睡眠時無呼吸症候群と飲酒の関連とは?症状が悪化する理由と飲酒時の注意点

寝る前にお酒を飲むと、いびきや無呼吸など睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化する恐れがあります。
しかし、お酒を飲むのが好きな人や、仕事の付き合いで飲酒の機会が多い人は、禁酒は難しいでしょう。
この記事では、飲酒によって睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化する理由と、飲酒の注意点について解説します。お酒を飲んだ後にいびきや無呼吸がひどくなる人は、ぜひ読んでください。
1. 睡眠時無呼吸症候群と飲酒の関係
睡眠時無呼吸症候群の人にとって、飲酒は症状を悪化させる要因のひとつです。
1-1. お酒で睡眠時無呼吸症候群が悪化する理由
お酒に含まれるアルコールには、筋肉を緩める作用があります。
睡眠中はただでさえ喉の周りの筋肉が緩みやすいのですが、飲酒によってこの緩みがさらに強まると、空気の通り道である気道が狭くなり、無呼吸や低呼吸が起きやすくなります。
また、本来であれば、無呼吸によって血液中の酸素濃度が低下すると、体は覚醒反応を起こして呼吸を再開させようとします。
しかし、アルコールはこの覚醒反応を鈍らせる可能性があるため、無呼吸が続く時間が長引いたり、血液中の酸素濃度がより低下しやすくなったりすることがあります。
こうした理由から、睡眠時無呼吸症候群がある人は、飲酒によって症状が悪化しやすいといえます。
【参考情報】『The Impact of Alcohol on Breathing Parameters during Sleep: A Systematic Review and Meta-analysis』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8520474/
1-2. お酒を飲むといびきがひどくなる理由
いびきは、狭くなった気道を空気が通過する際に、喉の軟らかい組織が振動することで発生します。
飲酒によって喉や舌の筋肉がゆるむと、気道が通常よりも狭くなります。その結果、組織が振動しやすくなり、いびきの音が大きくなることがあります。
普段はいびきをかかない人でも、飲酒した日にだけいびきをかくことがあります。また、もともといびきがある人では、音が大きくなることもあります。
飲酒後のいびきが頻繁にみられる場合や、呼吸が止まっていると指摘されたことがある場合は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
2. 飲酒で睡眠時無呼吸症候群が悪化すると生じるリスク
飲酒によって睡眠時無呼吸症候群が悪化すると、いびきや日中の眠気だけではなく、高血圧や心血管疾患、交通事故などのリスク上昇にもつながる可能性があります。
2-1. 日中の眠気や集中力低下
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返されるため、睡眠が分断されやすくなります。
さらに飲酒によって症状が悪化すると、睡眠の質が一層低下し、十分な睡眠時間を確保していても疲労感が残ることがあります。
その結果、日中の強い眠気や倦怠感、集中力や注意力の低下が生じる場合があります。仕事や勉強の効率が落ちるだけでなく、会議中や授業中に眠ってしまうこともあります。
また、睡眠不足が続くことで気分の落ち込みやイライラを感じやすくなることもあり、生活の質(QOL)の低下につながる場合があります。
2-2. 高血圧や心血管疾患のリスク上昇
睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸によって血液中の酸素濃度が低下します。すると体は酸素不足を補うために交感神経を活発に働かせ、心拍数や血圧を上昇させます。
この状態が毎晩繰り返されることで、血管や心臓に大きな負担がかかり、高血圧を発症しやすくなることが知られています。
さらに、睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞や狭心症、不整脈、脳梗塞などの心血管疾患とも関連していることが報告されています。
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飲酒によって無呼吸が増えたり長引いたりすると、こうしたリスクがさらに高まる可能性があります。特に高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある人は注意が必要です。
2-3. 交通事故や労働災害のリスク増加
睡眠時無呼吸症候群による日中の眠気は、事故のリスクにも関係しています。
無呼吸によって睡眠の質が低下すると、注意力や判断力、反応速度が低下しやすくなります。そのため、自動車の運転中や機械操作中にミスが起こりやすくなります。
特に高速道路での長距離運転や単調な作業中は、本人が気づかないうちに居眠り状態になることもあります。
実際に、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは交通事故のリスクが高いことが報告されています。飲酒によって症状が悪化すると、さらに眠気が強くなる可能性があるため注意が必要です。
3. 特に注意したい人の特徴
飲酒は誰にでも睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性がありますが、もともと気道が狭くなりやすい人では、その影響をより強く受けることがあります。
3-1. 肥満がある人
体重が増えると首や喉の周囲にも脂肪がつきやすくなり、気道が狭くなることがあります。その状態で飲酒すると、アルコールによる筋肉の弛緩作用が加わり、さらに気道が閉塞しやすくなります。
特にBMI(Body Mass Index:体重と身長から算出される肥満度)が高い人や、最近急に体重が増加している人は注意が必要です。
【参考情報】『BMIチェックツール』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/bmi_check
3-2. 首回りが太い人
首周りが太い人は、喉の周囲の軟部組織が多かったり、気道を取り囲む構造の影響で気道が狭くなりやすかったりすることがあります。
そのため、睡眠中にもともと気道が閉塞しやすい状態にある場合があり、飲酒によって喉の筋肉がゆるむと、気道がさらに狭くなって無呼吸や低呼吸が起こりやすくなります。
例えば、ラグビー選手のようながっしりとした体型の人は、肥満ではなくても首周りが太いことで睡眠時無呼吸症候群がみられることがあります。
【参考情報】『Neck circumference and other clinical features in the diagnosis of the obstructive sleep apnoea syndrome.』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC463582/
3-3. 顎が小さい人や下顎が後退している人
下顎が小さい人や、横顔で顎が後退して見える人は、舌を支えるスペースが少ないため、睡眠中に舌が喉の奥へ落ち込みやすくなります。
その結果、気道が狭くなりやすく、飲酒による筋肉の弛緩作用によって無呼吸が悪化する可能性があります。
このような人は、体型が標準ややせ型であっても睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。
3-4. いびきが大きい人や無呼吸を指摘されたことがある人
大きないびきは、気道が狭くなっているサインのひとつです。
また、家族やパートナーから「寝ているときに呼吸が止まっている」と指摘されたことがある場合は、すでに睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があります。
このような人では、飲酒によって気道の閉塞がさらに強くなり、いびきや無呼吸の回数が増えることがあります。
飲酒後にいびきがひどくなることが多い人は、一度病院で相談することをおすすめします。
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4. 睡眠時無呼吸症候群の人がお酒を飲むときの注意点
睡眠時無呼吸症候群の人が、必ずしも禁酒しなければならないわけではありません。
しかし、飲酒の仕方によっては症状が悪化する可能性があるため、飲酒量や時間帯には注意が必要です。
4-1. 飲酒量を控える
睡眠時無呼吸症候群の人がお酒を飲む場合は、飲み過ぎを避けることが大切です。
飲酒量が増えるほど喉の筋肉をゆるませる作用が強くなり、気道が閉塞しやすくなります。また、無呼吸の回数や持続時間が増える可能性もあります。
飲酒量の目安としては、厚生労働省が生活習慣病のリスクを高める飲酒量の基準として示している「1日あたり純アルコール20g程度」が参考になります。
これは、おおよそビール中瓶1本(500mL)や缶チューハイ350mL1本、日本酒1合に相当します。
もちろん個人差はありますが、睡眠時無呼吸症候群の人は特に過度の飲酒を避け、適量を心がけることが重要です。
【参考情報】『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
4-2. 就寝4時間前までに飲酒を終える
お酒を飲む場合は、できるだけ就寝直前の飲酒を避けましょう。
アルコールは体内に吸収された後、肝臓で分解されますが、その代謝には時間がかかります。そのため、寝る直前に飲酒すると、睡眠中も血中アルコール濃度が高い状態が続き、気道の閉塞が起こりやすくなります。
就寝の4時間ほど前までに飲酒を終えておくと、睡眠時のアルコールの影響をある程度軽減できる可能性があります。
また、飲酒後にすぐ寝る習慣がある人は、睡眠時無呼吸症候群の悪化だけでなく睡眠の質の低下にもつながるため注意が必要です。
4-3. 睡眠薬との併用に注意する
睡眠薬を服用している人は、飲酒との併用に注意が必要です。
アルコールと睡眠薬はいずれも脳や神経の働きを抑える作用があり、併用するとその効果が強く現れることがあります。
その結果、喉の筋肉が過度にゆるんで気道が閉塞しやすくなったり、呼吸を再開させる覚醒反応が弱まったりする可能性があります。
また、強い眠気やふらつき、転倒のリスクが高まることもあります。
睡眠薬を使用している場合は自己判断で飲酒せず、医師や薬剤師の指示に従うようにしましょう。特に睡眠時無呼吸症候群と診断されている人は、服用中の薬について主治医へ相談しておくと安心です。
5. CPAP治療中でもお酒を飲んでよいのか?
CPAP(シーパップ)は睡眠中の気道閉塞を防ぐ治療法ですが、飲酒による影響を完全になくせるわけではありません。
そのため、CPAPを使用している場合でも、飲酒の仕方には注意が必要です。
5-1. CPAP使用中でも過度の飲酒は避ける
CPAPは上気道に陽圧をかけることで睡眠中の気道閉塞を防ぐ治療であり、睡眠時無呼吸症候群に対して高い有効性が確認されています。
【参考情報】『Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea With Positive Airway Pressure: An American Academy of Sleep Medicine Systematic Review, Meta-Analysis, and GRADE Assessment』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6374080/
しかし、飲酒によって起こる呼吸調節機能の低下や睡眠構造の変化そのものを抑えることはできないため、飲酒の影響を十分に補正できない場合があります。
そのため、CPAPを使用していても、特に多量飲酒や就寝直前の飲酒では、無呼吸や低呼吸が増加したり、酸素飽和度の低下が起こる可能性があります。
CPAP治療中であっても、これらの影響を踏まえ、飲酒は適量を守り、可能であれば就寝の数時間前までに終えることが望ましいとされています。
5-2. 飲酒後にCPAPを外して寝ないよう注意する
アルコールの影響で眠りが深くなると、無意識のうちにマスクを外してしまう人もいます。また、飲酒後はCPAPの違和感を強く感じることがあり、自ら外してしまうケースもあります。
しかし、飲酒によって気道が閉塞しやすくなっている状態でCPAPを外してしまうと、無呼吸や低呼吸が増加するおそれがあります。
特に飲酒した日は、起床時にCPAPが外れていないか確認したり、マスクの装着状態を見直したりすることも大切です。飲酒後に頻繁にCPAPを外してしまう場合は、主治医に相談してマスクの種類や設定を見直してもらうとよいでしょう。
6. おわりに
飲酒は、睡眠時無呼吸症候群やいびきを悪化させる要因のひとつです。アルコールによって喉の筋肉がゆるむと気道が狭くなり、無呼吸や低呼吸が起こりやすくなることがあります。
特に、肥満がある人や首が太い人、顎が小さい人や下顎が後退している人は、もともと気道が狭くなりやすいため注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群と診断されている人や症状が疑われる人は、飲酒量を控えめにし、就寝直前の飲酒を避けることを心がけましょう。
また、CPAP治療を受けている場合でも過度の飲酒は推奨されません。飲酒した日ほどCPAPを確実に使用し、気になる症状がある場合は主治医へ相談することが大切です。












