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糖尿病治療薬「メトホルミン」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年06月10日

メトホルミンは、血糖値を下げる効果がある飲み薬です。

運動療法や食事療法、あるいはすい臓からのインスリンの分泌を促すSU(スルホニルウレア)薬を試しても血糖値が下がりにくい2型糖尿病の方に使用されます。

最近ではダイエット目的で処方されることもありますが、副作用のリスクがあるため、慎重に使用する必要があります。

この記事では、メトホルミンの効果や副作用、使用上の注意事項などを解説します。

1.メトホルミンとはどのような薬か


メトホルミンは、ビグアナイド系に分類される血糖降下薬です。肝臓で糖を新たに作る「糖新生」という過程を抑えることで、血糖値を下げる効果があります。

【参考情報】『Biguanides』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/25004-biguanides

この作用は、インスリンの分泌を必要としないため、インスリンの効きが悪い「インスリン抵抗性」を持つ2型糖尿病の方に効果的です。

【参考情報】『Insulin Resistance』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22206-insulin-resistance

2型糖尿病の患者さんの多くは、インスリン抵抗性を持っているため、治療の第一選択薬としてメトホルミンが使われることもあります。

また、メトホルミンには血液中の糖を効率よく利用させる効果や、糖の吸収を抑える働きもあります。

2型糖尿病以外では、インスリン抵抗性を伴う多嚢胞性卵巣症候群の治療にも用いられます。この場合、排卵を促す目的や、卵巣の刺激を目的として処方されることがあります。

【参考情報】『多のう胞性卵巣と言われました。どのような病気ですか』日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/qa/mature/jyosei191211/

メトホルミンは、ジェネリック医薬品の名称です。『メトホルミン塩酸塩錠MT「メーカー名」』『メトホルミン塩酸塩錠「SN」』といった名前で処方される薬が、メトホルミンに該当します。

もともと、メトホルミンには「メトグルコ」と「グリコラン」という2種類の先発品があるのですが、ジェネリック医薬品として処方される場合、メトグルコのジェネリックは「MT」、グリコランのジェネリックは「SN」が付いた名称になります。

どちらも同じメトホルミン成分を含むため効果は同じですが、含有量や服用方法、また薬として申請された際の効能や効果に異なる点があります。

◆「糖尿病」についてくわしく>>

2.メトホルミンの使い方


この章では、メトホルミン塩酸塩錠MT「メーカー名」(メトグルコのジェネリック医薬品)とメトホルミン塩酸塩錠「SN」(グリコランのジェネリック医薬品)両方の服用方法を解説します。

どちらも錠剤のため、水またはぬるま湯で服用してください。

2-1.メトホルミン塩酸塩錠MT「メーカー名」の服用方法

先発品・メトグルコのジェネリック医薬品の服用方法は、以下の通りです。

【2型糖尿病】

・成人(15歳以上)
まず、1日あたりメトホルミンの成分量500mgから始め、1日2~3回、食直前または食後に服用します。

「食直前」とは、食事の5分以内を指します。食直前に服用する場合は、食卓についたらすぐに服用してください。

その後、徐々に服用量を増やし、通常は1日750~1500mgの範囲で継続して服用します。

ただし、血糖値の下がり具合に応じて、最大で1日2250mgまで量を増やすことがあります。

・10歳以上15歳未満の子ども
まず、1日あたりメトホルミンの成分量500mgから始め、1日2~3回、食直前または食後に服用します。

その後、効果を見ながら量を調節し、1日500〜1500mgの範囲で継続して服用します。

ただし、血糖値の下がり具合に応じて、最大で1日2000mgまで量を増やすことがあります。

【多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発・調節卵巣刺激】

まず、他の排卵誘発薬や卵巣刺激薬と併用しながら、メトホルミンの成分量500mgを、1日1回服用します。

その後、副作用の程度を確認しながら増量し、1日1500mgを上限として、1日2〜3回に分けて服用し、排卵までに中止します。

2-2.メトホルミン塩酸塩錠「SN」の服用方法の服用方法

先発品・グリコランのジェネリック医薬品は、15歳以上の2型糖尿病患者のみが使用できます。

【2型糖尿病】
まず、1日あたりメトホルミンの成分量500mgから始め、1日2~3回、食後に服用します。

その後、効果を見ながら、最大で1日750mgまで増量することが可能です。

服用量は、効果や副作用、年齢によって異なるため、必ず医師に指示された服用方法を守りましょう。

3.メトホルミンの副作用


メトホルミンの副作用には、次のようなものがあります。

 ・下痢

 ・吐き気

 ・嘔吐

 ・食欲不振

 ・腹痛

 ・低血糖

【参考情報】『低血糖』糖尿病情報センター|国立国際医療研究センター
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/050/05.html

また、めったにありませんが、以下のような重篤な副作用が起きることがあります。

 ・乳酸アシドーシス

 ・肝機能障害

 ・横紋筋融解症

【参考情報】『乳酸アシドーシス』日本救急医学会
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0420.html

低血糖や乳酸アシドーシスは、不規則な食生活や脱水により起きやすくなります。風邪などの体調不良時で飲食が難しい場合は、主治医に相談してください。また、お酒の飲み過ぎにも注意しましょう。

◆「糖尿病の人が知っておきたいお酒の飲み方とは」>>

4.使用上の注意点


通常、メトホルミンは妊娠中や授乳中の女性には使用しません。妊娠中に胎児に影響を与えるリスクがあるため、妊娠の可能性がある場合や妊娠を希望する場合は、事前に医師に相談しましょう。

また、脱水症状を起こしやすい高齢者には、薬の処方が慎重に行われます。特に75歳以上の方には注意が必要です。

【参考情報】『高齢者の脱水』全国訪問看護事業協会
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/dehydration.pdf

メトホルミンによる乳酸アシドーシスは、命にかかわる危険な副作用です。そのため、腎臓、肝臓、心臓、肺に重度の障害がある方や透析を受けている方、手術前後の方、重度の感染症にかかっている方など、リスクが高い人には使用できません。

また、普段メトホルミンを服用している人も、下記に該当する場合は、乳酸アシドーシスを防ぐために服用を一時中断することがあります。

 ・脱水の可能性があるとき

 ・ヨード造影剤を用いて検査をするとき

 ・発熱、下痢・嘔吐、食事がとれない等の体調不良(シックデイ)のとき

【参考情報】『糖尿病患者の皆様へ:今一度シックデイ対策を』日本糖尿病学会
https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=242%C2%A0
 

上記のような場合は、必ず主治医や薬剤師にメトホルミンを中止すべきかどうか相談してください。そのまま服用を続けることもあるため、自己判断で中止しないよう注意しましょう。

また、メトホルミンや糖尿病治療薬を使うと低血糖を起こすこともあります。冷や汗、吐き気、強い空腹感、脱力感などが現れたら、低血糖の初期症状である可能性があるため、安全な場所に座ってブドウ糖やジュース、ラムネなどを摂取してください。

【参考情報】『重篤副作用疾患別対応マニュアル 低血糖』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1d45.pdf

近年では、ダイエット目的の自由診療でメトホルミンが処方されることがあります。メトホルミンの体重増加を抑える作用や副作用である食欲不振を利用したものかと思われますが、本来は疾患の治療に用いる医薬品です。

治療以外の目的でメトホルミンを服用すると、重篤な副作用が起きることもあるため、服用は慎重に判断してください。

5.メトホルミンの薬価


メトホルミンの1錠あたりの価格(2025年6月調べ)は次のとおりです。

 ・メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「メーカー名」 10.4円/錠

 ・メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「メーカー名」 10.4円/錠

 ・メトホルミン塩酸塩錠250mg「SN」 10.1円/錠

先発品を服用したい場合、現在「メトホルミン塩酸塩錠250mgMT『メーカー名』」を服用している方はメトグルコに、また「メトホルミン塩酸塩錠250mg『SN』」を服用している方はグリコランに変更できます。

メトホルミンと同じ成分の市販薬や、血糖値を下げる市販薬は販売されていません。

6.おわりに

メトホルミンが合わない場合、同じ分類のビグアナイド系糖尿病薬であるジベトス(成分名:ブホルミン塩酸塩)が使える場合があります。

また、血糖値を下げる医薬品は数多くあるため、効果・副作用・生活スタイルなどによって変更される場合があります。

糖尿病の治療では、普段の食生活や運動習慣を見直すことが重要です。血糖値や体重の増加が気になる方は、薬物治療と並行して、規則正しい生活習慣を心がけることも忘れないでください。

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