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睡眠時無呼吸症候群の簡易検査の方法と結果の見方について解説します

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年04月18日

病院で「睡眠時無呼吸症候群の疑いがある」と判断されたら、診断に必要な検査を行うことがあります。

検査には、自宅でできる「簡易検査」と、医療機関で行う「精密検査」があります。この記事では、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査の方法と、結果の見方について説明します。

検査の前に手順を確認しておきたい人や、検査を不安に感じている人は、ぜひ読んでください。

1.睡眠時無呼吸症候群はどのような病気か

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に気道が狭くなり、無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。

【参考情報】『Sleep apnea』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20377631

気道が狭くなる理由は様々あり、肥満で重くなった舌、口呼吸、加齢による筋力低下、顎の後退、扁桃肥大、長い軟口蓋(上あごの奥にある柔らかい部分)などがあります。
睡眠中は筋の緊張が緩み、健康な人でも仰向けで寝ると、舌や軟口蓋が重力の影響により気道を狭くします。

患者さんに自覚はなくても、無呼吸状態になるたびに一瞬目が覚めているため熟睡できず、起床時の頭痛や日中の眠気に悩まされている方は多いです。病気が原因で、居眠り運転による事故を起こしたケースもたびたび報道されています。

【参考文献】『睡眠時無呼吸症候群(SAS)による眠気に起因した自動車事故の検討』日本交通科学学会誌 第13巻 第2号 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcts/13/2/13_18/_pdf

また、睡眠中に無呼吸になると、体に必要な酸素を十分に取り込むことができなくなります。すると、不足分の酸素を補おうとして、心臓がいつもより強く働きます。

毎晩のように酸素不足が続くと、そのたびに心臓が過剰に働くので負担が大きくなります。そのため、高血圧や心筋梗塞などの心血管疾患を発症しやすくなります。

◆「酸素不足と心血管疾患」について>>

初期のうちは、ストレスや加齢のせいで疲れていると思い込んでしまう人が多く、病気に気づくことは難しいかもしれません。

わかりやすいサインとしては「いびき」があります。家族やパートナーに「いびきがうるさい」と何度も指摘されたり、自分のいびきの音で目が覚めてしまうことが続いている人は、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみましょう。

◆「いびきと睡眠時無呼吸症候群」について>>

2.簡易検査の方法

簡易検査では、「アプノモニター」という小型の医療機器を自宅に持ち帰って、睡眠中の呼吸状態や血液中の酸素飽和度などを計測します。睡眠の深さや脳波といった細かいデータは計測できません。

以下、具体的な検査方法について見ていきましょう。

①アプノモニターの本体を装着
手首かお腹まわりに装着します。装着位置はどちらでも構いませんが、気になる方は医療機関などで事前に確認しておきましょう

②カニューレを装着
カニューレ(細いチューブ)の突起部分を両方の鼻の穴に入れて固定し、両耳にかけます。

寝ている間に外れないよう、鼻の下や頬のあたりのチューブを付属品の医療用テープで留めます。

③SpO2プローブ(パルスオキシメーター)を装着
指先に装着します。どの指に装着しても構いません。
 
④電源を入れる
自動で記録が開始されます。装着後は寝ているだけで検査が終わります。

夜中にトイレに行きたくなった時は、アプノモニターを装着したまま行っても大丈夫です。

※注意:検査の晩は、飲酒しないでください。

◆「睡眠時無呼吸症候群と飲酒の関係性」について詳しく>>

【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群の診断における携帯用終夜睡眠呼吸グラフの臨床評価』日本呼吸器学会雑誌第42巻第9号
https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/042090794j.pdf

3.検査結果の見方

簡易検査の結果は、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数である「AHI(無呼吸低呼吸指数)」という指標をもとに見ていきます。これに加え、日中の眠気などの自覚症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

 ・5未満: 睡眠時無呼吸症候群ではない
 ・5~15: 軽症
 ・15~30:中等症
 ・30以上:重症

重症度に応じて、以下のような治療計画を立てます。

【AHIが5未満】
特に治療はしませんが、肥満の方は減量で病気を予防しましょう。

【AHIが5以上】
精密検査を行い、睡眠時の体の状態をさらにくわしく調べます。

【AHIが40以上】
明らかに重症なので、すぐに治療を開始します。

精密検査が必要と判断されたら、医療機関に一泊入院して、ポリソムノグラフィー(PSG)という検査を行います。

体にたくさんのセンサーをつけて一晩眠り、脳波、眼球運動、あごの動き、心電図など、より多くのデータを取り、細かく記録します。

◆「精密検査」について詳しく>>

4.検査後の治療について

睡眠時無呼吸症候群の治療は、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)が第一の選択肢となります。専用の機器を装着し、寝ている間に鼻から空気を送り込み、睡眠中の呼吸をサポートします。

◆「CPAP」とは?」>>

「あごが小さい」など骨格に原因がある方はマウスピース、心臓の病気が原因である方はASVを用いることがあります。

◆「マウスピース」とは?>>

◆「ASV」とは?>>

5.おわりに

睡眠時無呼吸症候群の簡易検査で用いるアプノモニターは、呼吸器内科でも貸し出しています。

アプノモニターによる簡易検査の費用の目安は、保険適応で3000円程度です。ただし、検査を受けるまでに問診など診察も必要となるため、さらに診察代も必要になります。

検査は自宅で眠っている間にできるので、忙しい方でも取り組みやすいでしょう。また、手順は簡単で、痛みもありません。

睡眠時のいびきや日中の眠気など、些細な症状でもかまいません。気になる症状があるときは、念のため一度病院を受診して、検査を受けてみましょう。

◆「昼間の眠気」が耐えられないなら>>

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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