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睡眠時無呼吸症候群は寝具で改善できる?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年06月15日

「睡眠時無呼吸症候群は、枕やマットレスなどの寝具を変えれば改善できるのか?」と気になる方は多いのではないでしょうか。

いびきや浅い眠りが続いている人も、まずは自宅でできる対策から試したいと考えることは少なくありません。

結論として、睡眠時無呼吸症候群は、寝具だけで根本的に治すことはできません。

ただし軽症で、仰向けで悪化する「体位依存性」の場合には、気道が確保しやすい寝姿勢を整えることで、症状が和らぐ可能性があります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群の方に向けて、寝姿勢と寝具の関係や、症状の改善につながる考え方をわかりやすく解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群と寝具の関係


まずは、睡眠時無呼吸症候群の原因と、寝具がどのような役割を果たすのかを整理します。

1-1.睡眠時無呼吸症候群の主な原因

睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である気道が狭くなったり塞がることで生じる「閉塞性」と、脳からの呼吸の指令が一時的に弱まったり止まったりすることで起こる「中枢性」に大きく分けられますが、多くは閉塞性です。

起きている間は喉の筋肉が気道の広さを保っていますが、眠りに入ると全身の筋肉とともに喉の筋肉も緩みます。すると気道が狭くなり、さらに重力の影響で舌の付け根(舌根)や軟口蓋が喉の奥へ落ち込むことで、気道はより圧迫されやすくなります。

また、首周りに脂肪が多い方や顎が小さい方はもともと気道が狭いため、閉塞が起きやすい傾向にあります。

【参考情報】『Obstructive sleep apnea』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/obstructive-sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20352090

◆「睡眠時無呼吸症候群の原因・症状・検査・治療・リスクを総まとめ」>>

1-2.寝姿勢と枕による気道確保のポイント

症状を軽減するためには、睡眠中も気道が確保されやすい状態を保つことが重要です。そのための補助として、寝具は寝姿勢の維持に一定の役割を果たします。

<寝姿勢と気道の関係>
仰向けで寝ると、重力の影響で舌や軟口蓋が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭くなりがちです。

一方、横向きではこうした組織が沈下しにくいため、気道が保たれやすくなります。

そのため、寝具で横向き寝の姿勢を安定させることで、気道の閉塞を防ぎやすくなります。

【参考情報】『Influence of Body Position on Severity of Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3817704/

◆「睡眠時無呼吸症候群と寝姿勢の関連」についてもっとくわしく>>

<首の角度の調整>
枕の高さが合っていない場合、顎が過度に引けたり反ったりしてしまい、気道が狭くなる可能性があります。

適切な枕は、頭部から頸部にかけて自然なカーブを保ち、顎の位置が偏らないように支えることで、気道が保たれやすい状態をサポートします。

1-3.寝具の役割と治療の位置づけ

大前提として、寝具によって睡眠時無呼吸症候群を根本的に治すことはできません。

寝具の役割はあくまで、症状の緩和や睡眠環境の改善を通じた補助的な対策にとどまります。

症状が重い場合や日中の強い眠気がある場合、高血圧などの合併症がみられる場合には、医学的な治療が優先されます。

まずは医療機関で適切な診断と治療を受けたうえで、その効果を補い、生活の質(QOL)を高める手段として寝具を活用することが重要です。

2.横向き寝で気道を守る:姿勢と寝具のポイント


睡眠時無呼吸症候群の症状を物理的に和らげる方法のひとつとして、寝姿勢を仰向けから横向きに変えることが挙げられます。

2-1.仰向け寝のリスクと横向き寝のメリット

睡眠時無呼吸症候群の方にとって、仰向けは気道が狭くなりやすい姿勢とされています。

この体勢では、眠って筋肉が緩むと、重力の影響で舌の付け根(舌根)や軟口蓋が喉の奥へ後方に落ち込み、気道を圧迫しやすくなります。その結果、いびきや無呼吸が生じやすくなります。

一方、横向きで眠ると、舌や軟口蓋の沈下が側方に分散されるため、気道が保たれやすくなります。その結果、呼吸が維持されやすくなります。

特に、体位依存性(仰向けで症状が悪化するタイプ)では、無呼吸・低呼吸指数の改善が認められています。

【参考情報】『Positional therapy in the management of positional obstructive sleep apnea-a review of the current literature』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28852945/

2-3.寝具で横向きを維持する

横向き寝が有効であっても、睡眠中にその姿勢を維持し続けることは容易ではありません。そこで重要になるのが、寝具による姿勢のサポートです。

横向き寝を支える寝具には、以下のような条件が求められます。

 ・安定性:肩や腰への圧力を分散し、横向きでも負担が少ないこと

 ・寝返りのしやすさ:自然な動きで姿勢を調整できること

 ・高さの適合:背骨から首にかけて自然なラインを保てること

無理に姿勢を維持しようとするのではなく、自然に横向きが保たれる環境を整えることが、現実的な対策といえます。

3.枕の選び方


横向き寝は気道を確保しやすい姿勢ですが、肩の厚みなどが加わるため、合わない枕を使うと首や肩に負担がかかり、長続きしにくくなります。

ここでは、質の高い睡眠につなげるための枕選びのポイントをくわしく解説します。

3-1.高さのポイント

枕の高さは、呼吸のしやすさに影響します。横向きに寝たとき、頸椎(けいつい:首の骨)が床と平行になり、頭から背骨までが一直線になる高さが目安です。

高すぎると顎が引けて気道が狭くなりやすく、低すぎると首の角度が不安定になり、呼吸しづらさや不快感につながることがあります。

3-2.形のポイント

中央がやや低く、両端に高さがある枕は、肩の厚みを受け止めて首を自然にまっすぐ保ちやすく、横向き寝を維持するのに役立ちます。

中央にくぼみがあるタイプは仰向けから横向きへの姿勢の移行がスムーズで、耳への圧迫も軽減されるため、長時間の睡眠でも快適さが保たれます。

3-3.硬さのポイント

枕の硬さは寝返りのしやすさに関わります。反発力が強すぎても弱すぎても首への負担が増すため、適度な反発力があり頭が沈み込みすぎない素材を選ぶことが大切です。

一方、沈み込みが大きい枕はフィット感が高い反面、寝返りがしにくくなる場合があります。素材の特性をよく理解したうえで選ぶようにしましょう。

3-4.抱き枕の活用

横向き寝の習慣化には、抱き枕の活用が役立つ場合があります。抱き枕を使うことで頭、胸、骨盤、脚までを一体的に支えられ、体の接地面が増えるため姿勢が安定しやすくなります。

特に膝の間に抱き枕を挟むと、骨盤のねじれが抑えられ、腰や肩への負担が和らぐことがあるため、眠っている間の不快感が減り、途中で目が覚めにくくなることがあります。

抱き枕を選ぶ際には、柔らかすぎて体が沈み込みすぎるものや、硬すぎて体に沿わないものは避け、自分の体に沿って自然に支えられる程度の硬さのものが望ましいです。

4.マットレスの選び方


枕と並んで見直したいのが、全身を支えるマットレスです。

4-1.寝返りしやすい状態をつくる

注意したいのは、腰や背中だけが過度に沈み込み、体の一部に負担が集中する状態です。

こうした沈み込みが大きいと寝返りに余計な力が必要になり、結果として不自然な姿勢が続きやすくなります。

また、寝返りは血流の維持や体圧の偏りを防ぐために欠かせない、生理的に必要な動きです。これが妨げられると、体への負担が蓄積しやすくなります。

体圧をバランスよく分散できるマットレスであれば、横向き姿勢を保ちやすくしながら、必要な寝返りも妨げにくくなります。

4-2.適度な弾力が必要

マットレスの反発力は、寝返りのしやすさに影響します。体を適度に押し返す力があるタイプは、少ない力で姿勢を変えやすく、無意識のうちでも呼吸しやすい体勢へ移行しやすい傾向があります。

一方で、体が深く沈み込むタイプはフィット感に優れますが、寝返りに力が必要になる場合があります。どちらにも特性があるため、寝返りのしやすさとのバランスを考えて選ぶことが大切です。

4-3.電動リクライニングベッド

電動リクライニングベッドを使い、上半身を15〜30度ほど起こした状態で眠ると、重力による喉の組織の沈下が起こりにくくなります。

このように上半身を少し起こした姿勢では、気道が保たれやすくなるほか、腹部臓器による横隔膜への圧迫も軽減され、呼吸がしやすくなります。

横向き寝が難しい場合や、体力の低下により姿勢調整が難しい場合には、こうした方法も選択肢のひとつになります。

5.寝具選びと併せて行うべき改善策


睡眠時無呼吸症候群は、医療的なケアが必要な病気でもあります。

寝具の改善と合わせて、以下の対策も取り入れることが健康リスクを抑えるために重要です。

5-1.CPAP(シーパップ)

中等症以上の睡眠時無呼吸症候群に対しては、専用の機器で鼻から空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐCPAP(持続陽圧呼吸療法)が標準的な治療とされています。

【参考情報】『Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea With Positive Airway Pressure: An American Academy of Sleep Medicine Systematic Review, Meta-Analysis, and GRADE Assessment』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30736888/

無呼吸や低呼吸を直接的に抑える効果があり、継続することで日中の眠気の改善や、高血圧などの合併症リスクの低減も期待できます。

継続的な使用が効果を左右するため、マスクのフィット感や装着感の調整が重要です。

◆「CPAP」についてもっとくわしく>>

5-2.減量

体重が増えると、首まわりや舌の周囲に脂肪がつき、気道が外から押されて狭くなります。

睡眠中は筋肉がゆるむため、この狭くなった気道がさらに塞がれやすくなり、いびきや無呼吸が起こりやすくなります。

肥満体型の方は、減量によって脂肪が減ると気道への圧迫が軽くなり、無呼吸やいびきが改善することがあります。

ただし、急激なダイエットは続きにくいため、食事や運動を無理のない範囲で見直し、少しずつ続けることが大切です。

◆「睡眠時無呼吸症候群の減量の目安と方法」>>

5-3.飲酒のコントロール

アルコールには筋肉を弛緩させる作用があるため、お酒を飲むと気道の筋肉もゆるんで気道が狭くなり、無呼吸やいびきが悪化しやすくなります。

また、アルコールは眠りを浅くする作用もあり、睡眠の後半にかけて覚醒しやすくなることが知られています。これにより睡眠の質が低下し、日中の眠気やだるさにつながることもあります。

【参考情報】『健康づくりのための睡眠ガイド 2023』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf

特に就寝前の飲酒は影響が大きいため、できるだけ控えることが望ましいとされています。飲む場合は、寝る直前は避け、少なくとも就寝の3〜4時間前までに済ませるようにしましょう。

5-4.鼻づまり対策

鼻づまりがあると口呼吸になりやすくなります。口呼吸では下顎や舌が後方に落ち込みやすく、気道が狭くなるため、いびきや無呼吸が悪化しやすくなります。

また、喉の粘膜が乾燥することで気道の安定性が低下し、喉の壁が振動したり、部分的に閉塞しやすくなることも影響します。

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が背景にある場合は、その治療に取り組むことが重要です。

点鼻薬や抗アレルギー薬の使用に加え、ダニやほこりの除去、適切な加湿などによって鼻呼吸を維持しやすくなり、睡眠の質の改善につながります。

◆「副鼻腔炎の治療で睡眠時無呼吸症候群が改善?」>>

6.おわりに

寝具の見直しは、睡眠中の姿勢を整え、呼吸しやすい環境をつくるうえで有効な対策です。

ただし、睡眠時無呼吸症候群はあくまで医学的な治療が必要な疾患であり、寝具だけで根本的に改善することはできません。

また、重症度や原因によっては、寝具や寝姿勢の工夫で症状を改善するのは難しい場合もあります。

いびきや日中の強い眠気が続く場合は、自己判断で対策を続けるのではなく、医療機関で適切な検査と診断を受けることが重要です。

そのうえで、CPAPなどの治療と併せて寝具を活用することで、より快適で質の高い睡眠環境を整えることができます。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 家族にいびきや呼吸の止まりを指摘されたことがある
  • 日中に強い眠気を感じる
  • 朝起きたときに頭痛や口の渇きがある
  • 十分寝ているのに疲れがとれない
  • 夜中に何度も目が覚める

当てはまる項目がある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみませんか?

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