睡眠時無呼吸症候群は減量で改善する?肥満との関係や減量方法を解説

肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群を発症した人は、症状を悪化させないためにも減量が必要です。
しかし、正しい方法で行わないと、結果が出なかったり、減量に挫折することもあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群と体重の関係や、減量の目安・方法・効果について説明していきます。
ダイエットに取り組んで、質の良い睡眠と健康を取り戻したい方は、ぜひ参考にしてください。
1. 睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
まずは、睡眠時無呼吸症候群が発症する仕組みやリスク、代表的な治療法であるCPAPについて解説します。
1-1. 睡眠中に無呼吸や低呼吸をを繰り返す病気
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。
この病気は、睡眠中に空気の通り道である気道が狭くなったり塞がったりする「閉塞性」と、脳から呼吸の指令が十分に送られなくなることで起こる「中枢性」に大きく分けられます。
なかでも患者さんの多くを占める閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、肥満が大きな危険因子として知られています。
睡眠中に呼吸が止まると、体は酸素不足を補うために何度も覚醒反応を起こし、睡眠の質が低下します。
そのため、日中に強い眠気を感じたり、集中力が続かなかったり、朝起きたときに頭痛がしたりすることがあります。
さらに、睡眠中に酸素不足と血圧の変動が繰り返されることで、体には大きな負担がかかります。
これを放置すると、高血圧や糖尿病の悪化だけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気のリスクが高まることが分かっています。
1-2. 肥満は大きな危険因子
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の大きな危険因子のひとつが肥満です。
【参考情報】『Guideline for the Management of Obesity in Adult Patients With Obstructive Sleep Apnea』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41725293/
体重が増加すると、首の周囲や舌の付け根など気道の周辺にも脂肪がつきます。その結果、睡眠中に喉の筋肉がゆるむと気道が狭くなりやすくなり、空気の通り道が塞がれやすくなります。
一方で、あごが小さい、下あごが後退しているなどの骨格的な特徴や、扁桃肥大、加齢による喉の筋力の低下、慢性的な鼻づまりなどが関係し、肥満ではない人が発症することもあります。
1-3. 代表的な治療法・CPAP
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法であるCPAP(シーパップ)は、睡眠中に鼻や口から空気を送り込み、気道が塞がるのを防ぐことで、無呼吸やいびきを改善します。
適切な治療を続けることで睡眠の質が改善し、日中の眠気や集中力の低下などの症状の軽減が期待できます。
また、睡眠中の低酸素状態や血圧の変動が改善されることで、高血圧の改善や心血管系への負担の軽減が期待されています。
ただし、CPAPは気道が塞がる状態を防ぐ治療であり、肥満そのものを改善する治療ではありません。そのため、体重管理を組み合わせながら、長期的に症状をコントロールしていくことが大切です。
2. 減量で睡眠時無呼吸症候群は改善する可能性
減量を開始する前に、重症度を示すAHIの見方や体重との関係、無理なく続けられる目安について知っておきましょう。
2-1. AHIとは
睡眠時無呼吸症候群の重症度を評価する指標に、AHI(Apnea-Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)があります。
AHIは、睡眠1時間あたりに無呼吸や低呼吸(呼吸が浅くなる状態)が何回起こるかを示す数値です。数値が高いほど、睡眠中の呼吸障害が多く、重症度が高いと判断されます。
AHIの数値による重症度の分類は、以下のとおりです。
・軽症:AHI 5以上15未満
・中等症:AHI 15以上30未満
・重症:AHI 30以上
CPAP(持続陽圧呼吸療法)では、一般的にAHI5未満(正常範囲)を目標とすることが多く、治療効果を評価する指標の一つとなっています。
2-2. 体重とAHIの関係
肥満は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の大きな危険因子であり、体重の変化はAHI(無呼吸低呼吸指数)にも影響します。
体重が増加すると、首周囲や舌の周辺など、気道の周囲に脂肪が蓄積します。その結果、睡眠中に喉の筋肉がゆるんだ際、気道が狭くなりやすくなり、無呼吸や低呼吸が起こる回数が増加し、AHIが上昇する傾向があります。
一方で、減量によって気道周囲の脂肪が減少すると、空気の通り道が確保されやすくなり、AHIの改善が期待できます。
以下の研究では、体重が10%増えるとAHIが32%増加し、10%減るとAHIが26% 減少すると報告されています。
【参考情報】『Weight Loss Is Integral to Obstructive Sleep Apnea Management. Ten-Year Follow-up in Sleep AHEAD』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7874406/
2-3. まずは体重の5~10%減量を目標に
睡眠時無呼吸症候群の改善を目的とした減量では、急激なダイエットを行う必要はありません。
まずは、現在の体重の5~10%程度を目安に、無理なく減量を進めることが大切です。
例えば、体重80kgの人であれば、4~8kg程度の減量がひとつの目安になります。少しの体重減少でも、気道周囲の脂肪が減ることで、いびきや無呼吸などの症状改善につながる可能性があります。
重要なのは、短期間で大幅に体重を落とすことではなく、食事内容の見直しや適度な運動など、継続できる方法を取り入れることです。
また、CPAPなどの治療を受けている場合でも、減量によって睡眠時無呼吸症候群の状態が改善し、将来的に治療内容を再評価できる可能性があります。
3. 減量の目安
減量を進める際は、体重だけでなくBMIや腹囲を目安にすることも大切です。
3-1. BMIから適正体重を確認する
減量に取り組む際は、「何kgまで減らせばよいか」を知るために、まずBMI(Body Mass Index:体格指数)を確認しましょう。
BMIは、体重と身長から肥満度を判定する指標で、以下の計算式で求められます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)²
日本では、BMI22が最も病気になりにくい「標準体重」の目安とされています。
例えば、身長170cm(1.70m)の場合、BMI22に相当する体重は約63.6kgです。
【参考情報】『BMIチェックツール』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/bmi_check
3-2. BMIだけでなく腹囲も参考にする
減量ではBMIだけでなく、腹囲(お腹周り)も重要な目安になります。
お腹周りに脂肪が多く蓄積した内臓脂肪型肥満は、睡眠時無呼吸症候群だけでなく、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病とも深く関係しています。
内臓脂肪が増えると、腹部の脂肪によって呼吸機能に影響するほか、首周囲にも脂肪が蓄積しやすくなります。その結果、睡眠中に気道が狭くなり、無呼吸や低呼吸が起こりやすくなることがあります。
腹囲の目安は、日本のメタボリックシンドローム診断基準では以下のとおりです。
・男性:85cm以上
・女性:90cm以上
【参考情報】『メタボリックシンドロームの診断基準』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-01-003
腹囲が大きい場合は、減量によって睡眠時無呼吸症候群の改善が期待できる可能性があります。
4. 睡眠時無呼吸症候群の減量方法
睡眠時無呼吸症候群の改善には、無理のない減量を継続することが大切です。
この章では、食事療法と運動療法のポイントを紹介し、続けやすい減量方法について解説します。
4-1. 食事療法
睡眠時無呼吸症候群の改善を目指すうえで、減量の基本となるのが食事療法です。極端な食事制限ではなく、毎日の食習慣を見直すことが大切です。
まず意識したいのが、主食の量や甘い飲み物、飲酒の見直しです。
ご飯やパン、麺類などの炭水化物を食べ過ぎたり、ジュースや清涼飲料水を頻繁に飲んだりすると、エネルギーを摂り過ぎて体重が増えやすくなります。
食事では、よく噛んでゆっくり食べることも重要です。満腹感を得やすくなり、食べ過ぎの予防につながります。
さらに、朝・昼・夕の食事時間をできるだけ一定にし、規則正しい食生活を心がけましょう。不規則な食事や夜遅い食事は、体重増加の原因になりやすいとされています。
献立では、野菜やきのこ類、海藻類などで食物繊維を十分に摂り、鶏むね肉や魚、大豆製品などのたんぱく質を意識して取り入れると、満腹感を得やすく筋肉量の維持にも役立ちます。
【参考情報】『ちょうどよいバランスの食生活』農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wakaisedai/attach/pdf/balance-8.pdf
4-2. 運動療法
減量には、食事療法とあわせて運動療法を取り入れることも大切です。
まずおすすめなのが、ウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動です。有酸素運動は脂肪を燃焼しやすく、体重や内臓脂肪の減少につながります。
1回20~30分程度を目安に、無理のない範囲で継続するとよいでしょう。
また、スクワットや腕立て伏せ、ダンベル運動などの筋力トレーニングも効果的です。筋肉量が増えると基礎代謝が高まり、消費エネルギーが増えやすくなります。
減量効果を高めるには、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行うことがおすすめです。
膝や腰に痛みがある人や肥満が強い人は、関節への負担が少ない水中ウォーキングも適しています。
水の浮力によって足腰への負担を抑えながら運動できるため、継続しやすい方法の一つです。
最も重要なのは、短期間で頑張り過ぎることではなく、無理なく続けられる運動を習慣化することです。
毎日少しずつでも継続することで、減量だけでなく睡眠時無呼吸症候群の改善にもつながることが期待できます。
【参考情報】『肥満症・メタボリックシンドロームの人を対象にした運動プログラム』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000656470.pdf
5. 減量以外にできる生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群の改善には、減量だけでなく日頃の生活習慣を見直すことも重要です。
5-1. 飲酒を控える
睡眠時無呼吸症候群の改善には、減量だけでなく生活習慣の見直しも重要です。そのなかでも、飲酒量を減らすことは症状の改善につながる可能性があります。
アルコールには喉の筋肉をゆるめる作用があるため、睡眠中に気道が狭くなりやすくなります。その結果、いびきや無呼吸が増えたり、症状が悪化したりすることがあります。
特に就寝前の飲酒は影響を受けやすいため、できるだけ控えることが望ましいでしょう。飲酒する場合でも、寝る直前は避け、適量を心がけることが大切です。
5-2. 禁煙を心がける
喫煙も睡眠時無呼吸症候群を悪化させる要因の一つです。
たばこの煙は喉や気道に慢性的な炎症を起こし、粘膜を腫れやすくします。その結果、気道が狭くなり、睡眠中の無呼吸やいびきが起こりやすくなることがあります。
また、喫煙はCOPDや心筋梗塞、脳卒中などのリスクも高めます。睡眠時無呼吸症候群はこれらの病気とも関係が深いため、禁煙は全身の健康維持にも役立ちます。
禁煙が難しい場合は、一人で抱え込まず、禁煙外来などを利用することも検討しましょう。
5-3. 横向きで寝る
特に軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、寝る姿勢を工夫するだけでも、症状が軽くなる場合があります。
仰向けで寝ると、舌や軟口蓋が重力によって喉の奥へ落ち込みやすくなり、気道が狭くなることがあります。
一方、横向きで寝ると気道が確保されやすくなり、いびきや無呼吸が減少する人もいます。抱き枕や横向き寝をサポートするクッションなどを活用するのも一つの方法です。
5-4. 睡眠不足を避ける
十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を送ることも大切です。
睡眠不足になると、眠りが深くなった際に喉の筋肉がさらにゆるみやすくなり、無呼吸が起こりやすくなることがあります。
また、睡眠不足は日中の眠気を強めるだけでなく、食欲を調節するホルモンのバランスにも影響し、体重増加につながることがあります。
毎日できるだけ同じ時間に就寝・起床するなど、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。減量やCPAP治療とあわせて生活習慣を整えることで、睡眠時無呼吸症候群の改善が期待できます。
6. 減量すると治療は不要になる?
減量によって睡眠時無呼吸症候群が改善することはありますが、だからといって自己判断で治療を中止するのは危険です。
6-1. CPAPは自己判断で中止しない
減量によって体重が減り、いびきや日中の眠気が改善したとしても、睡眠中の無呼吸が残っていることがあります。
CPAPを中止できるかどうかは、医師が睡眠検査を行い、AHI(無呼吸低呼吸指数)などを再評価したうえで判断します。
減量によって状態が改善した場合でも、必ず主治医と相談しながら治療方針を決めましょう。
6-2. 減量しても治らないことがある
睡眠時無呼吸症候群は肥満が大きな危険因子ですが、減量だけでは改善しない場合もあります。
例えば、もともと顎が小さかったり、加齢により筋肉が衰えていると、体重が減っても気道が狭い状態が続くことがあります。
そのため、減量に取り組んでも症状が十分に改善しない場合は、CPAPやマウスピース治療、必要に応じて手術など、原因に応じた治療を継続することが重要です。
7. 肥満症治療薬による減量は有効?
肥満症の治療では、GLP-1受容体作動薬のウゴービや、GIP/GLP-1受容体作動薬のゼップバウンドが用いられることがあります。
対象となるのは、BMIが35以上、またはBMIが27以上で肥満に関連する以下のような健康障害を2つ以上伴う成人など、一定の条件を満たす肥満症患者です。
・2型糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
・睡眠時無呼吸症候群
・脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患など)
・肥満関連の関節疾患
睡眠時無呼吸症候群があり、BMIなどの基準を満たして肥満症と診断された場合には、食事療法や運動療法に加えて、減量治療の選択肢として薬物療法が検討されることがあります。
ただし、体重が減少してもCPAPなどの治療を自己判断で中止することはできません。睡眠検査の結果などを確認しながら、医師と相談して治療方針を決めることが大切です。
8.おわりに
睡眠時無呼吸症候群は、正しい治療を続けていれば、多くの場合症状が激減していきます。
さらに肥満が解消されると、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されるだけではなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防・改善にもつながります。
はじめは面倒に感じるかもしれませんが、正しい食事や運動の習慣が身に付くと、自然と生活習慣も変わって、それが普通になってきます。
ぜひ減量に取り組んで、病気のリスクを減らし、健康寿命をのばしていきましょう。














