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喘息が肥満で発症・悪化する危険性!ダイエットの効果は?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年11月20日

肥満が喘息の発症や悪化の原因になることをご存知ですか? 特に内臓脂肪と喘息には深い関係があることがわかっています。

この記事では、肥満が喘息に悪影響を及ぼす理由について解説します。さらに、ダイエットにより、喘息の症状が改善される可能性についても説明します。

肥満と喘息の関係について理解を深め、ぜひ体調管理に役立ててください。

1.喘息とはどのような病気か


喘息は、空気の通り道である気道が、慢性的な炎症を起こして狭くなることで、呼吸が困難になる発作が起こりやすくなる病気です。

発作がない時でも、気道の炎症は続いています。炎症で敏感になった気道は、わずかな刺激にも反応して筋肉が収縮し、以下のような症状が現れます。

 ・呼吸が苦しくなる
 ・激しい咳が出る
 ・急に動けなくなる
 ・胸が痛くなる
 ・背中に張りを感じる

子どもの喘息のほとんどは、アレルギーが原因です。大人の喘息は、子どもに比べると原因がはっきりしない場合が多いのですが、ストレスや過労、風邪などの呼吸器疾患をきっかけに発症することがあると考えられています。

◆「喘息」について詳しく>>

2.肥満とはどのような状態を指すのか


「体重が多い」「太って見える」人が肥満とは限りません。肥満とは、「体脂肪」が過剰に蓄積された状態を指します。

2-1.肥満の医学的な定義

医学的には肥満は、体重を身長の2乗で割ったBMI(Body Mass Index)という指数を用いて判断します。BMIが25以上だと、肥満と判定されます。

【参考情報】『BMIと適正体重』高精度計算サイト|カシオ計算機
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732

ただし、BMIは身長と体重から単純に計算された値なので、これだけでは筋肉が多いのか、脂肪が多いのかが区別できません。

体脂肪率も測定できる体重計が市販されているので、目安を知るために利用するのもいいでしょう。

2-2.肥満の原因

食べ物から摂取するエネルギーが、運動や生活などで使われる消費エネルギーを上回る状態が続くと、体脂肪が過剰に蓄積して肥満となります。

つまり、肥満の主な原因は、食べ過ぎと運動不足です。その他、ストレス、睡眠不足、不規則な生活、早食い、加齢なども原因となります。また、遺伝的要素や代謝の異常が関与していることもあります。

【参考情報】『身体活動とエネルギー代謝』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-003.html

2ー3.肥満による健康への悪影響


肥満は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こす可能性があります。これらの生活習慣病は、さらに動脈硬化や狭心症、心筋梗塞のリスクを高めることにもなります。

◆「糖尿病」について詳しく>>

また、足腰にも大きな負荷がかかるので、腰痛や関節痛の原因であるともいえるでしょう。

さらに、のどの周りについた脂肪で気道が圧迫され狭くなると、睡眠時無呼吸症候群という病気になり、眠っている間の呼吸が妨げられることがあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群」について詳しく>>

3.なぜ、肥満が喘息に悪影響を及ぼすのか


肥満のタイプは、内臓脂肪型と皮下脂肪型に分けられます。

内臓脂肪型は、腸の周囲などに脂肪が蓄積する肥満で、下半身よりもウエストまわりが太い体型になります。

【参考情報】『内臓脂肪型肥満』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-051.html

皮下脂肪型は、太ももやお尻まわりなどの皮膚の下に脂肪がたまる肥満で、いわゆる「下半身太り」の体型になります。

【参考情報】『皮下脂肪型肥満』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-054.html

これら2つの肥満のうち、喘息は内臓脂肪型肥満と深い関係があるとされています。

内臓脂肪型肥満が喘息の悪化につながる理由としては、大きく2つあります。

1つは、お腹の膨らみが横隔膜を押し上げることにより、呼吸機能が低下する影響です。

もう1つは、脂肪細胞が「レプチン」という物質を分泌する影響です。

レプチンが増えると、好酸球という細胞の働きが活発になるのですが、その結果、気道の炎症が促進され、気道が狭くなります。特に、気管支周囲の内臓脂肪が炎症を悪化させると考えられています。

【参考情報】『好酸球とぜん息』国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/kanko/news/10/10-2/10-2-11.html

さらに、肥満を合併した喘息は、ステロイド抵抗性の場合が多く、喘息の治療薬であるステロイド吸入薬が効きにくくなることも指摘されています。

【参考情報】『肥満を有する成人喘息患者の病態と治療への展望』日本呼吸器学会誌2019年8巻6号
https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/008060365j.pdf

4.減量で症状は改善するのか


肥満の喘息患者さんは、治療とともにダイエットを行うことが大切です。肥満の解消により、気道過敏性や呼吸機能の改善、QOLの向上などが期待できます。

内臓脂肪を減らすためのダイエットには、食事と運動が重要な役割を果たします。

食事では、まずは食物繊維を意識して摂りましょう。食物繊維の多い食材はカロリーが低いので、たくさん食べても太りにくく、満腹感も得やすいです。さらに食物繊維には、余分な脂肪の吸収をおさえる効果もあります。

食物繊維が豊富な食材は、野菜や海藻類、豆類です。

【参考情報】『食物繊維の必要性と健康』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html

エネルギーの摂りすぎにも注意をしましょう。
揚げ物やパンにつけるバターなどは、油が多く使用されており、食べ過ぎるとエネルギー摂取が過剰になってしまいます。1日の食事で揚げ物が続かないようにしたり、バターの量を少なくしたりしましょう。

菓子類などの間食を控え、1日3食を主食・主菜・副菜をそろえて摂取しましょう。

タンパク質は、体の筋肉を作る材料となります。肉や魚、卵などからタンパク質をしっかり摂取しましょう。

ジュースや缶コーヒーなどには砂糖が多く含まれています。これらを飲む習慣のある方は、水やお茶などエネルギーのないものに変えるとよいでしょう。

自分がエネルギーを摂りすぎていないか、日々の食生活をしっかり見直すことが大切です。

運動は、有酸素運動を継続的に行うことが重要です。ウォーキング、ジョギング、サイクリングのような、日常に取り入れやすい運動から始めてみましょう。水泳も効果的です。

激しいトレーニングよりも、軽く負荷のかかる運動を、継続して行うのがポイントです。

【参考情報】『Aerobic exercise alone results in clinically significant weight loss for men and women: Midwest Exercise Trial-2』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3630467/

5.おわりに

肥満の喘息患者さんは、食事と生活習慣を見直し、ダイエットに取り組むことが大切です。ダイエットに成功して内臓脂肪が減少すれば、治療効果が高まります。

毎日の食事で食物繊維を意識して摂り、有酸素運動を日常に取り入れてみてください。

健康的な体型を維持して、喘息をコントロールし、健康な人と変わらない生活を送ることを目指しましょう。

◆「食物繊維の多いキノコ」について詳しく>>

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