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外来

【2026年版】65歳の肺炎球菌ワクチン 何が変わった?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月01日
肺炎を予防するために肺炎球菌ワクチンを接種している高齢男性。

65歳になると、齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種の対象になります。

2026年度から使われるワクチンがPCV20(プレベナー20)に変わり、過去に接種した方ほど迷いやすくなっています。

この記事では、2026年度時点の最新制度に合わせて、高齢者の肺炎球菌ワクチンについて分かりやすく整理します。

1.肺炎球菌ワクチンで予防できること

高齢者の肺炎を肺炎球菌ワクチンで予防する
肺炎は高齢になるほど重症化しやすい感染症のひとつです。

肺炎の原因はさまざまですが、肺炎球菌は高齢者の肺炎や重い感染症の原因として重要な細菌です。肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による重症感染を防ぐ目的で接種されます。

1-1.肺炎球菌とは

肺炎球菌は、鼻や喉の奥にすみつくことがある細菌です。

体力や免疫力が落ちているときに、気管支炎や肺炎、血液や髄液に菌が入り込む侵襲性(しんしゅうせい)肺炎球菌感染症を起こすことがあります。

特に高齢者、慢性呼吸器疾患がある方、心臓や腎臓の病気がある方は、重症化に注意が必要です。

高齢者の肺炎は、発熱や咳がはっきり出ないこともあります。食欲が落ちる、元気がない、息切れが強いなど、いつもと違う変化がきっかけで見つかることもあります。

実は、健康な人の鼻や喉にも肺炎球菌があることは珍しくないのですが、普段は何も悪いことはしません。

しかし体力が落ちてきたときや、インフルエンザなどにかかって気道の粘膜が傷ついたときに増殖を始め、肺炎を引き起こすのです。

◆「肺炎の基本情報」について詳しく>>

1-2.肺炎球菌ワクチンの効果と限界

肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による重症感染を予防することを目的としたワクチンです。

肺炎球菌には100種類以上の血清型があり、ワクチンごとに対応できる範囲が異なります。

現在、高齢者の定期接種で使われるPCV20は、そのうち20種類の血清型を対象にした結合型ワクチンです。

厚生労働省の案内では、PCV20が対象とする20種類の血清型は、成人の侵襲性肺炎球菌感染症の原因の約5~6割を占めるとされています。
また、血清型に依らない侵襲性肺炎球菌感染症全体を3~4割程度予防する効果があるとされています。

【参考情報】『高齢者の肺炎球菌ワクチン(ワクチンの効果)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/pneumococcus-senior/index.html

このように、肺炎球菌ワクチンは重症化予防に有効ですが、すべての肺炎を防ぐものではありません。

肺炎球菌以外の細菌やウイルス、誤嚥などによる肺炎は別に対策が必要です。

◆「誤嚥性肺炎」について詳しく>>

ワクチンに加えて、手洗い、口腔ケア、禁煙、栄養と睡眠を整えることも大切です。

2.【2026年度版】高齢者の肺炎球菌ワクチン制度とワクチンの位置づけ

2026年から定期接種となったプレベナー20ワクチンを医師が紹介している様子
高齢者の肺炎球菌ワクチン制度で大きく変わった点は、2026年度から定期接種で使われるワクチンがPPSV23(ニューモバックスNP)からより長く効果が期待できるPCV20に切り替わったことです。

接種対象者は大きく変わっていないため、「65歳になったら確認する」という点が重要です。

2-1.定期接種の対象者

定期接種の対象は、65歳の方です。

加えて、60~64歳で心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、またはHIVによる免疫機能障害により日常生活がほとんど不可能な方も対象になります。

「以前は65歳以外でも案内があった」と覚えている方もいるかもしれませんが、過去に行われていた経過措置とは扱いが異なります。

現在の基本は、65歳のタイミングで自治体の案内を確認することです。

なお、定期接種の対象外であっても、18歳以上で重症化リスクがある方などは、医師の判断により任意接種として接種が検討されることがあります。

2-2.接種回数と方法

2026年度からの定期接種では、PCV20を1回接種します。

接種方法は筋肉内注射です。

PPSV23、PCV15(バクニュバンス )、PCV21(キャップバックス )は、2026年4月以降の高齢者定期接種としては使用できません。

費用、接種券の送付方法、予約方法、接種できる医療機関は自治体ごとに異なります。接種を検討するときは、お住まいの市区町村のホームページや案内文を確認しましょう。

長期療養などで対象期間に接種できなかった方も、特例の対象になる場合があるため、市区町村へ確認してください。

【参考情報】『成人用肺炎球菌ワクチン予防接種』横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/yobosesshu/yobosesshu/seijinhaikyuu.html

【参考情報】『Pneumococcal Vaccination』Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/pneumo/index.html

3.ワクチンの違いと接種歴の確認

肺炎球菌ワクチンの種類や接種機関について考えている高齢男性
肺炎球菌ワクチンには複数の種類があります。

名称が似ているため分かりにくいですが、2026年度時点で定期接種の基本となるのはPCV20です。

それぞれのワクチンの違いや特徴を整理して理解しておくことが大切です。

3-1.PCV20(プレベナー20)とは

PCV20は、20種類の血清型を対象にした肺炎球菌結合型ワクチンです。

2026年度から高齢者の定期接種に使われるワクチンであり、65歳の方がまず確認すべきワクチンです。

また、結合型ワクチンは免疫記憶が形成されるため、効果が長く持続するとされています。
対象は主に高齢者のほか、18歳以上で重症化リスクのある方にも使用されます。

3-2.PPSV23(ニューモバックスNP )とは

PPSV23は、これまで高齢者の定期接種で長く使われてきた23価肺炎球菌莢膜(きょうまく )ポリサッカライドワクチンです。

2026年度からは、高齢者の定期接種で使用されるワクチンではなくなり、任意接種となりました。

23種類の血清型をカバーし、肺炎球菌全体の約70〜80%に対応するとされています。
ただし、効果の持続の観点から、5年ごとの再接種が推奨されてきました。

過去にPPSV23を受けた方は、「前回から何年たったか」だけで判断するのではなく、現在の制度で定期接種の対象になるかを確認する必要があります。

3-3.PCV21(キャップバックス )とは

PCV21は成人向けの新しい結合型肺炎球菌ワクチンです。

2025年に承認された新しいワクチンで、重症化しやすい血清型を広くカバーすることを目的としています。

ただし、2026年4月時点では高齢者の定期接種ワクチンではありません。制度上はPCV20と同じ扱いではないため、自治体の定期接種で受けられるワクチンと混同しないようにしましょう。

3-4. PCV15(バクニュバンス)とは

PCV15は15種類の血清型に対応した肺炎球菌結合型ワクチンです。

結合型ワクチンは、体の免疫が反応しやすい仕組みを持っており、免疫の記憶が残りやすいため、効果が長く続くことが期待されています。

PCV20と同様の特徴がありますが、2026年4月時点では高齢者の定期接種ワクチンには含まれていません。

3-5.すでに接種したことがある方

これまでにPPSV23やPCVなどの肺炎球菌ワクチンを受けたことがある方は、今回の定期接種の対象外となる場合があります。

そのため、過去の接種歴を確認することが大切です。

一方で、前回接種から1年以上あいている場合、任意接種としてPCV20またはPCV21を検討できる場合があります。

また、結合型ワクチン(PCV20など)と多糖体ワクチン(PPSV23)を併用する場合は、通常1年以上の間隔をあけることが推奨されています。

自己判断で「もう必要ない」「もう一度受けたほうがよい」と決めるのではなく、予防接種済証、自治体の記録、医療機関の記録などで接種歴を確認しましょう。

【参考情報】『65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 第8版』日本呼吸器学会|日本感染症学会|日本ワクチン学会
https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/65yrs_vaccine_ver8_20260401u.pdf

4.接種を受けられない方と注意が必要な方

ワクチン接種の際の注意を促す
肺炎球菌ワクチンは多くの方にとって感染症予防の選択肢になりますが、体調や持病によっては当日の接種を見合わせる場合があります。

接種前には、現在の体調、アレルギー歴、持病、内服薬を確認しておきましょう。

4-1.接種を受けられない方

・発熱している方
・重い急性疾患にかかっている方

これらに当てはまる方は、治ってから接種を受けます。

また、ジフテリアトキソイド(ジフテリア毒素を無毒化したワクチン成分) によってアナフィラキシーを起こしたことが明らかな方、医師が接種不適当と判断した方は接種を受けられません。

当日体調が悪いときは、無理に接種せず、予約先や自治体の案内に従って対応しましょう。

4-2.接種前に相談が必要な方

・免疫不全と診断されている方
・心臓・腎臓・肝臓・血液の病気がある方
・予防接種後にアレルギー症状が出たことがある方
・けいれんの既往がある方
 
など、これらに当てはまる方は、接種前に医師へ相談してください。

PCV20の成分やジフテリアトキソイドにアレルギーを起こすおそれがある方、血小板減少症や凝固障害がある方、抗凝固療法を受けている方も注意が必要です。

お薬手帳や病名が分かる資料を持参すると、相談しやすくなります。

4-3.接種後に起こりうる副反応

接種後には、接種部位の痛みや圧痛、赤み、腫れ、筋肉痛、疲労感、頭痛、関節痛などがみられることがあります。

多くは数日で落ち着きますが、強い症状が続く場合や、息苦しさ、全身のじんましん、ぐったりするなどの症状が出た場合は、早めに接種した医療機関へ連絡してください。

頻度は不明ですが、ショック、アナフィラキシー、けいれん、血小板減少性紫斑病などの重大な副反応が起こる可能性もあります。

接種後はすぐに予定を詰め込みすぎず、体調の変化を確認しやすい日に受けると安心です。

【参考情報】『Pneumococcal Vaccine Safety』CDC
https://www.cdc.gov/vaccine-safety/vaccines/pneumococcal.html

5.インフルエンザワクチンとの関係と確認手順


高齢者の感染症対策では、肺炎球菌ワクチンだけでなく、毎年のインフルエンザワクチンも重要です。

どちらも「重症化を防ぐ」という意味で役割がありますが、対象となる病原体は異なります。接種時期や体調を見ながら計画しましょう。

5-1.接種間隔の考え方

現在の日本のルールでは、異なる種類のワクチンを接種する場合、注射生ワクチン同士を接種するときは27日以上あける必要があります。それ以外の組み合わせでは、一律の日数制限はありません。

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンは、どちらも注射生ワクチンではありません。

そのため、制度上の一律の日数制限はありませんが、同じ日に受けるか別日にするかは、体調や副反応の確認をふまえて医師と相談して決めましょう。

【参考情報】『ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/rota_index_00003.html?utm_source=chatgpt.com

5-2.65歳になったら確認したいこと

65歳を迎えたら、まず自治体からの案内や接種券を確認します。

次に、過去に肺炎球菌ワクチンを受けたことがあるか、受けた場合はワクチン名と接種日を確認しましょう。

分からない場合は、過去に接種した医療機関、自治体の予防接種担当窓口、健康手帳などを確認します。

確認しておきたいポイントは、次の3つです。

・65歳の定期接種対象に該当するか
・過去にPPSV23、PCV13、PCV15、PCV20などを受けたことがあるか
・費用、接種場所、予約方法が自治体でどのように案内されているか

5-3.ワクチンだけに頼らない肺炎予防

肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による重症感染を防ぐための大切な方法ですが、肺炎予防はそれだけで完結しません。

インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの流行期には、手洗い、換気、人混みを避ける工夫も役立ちます。

◆「肺炎の知識と予防」について>>

また、高齢者では誤嚥性肺炎にも注意が必要です。

食事中にむせる、飲み込みにくい、寝ている間に咳き込むことが増えた場合は、口腔ケアや食事姿勢の見直しも大切です。

ワクチン、生活習慣、口腔ケアを組み合わせて、肺炎のリスクを下げていきましょう。

◆「高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐ実践ガイド」はこちら>>

6.おわりに

健康のためにワクチン接種や食事環境の改善をしている高齢夫婦
2026年度から、高齢者の肺炎球菌ワクチン定期接種はPCV20を1回受ける制度に変わりました。

65歳を迎えた方は、自治体の案内、費用、接種場所、過去の接種歴を確認しましょう。

すでに接種したことがある方や持病がある方は、自己判断せず、接種記録をもとに医師へ相談することが大切です。

肺炎予防は、ワクチンと日頃の体調管理を組み合わせて考えていきましょう。

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