市販の咳止め薬は効く?効かない?
市販薬は一時的に咳の症状をやわらげるのに効果的です。
「咳が止まらない」「夜中の咳で眠れない」そんな辛い症状に、市販薬は本当に効果があるのでしょうか?
市販薬は一時的に咳の症状をやわらげるのに効果的です。
「大事な仕事がある…」「今日はぐっすり寝たい…」「今日はたのしみたい…」そんな時は、市販の咳止め薬で一時的にしのぎましょう。
しかし、市販薬を常用すると副作用がでたり、一部の成分によって咳が悪化してしまう恐れがありますので、服用には注意が必要です。
そのため、咳が長引いている時は、早めに病院で診てもらうことをおすすめいたします。
この記事では、咳止めの市販薬の選び方や、飲み方、注意点について、解説しています
目次
1.咳とは?その種類や特徴について解説
咳が止まらない症状には、さまざまな原因があります。
咳とは、気道に入ってきたホコリやウイルスを外に出すために自動的におこる防衛機能です。
咳には大きく分けて2つの種類があります。
・乾性咳嗽(かんせいがいそう)
「コンコン」「ケンケン」といった音がする、痰のともなわない乾いた咳のこと。
・湿性咳嗽(しっせいがいそう)
「ゴホゴホ」「ゲホゲホ」といった音がする、痰のともなう湿った咳のこと。
これらの原因として多いものは以下の通りです。
<咳が止まらない原因として多いもの>
・風邪やインフルエンザなどの感染症の後遺症
・アレルギー性の気道炎症
・気道の過敏状態
・環境要因(乾燥、ほこり、煙など)
これらの種類によって、効果的な薬の成分が異なってきます。
咳が止まらない症状別|咳止めの市販薬の選び方
咳止め薬は大きく2つに分かれます。
・中枢性鎮咳薬
脳の咳中枢(せきちゅうすう)に直接はたらきかけて咳を抑える薬。麻薬性と非麻薬性があり、麻薬性は作用が強く副作用が出やすい。代表的な成分にはデキストロメトルファンやジヒドロコデインある。
・末梢性鎮咳薬
気道や肺への刺激をやわらげたり、痰を出しやすくしたりする薬で、去痰薬や気管支拡張薬、漢方薬などがこれに該当する。
【参考情報】『末梢性鎮咳薬とは何か?』福岡県薬剤師
https://x.gd/gvM5x
【参考情報】『鎮咳薬(非麻薬性)の解説』日経メディカル
https://x.gd/hi4Wd
ここからは、症状別にどの咳止め市販薬が効果的なのかを紹介します。
ぜひ、せき止め薬選びの参考にしてください。
2-1.乾いた咳が止まらない場合の市販薬選び
痰を伴わない「コンコン」という乾いた咳が止まらない場合は、「中枢性鎮咳薬」が効果的です。
<中枢性鎮咳薬である市販薬>
・アネトンせき止め錠(麻薬性)
・メジコンせき止め所Pro (非麻薬性)
・新コンタック咳止めW持続性(非麻薬性)
【参考情報】『アネトンせき止め錠の特徴・効能』健康生活byアリナミン製薬
https://alinamin-kenko.jp/products/chingai_kyotan/aneton_tab.html
【参考情報】『メジコンせき止め錠Pro』シオノギヘルスケア株式会社
https://www.shionogi-hc.co.jp/wellness/medicine/mdjp.html
【参考情報】『新コンタックせき止めダブル持続性』CONTAC
https://contac.jp/products/con_sekidome.html
乾性咳嗽には「中枢性鎮咳薬」と覚えておきましょう。
2-2.湿った咳が止まらない場合の市販薬選び
痰を伴う「ゴホゴホ」という咳が止まらない場合は、末梢性鎮咳薬(去痰薬配合)の市販薬を選びましょう。
<去痰薬配合である市販薬>
・ストナ去たんカプセル(去痰成分をダブル配合)
・クールワン去痰ソフトカプセル(痰を出しやすくし咳を緩和)
【参考情報】『ストナ去たんカプセル』佐藤製薬
https://search.sato-seiyaku.co.jp/pub/product/2088/
【参考情報】『クールワン去痰ソフトカプセル』クールワン
https://www.coolone.jp/products/kyotan.html
湿性咳嗽には「去痰薬配合の市販薬」と覚えておきましょう。
湿性咳嗽の方が中枢性鎮咳薬を服用してしまうと、痰の排出が阻害されてしまい、症状が悪化しかねませんのでご注意ください。
3.使ってはいけない薬・やってはいけない服用法
辛い咳の症状を緩和する咳止めですが、使用する際の注意点もあります。
3-1.「コデイン」系の薬は小児には使わない
2019年12月より、12歳未満の小児に「コデイン」という成分を与えることは禁忌となりました。
この決定は、厚生労働省がアメリカFDAの警告を受けて行ったもので、コデイン系の成分が小児に重篤な呼吸抑制を引き起こす可能性があることが判明したためです。
実際に海外では死亡例も報告されており、安全性の観点から使用が厳しく制限されています。
特に乳幼児は、気管や気管支がまだ細くてやわらかいため、より呼吸困難が起こりやすくなります。
コデインは、市販の咳止め薬にもよく使われている成分ですが、喘息の人が服用すると、痰が出にくくなって呼吸困難を起こすことがあります。
12歳未満の小児や、喘息の方は咳止め薬を服用する前に、かならず医師や薬剤師に相談しましょう。
【参考情報】『コデインリン酸塩等の12歳未満の小児における使用の禁忌移行について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000522038.pdf
大人が服用する場合も、眠気を起こしやすい成分でもあるため、服用後は高所での作業や乗り物の運転は控えてください。便秘にもなりやすく、便秘気味な方、痔がある方は服用しないか、水分を多く取るようにしてください。
3-2.咳止め薬と他の薬を同時に使わない
咳止め薬と総合感冒薬を一緒に飲むことは止めてください。総合感冒薬の中にも咳止め成分が入っているので、両方を一緒に飲むと、咳止め成分を摂り過ぎることとなってしまいます。
葛根湯などの漢方薬にも咳止め成分が入っていることがあるので、やはり咳止め薬と一緒に飲むことはしないでください。
咳止め薬と別の薬を一緒に服用すると、薬の成分同士が反応して思わぬ副作用が出ることがあります。また、糖尿病や前立腺肥大症の方は、風邪薬や咳止め薬を飲むと尿が出にくくなることがあります。
<特に注意が必要な組み合わせ>
・咳止め薬と総合感冒薬(風邪薬)
・複数の咳止め薬の併用
・アレルギー薬との併用
持病のある方や妊娠・授乳中の方は、咳止め薬を服用する前に主治医や薬剤師に相談しましょう。
【参考情報】『Pregnancy, breastfeeding and fertility while taking codeine』NHS England
https://www.nhs.uk/medicines/codeine/pregnancy-breastfeeding-and-fertility-while-taking-codeine/#:~:text=Small%20amounts%20of%20codeine%20pass,recommend%20a%20more%20suitable%20painkiller.
咳止め薬が効かないからといって、自己判断で量を増やしたり、色々な種類の市販薬を試したりすることは絶対にしないでください。
上記で述べた通り、咳の原因はさまざまなので、本来の原因と合っていない薬を飲み続けていると、効かないだけでなく病状が悪化してしまう恐れがあるからです。
【参考情報】『市販薬で副作用』国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/pdf/shinsen239.pdf
また、トローチやドロップ剤の咳止め薬を使う場合、ほかの咳止め薬と一緒に服用しないよう注意が必要です。同じ成分を過剰摂取してしまうことを防ぐためです。すでに咳止め薬を服用していて、のどのイガイガが気になる時は、医薬品ではないのど飴を選択しましょう。
3-3.市販薬でも重篤な副作用のリスクがある
市販薬は処方薬と比べて安全だと思われがちですが、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の報告によると、一般用医薬品でも重篤な副作用が発生しており、平成19年~23年の5年間で1,220例の副作用報告があり、うち15例が死亡に至った症例が報告されています。
<市販の咳止め薬で特に注意すべき副作用>
・アナフィラキシーショック(急激なアレルギー反応)
・スティーブンス・ジョンソン症候群(重篤な皮膚疾患)
・肝機能障害
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。
特に皮膚に発疹が出た場合や、呼吸が苦しくなった場合は緊急を要します。
【参考情報】『一般用医薬品により副作用が生じた場合はどうすればよいのですか。』PDCA
https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0041.html
【参考情報】『一般用医薬品による重篤な副作用について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/293-1.pdf
4.おわりに
風邪を引いた時に咳が出るのは、体の中からウイルスなどの異物を排除しようとする自然な反応なので、まずは薬を飲まずに様子をみることをおすすめします。
咳の予防と緩和のために、うがいの徹底、こまめな水分補給や部屋の加湿、マスク着用もおすすめです。
咳止め薬はあくまで、「苦しい」「つらい」「眠れない」時に、一時的に症状をやわらげてくれるものです。
風邪や気管支炎の咳は、2週間程度で治まるのが普通です。
2週間以上咳が続くときは、別の病気である可能性が高いので、まずは呼吸器内科のある病院を受診しましょう。
【参考情報】
『咳事典 咳を科学する-その咳、大丈夫?危険!-』(清益功浩/医薬経済社)
『長引くセキはカゼではない』(大谷義夫/KADOKAWA)