アトピー性皮膚炎とはどのような病気か~医師が解説する症状と対処法

監修: 三島 渉(医学博士、横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
呼吸器学会専門医/禁煙学会専門医/アレルギー学会専門医/内科学会認定医
医療法人社団ファミリーメディカル理事長

1. アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりすることを繰り返す、慢性の湿疹を主な症状とする病気です。

小児の約15~25%、成人の約2~3%がかかっているといわれている大変よくみられる病気です。
(Eichenfield LF et al:J Am Acad Dermatol 70:338;2014)

乳児では2ヶ月以上、それ以上の年齢では6カ月以上症状が続くと「慢性」といいます。

湿疹は左右対称で、額、目や口の周り、耳の周り、首、ひじ・ひざの裏などの関節部分や体幹によくみられます。良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、なかなか治りにくいことが多いです。

2.アトピー素因とは

アトピー性皮膚炎の患者さんはアトピー素因を持っています。アトピー素因とは、以下の2つのことを指します。

  1. 家族に気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の病気があるか自分がこれまでにこれらの病気にかかったことがあること
  2. IgE(免疫グロブリンE) 抗体というアレルギー体質の患者さんが高くなる抗体を産生しやすいこと

私たち人間の身体には、細菌やウイルスのような身体にとって有害な異物から身を守るために免疫系という防御システムが備わっています。

しかし、食べ物や花粉など、もともとは私たちの身体にとって害のないものが、免疫のシステムによって有害な異物と判断されると、この異物を追い出すための仕組みが作動します。この反応によって、かゆみやくしゃみなどの不快な症状が生じるのです。本来は体を守るための免疫系が、身体にとって不快な症状を引き起こす反応をアレルギーといいます。

アトピー性皮膚炎の患者さんにもこのアレルギー反応が生じています。

アトピー性皮膚炎の患者さんに起こるアレルギーの症状は、ダニ、ハウスダスト、ある特定の食べ物や花粉などのアレルギーの原因となる物質(これをアレルゲンといいます)が、IgE抗体という免疫に関係するタンパク質と結びついて起きます。アトピー性皮膚炎の人は健康な人に比べ、IgE抗体の数値が高く出ることが多いのです。

3. アトピー性皮膚炎の3つの特徴

アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能の低下、アレルギー炎症、かゆみという3つの特徴を持った病気です。
(Kabashima K: New concept of the pathogenesis of atopic dermatitis: interplay among the barrier, allergy, and pruritus as a trinity. J Dermatol Sci, 2013;70:3-11)

3-1.皮膚バリア

皮膚バリアには,主に角質層バリアとタイトジャンクションバリアの2種類があります。このバリアは、水分の保持、外界からの異物侵入の防御などの物理的バリア機能をもっています。アトピー性皮膚炎の患者さんは、水分を保持して皮膚のうるおいを保ったり、外部の刺激から皮膚を守る角質層バリアの機能が低下しています。

角質層バリアの機能が弱い皮膚は乾燥しやすく、皮膚が乾燥すると外からの刺激に弱くなり、さらにバリア機能が低下する、という悪循環をたどり、症状が悪化していきます。

一部のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、角質層バリアの主要成分であるフィラグリン産生障害が認められることが分かっています。
(Palmer CN, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, et al: Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis. Nat Genet 2006;38:441-446)

3-2.アレルギー炎症

皮膚バリア機能が低下すると抗原(アレルゲン)が、皮膚から身体の中へ侵入しやすくなります。人間は身体にとって異物であるアレルゲンが侵入してくると, 先ほどご説明したように免疫・アレルギー反応をおこして身体の外へ排除しようとします。

ダニや花粉のようなアレルゲンは,タンパク抗原として作用するだけでなく,Th2型と呼ばれている免疫反応を誘導します。Th2型免疫反応は、表皮角化細胞が産生するTSLP(thymic stromal lymphopoietin)やIL-33といったサイトカインによって誘導されます。これらのサイトカインに誘導されたTh2細胞は、IL-4,IL-13,IL-5,IL-31といったサイトカインを産生し、皮膚の炎症を引き起こします。さらに、Th2細胞はB細胞を活性化して、活性化したB細胞からIgEが産生されます。

3-3.かゆみ

かゆみは、炎症の原因となるヒスタミンという物質が細胞から大量に出ることによって引き起こされることが知られています。しかし、ヒスタミンをおさえる抗ヒスタミン薬がとてもよく効く蕁麻疹と違って、アトピー性皮膚炎のかゆみに対する抗ヒスタミン薬の効果は患者さんごとに差があります。そのため、ヒスタミン以外のかゆみの原因となる物質があることが予想されています。

最近、Th2 細胞が産生するサイトカインの1つである IL-31によって痒みが引き起こされることが報告されました。
(Dillon SR, Sprecher C, Hammond A, et al: Interleukin 31, a cytokine produced by activated T cells, induces dermatitis in mice. Nat Immunol, 2004;5:752-760)

また、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、かゆみを伝達する神経のC線維の分布が表皮や角層まで伸びていることもわかっており、これが痒みをさらに過敏にしていると考えられています。
(Tominaga M, Takamori K: Itch and nerve fibers with special reference to atopic dermatitis: therapeutic implications, J Dermatol, 2014;41:205-212)

参考文献
  • Eichenfield LF et al:J Am Acad Dermatol 70:338;2014
  • Kabashima K: New concept of the pathogenesis of atopic dermatitis: interplay among the barrier, allergy, and pruritus as a trinity. J Dermatol Sci, 2013;70:3-11
  • Palmer CN, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, et al: Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis. Nat Genet 2006;38:441-446
  • Dillon SR, Sprecher C, Hammond A, et al: Interleukin 31, a cytokine produced by activated T cells, induces dermatitis in mice. Nat Immunol, 2004;5:752-760
  • Tominaga M, Takamori K: Itch and nerve fibers with special reference to atopic dermatitis: therapeutic implications, J Dermatol, 2014;41:205-212

監修者プロフィール

三島 渉 (医学博士、横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
呼吸器学会専門医/内科学会認定医/禁煙学会専門医/アレルギー学会専門医
医療法人社団ファミリーメディカル理事長

平成9年横浜市立大学医学部卒業。呼吸器内科専門医として活躍する一方、現代医学の限界を痛感。医学研究による解決を目指し、横浜市立大学大学院入学。分子細胞生物学を専門として、がん転移に関連する細胞機能の研究を行い、平成17年医学博士取得。

その後再び臨床の現場に戻るも、症状がひどくなってからでないと来院してもらえない医療の世界の構造的な問題を認識。

「症状がまだ軽いうちに気軽にかかってもらえるクリニックをつくろう」と決意し、平成19年横浜市南区に呼吸器内科専門の「上六ツ川内科クリニック」を開院。病気が進行すると改善が難しい呼吸疾患の早期発見・早期治療の重要性を伝えている。

現在、毎月500人以上の喘息患者と100名以上のCOPD患者を診療。禁煙治療にも力を注ぎ、呼吸器疾患で苦しむ人のいない社会の実現を目指している。年間約100名の禁煙指導を行い、84.6%の禁煙成功率を達成している。

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