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昼間の眠気が耐えられないなら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年02月03日

つい夜更かしをした時や、なかなか寝付けなかった日の翌朝は、誰でも昼間に眠くなります。

しかし、そのような眠気は一時的なものなので、多少の睡魔に襲われても、起きていようと頑張っていれば、持ちこたえられることが多いでしょう。

しかし、猛烈な眠気に襲われ、大事な会議の最中や運転中でも我慢できずに眠ってしまうのなら、病気かもしれません。

この記事では、昼間に眠くなる原因を紹介し、睡眠時無呼吸症候群の可能性について解説します。日中、強い眠気に襲われ困っている人は、ぜひ参考にしてください。

1.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に一瞬呼吸が止まったり、呼吸が浅くなることを繰り返す病気です。

昼間の眠気のほか、以下の症状があれば、睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いです。

 ・激しいいびき
 ・起床時の頭痛
 ・夜中に何度もトイレに行く
 ・寝汗をよくかく

睡眠中に呼吸が止まると、必要な酸素を十分に取り込めなくなるため、体が低酸素状態となります。

すると、通常は昼間に働く交感神経が、低酸素状態を改善するため、夜も活発に働くようになります。

その結果、心臓や血管に負担がかかり、高血圧や心不全、糖尿病などの合併症が現れる恐れがあります。

◆「合併症」について詳しく>>

2.なぜ睡眠時無呼吸症候群だと昼間に眠くなるのか

睡眠時無呼吸症候群の人は、自分では気づいていなくても、毎晩何度も呼吸が止まっています。

そのたびに、夜中に何度も目が覚めて睡眠不足になったり、熟睡できずに悪夢や寝言、寝汗が増え、睡眠の質が下がります。

◆「悪夢」との関係>>

◆「寝汗」との関係>>

睡眠の質や量が低下すれば、それを補おうとして、昼間に眠くなります。また、眠気のため仕事や学習に集中できず、ミスを繰り返してしまったり、イライラすることもあります。

最悪の場合、居眠り運転で事故を起こし、自分や他人に危害が及ぶことがあります。

◆「運転業務」との関係>>

3.検査と治療


もしかして睡眠時無呼吸症候群では?と思った人は、病院を受診して検査を受けましょう。

3-1.検査

検査には、簡易検査と精密検査があります。

簡易検査は、「アプノモニター」という小型の医療機器を持ち帰り、就寝前に自分でセットして行います。

◆「簡易検査」について詳しく>>

さらに詳しく調べる必要があれば、医療機関に一泊して、精密検査を行います。

精密検査では、寝ている間の呼吸や脳波などさまざまなデータを測定して、睡眠中の体の状態を確認します。

◆「精密検査」について詳しく>>

3-2.治療

治療では、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて、寝ている間の呼吸をサポートします。

◆「CPAP」について詳しく>>

その他、患者さんの症状や事情に応じて、ASVやマウスピースを使うこともあれば、手術を行うこともあります。

◆「ASV」とは>>

◆「マウスピース」とは>>

◆「手術」について>>

睡眠時無呼吸症候群は、肥満が原因で発症することがあります。当てはまる患者さんは、減量に取り組むと、治療の効果が出やすくなります。

【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea and Body Weight』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2440784/

◆「減量」について>>

4.昼間に眠くなる他の原因


睡眠時無呼吸症候群以外にも、昼間に眠くなる原因はいくつかありますが、心配ないものと、病気によるものがあります。

4-1.睡眠不足

仕事や家事に追われていたり、趣味や遊びが止められなくて、睡眠時間を削ってしまう人は多いでしょう。

たまになら、そんな日があってもすぐに体調は回復するでしょうが、慢性的な寝不足状態に陥っているなら、睡眠時間を確保する必要があります。

時間が取れない日も、なるべく質の良い睡眠になるよう、寝る前には「スマホやパソコンを見ない」、「カフェインを摂らない」、「お酒を飲まない」、「タバコを吸わない」ことを心がけましょう。

◆「飲酒」との関係>>

4-2.熟睡できていない

ちゃんと寝ているはずなのに、昼間に眠くなってしまうのなら、睡眠の質に問題があるのかもしれません。

例えば、精神的なストレスを抱え、眠りが浅くなっていたり、加齢により朝早くに目覚めてしまうようになり、十分に寝た気がしないこともあるでしょう。

眠りの質に問題があり辛い場合は、かかりつけ医や内科、精神科、心療内科で相談してみましょう。

【参考情報】『不眠症』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html

4-3.ナルコレプシー

遺伝子の異常により、オレキシン(ヒポクレチン)という神経細胞が働かなくなるため発症する病気です。

この病気になると、いきなり猛烈な眠気に襲われて耐えられなくなり、昼間に眠り込んでしまうことがあります。

また、大喜びしたり、びっくりしたりと感情が高まった時に、体の力が抜けてしまうことがあります。

思い当たる方は、精神科か睡眠外来を受診して相談してみましょう。

【参考情報】『ナルコレプシー』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-043.html

4-4.血糖値スパイク

糖尿病予備軍の人に起こりやすい現象です。

食後、血糖値が上がると、それを下げようとして、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。

すると、健康な人なら血糖値はゆるやかに下がっていきます。

しかし、インスリンの働きが悪くなっている人は、食後の血糖値が急に上がり、その後、急激に下がることがあります。

このような血糖値の乱高下により、低血糖が引き起こされると、食事の後に強い眠気が出てきます。

【参考情報】『インスリン』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-011.html#:~:text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%B3%EF%BC%88%E3%81%84%E3%82%93%E3%81%99%E3%82%8A%E3%82%93%EF%BC%89&text=%E8%86%B5%E8%87%93%E3%81%8B%E3%82%89%E5%88%86%E6%B3%8C%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B,%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%8B%E3%82%89%E5%88%86%E6%B3%8C%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

◆「血糖値スパイク」について詳しく>>

4-5.うつ病

うつ病になると、不眠や早朝覚醒、過眠など、睡眠に関するさまざまな問題が起こることがあります。

そして、病気のせいで、夜なかなか寝付けなかったり、朝早くに目が覚めてしまうことが続くと、昼間に眠くなります。

睡眠の問題以外にも、「気分が落ち込む」「意欲が湧かない」「イライラする」などの症状があり、仕事や生活に支障をきたすようなら、精神科か心療内科を受診して、適切な治療を受けましょう。

【参考情報】『うつ病』神奈川県ホームページ
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/nf5/kokoro/cnt/utsu.html

◆「睡眠時無呼吸症候群の治療でうつ病の症状が改善?」>>

5.おわりに

睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、昼間の眠気が続き、仕事や日常生活に悪影響が及びます。

さらに、血管がダメージを受け続け、心筋梗塞など命にかかわる病気を発症する恐れもあります。

しかし、早めに治療を開始すれば睡眠の質が改善され、熟睡できるようになります。

昼間の眠気や疲れに悩んでいる人は、加齢やストレスのせいだと決めつけず、一度睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみてください。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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