ブログカテゴリ
外来

インフルエンザを予防する方法とは~医師が解説する流行への備え

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年02月05日
インフルエンザワクチン

インフルエンザにかかると、高熱が出て苦しむことが多く、学校や仕事も強制的に1週間程度休まなくてはなりません。

「なんで、よりによってこんなときに……」
そう困った経験をお持ちの方も多いのはないでしょうか。

この記事では、インフルエンザを予防するために現時点で医学的に効果のあると考えられている方法についてわかりやすく解説します。流行に備えて、基本的な知識を身につけておきましょう。

1. インフルエンザが社会的に問題となるのはなぜか


インフルエンザウイルスは、ウイルスに感染している人が咳やくしゃみをしたときに口から飛び出す小さな水滴(飛沫)が、他の人の口や鼻、眼などの粘膜に付着して感染します。

粘膜に付着したウイルスは、そこから体の中に入って細胞内に侵入し増殖します。これを「感染」といいます。

そして、ウイルスが増え始めてから数日立つと、発熱やのどの痛み、鼻水、咳などの症状が出現します。

多くの患者さんは、1週間程度でこれらの症状は改善します。にもかかわらず、なぜインフルエンザがこれほど社会的な問題になるのでしょうか。

それは、肺炎や脳症などを起こして入院が必要になったり死亡する患者さんがいるからです。これをインフルエンザの「重症化」といいます。

◆「65歳になったら肺炎球菌ワクチンを受けましょう」>>

こうしたインフルエンザの感染拡大、重症化を防ぐために、学校保健法ではインフルエンザに感染した場合の出席停止期間が法律で定められています。

社会人の場合、法律には定められていませんが、インフルエンザにかかったときの対応が会社ごとに決められています。

【参考資料】『学校保健安全法施行規則改正に関する報告書』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002mcip-att/2r9852000002mdf9.pdf

2. インフルエンザワクチン接種をおすすめする理由


厚生労働省は、インフルエンザ対策としてワクチンを接種することを強く推奨しています。その最大の理由は「重症化」を防ぐためです。

平成11年に日本国内で行われた研究では、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している人のうち34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったと報告されています。

【参考情報】『インフルエンザワクチンの効果に関する研究』平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業 
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/dl/s0115-8c.pdf

また、インフルエンザワクチンには「発病」を抑える効果も認められています。

6歳未満のこどもを対象とした研究では、インフルエンザワクチンの発病防止に対する有効率は60%と報告されています。

【参考情報】『ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究』平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000137138.pdf

このように、インフルエンザワクチンは感染後の発病率を低下させることや、発病後の重症化や死亡を防ぐ効果があることが証明されています。

特に、喘息やCOPDなど呼吸器系の病気をお持ちの方や、糖尿病や肥満、高齢などで免疫力が低下している状態の方は重症化のリスクが高いので、忘れずに接種しましょう。

◆「その咳の原因、呼吸器内科で検査しましょう」>>

3. 日常生活でインフルエンザ予防のためにできること

厚生労働省は、日常生活における有効な方法として、流行前のワクチン接種のほか、下記の4つを推奨しています。

  1. (1)外出後の手洗い等
  2. (2)適度な湿度の保持
  3. (3)十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
  4. (4)人混みや繁華街への外出を控える

ワクチンの重要性については先にお伝えしたので、その他の項目について説明します。

3-1. 外出後の手洗い

手洗いや手指のアルコール消毒は、手や指についたインフルエンザウイルスを除去するための基本的な対策です。

【参考情報】『手洗いマニュアル』日本食品衛生協会
http://www.n-shokuei.jp/eisei/sfs_tearai.html

3-2. 適度な湿度の保持

インフルエンザウイルスは湿度に弱いため、部屋の中を加湿することは有効な予防法です。 

また、室内の空気が乾燥していると、気道粘膜の防御機能が低下して、インフルエンザウイルスに感染しやすくなります。加湿器などを利用して、適切な湿度(50~60%)を保つと良いでしょう。

◆「咳が止まらない時こそ乾燥に注意!」>>

3-3. 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取

自身の免疫力を発揮して、ウイルスに抵抗する力を高めるためには、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取が大切です。

肥満がインフルエンザの重症化にかかわるという研究結果は複数報告されています。

【参考情報】『Obesity Promotes Virulence of Influenza』American Society for Microbiology
https://asm.org/Press-Releases/2020/Obesity-Promotes-Virulence-of-Influenza

『Impact of Obesity on Influenza A Virus Pathogenesis, Immune Response, and Evolution』National Center for Biotechnology Information
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6523028/

体脂肪が多い人や、BMIが25以上の人は、食生活を見直して適正な体重に近づけていきましょう。

【参考情報】『BMI』e-ヘルスネット |厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html

また、ビタミンA、C、D等の栄養素は、免疫系の調整に関与しており積極的に摂取することが望ましいという報告もなされています。

◆「ビタミンCで感染症予防!」>>

3-4.人混みや繁華街への外出を控える

インフルエンザが流行してきたら、以下のような方はできるだけ外出を控えましょう。

  1. (1) 持病がある人
  2. (2) 高齢者
  3. (3) 妊婦
  4. (4) 疲れが溜まっている
  5. (5) 睡眠不足

やむを得ず人混みへ外出する場合は、飛沫感染のリスクを低下させるためにマスクをつけて出かけましょう。

インフルエンザウイルスに感染していても、まったく自覚症状がない(不顕性感染)場合や、発熱がなく軽い風邪症状(鼻水、咳)だけのことがあります。

このような場合、感染していることに気づかない人が、知らないうちにウイルスをまき散らしてしまう恐れがあります。

インフルエンザが流行し始めたら、元気な人も以下の対策をとり、ウイルスを拡げないように心がけましょう。

  1. (1) 咳やくしゃみを他の人に向けて発しない
  2. (2) 咳やくしゃみが出ているときはマスクをつける
  3. (3) マスクを着けていない時に咳やくしゃみが出たら、ティッシュや手で口と鼻を覆い、顔を他人に向けない
  4. (4) 鼻水や痰を拭ったり、咳やくしゃみをしたときに使ったティッシュはすぐにゴミ箱へ捨てる
  5. (5) 手で咳やくしゃみを受け止めた時は、できるだけすぐに手を洗う

◆「マスクの付け方と選び方」について>>

4. おわりに

インフルエンザはありふれた病気ですが、病気にかかってつらい思いをしないように、毎年ワクチンを接種しましょう。

日常生活で大切なことは、まず第一に体調を整えること。そして、免疫力を高めてウイルスに対する抵抗力をつけるとともに、ウイルスに接触しないようにすることです。

そして、注意点に気を付けながら健康な毎日を送ってください。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階