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咳が止まらないのは、お酒のせい?アルコール誘発喘息について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年06月10日
アルコールと喘息

お酒を飲んだ時に、咳が出て止まらなくなってしまった経験はありませんか?

楽しくお酒を飲んでいたら、急に咳が出始めて、気がつくと咳が止まらなくなる…こんな経験がある人は、もしかすると「アルコール誘発喘息」かもしれません。

タバコやハウスダスト、ストレスや肥満など、さまざまな日常生活と密接に結びついている喘息ですが、実はアルコール(お酒)とも関係していることが知られています。

そこでこの記事では、アルコール誘発喘息について紹介しながら、アルコールとの上手な付き合い方について解説していきます。

1.アルコール誘発喘息とは

飲酒
アルコール誘発喘息とは、アルコール(お酒)を飲んだ際に、咳や喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸)などの症状が現れる疾患で、お酒を飲んでいるときに突然発症するという特徴があります。

1-1.症状

喘息は、気道(空気の通り道)に炎症が起こることによって気道が狭くなり、冷たい空気やホコリなど、わずかな刺激にも敏感に反応する病気です。

気道に炎症が起こる原因としては、アレルギーや喫煙、大気汚染、ストレスなどが挙げられます。

アルコール誘発喘息もやはり「喘息」であり、通常の喘息と同様に、咳や喘鳴、呼吸困難などの症状が出現します。

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

◆「喘息のタイプ〜原因別・年齢別」について>>

1-2.原因

なぜ、アルコールによって喘息の症状が引き起こされるのでしょうか。

お酒として摂取したアルコールは、肝臓で速やかに「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。

アセトアルデヒドは人体にとって有害な物質で、お酒で気分が悪くなったり、顔が赤くなる原因にもなります。

【参考情報】『Investigating the Mechanisms of Alcohol-induced Asthma』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8568140/

アセトアルデヒドには「ヒスタミン」という物質を増やす働きがあります。ヒスタミンには、気道を狭くする作用があります。

【参考資料】アルコール誘発性喘息:浅井 貞宏 アレルギー 57(1), 22-31, 2008
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/57/1/57_KJ00004840309/_pdf

お酒が弱い人は、アセトアルデヒドを分解する力が弱いために気分が悪くなるだけではなく、アセトアルデヒドによって増加したヒスタミンによって、アルコール誘発喘息も発症しやすいのです。

お酒が弱い人だけではなく、〝お酒が強い人〟にも喘息発作のリスクはあります。

過度な習慣的飲酒は肥満の原因となり、肥満が喘息と関与していることはよく知られています。

この場合は「アルコール誘発喘息」と定義しませんが、肥満傾向の人は、喘息のリスクが上がる可能性もあることを知っておいてください。

【参考情報】『Prospective study of body mass index, weight change, and risk of adult-onset asthma in women』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10573048/

またアルコールは、お酒だけではなく、ケーキ、ゼリー、味噌、醤油、みりん、健康飲料といった食品や調味料にも含まれていることが多いため、アルコール含有食品にも注意が必要です。

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

◆「喘息が肥満で発症・悪化する危険性!ダイエットの効果は?」>>

2.お酒を飲むと咳が止まらなくなる人は

お酒と喘息
では、お酒を飲むと咳が止まらなくなるという人や、咳が出てもお酒は止めたくない、という人は、どうすればいいのでしょうか。

2-1.まずは呼吸器内科で検査を

お酒を飲むと咳が止まらなくなるという人は、まずは呼吸器内科の専門医に相談することをおすすめします。

お酒を飲んで咳が出るからといって、アルコールが原因とは限らないかもしれません。詳しい検査によって、咳の原因を探ることが何よりも重要です。

◆「呼吸器内科とはどんなところか」について>>

◆「呼吸器内科で行われる検査」について>>

2-2.お酒との付き合い方を考える

乾杯
お酒を飲むことでストレスを発散したり、コミュニケーションを円滑にして人間関係を構築するなど、飲酒にはさまざまなプラス面があります。

科学的根拠の有無は抜きにしても「酒は百薬の長」ということわざもあるように、お酒と上手く付き合うことで、人生が豊かになるという人はたくさんいます。

その一方で、アルコールで持病が悪化したり、もともと体質に合わない人がお酒を飲むことで、健康に悪い影響が出ることも事実です。

持病に喘息がある場合、喘息発作を引き起こす原因としてアレルゲン、運動などがありますが、アルコールも喘息発作・悪化の原因となることがあります。

実際、飲酒後に喘息が悪化すると訴える喘息患者さんも多いです。

時にはノンアルコール飲料で楽しむなど、今一度「お酒との付き合い方」を見直してみましょう。

3.おわりに

「お酒を飲むと咳が止まらない」と感じたことがある人は、一度呼吸器内科の専門医に相談してみましょう。

もし、アルコール誘発喘息なら、喘息の治療薬が有効です。

すでに喘息と診断されている方は、悪化予防のためにもアルコールなどの発作原因を避けていくことが大切です。

◆「咳が止まらない時に心配な病気の症状・検査・治療」>>

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