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結核を疑ったら、迷わず呼吸器内科で受診を

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年11月07日
結核菌1

かつて「不治の病」と恐れられた結核ですが、戦後に死亡者は大きく減りました。しかし、結核が過去の病気になったわけではありません。

欧米では、結核罹患率(新規・再発の発生率)が人口10万人あたり10例未満の「低まん延国」が大半を占めます。一方、日本は長らく10例以上の水準にあり、中まん延国と位置づけられてきました。

2023年の罹患率は約9.3例/10万人と、低まん延国に近い水準になりましたが、それでも年間1万人規模の新規患者が発生しており、高齢者や免疫力が低い人を中心に注意が必要です。

この記事では、結核についての基本的な内容から治療方法までを幅広く解説します。咳や微熱が続いている人や、風邪のような症状がなかなかよくならない人は、ぜひ読んでください。

1.結核とは

結核は過去の病気であると認識されがちですが、世界的に見ると、死亡原因のトップ10にランクインしているメジャーな病気です。

世界の死因ベスト10

【参考情報】WHO Global Tuberculosis Report 2019
https://www.who.int/tb/publications/global_report/en/

先にも述べたように、日本は結核の中蔓延国であり、過去の病気という認識は正しいとは言えません。

結核(肺結核)とは「結核菌」による感染症であり、肺が結核菌感染によって炎症を起こし、咳や痰などの風邪のような症状から、痰に血が混じるような症状や呼吸が苦しくなるなどの重篤な症状を発現する可能性もあります。

また、結核菌による感染は肺だけにとどまらず、全身の臓器に広がる恐れもあります。それだけではなく、結核は「空気感染」する病気として知られており、感染者(感染者の全員が菌を体外に放出するわけではありません)が咳をすることで、結核菌が空気中に撒き散らされ、空中でふわふわ浮いている結核菌を他の人が吸い込むことによって感染が拡大していきます。
 
新型コロナウイルス感染症の大流行によって「3密」という言葉が誕生しましたが、結核の感染対策においても、コロナウイルスと同様に3密を避けることがとても重要になります。

2.結核の原因について

結核菌は空気感染(飛沫核感染)することが分かっており、結核を発病した患者の咳やくしゃみを通して、人から人へと感染が広がっていきます。

結核菌

【参考情報】公益財団法人結核予防会
https://www.jatahq.org/about_tb/

とはいえ、結核菌に感染した人のすべてが発症するわけではありません。多くの場合、感染しても体の免疫機能が適切にはたらいて発症を防止してくれます。このように、免疫によってブロックされた結核菌は、長い間冬眠状態となります。

しかし、加齢や他の病気など、さまざまな理由で免疫力が低下すると、体内で冬眠状態だった結核菌が目を覚まし、活動を再開する可能性があります。感染から数年から数十年後に発症するという症例も存在するため、「結核に感染した記憶がない」からといって、結核であることを否定できるわけではありません。

免疫機能の低下のほか、過度なストレスや喫煙などの生活習慣も結核のリスクを上げるといわれているため、規則正しい生活習慣を送ることはとても重要です。

【参考情報】大塚製薬『結核の感染経路と意外な感染場所』
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/tuberculosis/infection/

3.結核の検査と治療について

結核は咳や痰、発熱や倦怠感など、風邪のような症状から始まります。そのため、これらの初期症状の段階で、患者本人が結核を疑うことはまず難しいでしょう。

たとえ医師であったとしても、経験を積んだ呼吸器内科医でなければ、初期症状だけで結核を見分けるのは困難です。

もしも2週間以上続くしつこい咳や血が混じった痰、呼吸困難感などの気になる症状がある場合は、すぐに呼吸器専門医のいる医療機関を受診してください。

呼吸器内科では、まずは胸部エックス線検査(レントゲン検査)やCT検査を行います。また、痰を採取して、顕微鏡検査や培養試験で結核菌が含まれるかどうかの検査をする場合もあります。その他、血液検査を行うことで、より詳しい感染の状況を把握することができます。

◆「呼吸器内科で行われる検査」について>>

もし仮に結核と診断されたとしても、きちんと治療をすれば治すことは可能です。状態に応じて薬は使い分けられますが、基本的には3~4種類の抗生物質を組み合わせて治療します。

結核治療でもっとも重要なことは、「用法用量を守って6〜9ヶ月間、薬を飲み続ける」ということです。

治療の途中にもかかわらず自己判断で服薬を止めてしまうと、結核が完全に治りきらないだけではなく、結核菌に抵抗力がついて、薬が効かない「耐性菌」になってしまう恐れがあります。

医学の進歩によって、結核は治せる病気にはなりましたが、長期間しっかりと薬を飲み続けることが非常に重要なのです。

【参考資料】
・今日の治療薬2020(南江堂)
・今日の治療指針2020(医学書院)

4.おわりに

結核は過去の病気ではない、ということがおわかりいただけたでしょうか。しかし、適切な診断と治療によって、結核は治る病気であることもまた事実です。

そのためには、患者と専門家が協力し合い治療を行うことがなにより大切です。結核を疑ったら、迷わず呼吸器専門医のいる呼吸器内科を受診することをおすすめします。

◆「咳が止まらない時に心配な病気の症状・検査・治療」>>

◆「その咳の原因、呼吸器内科で検査しましょう」>>

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