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気管支炎と食事の深い関係

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年10月30日
気管支炎と食事トップ

気管支炎は、気管支に炎症が起きることで発症し、咳や痰、発熱などの風邪に似た症状が出る病気です。

◆「気管支炎」について詳しく>>

気管支炎を予防・治療するためには、ストレスを減らして安静を保ち、十分な栄養をつけて自己免疫力を上げることが大切です。

この記事では、気管支炎の予防としても重要な意味を持つ、食事や栄養についてお伝えします。

1.気管支炎予防にはバランスの良い食事が大事

気管支炎 食事
免疫力を上げて、気管支炎を予防するためには、バランスの良い食事を意識し、総合的に十分な栄養素を摂取して、体の調子を整えることが大切です。毎日の食生活に意識を向け、バランスのよい食事を心がけましょう。

【参考情報】『薬がみえる vol.3』メディックメディア
https://www.byomie.com/products/kusumie3

では、そもそも『バランスの良い食事』とはどのような食事でしょうか。

バランスの良い食事とは、「エネルギーの量が適切」で、「必要な栄養素がしっかりと含まれている」食事のことです。

たとえ体に良い栄養素であっても、エネルギー量が多くなればそれだけ肥満のリスクが上がってしまうため、栄養価が高い食材ばかりをたくさん食べればよいというわけではありません。

普段の食事においては、一日三食を規則正しい時間に食べることや、主食・主菜・副菜をバランスよく食べるなどの工夫が大切であるといえます。

2.栄養素の役割

栄養素
栄養素の役割は大きく3つに分類することができます。

1.体の組織(筋肉、血液、骨など)をつくる栄養素
2.エネルギー源になる栄養素
3.体の調子を整える栄養素

食事で摂取した栄養素は、体を動かすエネルギー源となるだけでなく、筋肉や骨を作り、体の調子を整えるために使われます。

気管支炎の患者さんにとっても、エネルギーを補給し、体の調子を整えるために規則正しい食生活を送ることは、とても大切なことです。

次に、数ある栄養素の中でも特に『エネルギー産生栄養素(三大栄養素)』と呼ばれている、たんぱく質、糖質、脂質について詳しく紹介します。

2−1.たんぱく質

たんぱく質

たんぱく質は筋肉や内臓、髪、爪などの細胞を作るだけでなく、ホルモンや免疫細胞を作る役割も持っています。

◆「たんぱく質」について詳しく>>

たんぱく質は「アミノ酸」という成分によって作られています。その中には、人間が体内で合成(作り出す)することができるアミノ酸と、食事によってのみ摂取できるアミノ酸があります。後者のアミノ酸は『必須アミノ酸』と呼ばれています。

【参考情報】『アミノ酸』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-001

アミノ酸をバランスよく含んだ、良質なたんぱく質を持つ食品には、卵・鶏肉・鮭・納豆などがあります。

2−2.糖質

糖質は主にエネルギーとして使われる栄養素で、ご飯・パン・麺類などといった「主食」をはじめ、果物、芋類などに多く含まれています。

【参考情報】『Carbohydrates』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/carbohydrates.html

体はもとより、脳を動かすための重要なエネルギー源として使われています。不足すると、脳に必要な栄養素が届かなくなり、めまいやふらつきなどの原因となります。

その一方で、糖質を過剰に摂取してしまうと、最終的には脂肪となって体に蓄積し、肥満の原因となるので注意しましょう。

また、糖質をしっかりとエネルギーに変えるためには「ビタミンB1」という栄養素が必要不可欠になります。効率的にエネルギーを生み出すためには、糖質と一緒にビタミンB1を摂取するとよいでしょう。

◆「ビタミンB」について詳しく>>

ビタミンB1が豊富に含まれている食品には、豚肉・うなぎ・豆類などがあり、糖質と上手く組み合わせて食べることで、代謝が高めることができます。

2−3.脂質

ビタミンB
脂質はエネルギー源として使われるほか、さまざまな細胞を作り上げるために使われます。その他、体温を保ち、肌に潤いを与える働きもあります。

そのため、ダイエットなどで過度に脂質を制限すると、逆に健康を損なう危険があります。

脂質の摂り過ぎは肥満の原因になりますが、健康的な肉体のためにも、適切な量は必要不可欠です。

このように、健康を保つためには、たんぱく質・糖質・脂質のエネルギー産生栄養素を『バランスよく摂取する』ことが大変重要になります。

【参考情報】『エネルギー産生栄養素バランス』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586560.pdf

3.気管支炎の症状を和らげる食べ物

気管支炎による咳や痰、のどの不快感を和らげるためには、症状に応じた食材を選ぶことが重要です。

特に炎症を抑える効果のある食材や、のどを潤して粘膜を保護する食材を積極的に摂取しましょう。

3−1.のどを潤す食材

気管支炎の症状をやわらげるには、のどの潤いを保つことが重要です。

ここでは、のどを潤す働きのある食材を4種類紹介します。

はちみつ: はちみつは昔から咳止めとして親しまれており、抗菌作用と保湿作用があることが研究で確認されています。のどの粘膜を潤して炎症を和らげる効果が期待できます。

ただし、はちみつは1歳未満の乳児には絶対に与えないでください。

レンコン: レンコンには消炎作用があり、咳を鎮める効果があるとされています。またレンコンに含まれる粘液成分「ムチン」にのどを潤す効果があります。

鶏卵:卵黄に含まれるビタミンAには、皮膚や粘膜を保護し潤いを保つ働きがあります。免疫力アップにもつながるため、感染症にもかかりにくくなります。

【参考情報】『インフルエンザと風邪(科学的観点からみた風邪に対する補完療法)』厚生労働省eJIM
https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c05/09.html

3−2.抗炎症作用のある食材

青魚に含まれるEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸には、体内の炎症を抑制する物質を作り出し、気道の炎症を和らげる効果があり、以下のような食材に多く含まれています。

青魚:サバ、イワシ、サンマ
植物油:亜麻仁油、えごま油
ナッツ類:くるみ

これらの食材を多く摂取しましょう。

また、ビタミンCとビタミンEは強い抗酸化作用があり、気道の炎症を抑える効果が期待できます。

具体的には以下のような食材に多く含まれています。

ビタミンC:みかん、いちご、キウイ、ピーマン、ブロッコリー
ビタミンE:ナッツ類(アーモンドなど)、植物油(オリーブオイルなど)、かぼちゃ、アボカド

さらに、色の濃い野菜や果物に含まれるポリフェノールにも、抗炎症作用があり、気道の炎症を抑えます。

緑黄色野菜:ブロッコリー、ごぼう、ほうれん草
果物:ブルーベリー、ぶどう、カシス

これらの食材にはポリフェノールが多く含有しています。

◆「ビタミンCのおもな特徴とはたらき」について詳しく>>

【参考情報】『免疫制御システムの名わき役としてビタミンは働く』厚生労働省
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/96/3/96_65/_pdf

3−3.免疫力を高める食材

腸内環境を整える発酵食品は、全身の免疫機能を高める効果があります。

発酵食品は善玉菌を増やし、免疫細胞の働きを活性化します。

<主な発酵食品>
・食品:納豆
・漬物:キムチ、ぬか漬け
・調味料:味噌、醤油

また、きのこも免疫アップに有効で、きのこに含まれるβ-グルカンは免疫力を高める効果があります。

さらに、ビタミンDも豊富で、免疫調節に重要な役割を果たします。

◆「アレルギー体質改善には『善玉菌』」について詳しく>>

◆「腸内環境をアップさせる食事の基礎知識」について詳しく>>

◆「ビタミンD」について詳しく>>

【参考情報】『きのこ』林野庁
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/attach/pdf/0211-9.pdf

4.健康に役立つ食事メニューとは

栄養バランスメニュー

バランスの良い食事をするためには、「何を」「どれくらい」食べればよいかを知る必要があります。そんな時におすすめなのが、厚生労働省の『食事バランスガイド』です。

食事バランスガイドでは、コマのイラストを用いて、「何を」「どれだけ」食べたらよいのかをわかりやすく示しています。

また、毎日の食事を「主食」「副菜」「主菜」「牛乳」「乳製品」「果物」の5つのグループに分け、区分ごとに「つ(SV)」という単位で、1日の目安を示しています。

以下のサイトには、バランスの良い献立の参考例やレシピも詳しく紹介されているので、毎日の献立の参考にして、バランスの良い食事を心がけてください。

【参考情報】『食事バランスガイド』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/eiyou-syokuji8.pdf

5.おわりに

気管支炎はもちろんのこと、さまざまな病気を予防するためには、バランスの良い食生活が欠かせません。この機会に、ぜひご自身の食生活を見直してみてください。

とはいえ、面倒だったり、忙しかったりして、なかなかバランスまで考えられない、という方もいらっしゃると思います。

当院では、管理栄養士による分子栄養学を用いた栄養カウンセリングを毎日行っており、個々の病状や生活スタイルに適した食事とサプリメントのアドバイスをしています。どなたでも受けていただくことができますので、お気軽にご相談ください。

◆「当院の栄養カウンセリングについて」>>

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