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アトピー性皮膚炎とはどのような病気か~医師が解説する症状と対処法

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりすることを繰り返す、慢性の湿疹を主な症状とする病気です。

この記事では、アトピー性皮膚炎という病気の仕組みや特徴について解説します。

1.アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎は、小児の約10人に1人、20~30歳代でも約9%がかかっているという報告があり、大変よくみられる病気です。

【参考情報】『アレルギー疾患の現状等』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10905100-Kenkoukyoku-Ganshippeitaisakuka/0000111693.pdf

湿疹は左右対称で、額、目や口の周り、耳の周り、首、ひじ・ひざの裏などの関節部分や体幹によくみられます。良くなったり悪くなったりを繰り返し、治りにくいことが多いです。

2.アトピー素因とは

アトピー性皮膚炎の患者さんは、以下のアトピー素因を持っています。

1.家族に気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の病気があるか、自分がこれまでにこれらの病気にかかったことがある。

2.IgE(免疫グロブリンE)抗体という、アレルギー体質の患者さんで高くなる抗体を産生しやすい。

私たち人間の体には、細菌やウイルスのような異物から身を守るために、免疫系という防御システムが備わっています。

しかし、食べ物や花粉など、もともとは害のないものが、免疫のシステムによって有害な異物と判断されると、この異物を追い出すための仕組みが作動して、かゆみやくしゃみなどの不快な症状が生じるのです。

このように、本来は体を守るための免疫系が、不快な症状を引き起こす反応をアレルギーといいます。アトピー性皮膚炎の患者さんにも、このアレルギー反応が生じています。

アトピー性皮膚炎の患者さんに起こるアレルギーの症状は、ダニ、ハウスダスト、ある特定の食べ物や花粉などアレルギーの原因となる物質(これをアレルゲンといいます)が、IgE抗体という免疫に関係するタンパク質と結びついて起きます。

◆「アレルギーの原因・種類・検査・治療の基本情報」>>
https://www.kamimutsukawa.com/blog2/allergies/2368/

3.アトピー性皮膚炎の3つの特徴

アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能の低下、アレルギー炎症、かゆみという3つの特徴を持った病気です。

3-1.皮膚バリア機能の低下

皮膚には、水分を保持したり、外部の刺激から皮膚を守る機能があります。これらの機能を「皮膚バリア」といいます。

アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚バリアの機能が低下しているのですが、バリア機能が弱い皮膚は乾燥しやすい→皮膚が乾燥すると外からの刺激に弱くなる→外からの刺激に弱くなると、さらにバリア機能が低下する、という悪循環で症状が悪化していきます。

また、一部のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、皮膚バリアの主要成分であるフィラグリンの産生障害が認められることが分かっています。

【参考情報】『Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16550169/

3-2.アレルギー炎症

皮膚バリア機能が低下すると、アレルギーの原因物質(アレルゲン)が体の中へ侵入しやすくなります。アレルゲンが体内に侵入してくると、先ほどご説明したように免疫のシステムがアレルギー反応を起こして、アレルゲンを排除しようとします。

ダニや花粉のようなアレルゲンは、Th2型と呼ばれている免疫反応を誘導します。Th2型免疫反応は、表皮角化細胞が産生するTSLP(thymic stromal lymphopoietin)やIL-33といったサイトカイン(免疫細胞が放出するタンパク質)によって誘導されます。

これらのサイトカインに誘導されたTh2細胞は、IL-4、IL-13、IL-5、IL-31といったサイトカインを産生し、皮膚の炎症を引き起こします。さらに、Th2細胞はB細胞を活性化して、活性化したB細胞からIgEが産生されます。

アトピー性皮膚炎の人は、このIgE抗体の数値が高いことが多く、重症の人ほど高いことが知られています。

3-3.かゆみ

かゆみは、炎症の原因となるヒスタミンという物質が細胞から大量に出ることによって引き起こされることが知られています。

しかし、ヒスタミンをおさえる抗ヒスタミン薬がとてもよく効く蕁麻疹と違って、アトピー性皮膚炎のかゆみに対する抗ヒスタミン薬の効果は、患者さんによって差があります。そのため、ヒスタミン以外にもかゆみの原因となる物質があることが予想されています。

例えば、Th2細胞が産生するサイトカインの1つであるIL-31によっても、かゆみが引き起こされることが報告されています。

【参考情報】『Interleukin 31, a cytokine produced by activated T cells, induces dermatitis in mice』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15184896/

また、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、かゆみを伝達する神経のC線維の分布が表皮や角層まで伸びていることもわかっており、これがかゆみをさらに過敏にしているものと考えられています。

【参考情報】『Itch and nerve fibers with special reference to atopic dermatitis: therapeutic implications』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24628070/

4.おわりに

アトピー性皮膚炎の治療には、薬剤のほか、ダニなどアレルゲンを減らす対策や皮膚の清潔やうるおいを保つ習慣も重要です。

良くなるには時間がかかることもありますが、新薬も次々と登場しているので、最新の治療法や自分に合った治療法については医師にご相談ください。

◆「アトピー性皮膚炎を改善するための生活習慣とは?」>>
https://www.kamimutsukawa.com/blog2/allergies/50/

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