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新型コロナにも影響?喫煙の重篤なリスク

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2022年06月21日
禁煙

世界的パンデミックを起こした「新型コロナウイルス感染症」において、喫煙者が重症化・死亡する危険性は非喫煙者の3倍以上であると報告されています。

世界保健機関(WHO)もCOVID-19対策としての禁煙を強くすすめる声明を出しています。

「吸うと気持ちが落ち着く」
「唯一のたのしみだから」
「やめたらストレスが溜まって逆にからだに悪い」

このようなセリフに、心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でも、そのタバコがあなたやあなたの大切な人の健康を確実にむしばんでいると知っても、あなたはタバコを吸い続けますか?

1.タバコは「百害あって一利なし」

2017年の世界保健機関(WHO)の報告によると、タバコが原因で亡くなる人は世界中で年間約700万人にも上ります。
これは死亡原因の第2位に位置し、医療費の負担や生産性の低下などの経済的な損失は年間約155兆円にもなると言われています。

1-1.タバコがもたらす体への害

(1)吸う人にとっての害
タバコの煙には、なんと約200種類もの有害物質が含まれており、そのうちの約40種類が発がん物質です。
さらにその中でもっとも有害性が高いのが、ニコチン・タール・一酸化炭素です。

(2)周りにいる人への害(受動喫煙)
タバコを吸わない人でも、知らないうちに「喫煙」していることがあります。
「自分はタバコを吸わないから、他人が吸っていてもいなくても関係ない」と思っていませんか?

タバコを吸わない人が吸っている人のタバコの煙を吸い込んでしまうことを、「受動喫煙」と言います。

他の人が吸っているタバコの先から出る煙(副流煙)には、吸っている人が直接吸い込む煙(主流煙)よりも高い濃度の有害物質が含まれています。

先ほど、タバコが原因で世界中で年間約700万人が亡くなっていると言いましたが、そのうちの約89万人は受動喫煙が原因の非喫煙者だということです。

受動喫煙によって、喘息の悪化や肺がん、脳卒中、心筋梗塞などのリスクが高くなったり、妊婦さんや新生児では流産や早産、乳幼児突然死症候群を引き起こしたりするリスクがあることを覚えていてください。

1-2.喫煙習慣がまねく主な病気

1-2-1..COPD(慢性閉塞性肺疾患)

大気汚染やタバコの煙などの有害物質を長年吸ったことにより、肺に炎症が起きて機能が低下し、息切れや咳、痰が慢性化する病気です。

現に、COPD患者の約9割が喫煙者であり、10年以上タバコを吸い続けている人や、1日に何十本もタバコを吸うヘビースモーカーはさらにCOPDになるリスクが高くなると言われています。

また、自分がタバコを吸わない人でも、長年の受動喫煙によってCOPDを発症してしまうことがあります。

COPDははっきりとした症状があるわけではなく、長引く咳や痰、息切れなどのごくありふれた症状のため、自覚がありません。
そして一度COPDにかかったら、肺が元の健康な状態に戻ることはないのです。

COPDはタバコを吸えば吸うほど悪化していくため、肺の残りの機能を維持していくためには禁煙が不可欠です。

◆「COPD」について>>

1-2-2.肺がん

日本人の10大死因のうち、喫煙に関する病気はがん・心臓病・脳卒中・肺炎などが挙げられますが、中でも急上昇しているのが、「肺がん」です。

タバコを吸っていない人と比較すると、発症率は男性で4.4倍 女性で2.8倍と言われています。

さらに、肺がんの中でも喫煙と関係の深い扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんのリスクは、男性で11.7倍、女性で11.3倍と言われています。

1-2-3.喘息

呼吸をする際に空気の通り道となる「気道」が炎症を起こして狭くなり、呼吸が苦しくなったり激しい咳や痰が出たりする病気です。
最悪の場合、死に至ることもあります。

喘息の発症原因はアレルギーや遺伝、ウイルス感染などさまざまですが、一度発症してしまうと、タバコの煙を吸い込むだけでもどんどん症状が悪化していきます。

◆「喘息のタイプ」について>>

2.タバコはどうしてなかなかやめられないのか

やめようと思えばいつでもやめられるだろう・・・と思って軽い気持ちで吸い始めたのに、いつの間にかタバコと離れられなくなってしまうのはなぜなのでしょうか。

2-1.タバコは麻薬のようなもの

禁煙しようと思ってもついまた吸ってしまうのは、タバコの煙に含まれている「ニコチン」が、麻薬のような強い依存性を持っているからです。
タバコの依存には、2種類あります。

2-1-1.タバコ依存(心理的依存)

生活習慣(朝起きたらまず一服、食後はとりあえず一服)や、気分的なもの(イライラした時はとりあえず一服)など、タバコがあれば安心できる状態のことを言います。

2-1-2.ニコチン依存(身体的依存)

タバコを吸うとニコチンが数秒で脳に届き、快感(タバコがおいしい、ホッとするなど)を感じるドーパミンという物質が放出されます。
すると、その快感が忘れられずまたタバコが吸いたい衝動にかられて、一本、もう一本・・・というやめられない悪循環に陥る状態のことを言います。

~タバコ依存度チェック~
まずはあなたの依存がどの程度かチェックしてみましょう。
ニコチンチェック

<3点以下>・・・タバコ依存
ニコチン依存度はまだ低いです。今のうちに生活習慣を改善すれば、禁煙できる可能性があります。

<4~5点>・・・タバコ依存+ニコチン依存
ニコチン依存度は中程度です。今やめないと、どんどんニコチン依存度が増加します。今すぐ禁煙を始めることをおすすめします。

<6点以上>・・・ニコチン依存
ニコチン依存度が高いです。禁煙を成功させるには治療が必要かもしれません。

2-2.タバコをやめられない5つの言い訳

(1)「ストレス解消になるから、やめられない」
忙しく仕事をして疲れた時や、イライラした時に一服のタバコでホッと一息・・・。
でも吸い終わって30分~1時間くらいすると体内の「ニコチン」が切れて、またイライラしたり落ち着かなくなってきたりします。

この「ニコチン切れ」のストレスを解消するためには、ニコチンを補充するしかありません。
つまり、タバコを吸うことがさらなるストレスを作り出しているということになります。

(2)「たまにしか吸わないから大丈夫だろう」
毎日吸っているわけじゃないから…とか、1日1、2本しか吸わないし…などと思っていませんか。
むしろ長い時間「ニコチン切れ」の状態にあると、たまに吸うタバコはおいしく感じて深く吸ってしまったり、根本まで吸ってしまったりするものです。
本数が少ないからといって健康上のメリットはあまり期待できないと言っていいでしょう。むしろ余計にタバコから離れることが難しくなってしまいます。

(3)「喫煙所はコミュニケーションの場だから、やめられない」
タバコを吸う人にとって、喫煙所は仲間とのコミュニケーションや情報交換の場になることもあるでしょう。
でも実際には、喫煙所以外でもそのような機会は作れるはずです。

(4)「タバコをやめると太るから、やめられない」
タバコをやめると胃腸の働きが改善して消化吸収能力が良くなるため、体重が増えることがあります。
しかし、多少の体重増加よりも、タバコがもたらす健康被害のほうがはるかにリスクが高いことは事実です。

(5)「手持ち無沙汰になるのがいやだから、やめられない」
長い間の喫煙行為が当たり前になっていると、無意識にタバコに手を伸ばすことも多いと思います。
そのクセを見直して、本やスマホなど、タバコに置き換えるものを見つけることで解決しましょう。

3.あなたがタバコを本気でやめたいなら

3-1.新型タバコはカラダに良いのか?

新型タバコとは、乾燥した葉っぱや液体を電熱線などで熱してエアロゾル(霧状)化する装置のことです。
海外ではニコチン入りの液体も販売されていますが、日本では薬事法によって販売が規制されています。

日本ではタバコの葉の成分を摂取する加熱式タバコが人気になっていますが、残念ながら体に良いとは言えません。

◆「新型タバコ(加熱式・電子)がもたらす健康被害」>>

3-2.「1本だけなら」に注意

せっかく禁煙が順調に進んでいるにもかかわらず、「ちょっと1本だけ」と思って吸ってしまうことはありませんか。

でも、ちょっと考えてみてください。
初めてタバコを吸い始めたときも、「ちょっと1本だけ」という軽い気持で始めてはいなかったでしょうか。

「今までちゃんと禁煙できているんだから、久しぶりに1本くらい吸ったって大丈夫だろう」
といって吸ってしまったがために、あっという間に禁煙前の状態に引き戻されたという禁煙失敗例が本当に多いのです。喫煙は連鎖反応ですから、今までの苦労を水の泡にしないようにしましょう。
1本だけ

3-3.本気でやめたいなら、「禁煙外来」へ

自力でタバコを辞める自信のない方には、医療機関での禁煙治療をおすすめします。
禁煙外来では健康保険が適用されますので、禁煙治療にかかる費用の負担を抑えることができます。
ただし、保険適用での禁煙治療にはいくつかの規定がありますのでご注意ください。

・1年以内に保険適用の禁煙治療を受けていないこと
・ニコチン依存症のスクリーニングテスト(質問表)で5項目以上あてはまること
・35歳以上の方で、1日の平均喫煙本数×喫煙年数が200以上であること
・直ちに禁煙を始めたいという意志があること
・禁煙治療受診に関する文書に同意していること

3-3-1.治療のメインは薬物療法

保険適用の禁煙補助薬には、貼り薬の「ニコチンパッチ」と内服薬の「チャンピックス」があります。
いずれも、医療機関の処方箋が必要です。

「ニコチンパッチ」・・・ニコチンを含んだ貼り薬。
1日1回、腕やお腹、背中などに貼ります。
ニコチン量の多いタイプから始めて、だんだんと少ないものに減らしていきます。

長所は、人に気付かれにくいことやいつでも使用できることです。
短所は、皮膚が弱くかぶれやすい人は使用できないこともあることです。
毎日同じ場所に貼らず、場所を変えることで皮膚のかぶれを防げることもあります。

「チャンピックス」・・・ニコチンを含まない飲み薬。
少ない量から始めて、最初は1日1回3日間、その後1日2回、食後に飲みます。

長所は、飲むだけなのでかんたん、そして「ニコチン」が含まれていないことです。
短所は、眠くなる作用があるので車の運転や注意の必要な機械の操作を避けなければいけないことです。

※ドラッグストアなどで買える薬について
「ニコチンパッチ」と「ニコチンガム」はドラッグストアなどでも購入することができますが、「ニコチンパッチ」は医療機関で処方するものよりニコチンの用量が少ないものになります。

ニコチンパッチ

「ニコチンガム」はニコチンを含んだガムで、口の粘膜からニコチンが吸収されます。
1回の使用量は必ず1個とし、禁煙し始めてタバコを吸いたくなったら、ニコチンガムを噛みます。
通常のガムとは噛み方がちがうので使用方法をよく理解してから使いましょう。

3-3-2.禁煙治療の流れ

当院で行なっている禁煙治療は、治療開始日を含んだ月から12週間の間に、約2週置きに5回通院し、薬物療法と併せて禁煙に対する疑問や不安などをカウンセリングしながら進めていきます。

禁煙治療で一番大切なことは、自分の判断で治療を途中で辞めてしまわないことです。

おわりに

タバコは確実にあなたの体に害を及ぼします。
どうか、一日でも早くタバコをやめられることをおすすめします。
長年吸っていたとしても、決して遅いということはありませんので、あきらめずにチャレンジしましょう。

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