジヒドロコデインリン酸塩は、まとめて「コデイン類」と呼ばれています。風邪などの感染症による乾燥性の激しい咳に使われることが多いです。

咳を止めてしまうと痰が吐き出せなくなってしまうことから、痰のからんだ咳にはあまり使われません。

また、呼吸をしにくくなる呼吸抑制という副作用が出ることもあり、現在は子どもへの使用も制限されています。

◆「咳が止まらないのはどうして?」>>

2.リン酸コデインの使い方


リン酸コデインは、水かぬるま湯と一緒に飲みます。

成人は、1回20mg(5mg錠の場合は4錠、1%散の場合は2g)を、1日3回飲むのが一般的です。

ただし、症状や年齢などに応じて量を調節する場合があるため、医師の指示に従って服用しましょう。

3.リン酸コデインの副作用


リン酸コデインには次のような副作用があります。

 ・眠気

 ・めまい

 ・かゆみ

 ・発疹

 ・便秘

かゆみや発疹が出た場合や便秘がひどい場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

また、まれにですが呼吸がしにくくなる呼吸抑制という副作用が起こる場合があります。

リン酸コデインを服用後、呼吸が浅くなったり息切れしたりする場合は、すみやかに病院を受診しましょう。

リン酸コデインは麻薬性鎮咳薬と呼ばれることもあり、長期的に服用していると依存性が出る場合があります。

服用を続けていた人が急に止めると、吐き気や腹痛、頭痛、不安感などの離脱症状が現れることが多いです。

風邪による咳などで短期的に服用する場合には、このような離脱症状は起きませんが、自己判断で長期的に服用しないよう気をつけましょう。

4.使用上の注意点


リン酸コデインには注意点が多くあります。服用前に以下の情報を確認してください。

リン酸コデインは胎児に影響を及ぼすため、妊娠中の方にはめったに使用しません。妊娠中または妊娠の可能性がある方は、医師や薬剤師に相談しましょう。

また、リン酸コデインは母乳中に移り、母乳を飲んだ赤ちゃんに副作用が起こる可能性があるため、授乳中は服用できません。

赤ちゃんや子ども、高齢の方は、副作用である呼吸抑制が現れやすいと考えられています。

特に、12歳未満はリン酸コデインの服用が禁止されているため、保護者の方は注意してください。

【参考情報】『コデインリン酸塩等の小児等への使用制限について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000171434.pdf

持病がある方も、服用には慎重になる必要があります。

例えば、喘息の発作中にリン酸コデインを服用すると、呼吸抑制の副作用によって症状が悪化します。喘息の発作による咳には、リン酸コデインを使用しないでください。

リン酸コデインを服用中は、副作用が強く出る恐れがあるため、飲酒は控えましょう。

また、眠気やめまいの副作用が出やすいため、服用中に車の運転や機械類の操作はしないでください。

5.リン酸コデインの薬価


コデインリン酸塩水和物を配合したリン酸コデインとコデインリン酸塩の、1錠あたり・1gあたりの価格(薬価)を紹介します。

リン酸コデインの薬価は次のとおりです。

 ・リン酸コデイン錠5mg「VTRS」10.1円/錠

 ・リン酸コデイン散1%「イワキ」7.8円/g

 ・リン酸コデイン散1%「ホエイ」7.5円/g

 ・リン酸コデイン散1%「日医工」7.5円/g

また、リン酸コデインと同成分であるコデインリン酸塩の薬価は次のとおりです。

 ・コデインリン酸塩錠5mg「シオエ」10.1円/錠

 ・コデインリン酸塩散1%「タケダ」10.5円/g

 ・コデインリン酸塩散1%「メタル」10.5円/g

 ・コデインリン酸塩散1%「シオエ」8.3円/g

 ・コデインリン酸塩散1%「第一三共」7.5円/g

 ・コデインリン酸塩散1%「ハチ」 7.5円/g

 ・コデインリン酸塩散1%「フソー」7.5円/g

コデインリン酸塩水和物を配合した市販薬には、「アネトンせき止めZ錠」と、成人向けのシロップ剤「アネトンせき止めZ液」があります。

◆「咳止め薬の市販薬と処方薬の違いについて」>>

6.おわりに

リン酸コデインは、咳を止める効果は高いのですが、注意事項の多い薬です。特に、12歳以下の子どもには絶対に飲ませないよう、保護者は気をつけてください。

咳止め薬には、メジコンやアスベリンなど、子どもにも使える薬があります。

◆「メジコン」について詳しく>>

◆「アスベリン」について詳しく>>

お子さんの咳がひどい場合、あるいは持病のある方などは、リン酸コデイン以外の咳止め薬を処方してもらいましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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