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糖尿病治療薬「メトホルミン」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年06月11日

メトホルミンは、血糖値を下げる効果がある飲み薬です。

運動療法や食事療法、あるいはすい臓からのインスリンの分泌を促すSU(スルホニルウレア)薬を試しても血糖値が下がりにくい2型糖尿病の方に使用されます。

最近ではダイエット目的で処方されることもありますが、副作用のリスクがあるため、慎重に使用する必要があります。

この記事では、メトホルミンの効果や副作用、使用上の注意事項などを解説します。

1.メトホルミンとはどのような薬か


メトホルミンは、ビグアナイド系に分類される血糖降下薬です。肝臓で糖を新たに作る「糖新生」という過程を抑えることで、血糖値を下げる効果があります。

また、血液中の糖を効率よく利用させる効果や、糖の吸収を抑える働きもあります。

【参考情報】『Biguanides』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/25004-biguanides

この作用は、インスリンの分泌を必要としないため、インスリンの効きが悪い「インスリン抵抗性」を持つ2型糖尿病の方に効果的です。

2型糖尿病の患者さんの多くは、インスリン抵抗性を持っているため、治療の第一選択薬としてメトホルミンが使われることがあります。

2型糖尿病以外では、インスリン抵抗性を伴う多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群の治療にも用いられます。

なお、メトホルミンとは、ジェネリック医薬品の名称です。

メトホルミンには『メトホルミン塩酸塩錠MT』『メトホルミン塩酸塩錠』の2種類があり、MTは「メトグルコ」、SNは「グリコラン」という先発医薬品のジェネリックとなります。

どちらも同じメトホルミン成分を含むため効果は同じですが、含有量や服用方法、また薬として申請された際の効能や効果に異なる点があります。

◆「糖尿病」についてくわしく>>

1-1.メトホルミンの効果

「薬が本当に効くかどうか」を判断するために、医学の世界では大勢の患者さんを長期間にわたって観察する「大規模臨床試験」が行われます。

英国で行われたこの研究では、肥満を伴う2型糖尿病の患者さん約1,700人を対象に、10年以上にわたって追跡調査を行いました。

メトホルミンを使ったグループと、食事療法のみのグループを比べた結果、以下のことがわかりました。

・糖尿病に関連した死亡リスクが約42%低下
・全死亡リスクが約36%低下
・死亡+心筋梗塞+脳卒中を複合評価したリスクの12%低下

【参考情報】『Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34). UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group』NIH
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9742977/

【参考情報】『メトホルミンの心血管イベント予防効果と使用における注意点』J-STAGE
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/47/8/47_944/_pdf

つまり、メトホルミンは血糖値を下げるだけでなく、心臓や血管を守る効果(心血管保護効果)があることが示されました。

これが、メトホルミンが世界中で支持される大きな根拠のひとつです。

◆「糖尿病の検査でわかる血糖値」についてくわしく>>

2.メトホルミンの使い方


この章では、メトホルミン塩酸塩錠MT「メーカー名」(メトグルコのジェネリック医薬品)とメトホルミン塩酸塩錠「SN」(グリコランのジェネリック医薬品)両方の服用方法を解説します。

どちらも錠剤のため、水またはぬるま湯で服用してください。

2-1.メトホルミン塩酸塩錠MT「メーカー名」の服用方法

先発品・メトグルコのジェネリック医薬品の服用方法は、以下の通りです。

【2型糖尿病】

・成人(15歳以上)
まず、1日あたりメトホルミンの成分量500mgから始め、1日2~3回、食直前または食後に服用します。

「食直前」とは、食事の5分以内を指します。食直前に服用する場合は、食卓についたらすぐに服用してください。

その後、徐々に服用量を増やし、通常は1日750~1500mgの範囲で継続して服用します。

ただし、血糖値の下がり具合に応じて、最大で1日2250mgまで量を増やすことがあります。

・10歳以上15歳未満の子ども
まず、1日あたりメトホルミンの成分量500mgから始め、1日2~3回、食直前または食後に服用します。

その後、効果を見ながら量を調節し、1日500〜1500mgの範囲で継続して服用します。

ただし、血糖値の下がり具合に応じて、最大で1日2000mgまで量を増やすことがあります。

【多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発・調節卵巣刺激】

まず、他の排卵誘発薬や卵巣刺激薬と併用しながら、メトホルミンの成分量500mgを、1日1回服用します。

その後、副作用の程度を確認しながら増量し、1日1500mgを上限として、1日2〜3回に分けて服用し、排卵までに中止します。

【参考情報】『多のう胞性卵巣と言われました。どのような病気ですか』日本産婦人科医会 https://www.jaog.or.jp/qa/mature/jyosei191211/

2-2.メトホルミン塩酸塩錠「SN」の服用方法の服用方法

先発品・グリコランのジェネリック医薬品は、15歳以上の2型糖尿病患者のみが使用できます。

【2型糖尿病】
まず、1日あたりメトホルミンの成分量500mgから始め、1日2~3回、食後に服用します。

その後、効果を見ながら、最大で1日750mgまで増量することが可能です。

服用量は、効果や副作用、年齢によって異なるため、必ず医師に指示された服用方法を守りましょう。

3.メトホルミンの副作用


メトホルミンの副作用には、次のようなものがあります。

 ・下痢

 ・吐き気

 ・嘔吐

 ・食欲不振

 ・腹痛

 ・低血糖

◆「低血糖」についてくわしく>>

また、めったにありませんが、以下のような重篤な副作用が起きることがあります。

 ・乳酸アシドーシス
  ※体内に乳酸が蓄積し、吐き気や倦怠感、昏睡などを引き起こす
 ・肝機能障害

 ・横紋筋(おうもんきん)融解症
  ※手足の筋肉のこわばりや痛みを引き起こす

【参考情報】『乳酸アシドーシス』日本救急医学会
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0420.html

低血糖や乳酸アシドーシスは、不規則な食生活や脱水により起きやすくなります。風邪などの体調不良時で飲食が難しい場合は、主治医に相談してください。また、お酒の飲み過ぎにも注意しましょう。

◆「糖尿病の人が知っておきたいお酒の飲み方とは」>>

4.使用上の注意点


通常、メトホルミンは妊娠中や授乳中の女性には使用しません。

妊娠中に胎児に影響を与えるリスクがあるため、妊娠の可能性がある場合や妊娠を希望する場合は、事前に医師に相談しましょう。

また、脱水症状を起こしやすい高齢者には、薬の処方が慎重に行われます。特に75歳以上の方には注意が必要です。

【参考情報】『高齢者の脱水』全国訪問看護事業協会
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/dehydration.pdf

メトホルミンによる乳酸アシドーシスは、命にかかわる危険な副作用です。

そのため、腎臓、肝臓、心臓、肺に重度の障害がある方や透析を受けている方、手術前後の方、重度の感染症にかかっている方など、リスクが高い人には使用できません。

近年では、ダイエット目的の自由診療でメトホルミンが処方されることがあります。

メトホルミンの体重増加を抑える作用や副作用である食欲不振を利用したものかと思われますが、本来は疾患の治療に用いる医薬品です。

治療以外の目的でメトホルミンを服用すると、重篤な副作用が起きることもあるため、服用は慎重に判断してください。

4-1.メトホルミンと他の薬の飲み合わせ(併用注意薬)

メトホルミンは比較的安全な薬ですが、他の薬と一緒に飲む場合は注意が必要なものがあります。

特に気をつけていただきたい組み合わせをまとめました。

< ヨード造影剤(CT・MRIなどの検査で使う造影剤)>
CT検査などで使われる「ヨード造影剤」と一緒にメトホルミンを飲んでいると、腎臓への負担が増えて、まれに「乳酸アシドーシス」という危険な状態を引き起こすことがあります。

そのため、ヨード造影剤を使う検査の前後は、原則としてメトホルミンを一時的に中止する必要がありますので、検査が決まったら必ず担当医に伝えましょう。

<低血糖のリスクが高まる組み合わせ>
以下の薬と一緒に使うと、血糖値が下がりすぎる「低血糖」が起きやすくなります。

・インスリン注射(トレシーバ・ランタスなど)
・スルホニルウレア剤(グリメピリドなど )
・β遮断剤(プロプラノロールなど )
・サリチル酸系薬(アスピリンなど)

これらは、医師の指導のもと使用することができます。

< 脱水を起こしやすい薬との組み合わせ>
脱水はメトホルミンの副作用リスクを高めます。

以下の薬と合わせて使う場合は、こまめな水分補給が特に重要です。

・SGLT2阻害薬(フォシーガジャディアンスなど)
・利尿薬全般 < メトホルミンの血中濃度を上げる薬> 以下の薬はメトホルミンの排泄を遅らせ、体内の濃度が高くなりやすくなります。
・シメチジン(胃薬の一種)
・ビルダグリプチン(DPP-4阻害薬・エクア

これらの薬を既に服用している、もしくは服用を考えている場合には、必ず医師・薬剤師にお伝えください。

【参考情報】『医薬品等の安全性に係る調査結果報告書』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000514143.pdf

4-2.長期服用時の注意点・ビタミンB12が不足することがある

メトホルミンを長期間(数年以上)飲み続けると、ビタミンB12(コバラミン)の吸収が妨げられることが知られています。

これは比較的よく起きることで、長期服用者に一定の血中B12濃度の低下がみられるとする報告があります。

ビタミンB12は神経・血液をつくるために必要な栄養素で、不足すると、以下のような症状が出ることがあります。

・貧血(巨赤芽球性貧血)によるだるさ
・疲労
・手足のしびれ
・認知機能への影響

糖尿病自体にも神経障害(手足のしびれ)を引き起こすリスクがあります。

そのため、メトホルミンによるB12欠乏の症状は「糖尿病の合併症」と混同されやすく、見逃されやすいので注意が必要です。

長期服用中の方は、年に1回程度の血中ビタミンB12濃度の測定をおすすめします。

不足が確認された場合は、ビタミンB12のサプリメント内服や注射で補充することができます。

◆「ビタミンB群で、脳と体のエネルギー不足を解消」>>

5.メトホルミンの薬価


メトホルミンの1錠あたりの価格(2026年2月調べ)は次のとおりです。

 ・メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「メーカー名」 10.4円/錠

 ・メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「メーカー名」 10.4円/錠

 ・メトホルミン塩酸塩錠250mg「SN」 10.1円/錠

先発品を服用したい場合、現在「メトホルミン塩酸塩錠250mgMT『メーカー名』」を服用している方はメトグルコに、また「メトホルミン塩酸塩錠250mg『SN』」を服用している方はグリコランに変更できます。

メトホルミンと同じ成分の市販薬や、血糖値を下げる市販薬は販売されていません。

6.おわりに

メトホルミンが合わない場合、同じ分類のビグアナイド系糖尿病薬であるジベトス(成分名:ブホルミン塩酸塩)が使える場合があります。

また、血糖値を下げる医薬品は数多くあるため、効果・副作用・生活スタイルなどによって変更される場合があります。

糖尿病の治療では、普段の食生活や運動習慣を見直すことが重要です。血糖値や体重の増加が気になる方は、薬物治療と並行して、規則正しい生活習慣を心がけることも忘れないでください。

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