咳が止まらない原因とその治し方~呼吸器専門医が解説する長引く咳の対処法とは

監修: 三島 渉(医学博士、横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
呼吸器学会専門医/禁煙学会専門医/アレルギー学会専門医/内科学会認定医
医療法人社団ファミリーメディカル理事長

風邪を引いた後に、「熱は下がって喉の痛みや鼻水はよくなったのに咳だけがなかなか止まらないなあ・・・」と悩んだ経験はありませんか?
咳は風邪を引けばたいてい出るものです。1週間や2週間咳が止まらなくてもたいしたことじゃないと考えてしまう方がたくさんいらっしゃいます。

しかし、なかなか止まらない咳の影に、実は深刻な病気がかくれていることがあります。咳が止まらないときにはどんな病気が疑われるのか?
どのように対処する必要があるのか? わかりやすくお伝えしていきます。

1. 「たかが咳」と甘く見ると危険

咳が1週間も2週間も続くと、心身共にかなりのダメージを受けます。ひどい時は夜も眠れず睡眠不足になります。また、自分の意思と無関係に突然咳が出て、止めようと思っても止まらないことがよくあります。

人前でしゃべったりするときや職場、電車など、咳が出ては困る場面で急に咳が出て、困った経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

また、咳をする時には腹筋や背筋を使うため、筋肉痛になることがあります
ひどい時には知らない間に肋骨が折れていたりすることもあります

1-1. 咳が出るしくみと役割

咳はなぜ出るのでしょうか? 咳は、鼻・のど・気管・肺の空気の通り道である「気道」に、唾液や痰などの分泌物が溜まった時や、吸い込んだホコリなどの異物を外に出そうとしたりする時に起こる大切な反応です。

無意識に起こってしまう生体防御反射のため、自分でコントロールしようとしてもなかなか止められるものではありません。

1-2. 咳の種類

咳は、痰の有無によって乾いた咳と湿った咳に分類されます。

乾いた咳は、「コンコン」「ケンケン」といった軽い感じの咳です。
湿った咳は、「ゴホゴホ」「ゲホゲホ」のように胸の深いところから出るイメージです。

痰が出るか出ないかは、病気の種類を判断する材料になります。病院で医師から質問されることもありますので、日頃からご自身の咳と痰の様子をチェックしておくと良いでしょう。

1-3. 咳が続く期間による分類

日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドラインでは、咳が続く期間によって、下記の3つに分類しています。

  • 3週間未満の急性咳嗽
  • 3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽
  • 8週間以上の慢性咳嗽

これは、どれぐらい咳が続いているかを見ることで、原因をある程度推測できるからです。

風邪や軽度の気管支炎などの軽い病気が原因の咳であれば、2週間以内に治まることがほとんどです。もし、2週間以上たっても咳が止まらない場合には、医療機関でその原因を調べる必要があります

2. 2週間以内でおさまる咳の原因となる病気

2週間以内でおさまる咳の原因となる病気の多くは、ウイルスや細菌などの微生物の感染によって気道に炎症が起こる病気です。医学用語では、「感染性咳嗽」といいます。

2-1. 上気道炎

いわゆる、「風邪」のことです。ほとんどがウイルスによるもので、咳のほか、熱・くしゃみ・鼻水・喉の痛みが主な症状です。
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2-2. インフルエンザ

主に冬に大流行します。症状は咳のほか、高熱、全身の関節痛、下痢、喉の痛みなどです。流行する前に予防接種を打っておきましょう。
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2-3. 急性気管支炎

上気道炎はウイルス感染がほとんどですが、細菌感染が併発し、炎症がひどくなると気管支炎になります。咳のほか、発熱、全身倦怠、痰の症状があります。
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2-4. 肺炎

肺炎は細菌・細菌以外の微生物・その他の様々な要因によって肺に炎症が起きる病気です。ほとんどの方が名前を聞いたことのあるありふれた病気ですが、日本人の死亡原因第3位となっています。

どのような原因でも、肺炎が進行すると呼吸不全を起こします。酸素不足の状態におちいるため、生命に関わる危険な病気です。肺炎の種類について、以下に代表的なものを挙げます。

2-4-1. 細菌性肺炎

風邪をこじらせて免疫力が低下していった結果、肺炎になることがあります。弱っている気管支や肺の粘膜に細菌が付着して起こるもので、免疫力が低下しているためになかなか治りません。症状は、強い咳、発熱、胸痛、全身倦怠感、呼吸困難などです。

2-4-2. マイコプラズマ肺炎

「マイコプラズマ」という病原体によって引き起こされる肺炎です。主な症状は乾いた咳と喉の痛みで、飛沫感染によって人から人へうつります。
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3. 2週間以上続く咳の原因となる病気

これまでご説明したように、2週間以内で治まる咳の多くはウイルスや細菌などの微生物の感染によって起こる「感染性咳嗽」です。

一方、2週間以上咳が止まらない場合には喘息やCOPD・肺癌など、感染症以外の病気が原因である可能性が高くなります。

感染症であった場合でも、肺結核や百日咳などの特殊な感染症の確率が高くなります。

3-1. 気管支喘息・咳喘息(ぜんそく)

気管支に慢性的に炎症が起きて様々な刺激に敏感になり、空気の通り道である気道が狭くなる病気です。典型的な症状としては、咳や痰、そして呼吸をするたびに喘鳴(ぜいめい。気管支からゼーゼー、ヒューヒューという音が鳴ること)が出るようになります。

日本では小児の5~7%、成人では3~5%がかかっていると言われています。そして、現在でも毎年1,500名以上が命を落としている危険な病気です。子供の病気だと誤解される方もいますが、高齢になってから初めて症状が出る人もいます。

また、喘息だからといって必ずしも喘鳴を伴うわけではありません。むしろ、最近は咳喘息と呼ばれるタイプの、咳だけが長期間続く症状の方が多く見られます。

咳喘息は、一般的な内科や耳鼻科のクリニックでは診断をつけることが難しいため、呼吸器内科専門のクリニックを受診することをお勧めします。
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3-2. COPD(慢性閉塞性肺疾患)・肺気腫

COPDという病気は、まだ一般の方にほとんど知られていませんが、俗に「タバコ病」とも言われています。現在、日本人の死亡原因の第9位になっている危険な病気です。WHO(世界保健機関)の予測では、2030年には世界の死亡原因の第3位になると考えられています。

タバコやタバコの煙を長年吸い続けていると、煙に含まれる有害物質によって気道や肺が少しずつ傷つけられ、最終的には肺の中にある「肺胞」という組織が溶けてしまいます。

「肺胞」には、肺に吸い込まれた空気中の酸素と二酸化炭素を交換する役目があり、生命活動を支える上でとても重要な器官です。自覚症状としては咳や痰、息切れ、動悸が主です。

COPDの診断をつけるのにはスパイロメーターという特殊な呼吸機能検査機器が必要です。この検査機器は、呼吸器の病気の診断に力を入れているクリニックにしか設置されていないため、なかなか診断されることがなく適切な治療を受けている人が少ないのが現状です。
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3-3. 肺がん

肺がんは日本人の死因第1位です。50歳以上で急激に増加し、肺がん患者の80~85%は喫煙者と言われています。
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3-4. 肺結核

感染力の強い有名な病気です。発熱、乾いた咳、痰の絡んだ咳、全身倦怠などから症状が進むと激しい咳となり血痰が出るようになります。

3-5. 間質性肺炎

「肺胞」という肺の中の部屋の壁に様々な原因で炎症を起こす病気です。肺の中に炎症が起きるため咳の原因となります。また、ガス交換ができなくなるため息切れを生じます。

3-6. 百日咳

その名の通り100日間も咳が続く病気です。百日咳菌による感染で回復まで時間がかかります。症状は、空咳、頭痛、全身倦怠感など風邪に似た症状です。

3-7. アトピー咳嗽

痰の絡まない咳が1ヶ月以上続いたらアトピー咳嗽の可能性があります。エアコンや、タバコの煙、会話、運動、ストレスなどで咳が出ます。

3-8. 胃食道逆流症

なんらかの原因で胃の内容物や胃液が食道まで逆流することでおこる食道の炎症です。主な自覚症状は胸焼け・胸痛・胃もたれですが、実は咳も多い自覚症状のひとつです。

3-9. 内服薬の副作用による咳

血圧を下げる薬の副作用で咳が出ることがあります。「コンコン」という乾いた咳が特徴で、今まで出ていなくてもある日突然出始めることもあります。

3-10. 鼻炎・副鼻腔炎・後鼻漏が原因で出る咳

鼻に炎症が起こり咳が出ることもあります。副鼻腔に膿や鼻水が溜まり炎症をおこす副鼻腔炎は症状として咳、痰、鼻水などがあります。重症になると頭痛、鼻づまり、呼吸困難、目の周りの腫れなどがおこります。

また、鼻炎などで出た分泌物が鼻の穴から出るのではなく、裏に回って気道に入ってしまうことを後鼻漏といいます。鼻汁が気道に落ちることで刺激となり、咳が出ます。 軽度であれば、薬で鼻炎を抑えることで咳もおさまってきます。

スギやヒノキなどの花粉が原因となる季節性のアレルギーが花粉症です。くしゃみや鼻水、目のかゆみなどが主な症状ですが、花粉症の方は喘息を合併している場合が多く、咳と関係があります。
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3-11. ストレス・精神的な原因による咳

はっきりとした原因がなく、緊張したり精神的葛藤・衝動が身体症状としてでたり、緊張を和らげる「はけ口」として咳をしている場合もあります。

以上、咳の原因となる代表的な病気をご説明してきましたが、ここにあげたもの以外にも、細かく分けると咳の原因となる病気はいろいろあります。

「たかが咳」と思ってしまいがちですが、ざっと挙げただけでもこれだけのいろいろな原因が考えられ、専門医にとってもその診断は決して簡単ではありません。

2週間以上咳が止まらない場合には、専門の医療機関を受診して検査を受けることが必要です。

4. 咳が止まらない場合に行われる検査

咳の原因となる様々な病気を見分けるためには、いくつかの一般的な検査と専門医療機関でしか受けられない特殊な検査の両方が必要です。それぞれ、以下のような種類の検査があります。

<一般的な検査>
  • 胸部レントゲン
  • 心電図
  • 血液検査
  • 喀痰検査
<専門医療機関での検査>
  • 胸部CT
  • スパイロメーター
  • モストグラフ
  • 呼気一酸化窒素濃度(呼気NO)測定

4-1. 胸部レントゲン・胸部CT

咳が止まらない場合に、通常まず行われるのが胸部レントゲン検査です。肺炎・肺癌など肺に陰影を生じる病気を見つけるために必須の検査です。

注意が必要なのは、心臓の裏などレントゲンだけでは分からない場所にも病気が隠れている場合があることです。レントゲンで異常がなくても咳が続いている場合には、あわせて胸部CTを行うことが望まれます。

4-2. スパイロメーター

肺の容積や空気の出し入れをする換気機能を調べる検査です。喘息やCOPDなど、気道が閉塞して空気の通り道が狭くなる病気の診断には必須の検査です。

4-3. モストグラフ

スパイロメーターと同じように、喘息やCOPDのような空気の通り道が狭くなる病気の診断に役に立つ検査です。空気の通り道が狭くなる病気では、気道抵抗(=空気の通りにくさ)が大きくなります。

4-4. 呼気NO測定

咳喘息の診断にとても役立つ検査です。喘息で起きている気道の炎症を数値で測定することが出来ます。

このほかにも血液検査や喀痰検査なども含めて、咳が止まらない場合には、診察した医師の判断で必要な検査を組み合わせながら行っていきます。また、そのときの患者さんの状態によって、実際に行うことのできる検査は異なってきます。

診察した医師とよく相談しながら、正確な診断のために必要な検査はきちんと受けていただくことをお勧めします。

5. 咳が長引いたら、迷わず「呼吸器内科」で受診を

5-1. 市販薬での対応をおすすめしない理由

2週間以上咳が止まらないにもかかわらず、「時間がない」「めんどくさい」などの理由から、病院に行かずにドラッグストアなどで売っている市販の風邪薬や咳止め薬に頼ってしまう方も多いと思います。しかし、これはあまりお勧めできることではありません。

咳の原因となる病気はこれまでご紹介したようにたくさんあり、「風邪」だけではありません。中には肺癌や肺結核など、きわめて深刻な病気もあります。喘息やCOPDは、進行すると治療が困難になってしまいます。

咳は身体にとって大切な防御反応です。原因がよく分からないまま、咳止めの薬で大切な反応を抑えてしまうのは、身体にとって良いことではありません。ますます病気が悪化したり、薬の副作用によってアレルギー反応が出てしまったりすることがあるのです。

また、コデイン類を含む薬には注意が必要です。2017年6月22日に厚生労働省から「風邪薬や咳止め薬に含まれる“コデイン類”を12歳未満の子どもに使用しないこと」という発表がありました。使用すると、呼吸困難などの副作用が出る恐れがあるということです。

コデイン類にはおもに「コデインリン酸塩」「ジヒドロコデインリン酸塩」といったものがあります。すべての風邪薬や咳止め薬にコデイン類が含まれているわけではありませんが、12歳未満のお子さんをお持ちの方や、授乳中の方は注意が必要です。

市販薬だけでなく病院の処方薬の中にもコデイン類が含まれているものがあります。事前に医師に確認したり、家で保管している処方薬にも注意したりする必要があります。

5-2. 「呼吸器内科」と「一般内科」の違い

一口に「内科」といっても、じつは色々な専門分野があります。例えば、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、腎臓内科、血液内科、神経内科などが挙げられます。その中で「呼吸器内科」では、呼吸器系(気管、気管支、肺)を専門に診療します。

呼吸器内科が得意とする疾患には、以下のようなものがあります。

  • 気管支喘息、咳喘息
  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)
  • 肺癌
  • 肺結核
  • 睡眠時無呼吸症候群

1週間~2週間以内の咳は、風邪をはじめとするウイルス感染症や細菌感染症である場合が多く、一般の内科や耳鼻科を受診してお薬をもらえば治ることがほとんどです。しかし、咳が2週間たっても治らない時は、一般の内科ではなく、「呼吸器内科」へ行くとより適切な診療を受けることができます。

中でも、日本呼吸器学会専門医が在籍している呼吸器内科への受診をお勧めします。「日本呼吸器学会専門医」とは、専門医の資格を得るために定められた研修カリキュラムを終了後試験に合格し、日本呼吸器学会から認定された医師のことです。

呼吸器系の病気に関する専門知識や経験が豊富ですから、咳でお困りの患者さんに対して適切な検査・診察・治療を提供することができ、一般内科では見落とされてしまいがちな呼吸器系の病気を早期に発見することができるのです

実際、「内科や耳鼻咽喉科を転々としたが、一向に咳が止まらないので困っている」という患者さんが本当に多くいらっしゃいます。これはどんな病気にも言えることですが、早期発見・早期治療が大切です。2週間以上咳が止まらなくて心配な時は、迷わず呼吸器内科を受診してください。

6. まとめ

  • ただの風邪で、咳が2週間続くことはありません。
  • 咳は、気道に入ったホコリなどの異物を体の外に出そうとする大切な防御機能です。
  • 咳の原因には数多くの病気があります。
  • むやみに市販の風邪薬や咳止め薬に頼りすぎるのは危険です。
  • 咳が2週間以上続いたら、迷わず「呼吸器内科」を受診しましょう。

止まらない咳の背景には、呼吸器に関連するさまざまな病気が隠れていることがあります。症状が軽いうちであれば治療は短期間で済む場合もあります。また、使う薬の量も少なくて済みます。

「もしかして風邪じゃないのかも?」と思ったら、お早めに日本呼吸器学会専門医のいる呼吸器内科を受診しましょう。

参考文献

  • 日本呼吸器学会 『咳嗽に関するガイドライン 第2版』
  • 厚生労働省資料 コデインリン酸塩等の小児等への使用制限について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000168848.pdf

監修者プロフィール

三島 渉 (医学博士、横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
呼吸器学会専門医/内科学会認定医/禁煙学会専門医/アレルギー学会専門医
医療法人社団ファミリーメディカル理事長

平成9年横浜市立大学医学部卒業。呼吸器内科専門医として活躍する一方、現代医学の限界を痛感。医学研究による解決を目指し、横浜市立大学大学院入学。分子細胞生物学を専門として、がん転移に関連する細胞機能の研究を行い、平成17年医学博士取得。

その後再び臨床の現場に戻るも、症状がひどくなってからでないと来院してもらえない医療の世界の構造的な問題を認識。

「症状がまだ軽いうちに気軽にかかってもらえるクリニックをつくろう」と決意し、平成19年横浜市南区に呼吸器内科専門の「上六ツ川内科クリニック」を開院。病気が進行すると改善が難しい呼吸疾患の早期発見・早期治療の重要性を伝えている。

現在、毎月500人以上の喘息患者と100名以上のCOPD患者を診療。禁煙治療にも力を注ぎ、呼吸器疾患で苦しむ人のいない社会の実現を目指している。年間約100名の禁煙指導を行い、84.6%の禁煙成功率を達成している。

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