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高齢者に多い肺炎とは?種類と原因を専門医が解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年04月28日
肺炎

「風邪が長引いて、なかなか良くならない」

その症状の背景には「肺炎」が隠れているかもしれません。

肺炎は日本人の死因上位に位置し、特に65歳以上の高齢者は注意が必要です。

原因となる病原体や感染場所によって症状や治療法が異なるため、この記事では肺炎の種類と特徴をわかりやすく解説します。

1.肺炎とはどのような病気なのか

肺の炎症を示すイメージと、咳や発熱、胸の痛みを表すイラストを組み合わせた画像
肺炎を正しく理解するために、まずは肺炎がどんな病気なのかを確認していきましょう。

肺炎は、肺に細菌やウイルスなどの病原微生物が感染して、急性の炎症を起こす病気です。

私たちの肺は、空気中の酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を体外へ排出する大切な働きをしています。その肺に炎症が起こると、この働きが妨げられ、息苦しさや発熱、咳、痰といった症状が現れます。

◆「肺炎の症状・検査・治療の基本情報」をチェック>>

肺炎の症状は、風邪とよく似ているため、初期段階では区別がつきにくいことがあります。

しかし、風邪であれば通常1週間程度で回復しますが、肺炎の場合は症状が長引いたり、悪化したりすることが特徴です。
特に高齢者の場合は、肺炎の症状が目立ちにくく、気づいたときには重症化していることもあり、注意が必要です。

【参考情報】『ストップ!肺炎』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/stop_pneumonia2024.pdf

2.肺炎の原因と種類

肺の内部構造と、細菌やウイルスなど感染要因を示すイメージ画像
肺炎は、原因となる病原微生物によって大きく3つのタイプに分けられます。
それぞれ特徴が異なるため、正しく見分けることが適切な治療につながります。

2-1. 細菌性肺炎

細菌性肺炎は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などの細菌が原因で起こる肺炎です。

高齢者の肺炎の中で最も多いタイプで、肺炎球菌が原因となるケースが特に多く見られます。

細菌性肺炎の特徴は、湿った咳とともに、黄色や緑色を帯びた痰が出ることです。また、高熱が出ることも多く、胸の痛みや息苦しさを感じることもあります。

細菌性肺炎は、抗菌薬による治療が有効ですが、早期発見・早期治療が重要です。

【参考情報『Pneumonia Causes』 National Heart, Lung, and Blood Institute (NIH)
https://www.nhlbi.nih.gov/health/pneumonia/causes

2-2. ウイルス性肺炎

ウイルス性肺炎は、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、RSウイルスなど、さまざまなウイルスが原因で起こる肺炎です。

一般的な風邪症状に続いて、激しい咳、高熱、倦怠感などの症状が現れます。

ウイルス性肺炎は、細菌性肺炎よりも症状が多彩で、急に39度以上の高熱が出ることが多いのが特徴です。また、痰は比較的少なく、乾いた咳が続くこともあります。

特に高齢者では、インフルエンザをきっかけに肺炎を発症するケースが多く見られます。そのため、インフルエンザワクチンの接種が肺炎予防に役立ちます。

◆「インフルエンザを予防する方法」とは?>>

ウイルス性肺炎は、特定の抗ウイルス薬が効く場合もありますが、多くは対症療法が中心となります。重症化すると呼吸困難を起こすこともあるため、早めの受診が大切です。

2-3. 非定型肺炎

非定型肺炎は、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなど、細菌とウイルスの中間的な性質を持つ微生物が原因で起こる肺炎です。

乾いた咳が長く続くことが多く、痰はあまり出ません。熱が出る場合でも、細菌性肺炎に比べて高熱にはなりにくい傾向があります。

マイコプラズマ肺炎は、若年層に多いとされていますが、高齢者でも発症することがあります。風邪が治った後に咳だけが長引く場合は、非定型肺炎の可能性も考えられます。

非定型肺炎の治療には、通常の細菌性肺炎とは異なる抗菌薬が必要になることがあるため、正確な診断が重要です。

【参考情報『マイコプラズマ肺炎』厚生労働省 
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mycoplasma.html

3.感染した場所による肺炎の種類

医師の診察風景と、採血や検査、画像検査を示すイメージ画像
肺炎は、どこで感染したのかによっても分類され、それぞれ特徴や重症度が異なります。

3-1.市中肺炎

市中肺炎は、病院や診療所以外で、日常生活を送っている中で感染した肺炎のことです。

風邪やインフルエンザをこじらせて発症することが多く、比較的健康な方でも感染する可能性があります。

市中肺炎の原因菌として最も多いのは肺炎球菌で、その他にもインフルエンザ菌、マイコプラズマなどがあります。

早めに適切な治療を行えば、完治が期待できることが多いですが、高齢者や基礎疾患のある方では重症化しやすいため注意が必要です。

症状としては、発熱、咳、痰、胸の痛み、息苦しさなどが見られます。これらの症状が2〜3日続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

◆「咳が止まらないのはどうして?原因と受診の目安、対処法」>>

3-2. 院内肺炎

院内肺炎は、病院や診療所に入院してから48時間以上経過した後に発症した肺炎のことです。

院内肺炎は、入院中の抵抗力が低下している状態で発症するため、市中肺炎に比べて重症化しやすく、死亡率も高いという特徴があります。

原因菌としては、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や緑膿菌など、抗菌薬が効きにくい耐性菌が多く見られます。
入院する理由は、呼吸器の病気だけでなく、心臓の病気、脳血管の病気、がんや骨折などの手術による入院でも、院内肺炎を発症する可能性があります。

特に、人工呼吸器を使用している場合は、「人工呼吸器関連肺炎」と呼ばれる特別な注意が必要な肺炎が起こることがあります。

【参考情報】『肺炎の種類と特徴』長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/haien/syurui.html

3-3. 医療・介護関連肺炎

医療・介護関連肺炎は、介護施設に入所している方や、定期的に病院に通院している方など、医療や介護に関わりのある生活を送っている方が発症する肺炎です。

市中肺炎と院内肺炎の中間的な性質を持ち、高齢化が進む日本では特に重要な分類となっています。

医療・介護関連肺炎の特徴は、基礎疾患を持つ方や、栄養状態が良くない方、飲み込む力が低下している方など、肺炎を発症しやすい背景を持つ方が多いことです。

原因菌は市中肺炎と同様のものが多いですが、一部に耐性菌が見られることもあります。治療においては、患者さんの生活の質や本人の意思を尊重しながら、適切な抗菌薬を選択することが大切です。

4.特殊な肺炎の種類

一般的な肺炎とは少し異なる、特別な注意が必要な肺炎もあります。

4-1. 誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が誤って気道に入り込み、それに含まれる細菌が肺で増殖して起こる肺炎です。

高齢者に非常に多く見られる肺炎で、飲み込む力が低下することで発症しやすくなります。

誤嚥性肺炎の症状は、通常の肺炎と似ていますが、食事中にむせることが多い、飲み込みにくさを感じる、食後に咳が出やすいなどの特徴があります。また、夜間の就寝中に唾液を誤嚥して発症することもあり、朝方に熱が出たり、咳が増えたりすることがあります。

誤嚥性肺炎の予防には、口腔ケアが非常に重要です。口の中を清潔に保つことで、誤嚥した際に肺に入る細菌の数を減らすことができます。

◆「誤嚥性肺炎」についてさらに詳しく>>

4-2. 間質性肺炎

間質性肺炎は、肺胞そのものではなく、肺胞を支える組織である「間質」が炎症を起こす肺炎です。

通常の肺炎とは異なり、呼吸困難や呼吸不全が特徴で、痰を伴わない乾いた咳が続きます。

間質性肺炎の原因はさまざまで、自己免疫疾患や薬剤、環境要因などが関係することがあります。また、原因が特定できない特発性のものもあります。

間質性肺炎は、炎症が治まっても、間質が線維化して硬くなり、肺の機能が低下することがあります。そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。

症状が進行すると、少しの動作でも息切れするようになり、日常生活に大きな影響を及ぼします。

【参考情報】『Interstitial Lung Disease』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/interstitial-lung-disease

5.高齢者が特に注意すべき肺炎の特徴

口腔ケアと細菌対策が肺の健康につながることを示すイメージ画像
高齢者の肺炎には、若い世代とは異なる特徴があり、特別な注意が必要です。

5-1. 症状が目立ちにくい

高齢者の肺炎は、典型的な症状である高熱や激しい咳が出ないことがあります。

代わりに、「なんとなく元気がない」「食欲が落ちている」「ぼんやりしている」といった、一見すると肺炎とは関係なさそうな症状だけが現れることがあります。

このため、家族や介護者が気づきにくく、発見が遅れて重症化してしまうケースが少なくありません。
高齢者の場合は、いつもと違う様子がないか、日頃から注意深く観察することが大切です。

5-2. 誤嚥性肺炎のリスクが高い

年齢を重ねると、飲み込む力が自然と衰えてきます。また、脳血管疾患の後遺症などで嚥下機能が低下している方も多く、誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。

誤嚥性肺炎は繰り返しやすく、入退院を繰り返すことで体力や筋力が低下し、さらに肺炎を起こしやすくなるという悪循環に陥ることがあります。

予防のためには、口腔ケア、姿勢の工夫、食事形態の調整などが重要になります。

◆「高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐ実践ガイド」をチェック>>

5-3. 重症化しやすい

高齢者は、加齢に伴う免疫機能の低下や、糖尿病、心臓病、腎臓病などの基礎疾患を持つことが多いため、肺炎が重症化しやすい傾向があります。

また、複数の病気を抱えている場合、肺炎をきっかけに他の病気も悪化し、全身状態が急激に悪くなることもあります。

そのため、高齢者の肺炎は、できるだけ予防することが何より大切です。

ワクチン接種、口腔ケア、栄養管理、適度な運動など、日頃からの健康管理を心がけましょう。

6. おわりに

肺炎には、原因となる病原体、感染した場所、感染する組織など、さまざまな種類があり、それぞれに適切な診断と治療が必要です。

特に高齢の方は、重症化しやすく症状も目立ちにくいため、日頃からの予防と早めの受診が大切です。

「風邪が長引いている」「いつもと様子が違う」

と感じたら、ためらわずに医療機関を受診してください。

日常生活の中で予防を意識し、体調の変化に注意しながら健康管理を続けていきましょう。

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