いびきと胃食道逆流症(GERD)の関係と対策

いびきに悩んでいる方の中には、胃食道逆流症(GERD)が原因の一つになっているケースがあります。
胃食道逆流症の症状で、胃酸が逆流して喉や気道を刺激することで、いびきが悪化したり、睡眠中の呼吸が乱れたりすることがあるからです。
この記事では、いびきと胃食道逆流症の関係をわかりやすく解説します。
原因や症状の特徴から、医療機関での確認方法、日常生活での改善ポイント、そして具体的な治療法まで、幅広くご紹介します。
目次
1.いびきの主な原因
いびきとは、睡眠中に気道が狭くなり、呼吸のたびに周囲の組織が振動することで生じる音です。
特に、のどの奥にある軟口蓋(なんこうがい)や舌の付け根がゆるみ、空気の流れが乱れるときに起こりやすくなります。
いびきの原因は一つではなく、複数の要因が重なって生じることがほとんどです。主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。
・首まわりの脂肪による気道の圧迫(肥満)
・加齢による筋力の低下
・アルコールによる気道周辺の筋肉のゆるみ
・仰向けで寝ることによる舌の落ち込み
・風邪や花粉症、副鼻腔炎などによる鼻づまり
これらの要因が重なるほど気道は狭くなり、いびきが大きくなりやすい傾向があります。
【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/symptoms-causes/syc-20377694
2.胃食道逆流症(GERD)とはどんな病気?
胃食道逆流症とは、胃の内容物や胃酸が食道へ逆流することで、さまざまな症状を引き起こす病気です。
本来、食道と胃の境目には逆流を防ぐ仕組みがありますが、この働きが弱くなると、胃酸が食道へ流れ込みやすくなります。
主な症状には、胸やけや、口の中に酸っぱい液体が上がってくる感覚(呑酸:どんさん)があります。加えて、のどの違和感やつかえ感などが現れることもあります。
さらに、この状態が続くと、睡眠の質の低下や慢性的な咳、のどや口腔内の炎症などに関連することがあります。
特に就寝中は、横になることで逆流が起こりやすく、また唾液の分泌や飲み込む回数も減るため、胃酸が食道にとどまりやすくなります。
そのため、夜間は症状に気づきにくいまま進行することがあるため注意が必要です。
【参考情報】『Gastroesophageal reflux disease (GERD)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/gerd/symptoms-causes/syc-20361940
3. いびきと胃食道逆流症の関連
いびきと胃食道逆流症は、相互に影響し合うことが知られています。
3-1.胃食道逆流症がいびきを悪化させるメカニズム
胃食道逆流症では、胃酸や胃の内容物が食道を逆流し、喉や上気道にまで達することがあります。
この刺激により、のどの粘膜に炎症や腫れ(浮腫)が生じ、気道がやや狭くなることがあります。
気道が狭くなると、睡眠中に空気が通る際の振動が起こりやすくなり、いびきの一因となります。
また、逆流した内容物がごく少量でも気道に入り込むと、気道が刺激に敏感な状態になり、わずかな刺激でも咳やいびきが出やすくなることがあります。
もともと、のどや気道の粘膜は刺激に対して敏感で、防御反応として咳が出たり気道が一時的に狭くなったりすることがあります。
さらに、粘膜が軽く傷つくことで外部刺激に対する感受性が高まり、より反応しやすい状態になります。
このように、胃食道逆流症は直接的な原因というよりも、炎症や過敏性の変化を通じて、いびきを悪化させる要因のひとつと考えられています。
3-2.睡眠時無呼吸症候群との関係
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間に無呼吸や低呼吸が繰り返される病気で、典型的な症状としていびきがあげられます。
◆「いびきと息が止まる症状から考える睡眠時無呼吸症候群」>>
睡眠時無呼吸症候群と胃食道逆流症には関連があり、互いに影響し合うことが指摘されています。
例えば、先にも述べたように、胃食道逆流症がある人では、睡眠中の逆流による気道への刺激が続くことで炎症やむくみが生じ、気道が狭くなることがあり、いびきや無呼吸を起こしやすくなる可能性があります。
一方で、睡眠時無呼吸症候群がある場合、無呼吸のたびに胸腔内圧が大きく低下し、胃の内容物が食道側へ引き上げられやすくなるため、胃酸の逆流が起こりやすくなります。
さらに夜間は横になることで重力の影響が弱まり、唾液分泌や嚥下の回数も減るため、逆流物が食道や喉に滞留しやすくなります。
【参考情報】『Association between obstructive sleep apnea and gastroesophageal reflux disease: A systematic review and meta-analysis』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37300443/
4. 胃食道逆流症によるいびきのチェックリスト
以下の項目に複数当てはまる場合、いびきの一因として胃食道逆流症が関与している可能性があります。
<典型的な逆流症状>
・胸やけを感じることがある
・口の中に酸っぱい液体が上がってくることがある
・食後に胃もたれや不快感がある
<のど・気道の症状>
・のどの違和感やつかえ感が続いている
・声がかすれることがある
・朝起きたときにのどのヒリヒリ感や乾燥を感じる
・慢性的な咳がある
<いびき・睡眠に関する特徴>
・仰向けで寝るといびきが強くなる
・就寝中や起床時にむせる感じがある
・夜中に目が覚めることがある
・睡眠の質が悪いと感じる
<生活習慣・背景>
・就寝直前に食事をとることが多い
・脂っこい食事やアルコールをよく摂る
・肥満傾向がある
・ストレスや不規則な生活が続いている
5.自分でできる対策
チェックリストに複数当てはまる場合、胃食道逆流症による影響を減らすことで、いびきの改善が期待できることがあります。
症状が軽いようなら、まずは日常生活の中でできる対策から見直してみましょう。
<就寝前の習慣を見直す>
食後すぐに横になると、胃の内容物が逆流しやすくなります。
夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませ、食後はできるだけ上半身を起こした姿勢で過ごすことが大切です。
また、アルコールは下部食道括約筋をゆるめる作用があり、胃食道逆流を起こしやすくするため、就寝前の飲酒は控えるようにしましょう。
【参考情報】『Is alcohol consumption associated with gastroesophageal reflux disease?』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2880354/
<食事内容に気を配る>
脂肪分の多い食事は胃の動きを遅らせるほか、下部食道括約筋をゆるめることで逆流を起こしやすくなります。
また、香辛料やカフェイン、チョコレートなどは症状を悪化させることがあり、摂りすぎには注意が必要です。
<寝る姿勢を工夫する>
就寝中の胃食道逆流を防ぐためには、上半身をやや高くして寝ることが有効です。ベッドの頭側を10〜20cm程度上げることで、重力の働きにより胃酸が食道へ逆流しにくくなります。
枕を高くする方法でも一定の効果はありますが、首だけが曲がる姿勢になると十分な予防効果が得られない場合があります。
そのため、上半身全体を傾けるように調整することが望ましいとされています。
また、いびき対策としては寝る向きも重要です。仰向けでは舌や軟口蓋が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭くなるため、いびきが出やすくなります。
一方で、横向きで寝ることで気道の閉塞が起こりにくくなり、いびきの軽減につながる場合があります。
【参考情報】『Effect of bed head elevation during sleep in symptomatic patients of nocturnal gastroesophageal reflux』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22098332/
<体重管理を意識する>
肥満は、いびきと胃食道逆流症の両方に関係する重要な要因です。
無理のない範囲で体重管理を行うことも有効です。
◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>
<生活リズムを整える>
不規則な生活や睡眠不足は、自律神経の乱れにつながり、胃腸の働きや気道の状態にも影響を与えます。
できるだけ一定の時間に食事と睡眠をとるよう心がけましょう。
6.対策で改善しない場合の検査と治療
生活習慣の見直しを行ってもいびきの改善がみられない場合、胃食道逆流症による逆流や炎症を抑えることで、いびきの軽減が期待できるケースもあります。
6-1.胃食道逆流症の検査と治療
まずは問診によって、胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる感じ)、のどの違和感、慢性的な咳などの有無や頻度を確認します。これらはいずれも胃食道逆流症でよくみられる症状です。
症状が強い場合や長引いている場合には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行い、食道や胃の粘膜の状態を直接確認します。
なお、胃カメラで明らかな異常が見られないタイプの逆流症(非びらん性逆流症)も少なくありません。
診断がはっきりしない場合や、治療しても改善が乏しい場合には、細いチューブを鼻から食道に挿入し、次のような検査が行われます。
<24時間食道pHモニタリング>
酸の逆流の頻度や持続時間を測定し、症状との関連を調べます。
<食道インピーダンス検査>
酸だけでなく、酸を伴わない逆流も含めて、食道内を通過する内容物の動きを記録します。
<食道内圧検査(マノメトリー)>
飲み込むときの圧力や食道の運動機能、胃との境目にある下部食道括約筋の働きを評価します。
治療は、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせて行うのが基本です。
薬物療法では、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)が中心となります。必要に応じて、胃の動きを助ける薬が併用されることもあります。
治療期間は一般的に4〜8週間程度が目安とされ、その後は症状の経過を見ながら、継続や減量、必要時のみの使用などを検討していきます。
6-2.睡眠時無呼吸症候群の検査と治療
いびきが強い場合や、日中の強い眠気、睡眠中の呼吸停止が疑われる場合には、睡眠時無呼吸症候群の有無を確認することが重要です。
特に、胃食道逆流症が関与している可能性があるケースでは、両者が相互に影響し合い、症状を悪化させていることもあります。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずは自宅で行う簡易検査を実施し、必要に応じて精密検査へ進みます。
<簡易検査>
自宅で行ういびき・無呼吸のスクリーニング検査
<精密検査>
医療機関に一泊して行う詳細な検査(ポリソムノグラフィー)
※当院では入院ではなく自宅での精密検査になります
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法は、就寝中に一定の圧力で空気を送り込むCPAP(持続陽圧呼吸療法)です。
この治療により気道の閉塞を防ぎ、いびきや無呼吸の改善が期待できます。
7.おわりに
いびきと胃食道逆流症(GERD)は、それぞれ独立した問題のように見えて、実際には相互に影響し合う関係にあります。生活習慣の見直しや適切な治療を行うことで、いびきや逆流症状のいずれも軽減が期待できます。
症状を放置すると、睡眠の質の低下や睡眠時無呼吸症候群などの合併症につながる可能性もあるため、気になる症状がある場合は早めに医療機関に相談することが重要です。適切な対応を行うことで、日常生活の質の改善につなげることができます。




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