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睡眠時無呼吸症候群でも使える睡眠薬とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年04月04日

「毎日、いびきがうるさいと家族から指摘される」
「眠りが浅く、夜中に目が覚めることが多い」
「熟睡した感じがなく、日中に頭痛や倦怠感を感じる」
「日中に居眠りをしてしまいそうになる」

もしかしたら、あなたの抱えているその症状は「睡眠時無呼吸症候群」によるものかもしれません。

そして、「眠れない」「眠りが浅い」という悩みを解消するために使っている睡眠薬が、より症状を悪化させる恐れもあります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群という病気について、そして、睡眠薬との関係について解説していきます。

1.睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とはその名の通り、睡眠中に無呼吸の状態となってしまったり、通常より浅い呼吸になってしまうことで、睡眠の質の低下や体への負担が引き起こされる病気です。

◆「あなたの危険度をチェック!」>>

この病気の症状の一つに、日中の眠気や寝不足感といった「睡眠障害」があります。

患者さんの中には、「睡眠薬なしではしっかり眠ることができない」という人もいるでしょう。しかし、睡眠障害の原因が睡眠時無呼吸症候群である場合、使ってもいい睡眠薬と、使ってはいけない睡眠薬があります。

2.症状が悪化する睡眠薬

自分が睡眠時無呼吸症候群であるとは知らずに、不眠の悩みで医療機関を受診して、睡眠薬を処方されている方も多いでしょう。

しかし、睡眠薬の中には、睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させるものもあります。それは、以下のような「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」というグループの薬です。

 ・ハルシオン(トリアゾラム)
 ・リスミー(リルマザホン)
 ・レンドルミン(ブロチゾラム)
 ・サイレース(フルニトラゼパム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、脳内の特定の受容体に作用することでGABA(Gamma-AminoButyric Acid:γ-アミノ酪酸)と呼ばれる脳の働きを抑制する神経伝達物質を増やす薬です。この薬の働きで、脳内のGABAの濃度が増加することで、睡眠作用がもたらされます。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用として、筋肉の緊張が緩んでしまい力が入りづらくなる作用(筋弛緩作用)があることがわかっています。そのため、寝起きの時に足に力が入らずにふらついて転倒することがあり、注意が必要とされています。

この筋弛緩作用によって、首周りの筋肉も弛緩します。すると、寝ている間に空気の通り道である気道が狭くなってしまうため、呼吸がしにくくなって、睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化する恐れがあります。

このような理由から、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用はできるだけ避けるべき、と考えられています。

【参考資料】睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020
https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=135

うつ病と睡眠時無呼吸症候群を併発することもよくあります。うつ病や不安障害の患者さんで、「激しいいびき」「肥満」など睡眠時無呼吸症候群のサインがある人は、主治医に相談してください。

その結果、睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、自分にベンゾジアゼピン系睡眠薬が処方されていないかどうか確認しましょう。

◆「うつ病との関係」について>>

3.使用できる睡眠薬

睡眠時無呼吸症候群の方が睡眠薬を使用する場合には、以下の3つのタイプが推奨されています。

3−1.非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬

ベンゾジアゼピン系薬と同じ作用機序を持っていながら、筋弛緩作用が起きないように改良された睡眠薬です。

 ・マイスリー(ゾルピデム)
 ・ルネスタ(エスゾピクロン)

即効性がある「超短時間作用型」という睡眠薬に分類され、寝つきが悪い「入眠障害」の人によく効くと言われています。

この2つの薬の効果に大きな違いはありませんが、若干マイスリーの方が効きが早く、ルネスタの方が作用時間が長いと言われています。

人によっては昼間に眠気が残りやすいという副作用が出るので、運転業務や危険を伴う業務に就いている方は医師や薬剤師にご相談ください。

唾液中に薬剤が分泌されることがあるため、苦味を感じる方もまれにいます。

◆「運転業務」との関係性>>

3−2.オレキシン受容体拮抗型の睡眠薬

従来の強制的に眠気を誘うような睡眠薬とは異なり、覚醒に関わる神経伝達物質(オレキシン)の力を弱めることで、自然な眠りを誘うよう開発された睡眠薬です。

 ・ベルソムラ(スボレキサント)
 ・デエビゴ(レンボレキサント)

筋弛緩作用がないので、こちらも睡眠時無呼吸症候群の方によく使われます。

強い入眠作用がなくマイルドな効き目であるため、従来の睡眠薬から切り替えた初期には、少し物足りなさを感じることがあります。また、夢を見ることが多くなるともいわれています。

◆「悪夢」について>>

3−3.メラトニン受容体作動型の睡眠薬

メラトニンという神経伝達物質の代わりに働く睡眠薬です。

 ・ロゼレム(ラメルテオン)

メラトニンは夜に分泌され、明け方には減少することで睡眠状態を維持し、体内時計を整えるホルモンです。

高齢になると、10代の頃と比べてメラトニンの分泌量が10分の1にまでに減ってしまいます。そのため、高齢の方や体内時計が乱れてしまっている方によく効果を発揮する睡眠薬です。

体内時計が正常になるには少し時間がかかるため即効性はありませんが、依存性もなく、長期で飲むほど効果のある睡眠薬です。

【参考情報】『Melatonin』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements-melatonin/art-20363071

4.おわりに

「眠れない」「眠りが浅い」という睡眠障害を改善するためには、どうしても睡眠薬に頼らざるを得ない場面もあります。

しかし、その睡眠障害の原因が、睡眠時無呼吸症候群という病気にある場合、病気にあった治療を受けることで、睡眠薬を使わなくても悩みが改善されることがあります。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠障害だけではなく、放っておくと心筋梗塞や脳卒中が引き起こされ、突然倒れることもある恐ろしい病気です。

睡眠の悩みを抱えている人は、自分が睡眠時無呼吸症候群である可能性も考え、専門的な検査を受けておくと安心です。

◆睡眠時無呼吸症候群の検査・治療をお探しなら>>

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