副鼻腔炎の治療で睡眠時無呼吸症候群が改善?2つの病気の関連とは

睡眠時無呼吸症候群の症状のひとつに「毎日のようにいびきをかく」というのがあります。
いびきは、副鼻腔炎で鼻が詰まっていても出やすくなりますが、副鼻腔炎を治療するといびきが減り、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善できる可能性があります。
この記事では、副鼻腔炎の治療で睡眠時無呼吸症候群の症状が改善する可能性について述べます。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、眠っている間に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりする病気です。
<主な症状>
・大きないびき
・日中の強い眠気
・起床時の頭痛
・熟睡感がない
・夜間の頻尿
・集中力の低下
この病気になると、呼吸が止まるたびに体内の酸素が不足するため、脳が覚醒して呼吸を再開させようとします。
これが夜中に何度も繰り返されることで睡眠が分断され、十分な休息が取れなくなります。
さらに、低酸素状態や血圧の変動が繰り返されることで体への負担が蓄積し、高血圧・心疾患・脳卒中・糖尿病といった生活習慣病とも深く関わっていることがわかっています。
2. 副鼻腔炎とはどんな病気か
鼻のまわりの骨の中には、「副鼻腔(ふくびくう)」と呼ばれる空洞があります。
ここの粘膜が炎症を起こすと、鼻水や粘液がうまく排出されなくなり、副鼻腔の中にたまりやすくなります。この状態が「副鼻腔炎」です。
2-1. 急性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎は、風邪などをきっかけに副鼻腔で急激な炎症が起きた状態です。炎症で副鼻腔の出口が狭くなると、内部に鼻水や膿がたまりやすくなります。
<主な症状>
・黄色や緑色の粘り気のある鼻水
・強い鼻づまり
・頬や額の痛み
・頭の重さ
・発熱
・後鼻漏(こうびろう:鼻水が喉に流れ込む)
【参考情報】『Postnasal Drip』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23082-postnasal-drip
多くは自然に改善しますが、症状が強い場合や細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬などによる治療が行われます。
2-2. 慢性副鼻腔炎
副鼻腔の炎症が長期間続き、症状が3カ月以上持続している状態です。一般的に「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれます。
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化するケースのほか、アレルギー性鼻炎や鼻の構造的な問題が関係して発症することもあります。
<主な症状>
・慢性的な鼻づまり
・後鼻漏
・粘り気のある鼻水
・嗅覚の低下
・頭の重さ
・集中力の低下
治療には、点鼻薬・去痰薬・鼻洗浄・マクロライド系抗菌薬・ネブライザー治療などが用いられます。
改善が乏しい場合は、内視鏡で副鼻腔の通りを改善する「内視鏡下副鼻腔手術(ESS)」が検討されることもあります。
【参考情報】『Chronic sinusitis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/chronic-sinusitis/symptoms-causes/syc-20351661
2-3. 好酸球性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎の一種で、好酸球という白血球が関与する強い炎症が特徴の病気です。通常の慢性副鼻腔炎よりもアレルギーや免疫反応との関連が強いとされています。
鼻の中にポリープ(鼻茸)が多発しやすく、強い鼻づまり・嗅覚障害・粘り気の強い鼻水・後鼻漏などが現れます。特に「においが分からない」という症状が強く出やすいのが特徴です。
また、喘息を合併している人が多く、再発しやすいことでも知られています。
治療にはステロイド薬や手術が用いられますが、再発を繰り返すケースも少なくありません。
【参考情報】『好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537
3. 鼻づまりといびきの関係
鼻づまりは、いびきや睡眠時無呼吸症候群を悪化させる原因の一つと考えられています。
慢性的な鼻づまり・後鼻漏・鼻ポリープ(鼻茸)・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎などがある場合は、特に睡眠中の呼吸状態が悪化しやすくなります。
通常、人は鼻で呼吸をしています。鼻には空気を加湿する・温度を調整する・ほこりや異物を取り除くといった大切な役割があります。
【参考情報】『Nose』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/21778-nose
しかし、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などで鼻の通りが悪くなると、十分な鼻呼吸ができなくなり、睡眠中に自然と口呼吸になりやすくなります。
口呼吸になると口が開いた状態になるため、下顎が下がり、舌が喉の奥へ落ち込みやすくなります。その結果、上気道が狭くなり、喉の粘膜や軟らかい組織が振動していびきが生じやすくなります。
また、鼻づまりで空気が通りにくくなると、呼吸の際に強い力で空気を吸い込もうとします。この陰圧によって喉まわりの組織がさらに内側へ引き込まれ、気道が狭くなりやすくなるとも考えられています。
【参考情報】『The role of the nose in snoring and obstructive sleep apnoea: an update』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21340561/
さらに口呼吸が続くと、喉が乾燥して粘膜の炎症や腫れを引き起こし、気道がさらに狭くなるという悪循環に陥ることもあります。
4. 副鼻腔炎および睡眠時無呼吸症候群の治療法
副鼻腔炎の治療で鼻づまりが改善すると、睡眠時無呼吸症候群の症状も改善する可能性があります。
4-1. 副鼻腔炎の治療法
副鼻腔炎の治療では、炎症を抑えながら、副鼻腔にたまった鼻水や膿を排出しやすくすることが重要です。
<急性副鼻腔炎>
風邪などがきっかけとなって発症した後、自然に改善するケースも少なくありません。しかし、症状が強い場合や細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬が使用されることがあります。
また、鼻づまりを和らげる点鼻薬や、鼻水を出しやすくする去痰薬が処方されることもあります。
◆「去痰薬・ムコダイン」の特徴と効果、副作用>>
<慢性副鼻腔炎>
炎症を長期間コントロールすることが治療の中心となります。鼻洗浄によって鼻の中を清潔に保つほか、去痰薬やマクロライド系抗菌薬を用いた治療が行われます。
◆「マクロライド系抗菌薬・クラリス」の特徴と効果、副作用>>
<好酸球性副鼻腔炎>
アレルギーや免疫反応による炎症が強く関与しているため、ステロイド薬による治療が中心となります。
ただし再発しやすい特徴があり、定期的な通院や継続的な管理が必要になることがあります。
薬物療法で十分な改善が得られない場合や、鼻ポリープ(鼻茸)が大きくなっている場合には、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)が検討されます。これは内視鏡を使って副鼻腔の通り道を広げる手術で、鼻水や膿が排出されやすい状態を作ることを目的としています。
4-2.副鼻腔炎の治療をしてもいびきが軽減しない場合
副鼻腔炎の治療で鼻づまりが治まってもいびきが改善しない場合は、以下のような原因が関係している可能性があります。
・肥満により首まわりに脂肪がついている
・加齢により喉の筋力が低下している
・扁桃や舌が大きい
・顎が小さい
さらに、アルコールの摂取や睡眠薬の使用によって喉の筋肉が緩み、いびきが悪化している場合もあります。
特に、大きないびきに加えて「呼吸が止まる」「日中の強い眠気がある」「起床時に頭痛がする」といった症状がみられる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
いびきの原因は一つとは限りません。副鼻腔炎の治療で改善がみられない場合は、鼻以外の要因についても確認することが望ましいでしょう。
4-3.睡眠時無呼吸症候群の治療法
睡眠時無呼吸症候群の治療では、睡眠中に狭くなった気道を確保し、無呼吸や低呼吸を防ぐことが目的となります。
標準的な治療法・CPAP(シーパップ)は、鼻や口に装着したマスクから空気を送り込み、気道が塞がるのを防ぎます。
軽症から中等症の患者さんでは、マウスピース(口腔内装置)による治療が行われることがあります。就寝中に装着することで下顎を前方に保ち、舌が喉の奥へ落ち込むのを防ぎます。
扁桃肥大や鼻中隔弯曲症、鼻ポリープなど、気道の狭窄につながる明確な原因がある場合には、手術が検討されることもあります。
肥満が原因の一つとなっている場合は、まず減量が勧められます。体重が増えると首まわりや喉の周囲に脂肪がつき、気道が狭くなりやすくなるためです。
また、飲酒や喫煙は症状を悪化させることがあるため、生活習慣の見直しも重要です。
5.おわりに
睡眠時無呼吸症候群の患者さんが副鼻腔炎を治療すると、いびきや無呼吸などの症状が改善する可能性があり、CPAPを用いた治療もより有効になります。
しかし、肥満や心疾患など、睡眠時無呼吸症候群を起こす別の要因も併せ持っている場合には、副鼻腔炎の治療だけではなく、それぞれの要因に合わせたアプローチが必要となります。
いびきや睡眠中の息苦しさが気になるときは、まずは呼吸器専門医に相談し、適切な治療につなげていきましょう。











