ブログカテゴリ
外来

インフルエンザと風邪の違いや見分け方とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年02月05日

熱が出たり、咳が続いた時、真っ先に疑う病気は風邪でしょう。しかし、インフルエンザをはじめ、風邪とよく似た症状が現れる病気は他にもあります。

この記事では、インフルエンザの症状を説明しながら、似たような症状が現れる病気との違いについて説明します。

1.インフルエンザと風邪・4つの違い

インフルンザと風邪・4つの違い

風邪とインフルエンザの症状はよく似ています。しかし、症状の強さや、症状が現れるスピードやタイミングに違いがあるので、そこが見極めのポイントとなります。

1-1.症状が出るタイミング

インフルエンザは、38℃以上の高熱や寒気、関節痛、筋肉痛、頭痛、全身のだるさなどが「急激に」「強く」現れるのが特徴です。

通常は10日前後で症状が落ち着きますが、肺炎や脳炎などの合併症を引き起こし、重症化することがあります。

【参考資料】『Flu Symptoms & Complications』CDC(Centers for Disease Control & Prevention)
https://www.cdc.gov/flu/symptoms/symptoms.htm

風邪でも発熱や体の痛みが現れることはありますが、インフルエンザよりは症状の出方がゆるやかで、症状も軽いことがほとんどです。また、重症化することはあまりありません。

インフルエンザでも風邪と同じように、のどの痛みや鼻水・鼻づまり、咳、お腹の不調といった症状が現れることがありますが、高熱や体の痛みの「後から」「遅れて」出てくるのが特徴です。

1-2.流行時期

普通の風邪は季節を問わず、1年中かかる恐れがありますが、インフルエンザは流行する季節がだいたい決まっています。

日本では例年11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えます。

ただし、それ以外の時期でも感染はすることはあるので油断は禁物です。

1-3.治療薬

風邪はインフルエンザに比べると症状は軽いのですが、症状を抑える薬はあっても、有効な治療薬はありません。

一方、インフルエンザは症状が現れてから12時間~48時間の間に抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、症状の悪化を防ぐことができる可能性が高くなります。

◆「インフルエンザの治療薬」について>>

1-4.診断のしやすさ

風邪を引き起こすウイルスには、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなどがありますが、原因のウイルスを特定することは困難です。

しかしインフルエンザは、症状が現れてから12~24時間後に迅速診断キットで検査すれば、その場で簡単に結果が出ます。

◆「インフルエンザの検査」について>>

2.インフルエンザと似た症状が出る風邪以外の病気

インフルエンザと似た症状が出るその他の病気

熱が出たり、全身のだるさがあっても、風邪やインフルエンザとは別の病気にかかっていることもあります。

そこで、よく似た症状が現れる病気を紹介します。

2-1.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマという微生物によって起こる呼吸器の感染症です。

発熱や全身のだるさのほか、乾いた激しい咳がしつこく長く続くのが特徴です。

小学生以上の子どもや若者に多くみられますが、成人や高齢者がかかることもあります。

多くの人はマイコプラズマに感染しても、気管支炎などの軽い症状で済みますが、時に重症化して肺炎になることもあります。その場合は、抗菌薬(抗生物質)を使用して治療します。

「風邪が治ったのに咳だけが続いている」というときは、マイコプラズマ肺炎の疑いがあるので、呼吸器内科を受診するとよいでしょう。

◆「マイコプラズマ肺炎」について>>

2-2.溶連菌感染症

溶連菌感染症とは、溶血連鎖球菌(溶連菌)という細菌によって起こる感染症です。

発熱や全身のだるさのほか、咽頭炎や扁桃炎による喉の痛みが現れますが、咳や鼻水が出ることはあまりありません。

全身の発疹や、舌の表面にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」という症状が現れることがあります。2歳から10歳くらいの子どもに多く見られますが、大人の間で流行した例もあります。

病院での検査は、のどの奥を綿棒でこすって、そこについたものに細菌があるかどうかを調べる方法が一般的です。検査の結果は5~10分くらいで、すぐに分かります。

症状は抗菌薬(抗生物質)を飲めば2~3日で治まりますが、急性腎炎やリウマチ熱などの合併症を防ぐため、しばらく抗菌薬を飲み続ける必要があります。

【参考資料】『こどもに多いのどの病気 溶連菌感染症のおはなし』シオノギ製薬
https://wellness.shionogi.co.jp/infections/child/streptococcal.html

2-3.麻しん(はしか)

麻しんは(はしか)は、麻しんウイルスによって引き起こされる病気です。

発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が出て、38℃前後の熱が2~3日続くほか、口の中に「コプリック斑」という白いブツブツができることがあります。

それからいったんは熱が下がることもありますが、すぐに39℃以上の高熱と発疹が現れ、1週間以上続きます。

つらい症状を和らげる薬はあっても、麻しんそのものを治す薬はないので、かかってしまったらこまめに水分を補給して、安静に過ごして回復を待ちましょう。

麻しんは感染力が非常に強い病気なので、疑わしい症状が現れてもすぐには病院に行かず、まず電話をして、麻しんの疑いがあることを伝えてから受診して下さい。

受診の際は、電車やバスなどの公共交通機関は使用しないでください。また、スーパーやコンビニなど人の集まる場所には立ち寄らないでください。

麻しんは先進国であっても1000人に1人の割合で死亡する恐ろしい病気で、妊婦がかかると流産や早産の恐れもあります。しかし、ワクチンを接種すれば予防することができます。

【参考資料】『麻しんについて』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html

2-4.風疹

風疹は、風疹ウイルスによって起こる感染症です。

感染すると、小さく赤い発疹が全身に広がるほか、38℃前後の熱が出たり、耳や首の後ろのリンパ節が腫れることがあります。

症状は麻しん(はしか)に似ているものの比較的軽く、感染しても症状が出ない場合もあります。

しかし、大人がかかると発熱や発疹が長引き、重症化する恐れがあります。

妊婦が風疹にかかると、胎児に「先天性風疹症候群」という合併症が生じ、赤ちゃんが難聴や白内障、先天性心疾患などの症状を持って生まれてくる恐れがあります。

風疹はワクチンを接種すれば予防することができます。女性だけではなく、男性も接種しておくと感染拡大を防ぐことができます。

【参考資料】『風しんについて』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index.html

2-5.その他

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)、りんご病(伝染性紅斑)、手足口病などの病気でも、高熱や体の痛み、風邪のような症状が現れることがあります。

また、ダニなどの虫に噛まれて感染する病気でも、風邪やインフルエンザによく似た症状が見られます。

◆「咳が続くときに心配な病気」について>>

3.まとめ~インフルエンザの特徴と風邪との違い

・インフルエンザは、高熱や体の痛み、全身のだるさなどが急激に強く現れるのが特徴。

・インフルエンザは、強い症状の後に、咳や鼻水など風邪のような症状が遅れて現れる。

・インフルエンザは、11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎える。

・インフルエンザには有効な治療薬があるが、風邪には症状を抑える薬しかない。

・インフルエンザは簡単な検査で判定できるが、風邪のウイルスは特定が難しい。

・マイコプラズマ肺炎、溶連菌感染症、麻しん、風疹などの病気でも、風邪やインフルエンザのような症状が見られる。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階