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糖尿病は遺伝する?タイプ別リスクと予防法を紹介

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年04月23日

糖尿病には1型と2型がありますが、特に2型は生活習慣に加えて、遺伝的な体質も発症に影響します。

そのため、家族に糖尿病の人がいる場合、遺伝的な素因により発症リスクが高まることが知られています。

この記事では糖尿病と遺伝の関係や、リスクを抑える生活習慣について解説していきます。

1.糖尿病とはどのような病気か


ここでは、糖尿病の基本的な仕組みや種類についてわかりやすく説明していきましょう。

1-1.糖尿病とはどういう病気?

糖尿病は、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンが不足したり、十分に働かないことで、血糖値の高い状態が続いてしまう病気です。

慢性的な高血糖は血管や神経にダメージを与え、将来的に合併症の原因になります。

代表的な合併症には、糖尿病腎症(腎臓の障害)糖尿病網膜症(目の障害)糖尿病神経障害などがあります。

これらは進行すると、日常生活に大きな影響を及ぼすこともあるため注意しましょう。

特に糖尿病の初期段階ではほとんど自覚症状がないため、気づかないまま進行してしまうケースも多く注意が必要です。

◆「糖尿病」についてもっとくわしく>>

【参考情報】『Diabetes Overview』National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases
https://www.niddk.nih.gov/health-information/diabetes/overview/what-is-diabetes

1-2.1型糖尿病と2型糖尿病の違い

糖尿病には大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病の2種類があります。

<1型糖尿病>
1型糖尿病は、インスリンが分泌されなくなるため、血糖値を下げることができなくなる病気です。

小児や若年成人に多く、突然発症することが多いのが特徴です。

1型糖尿病の原因はまだ明確ではありませんが、免疫の異常によって、自身の免疫がインスリンを分泌する膵臓の細胞を攻撃してしまうことが原因とされています。

そのため、インスリン注射などの治療が生涯にわたって必要となる場合がほとんどです。

<2型糖尿病>
2型糖尿病は、インスリンの分泌が不足したり、インスリンの働きが悪くなることで、血糖値が慢性的に高くなる病気です。

日本で糖尿病と診断される方の約95%が2型糖尿病といわれており、主に中高年以降に多くみられますが、最近では若年層にも増加しています。

主な原因としては、食生活の乱れや運動不足などの生活習慣が挙げられますが、遺伝的な体質も関係します。

家族に糖尿病の方がいる場合は、生活習慣への注意が必要でしょう。

◆「糖尿病になりやすい人の特徴と予防法」について>>

1-3.糖尿病の診断基準

糖尿病の診断は、主に血糖値の検査によって行われます。

一般的な診断基準は、以下の通りです。

<診断基準>
・空腹時血糖値が126mg/dL以上
・または食後2時間の血糖値が200mg/dL以上

これらの数値が確認された場合、糖尿病と診断されます。

また、過去1〜2か月の平均的な血糖状態を示すHbA1c(ヘモグロビンA1c)の値も、診断や経過観察の重要な指標です。

糖尿病は完治が難しい病気ではありますが、早い段階で見つけて適切な治療や生活習慣の改善を行えば、進行を抑えることは十分に可能です。

自覚症状がないまま進行することもあるため、定期的な健康診断と継続的な管理が欠かせません。

【参考情報】『Diagnosis of Diabetes』American Diabetes Association
https://diabetes.org/about-diabetes/diagnosis

2.糖尿病は遺伝するのか


「家族に糖尿病患者の方がいると、自分もなるのか?」と不安に感じる方が多いでしょう。

糖尿病は”必ず遺伝する病気”ではありませんが、発症しやすい体質が遺伝的に関係することがあります。

ここでは、1型糖尿病と2型糖尿病それぞれの遺伝との関係を解説します。

2-1.1型糖尿病の遺伝

1型糖尿病は、自己免疫の異常によって発症する病気で、明確な「遺伝病」ではありません。

しかし、発症には遺伝的素因が関わっており、特にHLA(ヒト白血球抗原)という免疫関連遺伝子の型が発症リスクに影響することが知られています。

そのため、家族に1型糖尿病の方がいる場合、発症する可能性はやや高まります。

実際の発症リスクは以下の通りです。

・一般の人(家族歴なし): 約0.3〜0.4%
・母親が1型糖尿病: 約1〜2%
・父親が1型糖尿病: 約3〜6%
・きょうだいに患者がいる: 約6〜7%
・両親ともに1型糖尿病: 最大30%前後

家族歴があるとリスクは高まりますが、それでも発症しない人の方が多いのが実情です。

また、ウイルス感染などの環境要因が発症の引き金となることもあり、「体質=必ず発症」ではありません。

【参考情報】『Type 1 diabetes』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/genetics/condition/type-1-diabetes/

2-2. 2型糖尿病の遺伝

2型糖尿病は「生活習慣病」として知られ、主に食事や運動などの日々の習慣が発症に関係します。

しかし、遺伝的な体質も発症リスクに関与していることがわかっており、生活習慣だけでは説明できないケースもあります。

例えば「インスリンが出にくい・効きにくい」といった体質は親から子へと遺伝することがあり、それが糖尿病のなりやすさに影響を与えると考えられています。

主な発症リスクの目安は以下の通りです。

・きょうだいに2型糖尿病がいる: 発症リスクは2〜3倍
・両親のどちらかが2型糖尿病: 子どもの発症リスクは約40%
・両親ともに2型糖尿病: 発症リスクは最大70%近くになるという報告も

特に日本人はインスリンの分泌量が少ない体質の人が多く、遺伝の影響が強く出やすい傾向にあるようです。

1型・2型どちらにも遺伝は関係しますが、2型糖尿病のほうが家族の影響はより強いとされています。

とはいえ、遺伝的な体質があっても、必ず糖尿病になるとは限りません。

日々の生活習慣を整えることにより、糖尿病の発症リスクを下げられる可能性は十分にあります。

「家族が糖尿病だから」と不安な方こそ、早めの行動が望ましいでしょう。

【参考情報】『2型糖尿病』日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=93

3.糖尿病の合併症と血糖値の関係


糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで、全身の血管や神経にダメージを与えます。

それにより、心臓や脳、目、腎臓などに深刻な合併症を引き起こすこともあるでしょう。

ここでは、代表的な合併症と、その血糖値の関係について紹介します。

3-1.合併症の種類と特徴

糖尿病によって起こりやすい合併症には、次のようなものがあります。

<糖尿病網膜症>
目の血管が傷つき視力が低下することがあります。最悪の場合は失明に至る恐れもあります。

<糖尿病腎症>
腎臓の働きが低下し、進行すると人工透析が必要になることもあるでしょう。

<糖尿病神経障害>
手足のしびれや感覚異常に加え、消化機能の低下など多様な症状が現れる病態です。

<動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中>
血管の老化が早まり、重篤な心血管疾患につながる可能性があります。

これらの合併症は、糖尿病があるからといってすぐに起きるわけではありません。

高血糖の状態が長期間続くことでじわじわ進行します。

特に初期段階では症状に気付きにくく、発見が遅れることも少なくありません。

【参考情報】『糖尿病と合併症』日本糖尿病協会
https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3

3-2.血糖コントロールの重要性

合併症を防ぐには、血糖値をコントロールすることが最も重要です。

その目安となるのが、HbA1c(ヘモグロビンA1c)です。

これは過去1~2か月の血糖の平均的な状態を示す数値で、6.5%未満を目標とされることが多いですが、年齢や健康状態によって個人差があります。

血糖コントロールを良好に保つためには、次のような生活習慣の見直しが欠かせません。

ここでは、食事とストレスの2つの観点から、具体的な対策を紹介します。

<食事の工夫>
・野菜、食物繊維をしっかり摂る(血糖値の急上昇を防ぐ)
・白米やパン、砂糖など血糖値が急上昇しやすい食品(高GI食品)を避ける
・食事の時間をできるだけ規則正しく保つ
・間食をとる場合は、ナッツやチーズなど血糖値を上げにくい食品を選ぶ

コーヒーや乳製品が予防に役立つという研究報告もありますが、偏った摂取は避け、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。

◆「糖尿病の食事ポイント」はこちら>>

<ストレス対策>
ストレスが続くと血糖値を上げるホルモン(コルチゾールなど)が増え、血糖コントロールに悪影響を与えるとされています。

また、ストレスをためこむことで、暴飲暴食や生活リズムの乱れにつながることもあるでしょう。

ストレスを緩和するためには、次のような習慣を日常的に取り入れることが効果的です。

・ストレッチや軽い運動(ウォーキングなど)で体を動かす
・深呼吸や瞑想で自律神経を整える
・音楽・読書・趣味など、自分がリラックスできる時間をつくる
・睡眠の質を高め、しっかり休息をとる

無理のないことから始めるのが長続きのコツです。

【参考情報】『Managing Diabetes』American Diabetes Association
https://diabetes.org/healthy-living

3-3.血糖値スパイクへの注意

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象です。

この状態が繰り返されると、合併症のリスクが高まるだけでなく、動脈硬化や認知症との関連があることも報告されています。

血糖値スパイクの代表的なサインは、次のようなものがあります。

・食後に強い眠気やだるさを感じる
・食べたばかりなのにすぐに空腹を感じる
・イライラや集中力の低下が続く

これらの症状が頻繁にある方は、血糖値スパイクを起こしている可能性があるでしょう。

健康診断では空腹時血糖値のみ測ることが多く、スパイクは見逃されがちです。

そのため、食後の血糖変動が気になる方は「食後血糖値」「HbA1c」を測定できる医療機関での相談をおすすめします。

◆「血糖値スパイク」についてくわしく>>

4.生活習慣による糖尿病の予防

糖尿病は、遺伝的な体質があっても、生活習慣を整えることで発症リスクを下げることができます。

とくに運動・飲酒・喫煙などは、日常的に見直せる重要な習慣です。

ここでは、改善のポイントを3つに分けて解説します。

4-1.無理なく続けられる運動習慣を

運動によってインスリンの効きが良くなり、血糖値の上昇が抑えられます。

また、肥満の予防や改善にも役立ちます。

特に有酸素運動(ウォーキングなど)と、筋トレの組み合わせが効果的とされています。

ただし、普段運動をしていない方がいきなり激しく動くのは、体への負担になるため注意が必要です。

まずは1日15分のウォーキングから始め、慣れてきたら徐々に時間や内容を増やしましょう。

継続できるペースで取り組むことが大切です。

【参考情報】『糖尿病を改善するための運動』厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-05-005

4-2.飲酒は「適量」で楽しむ

飲酒そのものが直ちに問題になるわけではありませんが、過度な飲酒は糖尿病の発症リスクを高める要因となります。

アルコールはインスリンの働きを妨げることがあり、血糖値のコントロールが乱れやすくなるでしょう。

また、飲酒時に選ぶ食事やおつまみの内容によっても、血糖値への影響が大きく変わるため注意が必要です。

血糖値を安定させるためには、以下のような工夫が効果的です。

・枝豆や冷奴、刺身など、低カロリー・低糖質のおつまみを選ぶ
・飲みすぎた日は翌日以降の食事や活動量でバランスをとる
・週に1〜2日は休肝日を設けるなど、飲酒習慣にメリハリをつける

さらに、空腹での飲酒は低血糖を招きやすいため、何かを軽く食べながら飲むことを忘れないようにしましょう。

4-3.禁煙は、血糖コントロールの第一歩

喫煙は、交感神経を刺激して血糖値を上昇させるほか、インスリンの働きを妨げる作用もあります。

そのため、禁煙は糖尿病の予防・進行防止において非常に重要です。

とはいえ、長年喫煙している方にとって禁煙は簡単ではありません。

最近では、禁煙外来やアプリなどを活用することで、無理なく始めることも可能でしょう。

“一人で頑張らず、医療の力を借りる”ことが成功への近道です。

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【参考情報】『Smoking and Diabetes』Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/tobacco/campaign/tips/diseases/diabetes.html

5.家族にできるサポート

糖尿病は、本人の努力だけでなく、家族の支えによって予防や治療が続けやすくなる病気です。

ご家族に糖尿病の方がいる場合、自分自身の体や生活習慣を見直すきっかけにもなるでしょう。

<患者さんのサポート>
例えば、一緒に健康的な食事をとったり、散歩などの軽い運動をすることで、患者さんのモチベーションが保たれます。

定期受診や検査を忘れないように声かけをする、体調の変化を共有できる関係を築く、といったサポートも役立ちます。

大切なのは、“やらせる”のではなく、“寄り添う姿勢”です。できたことを一緒に喜ぶだけでも、患者さんの励みになるのではないでしょうか。

<自分自身への不安への対処>
一方で、「家族が糖尿病だから、自分もなるのでは…」と不安を感じている方もいるかもしれません。

たしかに、遺伝的な体質は発症に関わることがありますが、必ず発症するわけではありません。

大切なのは、自分の体質を理解したうえで生活習慣を整えていくことです。

食事では、甘いものや炭水化物のとりすぎに注意しつつ、野菜やたんぱく質を意識した栄養バランスを心がけることが大切です。

また、年に一度の健康診断や血糖値のチェックに加え、睡眠・運動・ストレス管理にも気を配ることで、発症リスクの軽減につながります。

「糖尿病家系」と言われたからこそ、早めに対策を始められるのは大きな強みです。

自分の体を守る第一歩は、今日の小さな選択から始まります。

6.おわりに

糖尿病は、体質が関係することもありますが、それだけで決まる病気ではありません。

たとえ遺伝的な素因があっても、生活習慣を整えることで予防や進行の抑制は可能です。

「親が糖尿病だから」と不安を感じる方も、食事や運動といった日々の積み重ねが自分の健康を守る大きな力になります。

予防にも治療にも共通するのは正しい知識と実践です。

できることから始めて、未来の健康につなげましょう。

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