糖尿病予備軍は「血糖値スパイク」を要チェック!
健康診断で血糖値を測っても異常はないのに、糖尿病になる人がいます。それは、食後急激に血糖値が上昇して下降する「血糖値スパイク」のせいかもしれません。
この記事では、血糖値スパイクが起こる原因や予防法を解説します。「食後に眠くなる」「麺類や丼物をよく食べる」「最近お腹が出てきたのが気になる」という人はぜひ読んでみてください。
目次
1.血糖値スパイクとは何か?
食後に血糖値が正常値(140mg/dL)を超えて急上昇したあと、ジェットコースターのように急降下して、また正常値に戻る。
このように血糖値の乱高下が起きる現象を、血糖値スパイクといいます。
一般的な健康診断では空腹時の血糖値を計測し、その数値が高いと糖尿病を疑います。しかし、血糖値スパイクを繰り返している人は、空腹時の血糖値は正常であることが多いのです。
【参考書籍】『「血糖値スパイク」が心の不調を引き起こす』(溝口徹/青春出版社)
http://www.seishun.co.jp/book/18939/
さらに、糖尿病の可能性を判断するヘモグロビンA1c(HbA1c)の数値も正常であることが多いので、健診では問題が見落とされがちです。
以下、チェックポイントを紹介しますので、いくつかあてはまるという方は、一度血糖値の検査を受けてみることをおすすめします。
●食後2時間以内(早い人では1時間くらい)
・頭痛
・ほてり
・動悸
・発汗、急な空腹感
●食後2時間以降
・手のふるえ
・冷え
・強い空腹感
・眠気
・うつ感、集中力の低下
●睡眠時
・からだのこわばり
・中途覚醒
・疲れがとれない
・寝汗がひどい
【参考情報】『食後高血糖』厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-086.html
2.血糖値スパイクが起こる原因
私たちが食事を摂ると、食事に含まれている糖質が体の中に取り込まれ、ブドウ糖になります。
ブドウ糖は、体や脳のエネルギー源になる大切な成分ですが、多ければ多いほど良いというわけではありません。
血液中にブドウ糖が増えて血糖値が上昇すると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を下げて適正な値に戻そうとする仕組みがはたらきます。
しかし糖質を摂りすぎると、その分インスリンも大量に分泌されるので、血糖値が乱高下するのです。
例えば、朝食を抜く習慣がある人は、その反動で、お昼にカレーや牛丼、ラーメン、パスタなどをかきこむように食べていませんか?
このように、空腹時に大量の糖質を短時間で摂ると、血糖値が急激に上がり、インスリンも大量に分泌されます。
長年、ドカ食いや早食いをしてきた人のすい臓は、無理をしてでもインスリンを出すようにと何度も何度も刺激され、過敏になっています。
その結果、少し血糖値が上昇しただけでも反応してインスリンが大量に出てしまい、血糖値スパイクを起こしやすくなってしまうのです。
【参考文献】『Foods that spike a patient’s blood glucose are not what you think』AMA(American Medical Association)
https://www.ama-assn.org/delivering-care/diabetes/foods-spike-patient-s-blood-glucose-are-not-what-you-think
3.なぜ血糖値スパイクは恐ろしいのか
血糖値スパイクが起こると、体の中に活性酸素が大量に発生し、血管がダメージを受けます。すると、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中のリスクが高くなります。
さらに、以下のような危険もあることがわかってきました。
・自律神経の不調が引き起こされ、イライラや不安、疲れなどの引き金になる
・脂肪の合成が促進され、太りやすくなる
・がんや認知症のリスクが高まる
もちろん、糖尿病になるリスクが高いことは、言うまでもありません。
血糖値スパイクがある人は全国に推定1,400人以上、日本人の10人に1人の割合でいると考えられています。
4.血糖値スパイクを防ぐ食事
血糖値スパイクを防ぐには、食事の内容や食べ方を工夫することと、食後に軽い運動をして血糖値を下げるのが効果的です。
4−1.糖質が少ない食材を選ぶ
食事で心掛けてほしいことは、以下の2点です。
(1)糖質の少ない食材やメニューを選ぶ
(2)血糖値が緩やかに上昇する食べ方をする
糖質が多い食材は、ごはん、パン、麺類などの主食です。血糖値スパイクを防ぐには、主食を減らし、その分おかずを増やすようにしましょう。
イモ類やフルーツ、お菓子にも糖質が多く含まれるので、食べ過ぎは禁物です。
おすすめの食材は、肉類、魚介類、卵、豆類などのたんぱく質が豊富な食材や、葉物野菜や海藻、キノコ類など食物繊維の豊富な食材です。
外食では、糖質のかたまりとも言える丼物やうどん、ラーメン、パスタなどの麺類は、できるだけ避けてください。
小鉢のついた定食を頼んだり、サラダバーのある店を利用するなど、食物繊維やたんぱく質がたっぷり摂れるメニューを意識して選びましょう。
4−2.血糖値の上昇を緩やかにする食べ方
お腹が空いているからといって、ごはん、麺類、パンなどの主食をまっ先に食べると、その直後に血糖値がグンと上がってしまいます。
急激な血糖値の上昇を防ぐには、血糖値が上がりにくいものから先に食べることが大事です。
【参考情報】『血糖値とGIの関係性』大塚製薬
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/glycemic-index/glucose-level/
例えば、最初はサラダや酢の物など、食物繊維の豊富な野菜や海藻が主体のメニューを、ゆっくりとよく噛んで食べます。
その次に、水分の多いみそ汁やスープ、その後に肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質が豊富なもの、そして、最後にごはんや麺類などの主食を食べます。
この順番で食べると、糖質の全体的な摂取量を減らすことができると同時に、糖の吸収を緩やかにすることができます。
また、ごはんに雑穀や玄米をブレンドすると、噛みごたえが出て少量でも満足感を得ることができますし、血糖コントロールに有効な食物繊維やミネラルを摂取することもできます。
【参考情報】『ミネラル』e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html
パンは、食物繊維の豊富な全粒粉やライ麦が多く含まれたものを選ぶと良いでしょう。
麺類にするなら、蕎麦(そば粉の割合が高いもの)だと血糖値の上昇が緩やかで、食物繊維やミネラルも豊富なのでおすすめです。
ただし、せっかく血糖値が上がりにくいメニューを選び、食べる順番を守っても、よく噛まずに急いで食べると血糖値が上がりやすくなってしまいます。
逆に食材をよく噛んで食べると、素材の風味や甘みが感じられ、少量でも満足感を得ることができます。
【参考情報】『ゆっくり食べる』農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics4_02.html
朝食を抜くなど、食事と食事の間に時間が空く食べ方をすると、食後の血糖値が上がりやすくなります。
空腹感が強いと反動でドカ食いもしやすくなるので、食事と食事の間隔を空けすぎることはおすすめできません。
◆「管理栄養士が教える、糖尿病の方でも血糖値に影響が出にくい間食“8つ”のルール」>>
5.血糖値スパイクを防ぐ運動
血糖値スパイクを防ぐために運動が効果的な理由は、以下の3つです。
・運動するとすぐにブドウ糖が消費され、血糖値が下がる
・インスリンの分泌に頼らずに血糖値が下がる
・運動習慣をつけるとインスリンが効きやすい体質になり、血糖値が長期的に下がる
有酸素運動の代表格であるウォーキングは血糖値を下げる効果があり、しかも手軽にできるのでおすすめです。
食後30分以内に無理のないペースで、10分ほど歩きましょう。
ウォーキングができないときは、その場でできるだけ太ももを高く上げて、足踏みをしましょう。軽いストレッチや体操もおすすめです。
ただし、空腹時の血糖値が250ml/dlを超える時は、運動によってさらに血糖値が上がることもあるため控えてください。血圧が高い時や関節の痛みがある時も、無理をしないようにしましょう。
6.おわりに
新型コロナウイルスの影響で外出が減り、運動不足になったり、テレワークの合間におにぎりや菓子パンだけで食事を済ましたりする人が増えたのではないでしょうか。
ストレスや睡眠不足、カフェインやアルコールの摂りすぎも血糖値に影響を及ぼすので、知らないうちに血糖値スパイクを繰り返し、糖尿病のリスクが高まっている人もいると考えられます。
一度糖尿病になってしまうと、治療や生活習慣の改善によって血糖値を下げることはできても、「治った」といえる状態にはなりません。
たとえ症状がなくても、生涯にわたる自己管理が必要となりますし、放っておくと合併症を起こして失明したり、腎臓の機能が失われて人工透析が必要となる場合もあります。
「食後に眠くなることが多い」「主食中心の食事が多い」など、血糖値スパイクを繰り返している可能性が高い人は、食事と運動を軸にして生活習慣を見直し、糖尿病に移行しないように血糖値をコントロールしていきましょう。