お酒でいびきがひどくなるのはなぜ?原因・リスク・対策を解説

お酒を飲んだ日の翌朝、「いびきがひどい」と指摘されたことはありませんか?
アルコールには筋肉をゆるめる作用があるので、お酒を飲むと喉まわりの筋肉がその影響で狭くなり、いびきが引き起こされやすくなります。
このようないびきのほとんどは一時的なものですが、酔って寝ているときのいびきが安全なのか、不安に感じる方もいるでしょう。また、なかには見逃せないサインが隠れていることもあります。
この記事では、飲酒といびきの関係をひもとき、病院を受診しておきたい症状や、日常でできる対策まで順を追って説明します。
目次
1. お酒を飲むといびきが増えるのはなぜか
お酒を飲むといびきが出やすくなる背景には、アルコールが体に与えるいくつかの作用が関係しています。
<筋肉がゆるむ>
アルコールには、特に喉まわりの筋肉をゆるめる作用があります。筋肉がゆるむと気道が狭くなり、舌の付け根も後ろに落ち込みやすくなります。
このように、気道が狭くなったり塞がれることで、空気が通るたびに粘膜が振動し、いびきの音になります。
<呼吸の調整機能が鈍くなる>
お酒を飲むと、脳の働きが鈍くなり、呼吸の調整もうまくいきにくくなります。
通常は、呼吸が浅くなると体が自然に元に戻そうとしますが、飲酒後はその働きが弱くなります。そのため、呼吸が止まったり浅くなったりしやすくなり、いびきがひどくなることがあります。
<睡眠が不安定になる>
お酒は寝つきをよくする一方で、睡眠の質を低下させます。とくに後半の睡眠が浅くなり、途中で目が覚めやすくなることが知られています。
こうした不安定な睡眠では気道が閉塞しやすく、いびきや呼吸の乱れが起こりやすくなります。
<粘膜がむくむ>
アルコールには血管を拡張させる作用があるため、鼻や喉の粘膜がむくみやすくなります。もともと鼻づまりがある人は、これにより空気の通りがさらに悪くなり、口呼吸になりやすくなります。
こうして気道が狭くなると、空気が通るときに振動が起こりやすくなり、いびきが強くなる原因になります。特に、飲酒後に「鼻が詰まった感じがする」「口を開けて寝ている」といった場合は、この影響が出ていると考えられます。
【参考情報】『Full Proof: Explaining How Alcohol Can Interfere With Sleep』National Library of Medicine
https://health.clevelandclinic.org/why-you-should-limit-alcohol-before-bed-for-better-sleep
2. お酒によるいびきのリスク
飲酒後のいびきは一時的なことも多いですが、「普段より音が大きい」「呼吸が乱れているように見える」といった場合は、少し注意が必要です。
<睡眠時無呼吸症候群の悪化>
もともといびきがある人や、肥満傾向・気道が狭い人では、飲酒が引き金となって睡眠時無呼吸症候群が悪化することがあります。
【参考情報】『Alcohol and the risk of sleep apnoea: a systematic review and meta-analysis』Cleveland Clinic
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5840512/
睡眠時無呼吸症候群の人がお酒を飲むと、アルコールの影響で気道がさらに狭くなり、呼吸が止まる・浅くなる状態が繰り返されます。
その結果、体内の酸素が不足して心臓への負担が増し、血圧が上がりやすくなります。さらに、長期的には高血圧や心血管系のリスクが高まる可能性も指摘されています。
◆「睡眠時無呼吸症候群の合併症」をチェック>>
<翌日への影響>
いびきによって睡眠の質が落ちると、翌朝に強い眠気やだるさが残りやすくなります。
十分寝たつもりでも疲れが取れず、集中力や判断力が鈍ることも少なくありませんし、仕事の効率が下がるだけでなく、運転中の居眠りなど事故のリスクも高まります。
【参考情報】『Snoring was related to self-reported daytime sleepiness and tiredness in young adults performing compulsory conscript service』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36111359/
日中の眠気が続くようなら、単なる寝不足ではなく、夜間のいびきや呼吸の乱れが影響している可能性を疑ってみてください。
3. 酔っているときのいびきは大丈夫?注意すべきサイン
お酒を飲んで寝ているときにいびきをかくのは珍しいことではありません。ただし、「ただのいびき」とは言い切れないケースもあります。
3-1.注意したいサイン
次のような様子が見られる場合は、単なるいびきではない可能性があります。
・呼吸が一時的に止まる
・いびきが突然止まり、その後に大きな音で再開する
・体の動きが少なく、異常にぐったりしている
これらは呼吸が不安定になっているサインであり、睡眠時無呼吸症候群や低酸素状態が関係している可能性があります。
3-2.急性アルコール中毒との見分け
さらに注意が必要なのが、急性アルコール中毒です。短時間に多量のアルコールを摂取すると、意識障害や呼吸の低下が起こり、命に関わる危険な状態になることがあります。
この場合も、いびきのような呼吸が見られることがありますが、これは正常ないびきではなく、呼吸機能が低下しているサインの可能性があります。
以下のような場合は、放置せず早めの対応が重要です。
・呼びかけても反応がない、呼吸が遅い・不規則な場合 → 119番に連絡
【参考情報】『消防救急無線・119番緊急通報』総務省消防庁
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/kyukyumusen_kinkyutuhou/119.html
・嘔吐している場合 → 横向きに寝かせて誤嚥を防ぐ
無理に吐かせたり、水を大量に飲ませたりすると、誤嚥(ごえん)を引き起こす可能性があるので避けてください。
また、状態が悪化する可能性があるため、回復するまで目を離さないことが大切です。眠っているように見える場合でも、定期的に呼吸や反応を確認しましょう。
【参考情報】『急性アルコール中毒』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-001
4. お酒によるいびき対策
お酒によるいびきは、飲み方や寝るときのちょっとした工夫で軽減できることがあります。
<飲酒量を控える>
アルコールの量が増えるほど喉の筋肉がゆるみ、いびきが出やすくなります。飲むときはゆっくり時間をかけ、合間に水をはさむだけでも効果的です。
<寝る直前の飲酒を避ける>
就寝の2〜3時間前までに飲み終えるのが理想です。アルコールの作用が残ったまま眠ると、睡眠の早い段階から気道が不安定になりやすくなります。
<横向きで寝る>
仰向けだと舌が喉の奥に落ち込み、気道がふさがれやすくなります。横向きの姿勢を保つと気道が確保されやすく、いびきの軽減につながります。抱き枕を活用するのもおすすめです。
<枕の高さを見直す>
高すぎても低すぎても気道が圧迫されやすくなります。首が自然な角度で支えられる枕を選ぶことで、呼吸がしやすい状態を保てます。
<体重を管理する>
首まわりに脂肪がつくと気道が狭くなりやすいため、食事や運動を見直すこともいびきの改善に役立ちます。
◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>
5. 受診を検討すべきケース
いびきは飲酒によって一時的に強くなることがありますが、次のような場合は病院での相談を検討するとよいでしょう。
単なる生活習慣の問題ではなく、睡眠中の呼吸に異常がある可能性があります。
<飲酒していないときもいびきが強い>
お酒の影響ではなく、もともとの気道の狭さや呼吸の異常が関係している可能性があります。「毎晩のように続く」「音が大きい」といった場合は注意が必要です。
◆「いびきがひどい・うるさい時の原因と対処法」>>
<日中に強い眠気を感じる>
しっかり寝たつもりでも眠気やだるさが残る場合、無呼吸や低呼吸で睡眠が何度も分断されている可能性があります。
◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>
<呼吸が止まっていると指摘された>
家族や同居者から「寝ているときに呼吸が止まっている」「いびきが止まったあとに大きく息をする」と言われたことがある場合は、特に注意が必要です。
<朝の頭痛・口の渇き・夜間のトイレ>
これらの症状が繰り返される場合、睡眠の質の低下や呼吸の乱れと関係していることがあります。
◆「夜間のトイレの原因は?睡眠時無呼吸症候群と頻尿の関係」>>
思い当たる症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
6.睡眠時無呼吸症候群の検査と治療
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、検査によって状態を確認し、重症度に応じた治療が行われます。
6-1.検査
まずは自宅で行える簡易検査が行われることが一般的です。指先や鼻にセンサーを装着して眠り、呼吸の状態や血中酸素濃度などを測定します。
簡易検査で異常が疑われる場合や、より詳しい評価が必要な場合には、精密検査(PSG)が行われます。呼吸に加えて、脳波や心拍、体の動きなども測定し、無呼吸の有無や重症度を正確に判断します。
医療機関で一泊して行うことが多い検査ですが、当院では自宅での精密検査を実施しています。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
6-2.治療
治療は重症度や原因に応じて選択されます。
代表的なのが、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)です。睡眠中にマスクを装着し、空気を送り込むことで気道の閉塞を防ぎ、呼吸を安定させます。中等症〜重症の場合に広く用いられています。
そのほか、マウスピース(口腔内装置)を使用して下あごを前に出し、気道を広げる治療が選ばれることもあります。
7. おわりに
お酒はいびきを悪化させる要因のひとつであり、飲酒後にいびきが強くなるのは珍しいことではありません。
多くの場合は一時的な変化にとどまりますが、中には注意が必要なケースもあります。
とくに、呼吸が不規則になる、反応が鈍いといった異常がみられる場合は、単なるいびきとは限りません。
また、日常的にいびきが強い場合は、睡眠時無呼吸症候群などの可能性も考えられます。
お酒との付き合い方を見直すとともに、いびきの状態を適切に見極めることが大切です。必要に応じて医療機関に相談することで、安心して過ごせる状態につなげることができます。













