亜鉛の特徴と味覚障害・嗅覚障害を改善するはたらき

新型コロナウイルス感染症の症状や後遺症として、味覚障害や嗅覚障害を訴える人が目立ちます。
味覚障害や嗅覚障害は、コロナ以外の原因でも起こる症状ですが、亜鉛を補充することで改善される可能性があります。
この記事では、亜鉛のおもな特徴と、味覚障害・嗅覚障害を改善するはたらきについてまとめました。亜鉛を効率よく摂取する方法も紹介しますので、毎日の食事や栄養補給にぜひ役立ててください。
目次
1.亜鉛とはどのような栄養素か
亜鉛は、人間の体に必要な必須ミネラルのひとつです。体内で作ることができないため、毎日の食事から摂取する必要があります。
亜鉛は皮膚や骨、肝臓、筋肉など全身に存在しており、多くの酵素の働きを助ける重要な役割を担っています。細胞の新陳代謝や傷の修復、免疫機能の維持などにも関わっています。
1日の亜鉛摂取推奨量は年齢や性別によって異なりますが、成人では男性がおおむね10~11mg、女性がおおむね8mgとされています。
近年では、過度なダイエットや偏った食生活などによって、亜鉛不足になる人がみられます。特に食事内容が偏りやすい若年者や高齢者では、亜鉛の摂取量が不足することがあります。また、過度な運動によって体内の亜鉛が失われやすくなる場合もあります。
亜鉛は免疫機能やホルモンの働き、生殖機能などにも深く関わっているため、不足するとさまざまな症状が現れることがあります。
・口内炎ができやすくなる
・肌荒れや皮膚炎が起こる
・抜け毛が増える
・爪がもろくなる、割れやすくなる
・味覚障害が起こる
・食欲が低下する
・感染症にかかりやすくなる
・生殖機能が低下する
・子どもの成長が妨げられる
このような症状が続く場合は、亜鉛不足が関係している可能性もあるため、食生活を見直したり、医療機関に相談したりすることが大切です。
【参考情報】『Zinc』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements-zinc/art-20366112
2.味覚障害とはどのような病気か
味覚障害とは、「味が薄く感じる」「食べ物の味がしない」「何も食べていないのに口の中に味を感じる」「甘いものが苦く感じる」「特定の味だけ分からない」など、味覚の低下や異常が起こる状態です。
味覚は、舌にある味を感じる細胞の集まりである「味蕾(みらい)」で受け取られ、神経を通じて脳へ伝えられます。この経路のどこかに障害が生じると、味覚障害が起こります。
風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症にかかった際にも、味覚障害がみられることがあります。これは、炎症による影響や嗅覚障害、神経機能の変化などが関与していると考えられています。
東京大学保健センターでは、新型コロナウイルス感染症による味覚障害や嗅覚障害について、一般的な風邪と共通する機序が関与している可能性を指摘しています。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症と嗅覚・味覚障害』東京大学保健センター
https://www.hc.u-tokyo.ac.jp/covid-19/smell_taste_disturbance/
通常、呼吸器感染症の回復とともに、味覚障害も治ります。しかし長引く場合は、別に原因がある可能性があります。
味覚障害の原因は、加齢、ドライマウス、鉄欠乏性貧血、糖尿病の合併症、薬の副作用、心因性などさまざまです。その中でも、亜鉛不足は代表的な原因のひとつとして知られています。
3.嗅覚障害とはどのような病気か
嗅覚障害とは、「においがわからない」「においを感じにくい」「においがしないはずなのに感じる」など、嗅覚の低下や異常が起こる状態です。味覚障害を伴うこともあります。
原因として最も多いのは、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの鼻の病気です。鼻づまりによってにおいの通り道がふさがれると、におい物質が嗅覚を感じる部位まで届きにくくなり、嗅覚が低下します。このような場合は、原因となる病気を治療することで改善が期待できます。
また、アルツハイマー病やパーキンソン病、脳腫瘍、頭部外傷などによって脳や神経の働きに障害が生じ、嗅覚障害が起こることもあります。
【参考情報】『パーキンソン病』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/169
さらに、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症の後に嗅覚障害がみられることがあります。これは、鼻や嗅覚器の炎症、嗅神経への影響などが関与していると考えられています。
亜鉛不足は味覚障害の代表的な原因として知られていますが、嗅覚機能にも影響を与える可能性があるとされています。
4.亜鉛はなぜ味覚障害・嗅覚障害に有効なのか
味覚や嗅覚は、食事のおいしさを感じたり、危険なにおいや異常を察知したりするために重要な感覚です。
これらの機能には細胞の再生が欠かせず、その過程を支えている栄養素のひとつが亜鉛です。
4-1.亜鉛は味細胞や嗅細胞の再生に必要な栄養素
味蕾にある味細胞や、鼻の奥にある嗅細胞は、新陳代謝が活発な細胞として知られています。
これらの細胞は寿命を迎えると新しい細胞へと入れ替わり、常に正常な状態を保つことで、味やにおいを感じる機能を維持しています。
この細胞の再生には、DNAの合成や細胞分裂、タンパク質の合成などが必要です。亜鉛はこれらの過程に深く関わるミネラルであり、体内のさまざまな酵素の働きを支えています。
そのため、亜鉛が不足すると細胞の生まれ変わりがスムーズに行われなくなり、味細胞や嗅細胞の機能が低下する可能性があります。
4-2.亜鉛不足が味覚障害・嗅覚障害を引き起こす仕組み
味細胞は約10~14日という比較的短い周期で入れ替わるため、亜鉛不足の影響を受けやすいと考えられています。
一方、嗅細胞も再生能力を持つ特殊な神経細胞です。亜鉛不足との関連は味覚障害ほど明確ではないものの、嗅覚機能の維持にも亜鉛が関与している可能性が指摘されています。
そのため、亜鉛不足によってにおいを感じにくくなったり、嗅覚の回復が遅れたりすることがあります。
また、血液検査で明らかな亜鉛欠乏が確認されなくても、体内で利用できる亜鉛が不足している状態が存在すると考えられており、亜鉛の補充によって症状が改善することがあります。
4-3.味覚障害・嗅覚障害の原因は亜鉛不足だけではない
味覚障害や嗅覚障害の原因は亜鉛不足だけではありません。
加齢、薬の副作用、ドライマウス、糖尿病、貧血、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、頭部外傷、神経疾患など、さまざまな原因が関係している場合があります。
そのため、症状が長引く場合は自己判断せず、病院で原因を調べることが大切です。
【参考情報】『The role of zinc in the treatment of taste disorders』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23305423/
5.亜鉛を効率よく摂取する方法
亜鉛を十分に摂取するには、まずは食事の見直しから始めましょう。それでも不足する分は、サプリメントを上手に利用して補っていきましょう。
5-1.食事で摂取する
亜鉛が豊富な食品には、以下のようなものがあります。
・牡蠣
・牛肉
・牛レバー
・小麦胚芽
・チーズ
・ココア
・きな粉
・ナッツ類
亜鉛はクエン酸を含む食品と一緒に摂ることで、効率よく摂取しやすくなると考えられています。例えば、牡蠣にレモン果汁をかけて食べる組み合わせはよく知られています。
また、亜鉛は調理中に煮汁へ移行することがあるため、鍋やスープなど煮汁ごと食べられる料理にすると無駄なく摂取できます。
5-2.サプリメントで摂取する
食事で必要な量を摂取することが難しい人は、サプリメントを活用する方法もあります。
特に、次のような人は亜鉛が不足しやすいと考えられています。
・小食の人
・菜食中心の食生活をしている人
・加齢で食事量が減った人
・ダイエットで食事量を減らしている人
・お酒をよく飲む人
・激しいスポーツをしている人
・肝臓病、腎臓病、糖尿病の人
・亜鉛の吸収や代謝に影響する薬を服用している人
ただし、早く症状を改善したいからといって、サプリメントで大量の亜鉛を長期間摂取するのは避けましょう。過剰摂取によって銅の吸収が妨げられ、貧血や神経障害などの原因になることがあります。
サプリメントを利用する際は、製品に記載された用法・用量を守ることが大切です。なお、通常の食事による亜鉛の過剰摂取はまれとされています。
信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。
GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。
【参考情報】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp
6.おわりに
味覚障害になると、食欲不振から栄養不足になったり、料理の味付けが濃くなって塩分や糖分を摂りすぎてしまう恐れがあります。
また、嗅覚障害になると、やはり食べ物の味がわかりにくくなったり、食べ物の腐ったにおいやガス漏れの異臭を感じることができずに危ない目に遭うことがあります。
味覚や嗅覚がおかしいと感じたときは、食事やサプリメントで亜鉛を十分に摂取し、味細胞や嗅細胞の再生を促してみましょう。
それでも良くならない場合は、病院を受診して原因を調べ、適切な治療を受けましょう。














