ビタミンB群のおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき

ビタミンB群は、エネルギーの代謝に欠かせない栄養素です。糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素は、ビタミンB群のはたらきによってエネルギーに変換されます。
ビタミンB群は、アレルギーの炎症を抑えるステロイドの合成にもかかわっています。また、皮膚や粘膜の健康を維持するためにも必要なので、不足すると肌が荒れたり乾燥しやすくなります。
この記事では、ビタミンB群のおもな特徴と、アレルギー性疾患を改善するはたらきについてまとめました。ビタミンB群を効率よく摂取する方法も紹介しますので、病気の予防や症状の緩和にぜひ役立ててください。
目次
1.ビタミンB群とはどのような栄養素か
ビタミンB群は、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類があります。
8種類は、お互いが助け合いながら作用しているため、どれか一つだけではなく、まとめて一緒に摂るのが望ましいです。
1-1.エネルギー代謝を支えるビタミンB群
食事で摂った糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変換するには、以下のビタミンBが必要です。
・ごはん、パン、麺などの糖質の代謝・・・ビタミンB1
・食用油など脂質の代謝・・・ビタミンB2
・肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質の代謝・・・ビタミンB6
これらのビタミンが不足すると、エネルギー代謝の過程で出てきた乳酸などの疲労物質が体内に溜まり、慢性的な疲れやすさや肩こりの原因になってしまいます。
【参考情報】『長時間持久運動後の疲労困憊と ビタミンB1 動態について』小田切優子, 下光輝一, 勝村俊仁, 大谷由美子, 高波嘉一
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/descente18_05_odagiri.pdf
1-2.脳の神経伝達物質を支えるビタミンB群
ビタミンB群は心の元気の素である「脳の神経伝達物質」の合成にかかわっているため、不足するとやる気や集中力が低下します。
【脳の神経伝達物質】
・GABA(気持を穏やかにする)
・ドーパミン(元気さ)
・ノルアドレナリン(やる気や判断能力)
・セロトニン(幸せ感)
・メラトニン(睡眠調節)
【参考情報】『Obsessive Compulsive Disorder as Early Manifestation of B12 Deficiency』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3271502/
仕事中に眠くなってしまったり、ちょっとした事でもイライラしやすいときは、「気のせい」や「気合いが足りない」のではなく、ビタミンB群不足によるエネルギー不足が原因の可能性があります。
1-3.ビタミンB群が不足する理由
厚生労働省が平成28年に実施した国民健康・栄養調査の結果では、成人において男女ともに、ビタミンB1、B2、B6の摂取量がすべての年代で推奨量を満たしていませんでした。
ビタミンB群が不足する理由としては、以下のような原因が考えられます。
<体内で使われるビタミンB群の量が増えている>
白米や麺類、甘いものの食べ過ぎ、ストレス、過度のアルコール摂取、妊娠、授乳、加齢、過食などが原因で、体内で使われるビタミンB群の量が増えます。
<抗生物質の長期服用>
ビタミンB群は腸内でも作られています。抗生物質を長い期間飲んでいる人は、腸内の細菌バランスが乱れ、ビタミンB6等の合成量が少なくなります。
2.ビタミンB群がアレルギー性疾患の改善に必要な理由
ビタミンB群は、アレルギーやストレスに対抗するために欠かせない栄養素です。
この章では、特にアレルギーとかかわりの深い種類を紹介します。
<パントテン酸>
皮膚や粘膜の維持、ストレスやアレルギーの炎症を抑える副腎皮質ホルモンの合成にかかわっています。
パントテン酸が不足するとストレス耐性が低下し、皮膚の再生能力が落ちるため、かゆみや湿疹が悪化しやすくなります。
副腎皮質ホルモンは体内の炎症反応をコントロールする重要なホルモンで、パントテン酸はその材料として働くため、アレルギー症状が強い人ほど十分な摂取が重要になります。
【参考情報】『Pantothenic acid (oral route)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/pantothenic-acid-oral-route/description/drg-20065349
<ナイアシン>
ステロイドの合成にかかわり、免疫の機能を維持するために重要な役割を担っています。
加えて、ナイアシンは血流を促進し、細胞のエネルギー代謝を助ける働きがあり、肌のターンオーバーを整える効果も期待できます。
さらに、精神的ストレスが強いと体内でナイアシンの消費が増えるため、ストレスを感じやすい人では不足しやすい栄養素でもあります。
【参考情報】『Niacin』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements-niacin/art-20364984
<ビオチン>
皮膚の炎症を予防する成分として、アトピー性皮膚炎などを治療する医薬品として使用されています。
◆「アレルギー専門医がすすめるアトピー性皮膚炎改善の方法とは」>>
ビオチンは皮膚のバリア機能を保つために必要な脂質の合成を助け、乾燥や刺激に対する弱さを改善する働きがあります。
腸内細菌によっても合成されますが、抗生物質の使用や腸内環境の乱れによって不足することがあり、アレルギー体質の人では特に注目される栄養素です。
アトピー性皮膚炎の人の体内では、ヒスタミンという物質が皮膚の炎症を引き起こしていますが、ビオチンはヒスタミンを体外へ排出する働きがあります。
そのため、ビオチンが不足するとヒスタミンが体に溜まりやすくなり、かゆみや炎症が悪化する可能性があります。
【参考情報】『Biotin (oral route)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/biotin-oral-route/description/drg-20062359
このように、ビタミンB群は相互に働きながらストレス・炎症・皮膚の健康を調整しており、アレルギー体質の改善を支える基盤となる栄養素といえます。
3.ビタミンB群を効率よく摂取する方法
ビタミンB群は、一度にたくさん摂取しても、尿として排出されてしまいます。
そのため、毎日何回かに分けて摂るのがおすすめです。
3-1.食事で摂取する
ビタミンB群が豊富な食品は、豚肉、うなぎ、牛・豚のレバー、マグロ、サバ、玄米などです。
植物性食品では、バナナ、アボカド、ナッツなどに多く含まれています。また、海苔にはビタミンB12が比較的多く含まれています。
疲労回復や体調改善を目指す栄養療法の観点から考えると、1日に摂りたいビタミンB1、B6の目安量はそれぞれ100mgとなります。しかし、食事でこれだけの量を摂るのはかなり難しいでしょう。
ビタミンB1、100mgを食事から摂る場合の目安
・豚ヒレ肉:約8.2kg(ヒレカツ1皿100mg×82皿)
・うなぎの蒲焼:約13.3kg(1串100g×133串)
ビタミンB6、100mgを食事から摂る場合の目安
・牛レバー:約11.2kg(レバニラ炒め1皿100g×112皿)
・めばちマグロ:約21.7kg(刺身1皿100g×217皿)
ビタミンB群は水に溶ける性質を持っているため、水を使用した調理法では溶け出してしまいます。また、加熱によっても成分が失われてしまうので、短時間で調理できるレシピで食べるのがいいでしょう。
3-2.サプリメントで摂取する
ビタミンB群を効率よく摂取するためには、サプリメントを利用する方法もあります。
特にビタミンB1、葉酸、パントテン酸は調理の過程で失われやすい栄養素であるため、サプリメントの方が効果的に摂取できるでしょう。
ビタミンB群は、食事で摂取する場合には過剰摂取による影響を心配する必要はまずありません。
ただし、ビタミンB6はサプリメント等で大量に摂取すると感覚神経障害が発生するケースもあるので、サプリメントは適切な用法用量を守って利用する必要があります。
信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。
GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。
【参考情報】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp
3-3.ビタミンB群と一緒に摂りたい栄養素
ビタミンB群と組み合わせることで相乗効果が期待できる主な栄養素を紹介します。
<ビタミンC>
ビタミンB群の代謝をサポートし、ストレス時に消費されやすい副腎の働きを助けます。特にパントテン酸(B5)やナイアシン(B3)と組み合わせると、ストレス耐性の向上に役立ちます。
<マグネシウム>
エネルギー産生(ATP生成)にはビタミンB群とマグネシウムが同時に必要です。どちらかが不足すると代謝の効率が下がるため、セットでの摂取が理想的です。
<亜鉛>
タンパク質合成や免疫機能を支えるミネラルで、ビタミンB6との相性が特に良いです。B6の働き(アミノ酸代謝、神経伝達物質の合成)がよりスムーズになります。
4.まとめ
ラーメンや丼物など糖質中心の食事が多い人や、ビーガンやベジタリアンなど植物性食品中心の食生活を送っている人は、ビタミンB群が不足する傾向があります。
また、アルコールの代謝にかかわる栄養素でもあるため、お酒をよく飲む人も不足しがちです。
「最近疲れやすい」「やる気が出ない」「皮膚炎や口内炎を繰り返す」など、ビタミンB群が不足しているサインに気づいたら、ビタミンB群が豊富な食材を増やしたり、サプリメントを摂取して、体調を整えてください。
自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。
【参考情報】
・上西一弘(2016)『食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第4版』女子栄養大学出版部
・小西敏郎・森本修三・小城明子編(2018)『栄養管理ビジュアルガイド』学研メディカル秀潤社
・竹谷豊・塚原丘美・桑波田雅士・坂上浩編(2016)『新・臨床栄養学』講談社










