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外来

必須アミノ酸のおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2022年08月30日

現代の日本人の約3割が喘息やアトピー、花粉症などのアレルギー疾患を持っていると言われています。

特に最近、アレルギー疾患を持つ子どもが増えていて、これから生まれてくる子どもの2人に1人がアレルギー疾患に悩むと懸念されています。

アレルギー疾患を改善するためには、皮膚や気管の粘膜のバリア機能を高めていくことが重要です。

そのために欠かせない栄養素が、皮膚や気管の粘膜をつくる材料となり、体内でつくることができない「必須アミノ酸」です。

1.必須アミノ酸とアレルギー疾患の関係

皮膚炎

子どもがアトピー性皮膚炎を発症する原因として、昔は母親からの遺伝だと考えられていましたが、それは間違いであることがわかりました。

現在では、皮膚や粘膜のバリア機能が低下することによって、外界のアレルゲンが体内に侵入しやすくなり、アレルギー疾患を発症すると考えられています。

【参考資料】『Epithelial barrier repair and prevention of allergy』JCI(Journal of Clinical Investigation)
https://www.jci.org/articles/view/124608

したがって、皮膚や粘膜のバリア機能を高めることがアレルギー疾患を改善するためのカギとなります。

皮膚や粘膜のバリア機能を高めるためには、食事で必要な栄養素を摂ることが重要です。

皮膚や粘膜の材料となるのはおもにタンパク質ですが、その構成に必要なのが必須アミノ酸です。

【参考資料】『子どものアレルギー』大矢幸弘 著
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163907734

また、アレルギー疾患の改善には、腸内環境が整っていることや血糖値を安定させることも重要です。

必須アミノ酸は腸をつくる材料であり、腸のバリア機能を高めたり、血糖値を安定させるはたらきもあります。

必須アミノ酸は食事で不足しがちな栄養素なので、意識して摂ることが大切です。

◆「アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係」>>

◆「糖質がアレルギー疾患に与える影響とは?」>>

2.必須アミノ酸を効率よく摂るには?

必須アミノ酸3

人間の身体は約20種類のアミノ酸で構成されていて、そのうち9種類は体内で合成することができません。

体内で合成できないアミノ酸を必須アミノ酸と言い、食事で摂る必要があります。

【必須アミノ酸と非必須アミノ酸】
アミノ酸表1【参考資料】『臨床栄養ディクショナリー』伊藤孝仁 監修
https://store.medica.co.jp/item/302242955

2-1.必須アミノ酸を多く含む食品

必須アミノ酸の含有バランスを評価する指標を「アミノ酸スコア」と言います。このスコアが高いほど皮膚や気管の粘膜を構成するタンパク質の合成効率が高まります。

アミノ酸表2【参考資料】『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm

必須アミノ酸は肉類や魚介類、大豆製品に多く含まれるので、それらの食品を組み合わせて毎日の食事で摂りましょう。

注意点としては、同じ食品ばかり食べ続けないことです。同じ食品を取り続けていると、それがアレルギーの原因となる可能性があるので、いろいろな食材をまんべんなく取り入れるようにしましょう。

2-2.必須アミノ酸を食事で摂る方法

ごはんと味噌汁

必須アミノ酸やタンパク質は、脂質と違って体内に蓄えておくことができません。したがって、毎日3回の食事でしっかり摂ることが大切です。

肉や魚がメインのおかずに加え、卵や豆腐などタンパク質の副菜があると理想的です。

◆「たんぱく質をたっぷりとって美と健康を。」>>

胃腸が弱い方や、肉を食べると胃もたれをしてしまう方は、吸収しやすいアミノ酸の形で摂ることがおすすめです。

鶏ガラスープや出汁、みそ汁などは、食材から出たアミノ酸などの栄養素がたっぷり含まれています。

食欲がないときも、スープなら安心して取り入れることができます。

2-3.必須アミノ酸のサプリメントもおすすめ

必須アミノ酸サプリ

高齢の方や、少食で食事をあまり摂れない方は、必須アミノ酸をサプリメントで摂るのがおすすめです。

ドラッグストアなどで売っている製品は、必須アミノ酸の量が少なかったり、添加物が多いものがほとんどなので、医療用のサプリメントを選ぶといいでしょう。

信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。

GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。

【参考資料】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp

3.おわりに

アレルギー疾患を改善するためには、皮膚や粘膜のバリア機能を高めることがカギとなります。

そのためには、皮膚や粘膜の材料となるタンパク質、特に体内で合成することのできない必須アミノ酸をしっかり摂ることが大切です。

胃腸が弱い方や高齢で消化能力が低下している方は出汁などを活用し、アミノ酸の形で必須アミノ酸を積極的に摂りましょう。

自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。

◆「栄養カウンセリング」について>>

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