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いびきは口臭の元?その理由と防ぐための対策

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年11月05日

朝起きたときに「口臭がきついのでは」と、気になることはありませんか?

寝起きは誰もが多少は口臭が強くなるものですが、中にはいびきが原因で、臭いがより強くなっている人もいます。

この記事では、いびきが原因で口臭が強くなる理由をお伝えします。いびきを防ぐために自分でできる対策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.いびきが出る原因

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いびきは、何らかの原因で上気道が狭くなり、狭くなった上気道を空気が通る時に、喉の粘膜が振動して出る音です。

上気道が狭くなる原因としては、肥満や鼻づまり、喉や舌の筋肉の緩みなどがあります。

◆「いびきの原因は肥満?」>>

いびきは、風邪や花粉症などのため鼻が詰まっている時によく出ます。そのような場合は、原因となる病気が治ればいびきも治まるので、そんなに心配ありません。

しかし、毎晩のように大きないびきをかいているなら、その裏に深刻な病気が隠れていることもあるので注意が必要です。

【参考情報】『Snoring』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15580-snoring

2.いびきで口臭が強くなる理由

いびき 口臭強い
寝ている間は、もともと唾液の分泌が減るため、口の中が乾燥しやすくなります。

いびきをかいている人は、口を開けて寝ているため、口の中が空気に触れてさらに乾燥します。

唾液には、口の中に残っている食べカスを洗い流したり、細菌の増殖を抑えたりすることで、口腔内を清潔に保つ役割があります。

いびきをかいている人は、口の中が乾燥して唾液の量が減ることにより、口腔内の細菌が繁殖して、口臭が強くなるのです。

【参考情報】『歯・口の機能』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-01-001

3.いびきによる口臭を防ぐには

いびき 口臭 防ぐ
口臭の原因がいびきにある場合、改善のため自分でできる対策を紹介します。

3-1.寝る前に温かい飲み物を飲む

いびきの原因が鼻詰まりによるものなら、寝る前に温かい飲み物を飲んでみましょう。

鼻や喉を加湿することで鼻水が出やすくなり、鼻の通りがよくなることで、寝ている間の口呼吸やいびきの予防につながります。

3-2.寝室の湿度を適切に保つ

寝室の湿度が低いと、鼻の粘膜が乾燥します。すると、鼻での呼吸がしにくくなり、睡眠中に口を開けてしまいます。

寝ている間に口が開いてしまうと、いびきが出やすくなります。また、口の中が乾燥して雑菌が繁殖するので、口臭もきつくなります。

寝室の湿度は、50%前後だと快適に眠ることができます。加湿器を利用する、濡れタオルを干すなどの対策で、湿度をコントロールしましょう。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

3-3.口輪筋を鍛える

加齢などが原因で、口の周りにある口輪筋が衰えてくると、睡眠中に口が開きやすくなり、いびきや口臭の原因となります。

口輪筋は、トレーニングで鍛えることができます。専用のグッズも販売されていますが、以下のような方法でも鍛えることができます。

 ・口角を上げて笑う
 ・口笛を吹く
 ・風船をふくらませる

手軽な方法ですが、継続して行うと、筋力アップにつながります。

3-4.減量する

肥満体型の人は、首回りの脂肪により気道が圧迫され狭くなります。

気道が狭くなると、睡眠中に息が苦しくなって口を開けてしまい、いびきをかきやすくなります。

当てはまる人は、食事と生活習慣を見直し、無理のないペースで適正体重を目指しましょう。

【参考情報】『Losing Weight』CDC
https://www.cdc.gov/healthyweight/losing_weight/index.html

4.対策しても効果を感じない場合

いびき 口臭 睡眠時無呼吸症候群
自分でできる対策を行ったとしても、いびきが続くようであれば、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因でいびきが出ている可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に何らかの原因で無呼吸や浅い呼吸を繰り返す病気です。この病気の症状のひとつとして、毎晩のように繰り返されるいびきがあります。

◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>

患者さんのいびきは激しく、自分のいびきの音で目が覚めてしまったり、一緒に寝ている家族やパートナーの安眠が妨げられることもあります。

もし、睡眠時無呼吸症候群が原因で、口を開けて眠っているのであれば、治療しなければいびきや口臭の改善は期待できません。

いびきのほかにも、日中の眠気や起床時の頭痛などの症状があれば、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いので、病院を受診して検査を受けましょう。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっと詳しく>>

5.口臭が発生する病気

口臭が発生する病気
睡眠時無呼吸症候群以外の病気でも、口臭が発生することはあります。

5-1.歯周病

歯周病菌は、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に溜まった食べカスやプラークを分解する際に、揮発性硫黄化合物(VSC)と呼ばれるガス(硫化水素・メチルメルカプタンなど)を発生させます。

これらは強い悪臭を放つため、歯周病が進むと口臭が目立つようになります。

【参考情報】『口臭の原因・実態』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-001

悪化すると歯茎から出血が起こり、血液や滲出液が細菌と混ざることで、より不快なニオイを生じます。さらに進行すると、歯茎の内部に膿(うみ)が溜まり、口を開けたときや呼気とともに強烈な悪臭が漂うことがあります。

放置すれば歯を支える骨が溶け、最終的には歯が抜けてしまうこともあるため、早期の歯科受診と治療が重要です。

【参考情報】『Periodontal Disease (Gum Disease)』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21482-gum-periodontal-disease

5-2.虫歯

虫歯が進行して歯に穴が開くと、そのくぼみに食べカスや細菌が溜まり、腐敗臭が発生します。

特に、砂糖を含む食品が残りやすく、細菌が糖を分解する過程で酸や悪臭物質が作られます。

さらに虫歯が進行し、神経が炎症を起こすと、独特の強いニオイを伴うことがあります。神経が死んだ歯は内部で組織が腐敗し、細菌が増殖することで腐敗臭が持続的に発生します。

【参考情報】『Cavities and tooth decay』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/cavities/symptoms-causes/syc-20352892

5-3.夜間口腔乾燥症(ドライマウス)

夜間口腔乾燥症(ドライマウス)は、就寝中に唾液の分泌量が大きく低下し、口や喉が乾燥してしまう状態です。

加齢やストレスのほか、薬の副作用(抗うつ薬、抗不安薬、降圧薬、抗ヒスタミン薬など)やシェーグレン症候群といった疾患も原因となります。

【参考情報】『シェーグレン症候群』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/111

夜間口腔乾燥症では唾液の分泌量が大きく減少するため、唾液による口腔内の自浄作用や殺菌作用が不十分となり、細菌が増殖しやすい環境になります。

その結果、細菌が食べカスや舌苔を分解する際に発生するガスが増え、口臭が強くなります。

症状が続く場合は、唾液分泌の検査や治療を行う歯科・耳鼻科・口腔外科などで相談するとよいでしょう。

【参考情報】『口の中が乾燥する』日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/kanso/

5-4.糖尿病

糖尿病になると、糖の代謝がうまくできなくなるため、体は不足したエネルギーを補うために筋肉(タンパク質)や脂肪を分解してエネルギー源として利用します。

この代謝の過程で「ケトン体」という物質が産生され、血中や尿中に増加します。

ケトン体の中には揮発性の「アセトン」という物質が含まれているのですが、血中に増えたアセトンが呼気として排出されることで、甘酸っぱいような独特の口臭が生じます。

また、糖尿病では脱水を起こしやすく、唾液分泌が減ることで口内の自浄作用が弱まり、細菌の繁殖が進んで臭いが発生しやすくなります。

◆「糖尿病」の詳しい情報をチェック>>

5-5.肝機能低下

肝臓の機能が低下すると、本来肝臓で処理されるべき老廃物や有害物質を十分に分解できなくなります。

分解しきれなかった物質は、血流に乗って全身を巡り、最終的に肺へ運ばれ、呼気として体外に排出されます。これが独特の口臭として感じられることがあります。

特に肝硬変など、肝機能障害が進行した場合にみられる「肝性口臭」は、腐敗臭に似た特有のにおいがします。

また、肝機能低下により唾液分泌が減少すると、口内の細菌が増えやすくなり、その結果としても口臭が強くなることがあります

5-6.気管支拡張症

気管支が炎症や感染などをきっかけに広がり、元の形に戻らなくなる慢性の病気です。

原因としては、幼少期の重い肺炎や百日咳、結核、慢性的な気道感染、免疫異常などが挙げられます。

この病気になると、慢性的な咳や大量の痰がみられます。痰は粘り気が強く、さらに排出が難しいため、気道内に長く留まりやすくなります。

痰が滞留すると細菌が繁殖し、腐敗臭や膿のようなにおいを発生させることがあります。このにおいが呼気に混ざることで、強い口臭として感じられることがあります。

◆「気管支拡張症」について詳しく>>

5-7.その他の病気

その他、副鼻腔炎のような鼻の疾患や、胃食道逆流症のような胃の疾患が原因で口臭が生じることもあります。

◆「副鼻腔炎とはどんな病気?」>>

◆「胃食道逆流症(GERD)とは?」>>

一方、実際にはにおいがないにもかかわらず、自分の口臭や体臭が強いと思い込み、強い悩みや不安を抱く「自臭症」という状態があります。過去の指摘や対人関係のストレスをきっかけに発症することが多く、日常生活に支障が出るケースもみられます。

6.おわりに

朝起きたときに、口臭や喉の渇きを感じることが多いなら、いびきが原因かもしれません。

もし、いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群だった場合、治療によっていびきが改善します。

いびきをなくすための対策を行ってもよくならない場合、病院で検査を行い、原因を調べましょう。

治療によりいびきがよくなれば、睡眠中に口を開けてしまうことが少なくなり、口臭も気にならなくなるでしょう。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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