長引く咳の治療薬「リフヌア」の特徴と効果、副作用

リフヌア(ゲーファピキサント)は、これまでの咳止めとは異なる仕組みで作用する、新しいタイプの薬です。
検査では大きな異常が見つからず、咳に対する治療で用いられる従来の薬では改善しない、長引く咳に対して使われます。
この記事では、リフヌアがどのような咳に使われる薬なのか、体の中でどう働くのか、期待できる効果や知っておきたい注意点まで解説します。
長引く咳の治療について、納得して考えるための材料としてお役立てください。
目次
1.リフヌアとはどんな薬か?
リフヌアは、咳が続く背景にある神経の過敏さに着目した薬です。
1-1.ささいな刺激で咳が出る理由
咳は、細菌やウイルス、ホコリなどの異物を外に追い出そうとするときに起こる防御反応です。
気道に異物が入ると、のどや気道にある神経が刺激を感じ取り、異物が入ったという情報が脳に伝わることで咳が出ます。この刺激を感じ取る仕組みの一つが、P2X3受容体です。
P2X3受容体は、のどや気道にある小さなセンサーのような存在で、刺激が加わったときに体の中で放出される「ATP」という物質を受け取り、神経に「刺激が入った」という情報を伝えます。いわば、咳のスイッチの入口にあたる役割です。
ところが、長引く咳がなかなか改善しない場合、この神経やP2X3受容体が必要以上に敏感になっていることがあります。そのため、通常なら反応しない軽い刺激でも、スイッチが簡単に入ってしまい、咳が出るのです。
【参考情報】『The Cough Reflex: The Janus of Respiratory Medicine』Frontiers
https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2021.684080/full
1-2.神経の過敏さに着目した薬
リフヌアは、過敏になりすぎたP2X3受容体の働きを和らげることで、咳に関わる神経の過剰な反応を抑える薬です。
咳を力づくで止めるのではなく、咳が出やすくなっている状態そのものを落ち着かせる薬なので、体を守るために必要な咳まで完全に止めてしまうわけではありません。
これまで、咳を改善するための治療薬としては、気道の炎症やアレルギー反応を抑えるもの、あるいは脳の咳中枢に作用して咳を抑えるものが中心でした。
そのため、原因がはっきりしている咳には効果が期待できる一方で、検査をしても異常が見つからない長引く咳では、十分な改善が得られないこともありました。
リフヌアは、こうした従来の治療で効果が出にくかった咳に対し、咳が続く背景にある神経の過敏さに着目し、咳が出やすくなっている状態そのものを調整するという新しい考え方から生まれた薬です。
【参考情報】『リフヌア®錠を服用される方へ』杏林製薬
https://lyfnua.jp/
2.臨床試験からわかるリフヌアの効果と位置づけ
リフヌアの効果は、海外で行われた大規模な臨床試験で詳しく調べられています。
以下の試験では、何か月も咳が続き、従来の治療では改善しなかった人たちを対象に、リフヌアを飲んだ場合と、薬の成分が入っていないプラセボ(偽薬)を飲んだ場合を比較しました。
【参考情報】『Efficacy and safety of gefapixant, a P2X3 receptor antagonist, in refractory chronic cough and unexplained chronic cough (COUGH-1 and COUGH-2): results from two double-blind, randomised, parallel-group, placebo-controlled, phase 3 trials』THE LANCET
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)02348-5/abstract
その結果、リフヌアを1日2回飲んだ人では、1日の咳の回数がプラセボに比べて約15〜20%ほど少なくなることが確認されました。
また、咳の回数だけでなく、咳のつらさ、夜間の咳、日常生活への影響といった点でも、少しずつ改善する傾向が見られました。
これまで、原因がはっきりしない長引く咳に対しては、咳を無理に抑える薬や神経に作用する薬が使われることもありましたが、眠気やふらつきなどの副作用が問題になることもありました。
リフヌアはそれらとは異なり、咳を出しやすくしている神経の過敏さに直接働きかける薬です。そのため、効果は穏やかですが、新しい仕組みの治療選択肢が増えたと評価されています。
3.リフヌアが使える人・使えない人
リフヌアは、特定の病気を治す薬ではなく、咳反射が過敏になった人に処方される薬です。
3-1.リフヌアが使える人
リフヌアの対象となるのは、次の条件を満たす人です。
・咳が8週間以上続いている
・咳のもととなる病気に対して、標準治療を行っても咳が改善しない
・医師に「難治性慢性咳嗽」または「原因不明慢性咳嗽」と診断された
3-2.リフヌアが使えない人
一方、次のような場合には、リフヌアは基本的に使われません。
・咳の原因となる病気がまだ特定されていない
・肺炎、気管支炎など治療すべき急性疾患がある
・咳のもととなる病気に対する治療が十分に行われていない
・咳の原因が薬剤(ACE阻害薬など)の副作用である場合
・18歳未満
4.リフヌアの服用方法
リフヌアは、1回1錠(45mg)を、1日2回、水かぬるま湯と一緒に飲みます。
服用する時間帯は特に決められておらず、食事の前後を問わず服用できます。そのため、生活リズムに合わせて無理のないタイミングを選ぶことが可能です。
一方で、飲み忘れを防ぐために、そして効果を安定して得るためには、毎日できるだけ同じ時間帯に服用した方がいいでしょう。
また、次の服用は、おおむね12時間前後の間隔をあけるようにします。服用間隔が大きくずれると、体内の薬の濃度が不安定になり、効果が十分に発揮されないことがあります。
5.リフヌアの副作用
リフヌアの副作用として、食事の味が薄く感じたり、いつもと違って感じたりするなどの味覚障害があります。
【参考情報】『味覚障害がある – 口腔内のトラブル』日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/mikakusyougai/
これは、咳に関わる神経と味覚に関わる神経が一部共通していることが関係しています。
多くの場合、味の変化は生活に大きな支障をきたすほど強いものではなく、薬を続けている間に慣れたり、服用を中止すると元に戻ったりします。
ただし、食事が楽しめない、体重が減るなど、日常生活への影響を強く感じる場合には、医師か薬剤師に相談してください。
その他、以下のような副作用も報告されています。
・口の中の違和感
・食欲低下
・悪心(吐き気)
・口が渇く
・下痢
また、めったにありませんが、頭痛、めまい、倦怠感などがみられることもあります。
6.使用上の注意点
リフヌアを飲むときは、副作用以外にもいくつか知っておきたい点があります。
<効果が出るまで時間がかかる>
リフヌアは、すぐに咳が止まる薬ではありません。飲み始めてすぐに効果を感じる人もいますが、多くの場合は数週間ほど続けて、少しずつ咳が出にくくなっていきます。
そのため、「効果がない」と途中で判断せず、医師から説明された目安の期間は続けて様子を見ることが大切です。
<必要な咳は止めない薬>
リフヌアは、咳を無理に止める薬ではありません。咳が出やすくなっている神経の状態を落ち着かせる薬なので、体を守るために必要な咳まで完全になくしてしまうわけではありません。
咳が残っていると、「効いていないのでは」と感じるかもしれません。しかし、途中でやめてしまうと、本来得られたはずの効果が分からなくなったり、その後の治療方針を立てにくくなったりします。
<定期的な見直しが必要>
リフヌアを飲み続けるかどうかは、定期的に見直すことが大切です。
効果があまり感じられないまま長く飲み続ける薬ではなく、咳の改善具合や生活への影響、味覚の変化などを見ながら、続けるかどうかをを判断します。
<他の薬と併用する場合>
他の薬を飲んでいる場合にも注意が必要です。大きな飲み合わせの問題は多くありませんが、すでに咳止めを使っている人は、治療内容を整理する必要があります。
特に腎臓が悪い人では、全体の体調や服用中の薬を考えた対応が求められます。
【参考情報】『リフヌア_腎機能障害患者への投与は?』杏林製薬
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/faq/details/002900/
<妊娠・授乳中の注意>
妊娠中や授乳中の使用については、はっきりした安全性が確認されていないため、基本的には慎重に判断されます
7.おわりに
リフヌアは、長引く咳に対して咳が出やすくなっている状態そのものに着目した新しいタイプの薬です。これまでの治療では効果が感じられなかった人にとっては、治療の選択肢が広がる可能性があります。
咳の回数やつらさの軽減、夜間の咳による生活への影響が和らぐことが期待できる一方、効果の感じ方には個人差があります。また、味の感じ方の変化など、知っておくべき副作用もあります。効果だけでなく注意点も理解したうえで使うことが大切です。
長引く咳の治療では、「なぜこの薬を使うのか」「何を目安に続けるのか」を納得して進めることが重要です。疑問や不安があれば医師と相談しながら、自分に合った治療を選んでいくことが大切です。











