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睡眠時無呼吸症候群と心不全の関係は?合併しやすい理由や有効な治療法を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年06月29日

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、狭心症や心筋梗塞などの合併症を起こしやすく、心不全に至ることがあります。

一方で、心不全が、睡眠時無呼吸症候群の原因になっている場合もあります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と心不全が合併しやすい理由や治療法について解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か

まずは、睡眠時無呼吸症候群の特徴や体への影響、2つのタイプについて解説します。

1-1.睡眠中の無呼吸・低呼吸が全身に及ぼす影響

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が何度も止まったり(無呼吸)、弱くなったり(低呼吸)する病気です。

一般的に、呼吸が10秒以上止まった状態を「無呼吸」、呼吸が浅くなって換気量が減った状態を「低呼吸」と呼びます。これらが睡眠中に繰り返し起こることで、体にさまざまな影響が及びます。

無呼吸や低呼吸が起こると、血液中の酸素濃度が何度も下がるうえ、呼吸を再開させようと脳が覚醒反応を繰り返します。そのため本人が気付かないうちに睡眠が細切れになり、睡眠の質が下がってしまいます。

その結果、日中の強い眠気や集中力の低下、疲労感が現れるだけでなく、高血圧や不整脈、心不全といった心血管疾患の発症や悪化にも関わることが知られています。

1-2.睡眠時無呼吸症候群・2つのタイプ

睡眠時無呼吸症候群は、大きく「閉塞型」と「中枢型」の2つに分けられます。

閉塞型は、睡眠中に喉や舌の筋肉が緩むことで気道が狭くなったり塞がったりし、呼吸が妨げられるタイプです。

中枢型は、気道自体は塞がっていないものの、脳から呼吸を促す指令が一時的に弱まることで呼吸が止まるタイプで、心不全などの病気に伴って現れることがあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

2.心不全とはどんな病気か

次に、心不全の特徴や主な症状について解説します。

2-1.心臓の働きが低下してさまざまな症状が現れる

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な量の血液を十分に送り出せなくなった状態のことです。

これは特定の病名を指すのではなく、さまざまな心臓病が進行した結果として現れる症候群です。

心不全になると、全身へ血液を送り出す力が弱まるだけでなく、血液が心臓や血管の中に滞る「うっ血」が起こります。

その結果、少し体を動かしただけで息切れしたり疲れやすくなったりするほか、足のむくみ、体重増加、横になると息苦しくなるといった症状が現れることがあります。

症状が進むと、安静にしていても呼吸困難を感じるようになる場合もあります。

2-2.心不全・2つのタイプ

心不全は、障害を受けている心臓の部位によって「左心不全」と「右心不全」に大きく分けられます。

左心不全では肺に血液がうっ滞(体内の水分や血液などが一か所に溜まってしまう状態)しやすく、息切れや呼吸困難といった症状が目立ちます。

一方、右心不全では全身の静脈に血液がうっ滞しやすくなり、足のむくみや頸静脈の怒張(血管が膨れてパンパンに張っている状態)、腹水などがみられることがあります。

実際には、左心不全と右心不全が同時に起こるケースも少なくありません。

【参考情報】『患者の皆様へ 心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/

3. 睡眠時無呼吸症候群と心不全はなぜ合併しやすいのか


睡眠時無呼吸症候群と心不全は、それぞれ別の病気でありながら、互いに影響を及ぼし合うことから合併しやすいことが知られています。

睡眠時無呼吸症候群が心不全の発症や悪化に関与する一方で、心不全も睡眠時無呼吸症候群を生じやすくしたり、症状を悪化させたりすることがあります。

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返されることで、体内の酸素濃度が低下します。

これが繰り返されるたびに心臓や血管へ負担がかかり、長期間続くことで心不全の発症や悪化に関与すると考えられています。

◆「睡眠時無呼吸症候群による酸素不足が招く症状とは?」>>

一方、心不全になると、心臓の働きが低下することで体液の分布や呼吸の調節に変化が生じます。

その結果、睡眠中に気道が狭くなったり、呼吸が不安定になったりして、睡眠時無呼吸症候群が生じやすくなることがあります。

【参考情報】『Sleep Apnea and Heart Health』American Heart Association
https://www.heart.org/en/health-topics/sleep-disorders/sleep-apnea-and-heart-disease-stroke

このように、睡眠時無呼吸症候群と心不全は互いに悪影響を及ぼし合う「悪循環」の関係にあります。

4. タイプ別にみる睡眠時無呼吸症候群と心不全の関係


閉塞型と中枢型のいずれも心不全との関連は深いものの、その発症の仕組みや心不全への影響は異なります。

4-1. 閉塞型睡眠時無呼吸症候群と心不全

閉塞型は睡眠時無呼吸症候群の中で最も多くみられるタイプであり、心不全とも深い関係があります。

上気道が閉塞すると呼吸が止まり、血液中の酸素濃度が低下します。体はこの低酸素状態に反応して交感神経を活性化させるため、心拍数や血圧が上昇し、心臓には通常以上の負担がかかります。

さらに、無呼吸時には胸の中の圧力が大きく変動し、心臓が血液を送り出すためにより大きな力を必要とします。このような状態が毎晩繰り返されることで、心臓への負荷が蓄積し、心不全の発症や悪化につながる可能性があります。

【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea in Heart Failure: Current Knowledge and Future Directions』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9225117/

4-2. 中枢型睡眠時無呼吸症候群と心不全

中枢型睡眠時無呼吸症候群は、慢性心不全の患者に比較的よくみられるタイプの睡眠時無呼吸症候群です。

心不全になると、心臓の働きが弱まることで血液循環が遅くなるだけでなく、呼吸を調節するしくみそのものが不安定になります。

こうした患者では、「チェーン・ストークス呼吸」と呼ばれる特徴的な呼吸パターンが現れることがあります。これは、呼吸が徐々に深く速くなったあと、次第に浅くなっていき、最後には無呼吸に至るというサイクルを周期的に繰り返す呼吸です。

【参考情報】『チェーン・ストークス呼吸』日本救急医学会
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0117.html

チェーン・ストークス呼吸は、心不全が進行している患者ほど現れやすい傾向があり、重症度や予後との関連も指摘されています。

5. 睡眠時無呼吸症候群の検査


睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、「簡易検査」と「精密検査」という2段階の検査が行われます。

5-1.簡易検査

簡易検査は、自宅で行うことができる検査です。指先や鼻、胸部などにセンサーを取り付けた小型の機器を装着して眠るだけで検査ができます。

この検査では、主に血液中の酸素飽和度、呼吸の動き、鼻からの気流などを記録し、睡眠中に無呼吸や低呼吸がどの程度起きているかを調べます。

これにより、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示す指標(AHI:無呼吸低呼吸指数)を算出し、おおよその重症度を把握することができます。

簡易検査は手軽に受けられる一方で、脳波や眼球運動などは記録しないため、睡眠そのものの深さや質までは詳しく評価できません。

そのため、簡易検査の結果によっては、より詳しい精密検査が勧められることがあります。

◆「簡易検査」についてくわしく>>

5-2.精密検査

精密検査では、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸の動き、酸素飽和度、いびきの音、体の動きなど、多くの項目を測定・記録できます。

簡易検査では把握できない睡眠の深さや睡眠段階の移り変わり、覚醒反応の頻度なども詳細にわかるため、より正確にAHIを算出できるほか、無呼吸のタイプ(閉塞型か中枢型か)の判別や、他の睡眠障害との鑑別にも役立ちます。

精密検査は情報量が多く診断の精度が高い一方で、医療機関での宿泊が必要となることが多いことから、簡易検査に比べて受診の負担はやや大きくなりますが、当院では自宅での精密検査によって診断が可能です。

◆「精密検査」についてくわしく>>

6. 睡眠時無呼吸症候群の治療


睡眠時無呼吸症候群と心不全を合併している場合は、総合的に治療を行うことが重要です。

6-1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群では、CPAP(シーパップ)が標準的な治療法です。

◆「CPAP」とは?>>

CPAPは、マスクを通して一定の圧力をかけた空気を送り込み、睡眠中に上気道が閉塞するのを防ぎます。その結果、無呼吸や低呼吸が減少し、睡眠の質や日中の眠気の改善が期待できます。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群を合併した心不全患者では、CPAP治療によって無呼吸や低呼吸が改善するだけでなく、交感神経の過剰な働きが抑えられ、血圧や心臓への負担が軽減することがあります。その結果、心機能や生活の質の改善が期待できることが報告されています。

【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea in Heart Failure: Review of Prevalence, Treatment with Continuous Positive Airway Pressure, and Prognosis』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6059510/

また、肥満がある場合は減量を行うことで気道の閉塞が改善し、症状が軽減することがあります。さらに、就寝前の飲酒を控えることなども、睡眠時無呼吸症候群の悪化を防ぐために重要です。

◆「肥満による睡眠時無呼吸症候群の症状を改善する食事・栄養の摂り方」>>

6-2. 中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療

中枢性の睡眠時無呼吸症候群では、心不全そのものが呼吸異常の原因となっているケースが多いため、まずは心不全の治療を最適化することが基本となります。

薬物療法や、心不全の原因となっている病気の治療によって心機能が改善すると、睡眠時無呼吸症候群の症状が軽くなることがあります。

患者さんの状態によっては、在宅酸素療法などの補助的な治療が行われる場合もあります。

◆「在宅酸素療法」の情報をチェック>>

また、一部の患者さんではASV(Adaptive Servo-Ventilation:適応型サーボ換気療法)が検討されることもありますが、左室駆出率(LVEF)が低下した症候性慢性心不全患者では予後に悪影響を及ぼす可能性が報告されているため、慎重に判断する必要があります。

◆「ASV」とは?>>

7. 睡眠時無呼吸症候群の治療で心不全が改善する可能性

睡眠時無呼吸症候群を治療すると、心不全が改善する可能性があります。

特に閉塞性を合併している患者さんは、CPAP療法によって睡眠中の無呼吸や呼吸が浅くなる症状が改善すると、血液中の酸素が一時的に下がる状態や、自律神経の緊張状態が和らぎます。

その結果、血圧や心臓への負担が減り、症状や生活の質(QOL)が改善し、一部の患者さんでは心臓の働きや体力の向上も見られています。

また、心不全で入院した患者さんを調べた研究では、無呼吸症候群の治療を続けられた人ほど、心不全による再入院が少なかったという結果も出ています。

【参考情報】『Adherence to continuous positive airway pressure reduces the risk of 30-day hospital readmission among older adults with comorbid obstructive sleep apnea and cardiovascular disease』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35934923/

ただし、これらは主に患者さんの様子を観察して得られたデータであり、CPAP治療が心不全による入院や死亡を確実に減らすと言い切れるだけの、しっかりとした検証はまだ十分ではありません。

そのため、睡眠時無呼吸症候群の治療は、心不全管理の一環として重要ですが、心不全そのものの治療の代わりにはなりません。

医師の指示のもとで心不全の通常の治療を続けながら、無呼吸症候群もきちんと治療していくことが大切です。

8. 日常生活での注意点


睡眠時無呼吸症候群と心不全を合併している場合は、医療機関での治療に加え、日頃の生活習慣を見直すことも重要です。

肥満がある人は、適切な体重管理を行うことで睡眠時無呼吸症候群の改善が期待できます。無理のない範囲で食事内容や運動習慣を見直し、減量に取り組みましょう。

心不全では、塩分や水分の摂り過ぎによって体液が増えると症状が悪化することがあります。塩分・水分の摂取量については、主治医から指示された内容を守ることが大切です。

また、飲酒や睡眠薬は喉の筋肉をゆるませたり、呼吸を調節する働きに影響を及ぼしたりするため、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性があります。

飲酒は適量を心がけ、睡眠薬を使用している場合は自己判断で飲酒を併用しないようにしましょう。

CPAP治療を受けている人は、症状が軽くなったと感じても自己判断で使用を中止せず、毎晩継続して使用することが重要です。

継続的な治療によって無呼吸を抑え、心臓への負担を軽減する効果が期待できます。

9. おわりに

睡眠時無呼吸症候群を適切に治療することで、心臓への負担の軽減や生活の質(QOL)の改善が期待できる場合があります。

ただし、心不全そのものを治す治療ではないため、心不全に対する薬物療法や生活習慣の改善も継続することが大切です。

いびきや無呼吸、息苦しさ、日中の眠気など気になる症状がある場合は、そのまま放置せず、呼吸器内科や主治医に相談しましょう。

早期に睡眠時無呼吸症候群を発見し、適切な治療を始めることが、心臓や全身への負担を減らし、健康的な生活を維持することにつながります。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 咳が2週間以上続いている
  • 息切れや息苦しさを感じることがある
  • 痰がからんで気になる
  • 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない

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