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インフルエンザの検査方法・時期・費用について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年12月07日

38℃以上の高熱や寒気、関節痛、筋肉痛、頭痛、全身のだるさなどが急激に強く現れたらインフルエンザの疑いがあります。

インフルエンザは、早く治療を始めるほど早く治るし楽になりますが、まずは風邪やほかの病気ではないことを検査で確認しておくと安心です。

1. インフルエンザはいつ検査する?


インフルエンザは、38℃以上の急な高熱が出やすく、発熱に「はっきりした山」があるのが特徴です。全身の強いだるさ、筋肉痛、関節痛、頭痛なども風邪より目立ちます。

検査のタイミングは、このような症状が出てからおよそ12時間後が適しています。あまり早い段階では、体内のウイルス量が少なく、感染していても検査キットが反応しないことがあるためです。

最近では、発症初期でも検査結果が15分程度でわかる分子迅速検査を実施している医療機関もあります。早めの確定診断を希望する場合は、病院のホームページなどで確認するとよいでしょう。

また、新型コロナとインフルエンザの同時検査ができるキットを導入している医療機関もあります。

インフルエンザの治療薬は、症状が現れてから12~48時間以内に服用すると効果が出やすいため、検査のタイミングとしても12時間以降を目安にするのがおすすめです。

なお、検査の精度は60~70%程度とされているため、医療機関では検査結果だけでなく、症状の経過や周囲の流行状況なども含めて総合的に判断します。

【参考資料】『Overview of Influenza Testing Methods』CDC(Centers for Disease Control and Prevention)
https://www.cdc.gov/flu/hcp/testing-methods/index.html

2. インフルエンザの検査ができる病院


インフルエンザと思われる症状があれば、まずは近くの内科や呼吸器内科を受診しましょう。そこで必要だと判断されたら検査をします。お子さんは小児科でもいいでしょう。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?」>>

耳鼻科で検査ができる病院もあるので、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を治療中の方はそちらを受診してもいいのですが、内科だとインフルエンザではなかった場合でも、総合的な診断が可能となります。

3. 迅速診断キットを使ったインフルエンザの検査方法


インフルエンザの疑いがある場合、病院では「迅速診断キット」を使って検査するのが一般的です。

最初に綿棒のようなものを鼻の穴の奥に入れて中をぬぐい、粘膜を採取します。この方法は少し痛みがあるので、小さなお子さんは嫌がることが多いのですが、十分な量のウイルスを採ることができます。

シート状の紙に鼻をかんで、そこに付いた液体を採取する方法もありますが、この方法ではウイルスがあまり採れないという報告もあります。

【参考資料】『インフルエンザ抗原迅速検査 における鼻かみ検体の有用性』梅田悦生
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/99/9/99_9_781/_pdf/-char/ja

採取した粘膜を迅速診断キットに垂らしてボタンを押すと、30分程度で結果が出ます。 インフルエンザに感染していると、キットの判定部分が青く染まるので、見てわかります。

ウイルスがA型だとA型に反応する部分が、B型だとB型に反応する部分が染まるので、ウイルスの型も識別することができます。

◆「インフルエンザの種類・症状」について>>

4. インフルエンザの治療


検査で陽性(インフルエンザに感染している)となったら、すぐに以下の抗インフルエンザ薬を服用することで、つらい症状が和らぎ、重症化を防ぐことができます。

<タミフル(カプセル・ドライシロップ)>
長年使われている薬です。1日2回を5日間飲む必要があります。

【参考資料】『Oseltamivir Capsules』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/drugs/18630-oseltamivir-capsules

◆「タミフル」についてくわしく>>

<イナビル(吸入薬)>
吸入した薬が気道に直接届くタイプ。1回の吸入で治療が終わるのが大きな特徴で、継続の手間がありません。

◆「イナビル」についてくわしく>>

【参考資料】『イナビル』第一三共
https://www.medicalcommunity.jp/products/brand/inavir

<リレンザ(吸入薬)>
粉末を専用器具で吸入するタイプ。1日2回、5日間使用します。

【参考資料】『Relenza (zanamivir) Information』CDC(Centers for Disease Control and Prevention)
https://www.fda.gov/drugs/postmarket-drug-safety-information-patients-and-providers/relenza-zanamivir-information

◆「リレンザ」についてくわしく>>

<ゾフルーザ(錠剤・顆粒)>
1回の内服で完結するタイプ。ウイルスの増殖を早い段階で抑える仕組みを持っています。

【参考資料】『XOFLUZA® (baloxavir marboxil) | Prescription Flu Treatment』Genentech
https://www.xofluza.com/

◆「ゾフルーザ」についてくわしく>>

<ラピアクタ(点滴)>
内服や吸入が難しい患者に使われる点滴タイプの薬です。

【参考資料】『Peramivir (intravenous route)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/peramivir-intravenous-route/description/drg-20127716

◆「インフルエンザの治療薬」についてもっとくわしく>>

帰宅後は安静にして過ごし、高熱による脱水を防ぐため、こまめに水分を補給して回復を待ちましょう。

陰性(インフルエンザではない)だった場合も、医師の診断を受け、必要に応じた治療を受けましょう。

5. インフルエンザ検査にかかる費用


インフルエンザ検査の費用は、受診する目的(保険適用の有無)や医療機関の設定によって変わります。基本的な考え方は次の通りです。

■ 保険適用の場合(発熱などで医師が必要と判断したとき)
インフルエンザの迅速検査は保険の対象になります。

自己負担は 保険の負担割合(3割、2割、1割など) に応じて決まり、数百円〜1,000円台が一般的ですが、診察料や初診料も加算されるため、合計は数千円になることが多いです。

■ 保険適用外(自費)の場合
「会社で必要」「学校に提出したい」など、医学的に必要と判断されないケースでは自費扱いになります。

この場合、医療機関ごとに金額が異なり、検査料+診察料のセットで5,000〜1万円前後になることがあります。

6. インフルエンザと風邪、コロナの違い


インフルエンザの症状は風邪やコロナと似ているため、判断に迷うことも多いでしょう。

6-1.インフルエンザと風邪の違い

インフルエンザは、38℃以上の急な高熱や強い倦怠感、筋肉痛などの全身症状が目立ちますが、風邪はくしゃみや鼻水、のどの痛みなどの軽い症状が中心で、発熱しても高熱になることは多くありません。

両者は症状の強さや広がり方に明確な違いがあります。

項目インフルエンザ風邪
発症の仕方突然、高熱や強い症状が急に出るゆっくり始まり、のどや鼻の症状が先に出る
主な症状38〜40℃の高熱、強い倦怠感、頭痛、関節痛、咳のどの痛み、鼻水、鼻づまり、軽い咳、軽度の発熱
症状の強さ全身の症状が強く生活に支障が出る比較的軽く日常生活が可能なことが多い
経過強い症状が数日〜1週間続く数日で自然に軽快することが多い
重症化リスク肺炎・脳症など重症化することがある通常は軽症で自然に治る
治療発症後48時間以内なら抗インフルエンザ薬を使用特効薬はなく、対症療法が中心

6-2.インフルエンザとコロナの違い

新型コロナは症状の幅が広く、発熱や咳に加えて、味覚・嗅覚の異常や消化器症状がみられることがあります。

また、新型コロナはエアロゾル感染が起きやすく、後遺症につながることがある点が、インフルエンザとの大きな違いです。

項目インフルエンザ新型コロナ
発症の仕方突然、高熱や強い症状が急に出る症状の出方に個人差が大きい
主な症状38〜40℃の高熱、強い倦怠感、頭痛、関節痛、咳発熱、咳、のどの痛み、倦怠感、味覚・嗅覚障害、消化器症状など
症状の強さ全身の症状が強く生活に支障が出る症状は幅広く、軽症〜重症まで個人差が大きい
経過強い症状が数日〜1週間続く軽症は数日で改善するが、長引くこともある
重症化リスク肺炎・脳症など重症化することがある肺炎、呼吸不全、血栓症、後遺症の可能性がある
治療発症後48時間以内なら抗インフルエンザ薬を使用抗ウイルス薬(対象者に限る)、その他は対症療法

7.よくある質問と答え


Q. インフルエンザの検査は痛いですか?
A. 鼻の奥を綿棒でこする方法が一般的で、人によっては刺激を感じますが、強い痛みが続くことはほとんどありません。

Q. 子どもでも検査できますか?
A. 可能です。小児科でも日常的に行われており、年齢に応じた方法で対応します。

Q. 予防接種を受けていても検査は必要ですか?
A. 必要になる場合があります。ワクチン接種後でも感染する可能性があり、典型的な症状があれば検査対象になります。

Q. 検査を受けずに症状だけでインフルエンザと判断できますか?
A. 典型的な症状が揃っている場合、医師が臨床的に判断することはありますが、確定には検査が推奨されます。

Q. 検査を受ける前に市販薬を飲んでいても問題ありませんか?
A. 多くの場合、解熱薬や総合感冒薬を飲んでいても検査は可能です。ただし、解熱により症状が分かりにくくなることがあります。

8. おわりに


迅速キットが開発されるまでは、大学病院など大きな病院でしかインフルエンザの検査ができず、しかも時間がかかっていましたが、現在はほとんどの呼吸器内科や内科で検査ができるようになり、時間も短縮されました。

検査を活用して早くに治療を開始し、元気な日常を取り戻しましょう。

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