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外来

咳が止まらない・痰がからむ・息苦しいは、COPDかもしれません

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2020年05月09日
COPD

年齢を重ねるにしたがって、

「階段の上り下りで息が切れる」
「最近、咳や痰がよくでる」
「重たい荷物を持って歩くと息苦しくなる」

といった症状が気になるという方。

実は、歳のせいだと思ってしまいがちなその症状は、タバコを長年吸ってきた方に多くみられるものです。

みなさんは、「COPD」という病名を聞いたことがあるでしょうか。

COPDとは、慢性閉塞性肺疾患<Chronic(慢性)Obstructive(閉塞性)Pulmonary(肺の)Disease(病気)>のことで、以前は「肺気腫」や「慢性気管支炎」という病名で呼ばれていました。

有名人では、落語家の桂歌丸さん、過去には俳優の宇津井健さんや植木等さんなどが、
この病気でお亡くなりになっています。

COPDは、さまざまな要因で肺の働きが悪くなり、呼吸がしにくくなってしまう病気で、
放っておくと呼吸困難で寝たきりになったり、最悪の場合命を落としたりすることもあります。

そこで今回は、今現在タバコを吸っている人や昔吸っていた、という人にぜひ知っておいてほしい
COPDのおそろしさと早期治療のすすめについてお伝えします。

1.COPDは世界の死亡原因の第4位

2005年のWHO(世界保健機関)の統計によれば、COPDによる世界の死亡者数は年間約300万人で、死亡原因の第4位を占めている非常に深刻な病気です。

厚生労働省「人口動態統計の概況」によると、2015年1年間の日本でのCOPDによる死亡者数は15,756人(日本国内の死亡原因10位)でした。

世界の割合からすると日本人には比較的少ない病気だと今までは考えられていましたが、本当はCOPDなのにそうと診断されていなかったり、病院に行かずに放置していたりという隠れたCOPD患者数は530万人以上にのぼると言われており、日本でも段々重要視されるようになってきました。

世界的にみてもCOPDの患者数、死亡者数はともに急増しているため、このままいけば2030年にはCOPDは世界の死亡原因の第3位になると推測されています。

COPD患者は中高年に多く、病院を受診した患者さんのうち、男性の78%、女性の70%が65歳以上です。

COPDは長期間の喫煙が原因で発症し、40歳代からだんだん増え始めて60~70歳代で急激に増加することが順天堂大学医学部の福地氏らによる大規模な調査研究によって近年わかりました。

そのため、COPDは“肺の生活習慣病”と呼ばれています。

2.COPDになる最大の原因は「タバコ」

COPDは空気中の有害物質を吸い込むことで発症しますが、最大の原因はなんと言っても「タバコ」です。

COPDで通院している人の90%以上が、今現在もタバコを吸っている人、あるいは過去にタバコを吸っていたことがある人です。

タバコには、ニコチンやタール、ヒ素、一酸化炭素、アンモニアをはじめ、約200種類もの有害物質が含まれています。
そしてこれらの有害物質が火で燃やされることで、さらにやっかいな有害物質に変化していきます。

タバコを吸わない人が他人のタバコの煙を吸う「受動喫煙」が身体に害を及ぼすことが近年になってよく知られるようになりましたが、
このタバコの煙には、喫煙者が口から吸い込む煙に比べて、ニコチンは3倍、一酸化炭素は5倍、アンモニアは50倍、発がん性物質は3~20倍も多く含まれているのです。

たとえ自分はタバコを吸わなくても、身近にタバコを吸っている人がいればCOPDを発症するリスクがあるということです。

3.タバコ以外にCOPDを引き起こす原因

3−1.微粒子の吸入

粉塵の多く舞うところでマスクを着けずに働いている人や、煙を繰り返し吸うような職場で働く人は、常に危険にさらされていると言えます。

特に煙は体に害のある活性酸素を発生させます。
この活性酸素が肺の細胞を傷つけてしまうのです。

3−2.遺伝的体質

“α1アンチトリプシン欠乏症”という遺伝的な病気が1963年に欧米で最初に報告されました。
これはα1アンチトリプシンという血中の重要な糖タンパクが生まれながらに不足していることが原因となり、若いうちから重いCOPDを発症してしまうというものです。

日本ではとても珍しい症例ですが、この疾患の発見によってCOPDに体質(遺伝)が関係していると考えられるようになりました。
親兄弟にCOPDが多いという人は、かかりやすい家系だということが考えられます。

3−3.肺の成長、発達が妨げられた

人間はおなかのなかにいる胎児の時に、肺となる組織が作られます。
その大切な時期に何らかの原因で呼吸器の成長が妨げられると、気管支の数が不足するなどの影響が出てしまいます。

また、呼吸をする上で重要な役割をする肺胞は妊娠5ヶ月頃に作られ始めますが、完成するのは18才ぐらいになってからです。

このことからも、子どもの受動喫煙や妊娠中の喫煙、未成年の喫煙が、肺の正常な発達をいかに妨げてしまうかということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

育ち盛りの子どもにとっては、タバコの煙や大気汚染は肺の発達に非常に悪い影響を及ぼすのです。

3−4.喘息

喘息は、気管支に炎症が起こることによって空気の通り道が細くなる病気です。
急にひどく咳き込んだり、呼吸をするたびにヒューヒュー、ゼーゼーと笛が鳴るような音が聞こえたりするのが特徴です。
「喘息」についての詳しい記事を読む>>

子どもの頃に小児喘息だった人が大人になってタバコを吸い始めると、COPDを発症する確率が高いと言われています。

4.COPDは肺の中でこのように進行していく

肺をはじめ、呼吸器は体の中にある臓器ではありますが、呼吸によっていつも外の空気にさらされているのと同じような状態にあります。
そのため、タバコなど体に害のある煙を吸うと気道や肺胞に炎症がおきて肺の働きが悪くなり、咳や痰、息切れなどの症状が出てくるのです。

4−1.自覚症状がないままゆっくり進行する

COPDは発症後ゆっくり進行するため、最初の頃は自覚症状がほとんどありません。
坂道や階段の上り下りでの息切れや8週間以上続く咳・痰が特徴ですが、
このような症状はよくあることだと思い、つい見過ごされがちです。

COPDは進行性の病気ですから、治療を受けずに放っておくと、咳・痰・息切れといった症状がどんどん悪化し、元の状態に戻ることが難しくなってしまいます。

4−1−1.喫煙歴20年以上の人は要注意

COPDは、タバコを吸い始めて20年目頃から危険領域に入るとされています。
例えば20歳でタバコを吸い始めた人は、40歳くらいからCOPDのリスクが高くなっていると考えてください。

咳込みながらもタバコを吸い続けたり、風邪でもないのによく咳や痰が出たりする経験はありませんか?
それでもかまわずタバコを吸い続けていると、咳や痰がますますたくさん出るようになり、ちょっとの階段や坂道の上り下りでも息切れがしやすくなってきます。

当院のCOPD患者さんの多くも「いつから息切れが始まりましたか?」と聞いてもハッキリと答えられない方が多いのですが、実際それくらい少しずつ、しかし症状は確実に進行していきます。

4−1−2.ある時急激に悪化する

息切れがだんだんひどくなっていき、そのうち平地を歩く時でも息切れがして途中で休んで呼吸を整えなければならなくなってきます。

そして50歳~60歳になる頃から、咳や痰、息切れが急激に悪化する「増悪(ぞうあく)」という一時的な症状の悪化がたびたび起こるようになります。
増悪は年に数回起こりますが、この時に病院に行かなかったり適切な治療が行われなかったりすると、肺の機能が劇的に低下し、日常生活を普通に送ることすら難しくなってきます。

また、ほかの臓器に何らかの持病がある場合、そちらも併せて重症化してしまうことがありますので注意しなくてはいけません。

5.COPDを放っておくと、どうなるか

それでは、COPDだと気付かなかったり、気付いているのに治療をしないで放っておいたりしたら、どうなってしまうのでしょうか。

5−1.COPDが引き金で「動脈硬化」が進む

COPDによって体内に酸素が少ない状態が長く続くと、心臓から肺へ向かって流れる肺動脈が細くなり、「肺高血圧症」という状態になります。
すると、肺動脈の中の圧力が上がって心臓にかかる負担が大きくなるため、心不全などを引き起こしやすくなります。

5−2.「骨粗しょう症」になる

骨粗しょう症はカルシウムが減って骨が弱くもろくなり骨折しやすくなってしまう病気です。これにはタバコが大きく影響しています。

咳や息切れなどで呼吸が苦しくなることで、運動不足になったり、食事が取れなくなって栄養不足になることも骨粗しょう症の原因になります。

さらに、骨粗しょう症が原因で背中が曲がり横隔膜の動きが悪くなると、ますます呼吸がしづらい状況になります。

また、骨折した箇所があると、痛みを避けるために咳や痰を出すことを我慢してしまい、その結果痰が肺の中に溜まって感染症が起こりやすくなることもあります。

5−3.「胃潰瘍」や「がん」が隠れていることも

COPDの方は胃潰瘍になりやすいとも言われています。
メカニズムははっきりとは分かっていませんが、タバコが胃潰瘍を引き起こしやすいことは知られているので、その影響があるかもしれません。

また、COPDの方は同時にがんにもかかっていることがしばしば見受けられます。
特に肺がんを併せ持っていることが高い割合で見られますが、これはCOPDの患者さんは長期にわたってタバコを吸っているヘビースモーカーであることが多いためだと考えられます。

肺がん以外にも、喉頭がん、食道がん、肝臓がんなどがタバコと関わりが深いことが報告されています。

6.COPDを疑ったら早めの検査・治療を

肺という臓器は複雑な構造をしており、病気が進行して広い範囲が壊れてしまうと、もう元の健康な状態に戻すことはできません。
そのためにも早期発見、早期治療が重要なポイントになります。

COPDの診断や治療方針を決めるためにはさまざまな検査をしますが、その検査には特殊な機器を使用するため、呼吸器の診療科がある病院や専門医のいるクリニックに行く必要があります。
その検査結果を元に医師が専門的な視点から診察し、長期的な治療計画を立てていきます。

6−1.COPDを診断するための検査

診断の重要な決め手になるのが、「呼吸機能検査」です。

呼吸機能検査にもいろいろありますが、COPDの診断には肺の中にある空気をどれだけ多く、速く吐き出せるかを調べる「スパイロメトリー」という肺機能検査をします。

検査は5分から10分程度で終わります。
この検査で、吐く息の速度や量が基準値を下回ったら、COPDと診断されます。

スパイロメーターで検査を行うと、自動的に「肺年齢」が計算できるようになっています。
肺年齢は、検査結果の「1秒量」の数値と年齢、身長、性別などから計算し、肺の機能が同姓、同年齢の人と比べてどのくらい違うのかを数値化したものです。

肺の機能は、25歳をピークに健康な人でも徐々に低下していくものですが、タバコを吸い続けていたり肺に病気があったりすると、機能が低下するスピードが速くなります。
肺年齢を調べることは、特に「肺の生活習慣病」「タバコ病」といわれているCOPDを早期に発見することにもつながります。

スパイロメトリー以外にも、胸部エックス線検査や血液検査、心電図、モストグラフや呼気NO検査などで気管支ぜんそくなどの他の呼吸器系の病気と見分けたり、別の病気が隠れていないかを調べたりします。

6−2.COPDの治療は、「タバコを吸わない」ことが大前提

治療で一番大切なことは、なんと言っても完全に禁煙することです。

日本たばこ産業(株)の「2016年全国たばこ喫煙者率調査」によると、日本人成人男性の約30%、成人女性の約10%がタバコを吸っており、その中の男性4人に1人、女性3人に1人が「タバコを辞めたい」と思っているようです。

しかし実際には、長くタバコを吸っていればいる人ほど「ニコチン依存症」に陥っているため、自力でタバコを辞めることはなかなか難しいものです。

6−3.本気でタバコを辞めたいなら「禁煙外来」へ

自分だけの努力でタバコを辞める自信のない方は、医療機関での禁煙治療=「禁煙外来」を受診することをおすすめします。

禁煙外来では健康保険が適用されますので、禁煙治療にかかる費用の負担を抑えることができます。

ただし、保険適用での禁煙治療にはいくつかの規定がありますのでご注意ください。

1. 1年以内に保険適用の禁煙治療を受けていないこと
2. ニコチン依存症のスクリーニングテスト(質問表)で5項目以上あてはまること
3. 1日の平均喫煙本数×喫煙年数が200以上であること
(2016年より35歳未満には上記の条件はなくなりました)
4. 直ちに禁煙を始めたいという意志があること
5. 禁煙治療受診に関する文書に同意していること

保険適用の禁煙補助薬には、貼り薬の「ニコチンパッチ」と内服薬の「チャンピックス」があります。
ニコチンパッチやニコチンガムはドラッグストアなどで購入することも出来ますが、効き目が強い用量のニコチンパッチは医療機関の処方箋が必要です。

~当院でも、禁煙治療を行っています~
当院でも、禁煙外来を随時受け付けています。
禁煙について豊富な知識を持つ医師や医療スタッフが、禁煙成功に向けて誠心誠意サポートいたします。

6−4.禁煙と合わせて行う治療

COPDの治療には禁煙することがまず第一ですが、それだけでCOPDが治るわけではありません。
患者さんの病状によって、以下のような治療を併せて行っていきます。

6−4−1.薬物療法

薬物療法では、狭くなっている気管支を広げる「気管支拡張薬」を中心とした吸入薬を息切れの強さに応じて処方します。
また、COPDとぜんそくを併せ持っている患者さんには「吸入ステロイド」を併用します。
これらの薬は、症状の変化に関係なく時間を決めて毎日使用します。

そのほか、効き目が長く続く内服薬も夜間の咳の発作を防ぐのに有効です。

COPDに使用される薬は、ここ2、3年の間にも新しい薬が使われるようになり、様々な種類があります。
医師が診察し、患者さん一人ひとりの状況にあった薬を選んでいきます。

6−4−2.運動療法(呼吸リハビリテーション)


多くの生活習慣病では「適度な運動」が大切であることは皆さんもご存知だと思いますが、それはCOPDも同じです。
 
身体を動かすことで呼吸に関係する筋肉が鍛えられますし、風邪などの感染症に負けない体づくりにもなるからです。

COPDの方が運動療法を行う際には、病状に応じた運動方法を専門の知識を持った医師や看護師、呼吸療法士などにアドバイスを受けながら日常生活に組み入れていくことが大切です。
 
具体的には、息切れを軽くする呼吸法や呼吸の訓練、呼吸体操や痰の出し方など日常生活で出来ることを身につけていきます。
例えば、散歩の時は口すぼめ呼吸(口笛を吹くようにゆっくりと息をはき切り、自然に新鮮な空気を吸い込む)を意識すると、息切れしにくくなります。

COPDになっても安静にするのではなく運動によって筋力や体力をつけて、日常生活を少しでも快適に過ごせるようにすることが目標です。

6−4−3.在宅酸素療法

COPDが進んでしまうと、肺での酸素と二酸化炭素の交換が上手くできずに、血液の中の酸素が不足してしまいます。
そのためにちょっと動いただけでも息切れが出て、思うように生活することが出来なくなってしまうのです。

「在宅酸素療法」とは、自力の呼吸だけでは足りない酸素を補うために、「酸素供給装置」を使って自宅にいながら酸素を吸入する治療法です。
十分な酸素を吸うことで全身に酸素が行き届くため、心臓や体の様々な臓器の負担が少なくなります。
その結果、つらかった日常の動作がしやすくなり、体力の低下を防ぐことができます。

入院の必要がないため、日常生活や職場復帰が可能になるというメリットがあります。また、医師によって酸素療法が必要と認められ場合には健康保険が適用されます。

6−4−4.外科的療法

COPDによって広く膨らみすぎた肺胞を切り取ってしまい残りの肺胞や気管支を圧迫されている状態から助けるという外科手術が必要な場合もあります。

7.おわりに

COPDは、仕事を定年になる年代の方を苦しめるとてもやっかいな病気です。

COPDに限らないことですが、慢性の病気は医師だけが頑張ってもどうにもなりません。
患者さんご自身が病気のことをよく理解し、禁煙や日常生活の送り方など、治療に前向きに取り組んでいただくことがとても大切です。
息切れや痰、咳など気になる症状がある方や、禁煙したいけどなかなか一歩が踏み出せない、という方は、ぜひ一度当院を受診してみてください。

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