咳が止まらない…うつる病気とうつらない病気
新型コロナウイルス感染症の大流行により、こまめな手洗いやマスクの着用、人との距離を保つことで、感染から身を守ろうという意識が浸透しました。
その一方で、咳が出ることであらぬ疑いをかけられ、差別を受ける人も出るという問題も起こっています。
咳に過敏に反応してしまう気持ちは、身を守るために必要かもしれませんが、咳の出る病気には、うつるものとうつらないものがあることも知っておきましょう。
1.咳でうつる可能性のある病気
咳でうつる可能性がある病気は「感染症」です。
【参考情報】『Bacterial vs. viral infections: How do they differ?』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/infectious-diseases/expert-answers/infectious-disease/faq-20058098
新型コロナウイルス感染症は、ウイルスによる感染症の一種であり、飛沫に含まれるウイルスが体内に侵入することで「うつる」恐れがあります。
風邪もやインフルエンザウイルスも、咳によってうつることのある感染症です。
結核も、咳でうつる病気のひとつです。患者数は減少傾向にありますが、2021年の罹患率は、人口10万人に対して9.2人で、特に60歳以上の死亡割合が増加しています。
【参考情報】『2021年 結核登録者情報調査年報集計結果について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000175095_00007.html
咳やくしゃみをすると、唾液の中に含まれる細菌やウイルスが飛散します。それらの飛沫に、直接あるいは間接的に(手に付着してその手で目や口を触るなど)触れると、病原体が体内に侵入して感染症が広がっていきます。
2.咳からはうつらない病気
咳が出る病気でも、感染症でなければ、人にうつりません。
例えば、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の主な症状も「咳」ですが、これらの病気の原因は、アレルギーや有害物質などで、細菌やウイルスではありません。
その他、花粉症などのアレルギー反応によって咳やくしゃみが出るという人も多いですが、うつる病気ではありません。
とはいえ、近くで咳をしている人が、はたして喘息なのか感染症なのかを区別することはできませんし、されて気持ちがいいものではありません。
咳が出ている人は、自分自身や社会全体を守るためにもマスクを着用するのがマナーです。
◆「喘息発作やウイルス感染を予防する、マスクの付け方と選び方」>>
3.咳エチケットについて
「咳エチケット」とは、咳やくしゃみが出る時に、ウイルスや細菌が広がることを防ぐための対策です。
特に、電車の中や職場、学校など、人が集まるところで実践することが重要です。
3−1.正しい咳エチケット
厚生労働省からは、3つの方法が推奨されています。
1.マスクをする
2.ティッシュやハンカチを使って口と鼻を覆う
3.上着の内側や袖を使って口と鼻を覆う
いずれの方法も、飛沫が飛び散らないように、口から鼻までをしっかりと覆って行いましょう。
3−2.間違った咳の方法
悪い例は、
・口や鼻などを覆わずに咳やくしゃみをする
・咳やくしゃみを手のひらで押さえる
咳やくしゃみを手で押さえると、手に大量のウイルスが付着します。それらのウイルスが、手を介してドアノブや蛇口などさまざまな場所に付着し、他人に間接的に感染していく恐れがあります。
咳エチケットの目的は、「病気を他人にうつさない」ことです。
自分に病気の症状がなくても、ウイルスを保菌(ウイルスを持っている状態)している可能性を念頭に置いて、咳エチケットを守ることが重要です。
人に病気をうつさないために、ひいては世界中にウイルスを蔓延させないために、一人ひとりが咳エチケットを徹底することが大切です。
【参考情報】『咳エチケット』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html
4.おわりに
咳エチケットや手洗いなど、感染対策の基本が社会に浸透することは、人類にとって非常に有意義なことです。
しかし、咳が出る=うつる病気という誤解から、咳で困っている人への差別や偏見が生まれることは問題です。
咳でうつる病気とうつらない病気が存在するという事実を学び、偏見をなくすこともまた、咳エチケットのひとつと言えるのではないでしょうか。