いびきが止まる=息が止まる?睡眠中の無呼吸といびきの関係
睡眠中にいびきをかいている人は、突然息が止まり、苦しくなって目を覚ますことがあります。
いびきをかいている本人は気づかなくても、一緒に寝ている人が異変に気付いて、驚くこともあるでしょう。
この記事では、いびきの原因と、寝ている間に息が止まる理由について説明します。いびきで睡眠が妨げられている人や、寝ても寝ても疲れがとれないと感じている人は、ぜひ読んでください。
目次
1.いびきの原因
いびきは、空気の通り道である気道が、何らかの原因によって狭くなると生じます。
いつもより狭くなった気道を通る際に、空気に勢いがつき、その勢いで気道の粘膜が震えて音が鳴るのです。
以下、気道が狭くなる主な原因について説明します。
1-1.肥満
肥満体型の人は、首や喉の周りにも脂肪がついています。その脂肪で圧迫されると気道が狭くなり、いびきが出やすくなります。
また、舌にも脂肪がつくと、脂肪の重みによって舌が喉に落ち込みます。すると、舌で気道が塞がれて狭くなり、ますますいびきが出やすくなります。
◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>
1-2.鼻づまり
アレルギー性鼻炎や風邪などによって鼻が詰まると、鼻での呼吸がしにくくなるため、無意識のうちに口を開けて呼吸をするようになります。
口呼吸になると、舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、気道が狭くなるのでいびきが生じます。
◆「口呼吸がいびきにつながる理由と予防のためにできること」>>
1-3.飲酒
アルコールには筋肉を緩める作用があるため、お酒を飲むと気道の筋肉が緩みます。気道の筋肉が緩むと、気道が狭くなるため、いびきをかくことがあります。
特に、寝る直前にお酒を飲むといびきが出やすくなるので、寝酒の習慣がある人は、よくいびきをかきます。
1-4.喫煙
タバコに含まれる物質は、気道の粘膜を刺激します。そのため、喫煙の習慣のある人は、刺激により炎症が起こり、その影響で気道が狭くなっていることがあります。
1-5.疲労やストレス
疲労やストレスを感じると、体は回復を促すため筋肉を緩めます。すると、気道の筋肉も緩んで狭くなるため、いびきをかきやすくなります。
1-6.寝姿勢
寝る時の姿勢が仰向けだと、重力で舌が喉の奥に落ち込み、気道が圧迫されやすくなります。
また、枕の高さが合わなくて首が曲がりすぎると、気道が十分に確保できず、いびきをかく原因となります。
1-7.加齢
加齢により筋力が衰えると、口の周りの筋力も低下するので、眠っている間に口を開けてしまうことが多くなります。
また、女性ホルモンの中には、気道の筋肉を広げるはたらきを持つものがあるため、女性は閉経で女性ホルモンが減少すると、気道が狭くなる傾向があります。
1-8.アデノイド・扁桃肥大
鼻から喉にかけてあるアデノイドや扁桃という部分が大きいと、気道が圧迫されて狭くなります。
特に子どものいびきは、アデノイドや扁桃の肥大によるものが多いです。
1-9.睡眠薬の服用
睡眠薬の中には、筋肉を緩める作用を持つものがあります。このような薬を服用すると、気道の筋肉が緩んで、気道が狭くなります。
1-10.睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群という病気が原因で、いびきが出ることがあります。この病気の患者さんは、いびきの途中で一瞬呼吸が止まり、すぐに再開することがよくあります。
【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/symptoms-causes/syc-20377694
2.睡眠時無呼吸症候群とは
疲労や飲酒のため気道が狭くなっても、それは一時的なことなので、疲れがとれたり、アルコールが抜けたりすれば、いびきは出なくなるでしょう。
しかし、睡眠時無呼吸症候群が原因で気道が狭くなっているなら、治療をしなければ、いつまでもいびきや無呼吸が繰り返されます。
2-1.どんな病気なのか
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。
無呼吸とは、医学的には10秒以上呼吸が止まること、低呼吸とは、呼吸が止まりかけている状態を指します。
病院で検査をして、「無呼吸や低呼吸が1時間あたり平均で5回以上ある」ことが確認されると、睡眠時無呼吸症候群だと診断されます。
2-2.原因
この病気の主な原因には、閉塞性と中枢性の2種類がありますが、ほとんどの患者さんは閉塞性です。
閉塞性は、肥満やアデノイド肥大などによって、気道が塞がれたり狭くなることが原因となります。
中枢性は、心不全や腎臓病、脳卒中などの影響で、呼吸中枢に何らかの問題が生じることで発症します。
2-3.症状
この病気の主な症状は、激しいいびきです。ただし、いびきは閉塞性の症状で、中枢性ではほとんど見られません。
ほかには、日中の眠気や起床時の倦怠感、集中力の低下などの症状があります。
◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>
閉塞性の患者さんは、いびきをかいている最中に一瞬息が止まった後、フガッという音やプシューっという音とともに呼吸が再開することがあります。
息が止まると、激しいいびきも急に止まるので、隣で寝ている人がビックリしたり、心配になることがあります。
2-4.検査
睡眠時無呼吸症候群の検査には、簡易検査と精密検査の2種類があります。
簡易検査は、自宅でアプノモニターという機械を装着して行います。
簡易検査の結果、より詳しく調べる必要があると判断されたら精密検査を行います。
精密検査では、頭や胸などにセンサーを取り付け、睡眠中の脳波や呼吸の状態など、たくさんのデータを記録します。
2-5.治療
治療では、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて、睡眠中の呼吸をサポートします。
病気の原因や重症度によっては、マウスピースやASV、手術などの治療法も検討します。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
3.睡眠時無呼吸症候群の合併症
睡眠時無呼吸症候群の本当の恐ろしさは、いびきというわかりやすい症状の裏で進行する、さまざまな合併症にあります。
3-1.高血圧
夜間睡眠中は、通常は副交感神経の働きにより血圧が下がります。
しかし、睡眠時無呼吸症候群になると、寝ている間に呼吸が止まって一瞬目が覚めるため、本来は日中に働く交感神経が活発になり、夜に血圧が上がります。
このように、夜に血圧が上がることを繰り返していると、血管に負担がかかるので、高血圧を発症するリスクが上がります。
しかも、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、降圧剤が効きにくい治療抵抗性高血圧を併発しやすく、治療が難航することがあります。
3-2.心臓病
睡眠中に呼吸が止まると、体内に十分な酸素を取り込めなくなるため、不足分を補おうとして心臓の動きが早くなります。
その結果、心臓や血管に負担がかかり続け、心臓の動きが弱くなったり、心臓の血管が詰まったりすることがあります。
3-3.脳卒中
夜間の高血圧や体内の酸素不足により、血管に負担がかかり続けると、血管は弾力を失って硬く、もろくなります。
もろくなった血管は、血栓により詰まったり破れたりしやすくなるため、脳卒中を発症することがあります。
3-4.糖尿病
睡眠時無呼吸症候群により夜間に目が覚めることを繰り返すと熟睡できないため、睡眠時間が短くなります。
睡眠時間が短いと、食欲を増進させるホルモンであるグレリンが増え、肥満につながることがあります。
肥満になると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが悪くなるため血糖値が下がりにくくなり、糖尿病のリスクが高まります。
4.睡眠時無呼吸症候群による日常生活への影響
睡眠時無呼吸症候群による睡眠不足や激しいいびきは、日常生活にも悪影響を及ぼすことがあります。
4-1.交通事故
睡眠時無呼吸症候群の影響で夜間に熟睡できないと、日中に眠気が襲ってきます。この眠気は、意志の力では我慢できないほど強烈なことがあります。
そのため、車を運転している最中に寝てしまい、交通事故を起こしてしまう危険があります。
4-2.集中力の低下
夜間に呼吸が止まることを繰り返すと、そのたびに一瞬目が覚めてしまうので、十分に眠ったつもりでも心身の疲れが十分にはとれません。
このように睡眠の質が下がることが続くと、集中力が維持できなくなり、仕事のミスが増えたり、勉強に身が入らなくなってしまうことがあります。
4-3.人の安眠を妨げる
睡眠時無呼吸症候群の人のいびきは激しく、しかも毎晩のように生じるため、一緒に寝ている人の安眠を妨げてしまうことがあります。
家族やパートナーのほか、旅行や出張で同室に宿泊する人から、一緒に寝るのを嫌がられることもあるでしょう。
5.おわりに
いびきの最中に、突然息が止まることが続くなら、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
「睡眠中に息が苦しくなる」「息が止まった感じがして起きてしまう」など、睡眠中の呼吸に問題がある人は、病院を受診して検査を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群が原因でいびきが出ているのであれば、治療によっていびきや息苦しさは改善します。
また、熟睡できるようになり目覚めがさわやかになるため、仕事や生活の質も向上するでしょう。