糖尿病の食事はどうすればいい?管理栄養士が食べ方のコツを解説!

糖尿病は放っておくと重い合併症を引き起こしてしまうので、適切な治療と食事療法により血糖値をコントロールしていくことが重要です。
また、健康診断などで「糖尿病予備軍」と指摘された人も、今のうちから食材の選び方や健康的なメニューを知り、対策をしておいた方がいいでしょう。
この記事では、管理栄養士の視点から、糖尿病患者や予備軍の人が知っておきたい食事のポイントを紹介します。
1.なぜ糖尿病の食事管理は重要なのか
糖尿病の治療には「薬」「運動」「食事」などいくつかの方法がありますが、その中でも 血糖値にいちばん影響するのは毎日の食事 です。
自分では体調に変化を感じていなくても、血糖値が大きく上下している状態が続くと、体の中では少しずつ負担が蓄積していきます。
ここでは、食事管理が特に大切と言われる理由を3つのポイントから説明します。
1-1.食後血糖値の急上昇が体に与える影響
食事をすると、食べ物に含まれる糖質が体に吸収されて血糖値が上がります。健康な方の場合、インスリンというホルモンがしっかり働いて、血糖値を穏やかに下げてくれます。
ところが糖尿病やその予備軍の方では、インスリンの量が不足していたり、働きが弱まっていたりするため、食後に血糖値が急激に上がりやすくなってしまうのです。
この急上昇は「血糖値スパイク」と呼ばれ、繰り返されると血管の内側が少しずつ傷ついていきます。その結果、次のような合併症を引き起こすリスクが高まります。
・糖尿病性網膜症:視力の低下や、場合によっては失明につながることもあります
・糖尿病性腎症:進行すると人工透析が必要になるケースもあります
・糖尿病性神経障害:手足のしびれや痛みが現れます
だからこそ、食後の血糖値を急に上げすぎない食べ方を身につけることが、将来の合併症を防ぐためにとても重要なのです。
【参考資料】『Postprandial Hyperglycemia and Diabetes Complications』American Diabetes Association
https://diabetesjournals.org/diabetes/article-abstract/54/1/1/14626/Postprandial-Hyperglycemia-and-Diabetes?redirectedFrom=fulltext&utm
1-2.高血糖は気づきにくいので要注意
糖尿病で気をつけたいのは、血糖値が高くてもほとんど自覚症状がないという点です。
普段と体調が変わらず食欲もあり、仕事や家事も問題なくこなせてしまうため、「自分は大丈夫」と感じてしまいがちです。
しかし実際には、知らず知らずのうちに血管や神経には少しずつ負担が積み重なり、気づいたときにはすでに進行しているケースも珍しくありません。
だからこそ、症状が出ていない今の段階から食事を見直すことがとても重要になります。
【参考資料】『糖尿病とは』日本医師会
https://www.med.or.jp/forest/check/tonyo/index.html
1-3.食事の工夫が治療効果を高めます
糖尿病の治療では、医師が処方するお薬がとても重要な役割を担っています。
ですが、お薬だけで血糖値を完全にコントロールできるとは限らないため、「薬+生活習慣」の両方で治療を進めるのが一般的です。
その中でも、食事の工夫には次のような嬉しい効果が期待できます。
・食後の血糖値の急上昇を抑えやすくなる
・体重管理がしやすくなる
・お薬を必要以上に増やさずにすむ可能性がある
・将来の合併症リスクを下げることにつながる
食事の工夫は、無理なく続けることが何より大切です。完璧を目指す必要はありませんので、できるところから少しずつ、体にやさしい食事習慣を見つけていきましょう。
【参考資料】『食事療法』日本糖尿病学会
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/03_1.pdf
2.糖尿病の食事のポイント
食事による血糖値の急上昇や乱高下を防ぐには、糖質を減らし、たんぱく質と食物繊維を積極的に摂ること、そして、食べる順番がカギとなります。
2-1.糖質を減らす
血糖値が必要以上に上昇する主な原因は、糖質の摂りすぎです。そのため、血糖値の上昇を防ぐには糖質の摂取を控えることが大切です。
糖質は米やパン、麺類、いも類に多く含まれており、これらをたくさん食べると血糖値が急激に上がることがあります。
一方で、肉や魚に含まれるたんぱく質や、油やナッツ類に含まれる脂質を摂っても、血糖値はほとんど変化しません。
また、甘いお菓子や果物にも糖質が多く含まれているため、これらも控えるようにしましょう。
お腹が空いたときには、甘いものではなく、ゆで卵やナッツ類など、血糖値が上がりにくい食品を選ぶのがおすすめです。
◆「管理栄養士が教える、糖尿病の方でも血糖値に影響が出にくい間食“8つ”のルール」>>
外食やテイクアウトで食事を選ぶ際は、糖質が多く含まれる麺類や丼物はできるだけ避けましょう。
おすすめは、品数が豊富な定食形式の食事です。おかずをしっかりと食べ、ご飯の量は控えめにするのがポイントです。さらに、ご飯に押し麦や雑穀が含まれていると、少量でも満足感が得られるので効果的です。
ただし、雑穀米だからといって、糖質量はそう大きくは変わらないため、「雑穀だから大丈夫」と思って食べすぎないように注意しましょう。
2-2.たんぱく質を積極的に摂る
健康的な食事を意識するあまり、食事量が少なくなったり、野菜ばかり食べていませんか?
血糖値を安定させるには、たんぱく質をしっかり摂ることがとても重要です。糖質を控えることは大切ですが、食事の量を減らしすぎると筋肉まで減少し、結果として血糖値が上がりやすい体になってしまいます。
筋肉量が減ると糖尿病のリスクが高まり、逆に糖尿病になると筋肉が弱くなりやすいという悪循環に陥る可能性があります。筋肉はエネルギーを蓄える役割を担っているため、筋肉量が少ないとブドウ糖を蓄える場所が不足し、血糖値をコントロールする能力が低下してしまいます。
そのため、筋肉を維持・増加させるための材料となるたんぱく質を十分に摂取することが重要です。たんぱく質は肉、魚、卵、大豆製品に豊富に含まれているので、これらを積極的に取り入れましょう。
2-3.食物繊維をしっかり摂る
食物繊維をしっかり摂ることで、血糖値の上昇を抑えることができます。食物繊維は、野菜、きのこ類、海藻類などに豊富に含まれているので、これらの食材を積極的に取り入れましょう。
特に、食事の最初に食物繊維が多い食品を食べると、その後に摂取する糖質の吸収がゆるやかになるためおすすめです。さらに、野菜などを先に食べてお腹を満たすことで、ご飯のような主食の食べすぎを防ぐことにつながります。
【参考資料】『Food Order Has Significant Impact on Glucose and Insulin Levels』Weill Cornell Medicine
https://news.weill.cornell.edu/news/2015/06/food-order-has-significant-impact-on-glucose-and-insulin-levels-louis-aronne
ただし、じゃがいもやさつまいもなどのいも類は糖質が多いため、野菜が多く使われているからといってポテトサラダのような料理は控えましょう。
また、野菜ジュースは食物繊維がほとんど取り除かれており、糖質が多いことから、糖尿病の方にはおすすめできません。野菜ジュースではなく、新鮮な野菜そのものを食べるように心がけましょう。
2-4.食べる順番に気を付ける
同じ食材でも、食事のタイミングや食べる順番によって血糖値の上昇の仕方が変わってきます。
特に、空腹時に糖質の多いものを食べると、血糖値が急激に上がりやすくなります。そのため、食事をする際は、まず野菜やおかずを食べてから、ご飯やパンなどの糖質を最後に摂るようにしましょう。
また、間食で甘いものを食べると、血糖値が急上昇しやすくなります。どうしても甘いものが食べたい場合は、食べる前に豆乳やアーモンドフィッシュなど、たんぱく質が豊富なものを先に摂りましょう。甘いものを単体で食べないことがポイントです。
2-5.欠食・ドカ食いを避ける
忙しさのあまり朝食を抜くなど、食事の回数を減らしてしまうと血糖値が急激に低下し、その後急上昇することがあります。血糖値の急激な変動を避けるためにも、食事は朝・昼・晩の3食をしっかりと摂りましょう。
特にインスリンや糖尿病の治療薬をを使用している人は、食事を抜くことで低血糖を起こしやすくなるので注意してください。
また、食事を抜くと空腹のあまり、次の食事の際に、一度に大量に食べてしまうこともあるでしょう。
このようなドカ食いも、血糖値の急上昇を招く一因となりますし、肥満につながる行動なので控えましょう。
2-6.飲酒時の注意点
糖尿病でも医師から許可を得ている人は、適度な飲酒を楽しんでも構いません。
お酒を飲むときは、適量を守るとともに、高たんぱく・低カロリーのおつまみと一緒に飲むのがいいでしょう。
また、お酒の代わりに楽しむノンアルコール飲料の中には、糖分の多い製品もあります。飲み過ぎを防ぐためにノンアルコール飲料を利用する場合は、糖分の少ない製品を選びましょう。
3.糖尿病患者さんの1日のモデル食事例
糖尿病の食事療法では、何を避けるかだけでなく 「何を選ぶか」がとても大切です。
普段の食事を少し整えるだけで、血糖値の上がり方は大きく変わります。
ここでは、迷わず選べるように 標準的な体型の成人の方を想定した1日約1600kcalの食事例をまとめました。
※ここで紹介する内容は、主に2型糖尿病を想定した一般的な目安です。
年齢・体格・活動量・合併症によって適した食事は変わるため、必ず主治医・管理栄養士の指示を優先してください。
3-1.朝食
・卵焼き(卵2個分)
・ほうれん草のおひたし or 海藻サラダ
・ご飯 100g(軽めのお茶碗 半分〜2/3程度)
・野菜たっぷり+豆腐の味噌汁
〈ポイント〉
・朝食を抜くと、そのあとの食事(昼・夕)で血糖が高くなりやすい方が多いと報告されています。
→ 基本的には、朝食は抜かずにとることをおすすめします。
・野菜 → 卵・魚・肉(たんぱく質)→ ご飯(炭水化物)の順に食べると、食後血糖が上がりにくいことが研究で示されています。
【参考資料】『食べる順番による血糖値および尿中インスリン量の変動に関する研究』藍場元弘ほか5名|徳島文理大学研究紀要 第96号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokusimabunriu/96/0/96_45/_pdf/-char/ja
3-2.昼食
・焼き魚の定食(例:鯖の塩焼き)
・小鉢(ひじき・きんぴら など)
・サラダ(海藻 or 野菜+割いた鶏むね肉orツナ缶)
・ご飯は半量または小盛りに調整
〈ポイント〉
・「焼き魚定食」「生姜焼き定食」などの定食形式は、野菜・たんぱく質・主食のバランスが自然と整いやすく、血糖も安定しやすい傾向があります。
・丼・麺の単品よりも、品数が多い食事のほうが、血糖の急上昇を防ぎやすくなります。
・ご飯は「普通盛り」ではなく、小盛り・半分を基準にすると、長期的な血糖コントロールにつながります。
・ご飯を減らした際は、代わりに、たんぱく質( 卵・魚・肉など)をしっかりと摂るようにしましょう。
摂取カロリーを減らすことだけを考えていると、筋肉量が落ちてしまい逆に糖尿病の悪化へと繋がります。
3-3.夕食
・鶏むね肉のグリル or 豆腐ハンバーグ
・野菜スープ or 蒸し野菜
・ご飯を食べる場合は 80〜100g 程度
・きのこや海藻を多めにして食物繊維を追加
〈ポイント〉
・多くの人で、夕方〜夜は血糖が上がりやすく、同じ量の炭水化物でも朝より高くなりやすいことが分かっています。
→ 夜は、ご飯などの主食を控えめにするのがおすすめです。
・その分、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆)と野菜・きのこ・海藻をしっかりとると、満腹感が続きやすく、間食も防ぎやすくなります。
【参考資料】『Circadian Regulation of Glucose, Lipid, and Energy Metabolism in Humans』National Center for Biotechnology Information
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5995632/?utm
※必要なエネルギー量は年齢や性別、体重、日常の活動量によって変わりますので、ご自身に合った量は必ず主治医や管理栄養士にご相談ください。
【参考資料】『健康食スタートブック』日本糖尿病学会
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/kenkoshoku_startbook/kenkoshoku_startbook.pdf
4.外食で迷わないための選び方
仕事の付き合いで外食をすることや、たまには外で食事を楽しみたいときもあると思います。そんな時でも、無理に外食を我慢しなくても大丈夫です。
選び方を少し工夫するだけで、血糖コントロールは可能です。
4-1.外食で避けたいメニュー
以下のメニューは血糖値が急上昇しやすいので、できれば控えめにしましょう。
・丼もの(牛丼・天丼・カツ丼など)
・ラーメン、うどん、パスタの単品
・大盛りや食べ放題
なぜ避けたほうがいいのか
これらのメニューは一品で大量の糖質を摂りやすく、さらに脂質も多くなりがちです。そのため食後の血糖値が高くなりやすい組み合わせとなっています。
絶対に食べてはいけないわけではありませんが、たまの楽しみ程度にとどめておくのが安心です。
4-2.外食でおすすめのメニュー
血糖値を安定させやすいのはこの様なメニューです。
・焼き魚定食
・生姜焼き定食
・チキンサラダ+スープ+ご飯少量
・海鮮丼(ご飯少なめで注文)
・和定食(小鉢がいくつか付いているもの)
定食形式がベストな理由
定食は、野菜→たんぱく質→ご飯の順で食べやすい構造になっているため、血糖値の急上昇を防ぎやすいです。
海鮮丼などの丼ものでも、ご飯少なめで注文すれば、十分に血糖値をコントロールできる食事になります。
4-3.量の調整テクニック
外食では無理なく続けられる工夫が大切です。
・ご飯は「少量でお願いします」と伝える
・麺類ならラーメンよりそば(小盛り)のほうが血糖値が上がりにくい
・揚げ物はメインではなく副菜程度に
・先にサラダや海藻、野菜スープでお腹を満たす
外食では糖質と脂質が多くなりがちですが、量の調整と食べる順番を意識するだけで、血糖値の上がり方がかなり変わります。
また、お味噌汁やラーメンのスープは塩分が多いので、汁は全部飲まず具を中心に食べるようにすると、高血圧や腎臓への負担も減らせます。
【参考資料】『Diabetes Meal Planning』Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/diabetes/healthy-eating/diabetes-meal-planning.html?utm
5.コンビニを利用する時は
忙しい方ほど利用するコンビニは、選び方次第で血糖値が急上昇する食事になってしまいます。ここでは、血糖値が安定しやすくなる選び方をご紹介します。
5-1.まず選びたい「たんぱく質」
・サラダチキン
・ゆで卵1〜2個
・焼き魚パック
・豆腐・冷奴・厚揚げなどの大豆製品
たんぱく質が重要な理由
たんぱく質を1品加えるだけで、満腹感が長持ちし、血糖値も安定しやすくなります。特にご高齢の方は、筋肉量を保つためにも毎食何かしらのたんぱく源を摂ることが大切です。
※腎臓に持病がある方は、たんぱく質の量について主治医や管理栄養士の指示を優先してください。
5-2.主食は控えめ&選び方が大事
おすすめの選び方
・おにぎり+おかず2品
おにぎりの具は、雑穀・鮭・昆布などがおすすめです。
おかず2品の例としては、「ゆで卵+サラダチキン」「海藻サラダ+具だくさんの野菜スープや豆腐の味噌汁」などがあげられます。
避けたい選び方
・菓子パン・惣菜パン・クリーム系パン
・甘い飲料(ジュース・甘いカフェラテ・エナジードリンクなど)
菓子パンや甘い飲み物は、短時間で大量の糖質を摂りやすく、血糖値スパイクを起こしやすいため、毎日は避けて、どうしても食べたいときのご褒美程度にとどめるのが安心です。
2-3.注意したい加工食品
以下のような商品は、できるだけ回数を減らしましょう。
・コロッケ・フライドチキン・唐揚げなどの揚げ物
・チキン南蛮・唐揚げ弁当・ハンバーグ弁当などのこってり系弁当
・カップ麺
・ジュース・甘いカフェドリンク・砂糖入り紅茶など
なぜ控えたほうがいいのか
脂質たっぷりの揚げ物とご飯やパンなどの糖質が重なると、血糖値が高い状態が長く続きやすく、総カロリーも多くなって肥満につながりやすいからです。
ゼロにする必要はありませんが、回数を減らすことが大切です。
例えば「週1回まで」「どうしてもの日は、ご飯は半分にする」など、自分なりのルールを決めると続けやすくなります。
【参考資料】『Know Your Facts About Diabetes』American Diabetes Association
https://diabetes.org/about-diabetes/diabetes-myths?utm_source=chatgpt.com
6.おわりに
食生活を見直して、日々の食事を管理することにより、血糖値を下げることが可能です。
重い糖尿病や合併症を防ぐために、しっかりと血糖コントロールしていきましょう。
食事管理は、完璧を目指すよりも「続けられること」が何より大切です。まずはできることから少しずつ始めて、無理なく習慣にしていきましょう。
当院では、管理栄養士による栄養カウンセリングを行っています。わからないことがあれば、お気軽にご相談ください。










