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睡眠時無呼吸症候群の治療で使う「CPAP」とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年11月29日

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に一時的に呼吸が止まる無呼吸状態を繰り返す病気です。

無呼吸になると身体が低酸素状態となり、放っておくと、眠気や頭痛に悩まされるほか、心臓や血管、脳に負担がかかるため、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気になることがあります。

治療には、寝ている間の呼吸をサポートする装置を使いますが、その中でも代表的なものがCPAP(シーパップ)です。

この記事では、CPAPについて詳しく解説します。

1.CPAPとは何か

睡眠時無呼吸症候群の治療で用いる装置には、CPAP、ASVマウスピースがあります。中でもCPAPは、最もよく使われている装置です。

CPAPとは、「Continuous Positive Airway Pressure」の略で、日本語では「経鼻的持続陽圧呼吸療法」といいます。寝ている間に専用のマスクをつけ、外気を取り込み加圧した空気を鼻から送り込むことで、睡眠中の無呼吸を防ぎます。

CPAPの装置は、睡眠時無呼吸症候群と診断され、かつ、「簡易検査で1時間40回、精密検査で1時間20回以上の無呼吸・低呼吸を認める」「毎月病院の外来を受診する」など一定の基準を満たせば、健康保険が適用されレンタルすることができます。自己負担額の目安は、3割負担の方で毎月5,000円程度です。

◆「睡眠時無呼吸症候群の検査について」>>

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっと詳しく>>

2.専用マスクの種類


CPAPで用いるマスクの種類には、以下のようなものがあります。

 ・ネーザルタイプ:鼻のみを覆う
 ・ピロータイプ:鼻孔に直接装着する
 ・フルフェイスタイプ:鼻と口、両方を覆う

最も一般的なのは、ネーザルタイプです。

ピロータイプは顔に触れる部分が少ないので、肌にマスクの跡が残りにくいです。しかし、ネーザルタイプに比べると外れやすいです。

CPAPを装着して眠る際は鼻呼吸が必要なのですが、鼻詰まりなどが原因で口呼吸になってしまう人は、フルフェイスタイプを用いることがあります。

いずれも、医師と相談して適切なタイプを選んでください。

【参考情報】『Choosing the right mask for your Asian patient with sleep apnoea: A randomized, crossover trial of CPAP interfaces』PubMed|NCBI
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30189465/

3.CPAPのメリット・デメリット

CPAPは睡眠時無呼吸症候群の有効な治療法で、多くの患者さんにとって治療の第一選択肢となります。しかし、人によっては使用時に不快感を持つことがあります。

3−1.メリット


CPAPを使用した翌朝か数日後には、いびきや無呼吸などの症状が改善し、睡眠の質量が上がったと感じる人は多いです。特に重症の患者さんほど、効果をはっきりと実感するようです。

◆「そのいびき、病気のせいかもしれません」>>

睡眠中の無呼吸が改善すると、目覚めの体や気分が軽くなり、一日のスタートを気持ちよく切れるようになります。また、昼間の眠気も少なくなり、仕事や学習のパフォーマンスに良い影響が出てきます。

さらに、高血圧や糖尿病など、無呼吸によって悪化していた生活習慣病の改善にもつながります。

◆「放っておくとどうなるのか?」>>

CPAP療法によっていびきや無呼吸が改善すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが、健康な人と同程度まで抑えられることがわかっています。

3−2.デメリット


「マスクのつけ方」あるいは「マスクの形やサイズ」が原因で、鼻や口の周りが赤くなったりかぶれてしまうことがあります。

そんなときは、主治医にマスクのつけ方に問題がないかチェックしてもらったり、別のマスクに変更できないか相談してみましょう。

装置から送り込まれる空気によって、鼻や喉、目、口が乾くと訴える人もいます。

そのような場合は、マスクから空気が漏れている可能性もあるので、つけ方に問題がないか確認してください。また、加湿器を使って寝室の空気を潤すのもいいでしょう。

その他、睡眠中に装置から送り込まれる空気を無意識に飲み込むことが原因でお腹が張ってしまったり、空気が耳に抜けて耳鳴りがすることもあります。これらの症状は、空気圧の調整で改善することがあります。

【参考情報】『よくあるご質問』フクダ電子
https://www.fukuda.co.jp/cpap_support/question/

4.CPAPはいつまで使うのか

CPAP療法は対症療法であり、病気を根本から治すものではありません。したがって、いびきや無呼吸が改善したからといって自己判断で止めてしまうと再び症状が現れ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

基本的には、生涯にわたって使用することになりますが、肥満が原因で病気を発症した患者さんは、減量により治療が必要ない状態になることもあります。

◆「減量」について>>

医師から肥満を指摘された方は、治療とともに減量に取り組むことで、CPAPをやめることができる可能性があります。しかし、いったん適正体重になっても、再び体重が増加すると、また症状が現れることがあります。

◆「当院の栄養カウンセリングについて」>>

5.CPAP以外の治療法

睡眠時無呼吸症候群の治療法は、CPAPのほかにも以下の方法があります。

5-1.マウスピース療法

就寝時にマウスピースを装着して顎を固定し、気道に空気が通るようにします。

◆「マウスピース」について詳しく>>

5-2.手術

アデノイドや扁桃の肥大で気道が狭くなっている人は、摘出手術が有効なこともあります。
また、鼻に問題があって空気の通りが悪くなっている人は、鼻中隔矯正術など鼻の手術で症状が改善されることもあります。

◆「手術」について詳しく>>

CPAPが合わない、効果が感じられないという場合は、別の治療ができるかどうか、医師に相談してください。

6.おわりに

睡眠中のマスク着用に抵抗があるかもしれませんが、CPAPにより睡眠の質が改善すると、「こんなに体調が良くなるなんて!」と驚く方が多いです。

また、はじめは違和感があっても、医師に相談して自分の顔にフィットするマスクを選び、装着のコツをつかむことで次第に慣れていきます。

まずは、昼間の眠気や頭痛、疲労感に悩んでいる人は、ぜひ一度、睡眠時無呼吸症候群の検査ができる病院を受診してください。「年のせい」「過労」が原因だと思っていた症状が、治療によって改善できる可能性があります。

◆「当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について」>>

◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>

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