糖尿病治療薬「ジャディアンス」の特徴と効果、副作用
ジャディアンス(エンパグリフロジン)は、SGLT2(エスジーエルティーツー)阻害薬に分類される糖尿病治療薬で、低血糖を起こしにくいのが特徴です。
さらに、1日1回の服用で効果を発揮するため、日常生活に取り入れやすい治療薬です。
この記事では、ジャディアンスの働きや副作用、服用時の注意点について、わかりやすく紹介します。
✅ ジャディアンスとはどんな薬か?
✅ ジャディアンスの効果と副作用は?
✅ ジャディアンス服用のポイント
✅ ジャディアンスに関するよくある質問
「なぜ飲むのか」「いつまで続けるのか」——そんな疑問をお持ちの患者さんとご家族の方へ、治療継続の大切さを伝えるきっかけになれば幸いです。
目次
1.ジャディアンスとはどんな薬か
ジャディアンス独自の仕組みと特徴を、わかりやすく解説します。
1-1.ジャディアンスとは?
ジャディアンスは、SGLT2阻害薬という新しい種類の飲み薬で、血糖値を下げるために使われます。
これまでの多くの糖尿病薬は、インスリンというホルモンの働きを助けることで血糖をコントロールしていましたが、ジャディアンスは別の仕組みで血糖値を下げます。
【参考情報】『T2D & HF Medication | Jardiance® (empagliflozin) tablets』Boehringer Ingelheim
https://patient.boehringer-ingelheim.com/us/products/jardiance/
1-2.ジャディアンスの仕組み
腎臓の中には、SGLT2というたんぱく質があります。このたんぱく質は、本来、尿に出るはずのブドウ糖を体の中に戻す働きをしています。
ジャディアンスは、このSGLT2の働きを抑えることで、余分な糖を尿と一緒に体の外へ出し、血糖値を下げます。
腎臓は1日に約180グラムのブドウ糖をろ過していますが、普段はSGLT2の働きでほとんどが体に戻されます。
ジャディアンスは、このSGLT2の働きを抑えることで、ブドウ糖を尿と一緒に体の外に出します。
1日に排出される糖の量は、だいたい70〜100グラムで、ご飯のお茶碗1杯分以上のエネルギーに相当します。
この仕組みは、血糖値が高くても低くても同じように働くため、インスリンの量や効き目に関係なく効果を発揮します。そのため、肥満やインスリンの効きにくさがある2型糖尿病の方にも効果的です。
1-3.他の糖尿病薬との違い
ジャディアンスは、インスリンの量や効き目に左右されないため、すい臓の働きが弱くなった方でも使いやすい薬です。
さらに、体重の減少や血圧の低下といった、健康に良い影響も期待できます。
また、糖尿病治療薬でよくみられる副作用である低血糖(血糖値が下がりすぎる状態)を起こしにくく、安全性が高いのも特徴です。
2.ジャディアンスの主な効果と臨床試験での実績
ジャディアンスの効果は、国内外のさまざまな臨床試験で確認されています。
・血糖の指標であるHbA1cが平均で0.3〜0.5%下がる
・体重が平均2kg減る
・心臓が収縮するときの数値(収縮期血圧)が数mmHg下がる
EMPA-REG OUTCOME試験という、ジャディアンスが心臓や血管の病気にどれだけ役立つかを調べた大きな研究では、心臓や血管の病気を持つ2型糖尿病の患者さんがジャディアンスを使う、と心不全で入院するリスクが減り、心血管による死亡リスクも38%減少したことが注目されています。
【参考情報】『Empagliflozin Cardiovascular Outcome Event Trial in Type 2 Diabetes Mellitus Patients – EMPA-REG OUTCOME』American College of Cardiology
https://www.acc.org/Latest-in-Cardiology/Clinical-Trials/2015/09/17/10/11/EMPA-REG-OUTCOME
つまり、この薬は血糖を下げるだけでなく、心臓や血管の健康を守る助けにもなるということが証明されたのです。
3.服用方法とポイント
ジャディアンスは、通常1日1回、朝に10mgを服用します。効果が不十分な場合は、医師の判断で25mgに増量されることがあります。
この薬は食事の影響を受けにくいため、朝食の前でも後でも飲むことができますが、服用のタイミングとしては、朝起きてすぐか朝食後に飲むのが一般的です。
もし飲み忘れた場合は、気づいたときにすぐ服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は無理に2回分をまとめて飲まず、次回の分だけ飲むようにしましょう。
【参考情報】『お薬を飲み忘れてしまったら』全国保険健康協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/ishikawa/cat080/20180806-3/20181004003/
ジャディアンスを服用している間は、脱水を防ぐためにこまめな水分補給がとても大切です。目安としては、1日に1.5〜2リットルの水分を摂るとよいでしょう。
特に夏の暑い時期や運動をする時、高齢者の方は脱水になりやすいため、注意が必要です。
また、服用開始直後は、頻尿や尿路感染症、脱水症状などの副作用が起こることがあります。
4.副作用と注意点
ジャディアンスの主な副作用には以下が挙げられます。
・尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)
・性器感染症(カンジダ感染など)
・脱水によるめまい、立ちくらみ
・ケトアシドーシス(まれだが重篤)
脱水のサインとしては、めまいや立ちくらみ、口の渇きなどがあるので、これらの症状を感じたらすぐに医療機関に相談してください。
また、ジャディアンスは利尿作用があるため、利尿剤や降圧剤など他の薬を服用している場合は、医師に必ず伝え、相互作用の有無を確認しましょう。
特に高齢者や腎臓機能が低下している方は、脱水や副作用のリスクが高いため、医師とよく相談しながら服用を続けることが大切です。
服用中に排尿時の違和感、発熱、強い倦怠感がある場合はすぐに医療機関を受診してください。
ジャディアンスは単剤でも使えますが、メトホルミンやDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬などと併用されることがあります。
併用により相乗効果が得られる場合もありますが、低血糖や脱水リスクが高まる可能性もあるため、必ず医師の指導のもとで行う必要があります。
5.ジャディアンスに関するよくある質問
Q1: ジャディアンスはどのくらいの期間飲み続ける必要がありますか?
糖尿病は慢性的な病気なので、基本的には長期間の服用が必要です。自己判断でやめず、医師と相談しながら続けることが大切です。
Q2: ジャディアンスはどのくらいで効果が現れますか?
通常、服用を始めてから数週間で血糖値の改善が見られますが、効果の感じ方には個人差があります。定期的に医師の診察を受けましょう。
Q3: ジャディアンスを飲み忘れたら血糖値はどうなりますか?
1回の服用を忘れてもすぐに深刻な影響は出にくいですが、継続して忘れると血糖コントロールが悪化する可能性があります。なるべく決まった時間に服用しましょう。
Q4: ジャディアンスのほかにも、糖尿病治療に使われるSGLT2阻害薬は?
代表的なものには以下があります。
・スーグラ(イプラグリフロジン)
・カナグル(カナグリフロジン)
・ステグラ(エルグリフロジン)
・フォシーガ(ダパグリフロジン)
これらの薬もジャディアンスと同様に、腎臓での糖の再吸収を抑えて血糖値を下げる働きを持っています。
薬によって特徴や副作用の出方が異なる場合もあるため、医師と相談して適切な薬を選ぶことが重要です。
Q5: ジャディアンスがダイエットにいいって本当ですか?
A: ジャディアンスは糖尿病治療薬ですが、服用により尿から余分な糖が排出されるため、エネルギーの一部が体外に出て体重が減る効果が期待できます。
ただし、ジャディアンスはあくまで糖尿病治療のための薬であり、ダイエット目的での使用は推奨されていません。
健康的に体重を減らすには、食事や運動の見直しと合わせて医師と相談しながら治療を行うことが大切です。自己判断で使用するのは避けましょう。
6.おわりに
ジャディアンスは、膵臓に負担をかけずに血糖を下げるユニークな薬であり、体重減少や血圧低下、心血管リスク低減といった追加効果も期待できます。ただし、適切な服用、脱水予防、副作用への注意が欠かせません。
糖尿病治療は薬だけでなく、生活習慣や医師との継続的な連携によって成り立ちます。正しく理解し、安心して治療を続けることが、将来の健康を守る最大の武器となります。
当院では、ジャディアンスを含む糖尿病治療薬の正しい使用方法に関する指導を行っています。使い方が不安な方はお気軽にご相談ください。